こんにちは、ワンキャリ編集部です。
海外売上3.6兆円超、年2ケタ成長の事業を持ち、変化に挑戦し続けている……そんな日系大手企業があります。
パナソニック。
業績低迷や外資への事業売却など、日系メーカーと聞くと「先行きが不安」というイメージが先行する近年。その閉塞感を打ち破るパナソニックの実情に迫る連載企画を、3回にわたってお届けします。
初回の今回は、現役人事である高橋さんにお話を伺いました。
【パナソニック:特集】
・第一回:海外売上 3.6兆円超。今なお「成⻑を遂げる」パナソニックの魅⼒と、苦戦イメージ先⾏のメーカー事情を現役⼈事が語る
・第二回:謎多き「経営企画職」を徹底解剖。次の100年を創る、パナソニックのブレーンに迫る
・第三回:『製品』を『商品』に変える。3人のマーケターが描く、パナソニックの市場戦略
なぜ苦況に? 海外売上3.6兆円超、増収を続ける「巨人」が語る、日本の家電産業
──高橋さん、本日はよろしくお願いします。率直に申し上げて、東芝やシャープの業績低迷・外資への事業売却のニュースから、多くの学生は「日本の家電業界・家電メーカーは衰退している」という印象を強く持っています。パナソニックでは、こうした市場の動きや苦況の原因をどのように捉えているのでしょうか?
高橋:家電事業が苦戦している背景には、家電メーカーならではの「ミクロの視点」と、事業のライフサイクルという「マクロの視点」があると考えています。
まず家電メーカー特有の理由として、(1)製品のコモディティ化(2)進まないグローバル市場攻略 という2点が挙げられます。
──それぞれ、詳しく教えてください。
高橋 大輔(たかはし だいすけ):大学を卒業後、パナソニックに入社。人事部門における、主に企画・異動・組織・採用・人材開発を担当。R&D部門での技術人事、製造(家電・デバイス)分野での人事を歴任し、トレーニー制度を活用して海外経験。帰国後、事業部門(車載)人事を担当後、再度、海外(中国本社)で勤務。帰国後は本社(新卒採用)部門で採用に携わりつつ、本社経営企画部門を経て現職。
高橋:はい。1つ目の「製品のコモディティ化」は、2000年代以降のデジタル化の進行に関連しています。家電をはじめ、あらゆる製品にデジタル部品が組み込まれるようになったことで、部品と生産設備さえ用意できれば世界中どこでも安価かつ良質な製品が作れる時代になりました。従来の日系メーカーが差別化の軸にしていた、製品の意匠や形・材質の重要性が薄まってきたことで、価格競争が激化していき、利益確保が難しくなりました。
2つ目の「進まないグローバル市場攻略」については、日本仕様へのこだわりが日系メーカーの首を絞めました。これまで日系企業が海外進出をする際は、機能を含めた「製品のクオリティの高さ」を武器に戦おうとしていました。しかし家電は、国や地域の文化・習慣と密接に連動しています。いくら製品として質が高くても、「現地目線」がなければ持続的に売れません。これも、海外マーケットでなかなか一定のプレゼンスが確保できてこなかった一つの理由だと思います。
──つまり、日系メーカーは「ガラパゴス化」によって競争力を失ってきたと。では、マクロの観点ではいかがでしょうか。
高橋:これは創業者である松下幸之助の言葉ですが、「1つの商品・事業の寿命は25年」という言葉があります。家電事業においても、一定の事業サイクルの中で、過去の成功体験をなぞるだけのスキームとなっている商品には、やがて寿命が訪れるということなのだと思います。世の中が変化しているにもかかわらず、お役に立つ領域や方法を変えず、同じことを続けるだけでは勝負に勝てません。業界全体が生まれ変わるサイクルが、ちょうど来ているのかもしれませんね。
「パナソニックの技術」は世界のカーメーカーのパートナー
──その中でパナソニックは海外売上が3.6兆円超、純利益でも2012年から増益傾向を維持しており、確実な成長を続けています。その主な要因と、今後の成長戦略を伺えますか。
高橋:家電事業とパナソニック全社について、それぞれ説明します。まず家電事業では、中国やアジアを中心に現地に権限移譲し、開製販の一貫体制を現地に確立することにより、国・地域に根ざした商品開発ができるように変化してきました。また、日本などの先進地域については、プレミアム家電を訴求することにより、好調を維持しています。
──日本の家電事業が苦況に立たされる原因となっていた「製品のコモディティ化」と「現地目線の欠如」の解消に取り組んだと。では、全社の観点ではいかがでしょうか。
高橋:パナソニックが全社として着実に成長できつつある要因は、これまでコンシューマー事業で培われてきた技術・ノウハウを生かしながら着実にB2B事業を伸ばしているからだといえます。その中でも、とりわけ車載事業は今後も大きく伸びていく可能性があります。電動自動車のコアである車載電池に関して言えば、テスラ様への車載電池供給を皮切りに、今後はトヨタ様など多くのカーメーカー様とも関係づくりを進める予定です。
──確かに、車載電池を含むモビリティ関連事業(※)は、2017年度第三四半期の実績でも売上高が昨年比16%増の2兆円と、非常に好調です。その点、カーメーカーやその子会社ではなく、パナソニックだからこその提供価値はどこにあるのでしょうか。
(※)オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社の売上
高橋:自動車の電動化が急激に進む中で、我々のようにエレクトロニクスメーカーとして専門的な技術とノウハウをもった会社が貢献できる幅が増えています。今までは「サプライヤーの1社」的な位置付けだったところから、車の電動化に伴いパートナー的な立ち位置になる可能性も充分あると考えています。また、世界中のあらゆるカーメーカー様とお付き合いさせていただけるというポジションであることも強みです。欧米から日系メーカーに至るまで、様々な企業とコラボレーションしていくチャンスがあります。
──先ほど話に上がった協業はその一例ですね。その他に、パナソニックならではの成長戦略はありますか?
高橋:事業領域の圧倒的な広さを最大限に活用していくことです。収益の柱を複数持つことで企業の安定性を保ちながら、車載電池のように成長の種となる新規事業に投資を進めることができます。
また、現在当社では「クロスバリューイノベーション」をテーマに経営を進めおり、近年効果が出始めています。これは社内の4つのカンパニーと、その下にある35の事業部が、それぞれ持っている固有の技術や強みを掛け合わせて、新しい商品や事業を生み出していくための仕組みで、例えば「住空間を快適にする家電のノウハウを車内空間の快適さに応用する」というようなことです。各事業が培ってきた技術やノウハウの掛け合わせが、新たな事業を創造するという、当社ならではの強みがこれからの事業展開においてもキーになるのではないかと思います。
1年目から海外勤務、社内公募で年間500人が異動
──好調の理由が明らかになったこところで、パナソニックでのキャリアや働き方に論点を移そうと思います。一部の学生にとって、家電業界は「若手の活躍機会は限られる、年功序列のキャリア」「製品の専門性が高く、部署間の異動は難しい」といった印象があるようです。一貫して人事を担当されてきたご経験から、それぞれの実情を伺えますか。
高橋:若手の活躍という観点では、新卒間もなく海外勤務という事例もあるので、状況は皆さんのイメージとはかなり変わってきていると思います。昔は「国内で経験を積んでから」というある種の手順を重視することもありましたが、現在はその人のスキル・専門性そして熱意が、会社の求める基準を満たしていれば、例えば最初からインドや中国という今後の成長が見込める国・地域で経験を積むキャリアも十分にあるでしょう。
国内のキャリアに関しても、配属〜入社というキャリア形成初期から計画的な育成とローテーションを行う仕組みと成長機会の提供により、早期のタレントマネジメントを実施できるようになっています。その結果として、これまでよりも若年期でマネジメントポジションに着くことも増加しています。また、35の事業部が数多くの主力製品を持っているメーカーですから、若手に企画から販売戦略まで一貫して任せるようなチャレンジングな機会を得るチャンスも多くあります。
──成長の機会はかなり多いといえますね。ではもう一点の、配属や部署異動という点はいかがでしょうか。
高橋:選考面接時および内定後の配属面談を通じて、入社前にはカンパニーと職種を第三希望まで聞き、本人の意向と会社として見極めた適性を合わせ、ミスマッチを避けています。入社後は、ローテーションも積極的に行っています。当社の「ローテーション」には大きく3つの種類があります。1つ目がリソースの適正配置としてのローテーションです。成長事業に対して適切なリソース(人材)を厚くしていくことは往々にしてあります。2つ目が育成のためのローテーションです。本人のキャリアや今後の成長に必要な適度なストレッチの場を提供し、育成を図るローテーションです。
──これら2つは、本人の意向もある程度踏まえつつも会社側からローテーションの機会が与えられるケースですね。自らローテーションを行うことは可能なのでしょうか?
高橋:可能です。それが3つ目の種類に当たる自発的ローテーションで、当社では「e-チャレンジ」等の制度があります。「e-チャレンジ」は、いわゆる社内公募制度で、公募されているポストに自ら申告し、面接等を経て認められれば異動できる仕組みです。上司の承認や煩雑な手続きに悩まされることもないため、多くの利用実績があります。具体的には年間500名近くが、この制度を使って新しいキャリアにチャレンジしています。募集されるポジションはさらに多く、年間1,000件以上の募集があります。その他、自分が働きたいポジションに直接自らのスキル・熱意を訴求し、異動する「e-アピール」という制度もあります。
──それは興味深いですね。社内公募やローテーションの制度のある会社は珍しくありませんが、ここまで活発に運用されているのは珍しい例といえますね。2018年2月末には、パナソニックは「日本人が働きたい企業ランキング」で首位に輝いています。得票の理由は革新的な技術や製品ですが、それも人材ありきです。巨大な組織だからこそ、適切なアロケーションがなされる工夫があると。
「新たなメーカーのカタチ」を目指し、求めるのは志と多様性
──最後に、パナソニックの採用についても伺います。これから採用活動が本格化していく中で、今後会社を背負っていく若手に求められる素養とはどういったものなのでしょうか?
高橋:私たちは今年の採用テーマとして『志と多様性』を掲げています。まず『志』について、パナソニックは事業領域も広く成長のチャンスも多い会社ですが、逆に言えば漠然とした気持ちで入社しても得られるものは少ないかもしれません。「事業を通して社会の役に立つ」という経営理念に共感しつつ、その上で自分なりの志を持つ、あるいは志の芽を持ち、発芽させていく熱意ある学生に来てほしいですね。
──『多様性』についてはいかがですか。ダイバーシティは多くの企業が採用で意識する点ですが、パナソニックではどのような狙いで掲げているのでしょうか。
高橋:次の100年に向け、当社は今後益々変化を遂げ、世の中に新しい価値を提供できる会社に常に生成発展していくことが求められています。これから入社する方が中核になる頃の当社は今と全く違った姿になっているかもしれません。それを実現していくためにも、さまざまなバックグラウンドを持ったまさに「我こそ◯◯」という学生を求めています。多様性と言うと、属性的な多様性ばかりに目が行きがちですが、ここで言う多様性はまさに「一人ひとり」です。
──パナソニックの新卒採用では『事務系職種』と『技術系職種』を募集しています。それぞれに求められるスキルや資質にはどのような違いがありますか?
高橋:あえて事務系・技術系を区別して、プラスアルファとして欲しいという視点でお話すると、まず事務系の職種に求められるのは、月並みかもしれませんが「コミュニケーション能力」です。「類まれなるコミュニケーション」と言っても良いかもしれません。これは決して、明るくて話すのが上手というようなことだけを指すわけではありません。本質的にコミュニケーションを図るためには、相手を理解する能力や空間をつくる能力など実に多面的なスキルと人間性が求められます。私たちメーカーの特徴として、商品を企画して、それを開発し、お客様に届け、さらにフィードバックをもらいながら、新しい企画を考えるという、ものづくりの一連のサイクルをすべて一貫して経験できるというものがあります。事務系職種はそんな各プロセスをいかに繋いでいくかを考えることも多くなる職種ですので、社内外問わず、人と人を繋ぐ力が必要となるのです。
技術系職種の場合は、当然大学で学んできた専門的な技術や知識をベースにしつつも、事業家マインドも持ち合わせて欲しいと考えています。パナソニックは、常に新たなビジネスを興していくことが求められる会社です。また、お客様視点も常に必要です。当社には「一商人たるの観念を忘れず」という創業者の考え方があります。「商人」と言うと、事務系職種のみの印象を持たれるかもしれませんが、技術者を含めた全社員に求められるものです。まさに「技術者だから技術だけを磨けばいい」というわけではないということです。このような考え方を持てば、自身の成長ステージとしてさらに新しい可能性も見えてくるでしょう。
──それでは最後に一言、就活生にメッセージをお願いします。
高橋:就活にはぜひとも真剣に向き合ってほしいですね。「何のために仕事をするのか、何のために就職するのか」ということを自分自身に問いかけ、その答えを追い求めてください。そうすることで、自分にふさわしい企業が浮かび上がってくるものです。同時に、変化に対する勇気を持つことも大切です。コンフォートゾーンに留まり、環境を変えたくないという人も多い一方で、成長のためにはどこかで変化をする覚悟が必要だと思います。「今の自分でいいのか」ということも問いかけてほしいですね。どうか変化を恐れずに、積極的にチャレンジしてみてください。
──ありがとうございました。
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