はじめまして、現役戦略コンサルタントの秋田(@akita_consul)と申します。
普段は働きながら、Twitterで名も知らぬ学生からキャリアやコンサルについて質問を受け続ける日々。ふと質問に答えているうちに気づいた学生へ伝えたいメッセージを胸に、ワンキャリア様に場をお借りしてモノ申させていただきました。ご笑覧いただければ幸いです。
「匿名質問サービス」が就活業界で火がつき始めている
皆さんはAsk.fm、Peing -質問箱- などの「匿名質問サービス」を知っているだろうか。
もともとはTwitterなどのSNS上で匿名の質問に回答できるものとして始まったサービスなのだが、ここ数カ月で外銀・戦コン・商社などなど、普段はなかなかお目にかかれない業界の人間がこぞって質問に応える「Web上のOB訪問」ができるサービスとして人気を高めつつある。
私も恐縮ながら日々学生からの質問に答えさせていただいているが、何百件と質問を回答してきて見えてきた「質問に必要な要素」を、
今回は『社会人へ質問をする全国の就活生』、
とりわけ、
『コンサルや元コンサルに質問をしたいあなた』に向けて伝えたい。
「匿名」に胡坐をかいた、くだらない質問の数々
私の質問フォルダの中は「匿名」に胡坐をかいたくだらない質問が日々送られてくる。「匿名」をいいことに、不遜であったり、内容も要領を得ない投稿が何度もだ。
それらの質問は大まかに以下のものに分けられる。
1)考えたら分かる質問
例:「TOEICハイスコア/簿記/留学経験/プログラミング知識……は必要ですか?」
2)聞いて何の意味があるのか分からない質問
例:「(他業界)ってどう思いますか?」「何歳ですか?」
3)そもそも質問ではない誹謗や中傷
例えば以下のような質問が以前あった。これがなぜ「いけてない質問」か分かるだろうか。
この質問は、
・曖昧な表現
「スコア取得が必要」なのか「ハイスコア取得程度の能力が必要」なのか分からない
・情報不足
評価される英語力は目指す業界、企業による
・推測で分かる一般論
ハイスコアは持っていて損はないがそれだけで決まる企業も稀
など、さまざまな点で回答者から見て「いけてない」質問だ。
また、このような質問ならまだ紹介出来る程度のものであり、実際にはより横柄で意味の分からない質問が投げつけられる事も多い。
これらの質問は私以外の回答者の方も受けていると思われるが、せっかくの機会を「匿名」を盾にした程度の低い質問で浪費してしまうのはもったいない。
必要なのは社会人の脳を刺激し、「議論を呼び起こす」要素
では、何が「いけてる質問」(=良い質問)なのか?
思うに、良い質問とは「社会人の脳を刺激し、『議論を呼び起こす』もの」だ。
私がこれまで受けた質問の中で最も答えに窮した(窮している)質問を2つ紹介したい。
質問例1:キャリアにおいて「コンサルタントであること」をどう捉えるか
挑戦的だが、良い質問だ。「自分が今、コンサルを行う意義とは何か」に対して明確に答えを持つコンサルタントは少ない。
この質問は言い換えるなら、
「少々優秀だっただけの『元』就活生」を炙り出す質問
ということになる。そもそもコンサルに就職した人間には「キャリア上のモラトリアムを延長するために競争した、少々優秀だっただけの『元』就活生」が多い。大企業の未来を描く手伝いをする戦略コンサルタントといえど、自分のキャリアの将来像すら持っていない人間ばかりなのだ。
コンサルティングファームは、
・内定者時代は自分の転職価値に安心や承認欲求の充足を感じてポストコンサルの進路について思考を放棄し、
・入社後は日々の仕事に忙殺され、
・結果として「自分のしたい仕事とは何か?」を本気で考える時間もなく年を取っていく
人で溢れている。
実際に若手コンサルに飲みの席で話を聞けば分かると思うが、「テキトーにこのファームで3〜4年程度働いたら事業会社の経営企画かファンドに行きたい。ベンチャーも楽しそう」という、志望動機が詰められていない就活生のような答えが返ってくる可能性も高い。そんなコンサルタント達のリアルな悩みを知った、脳を刺激させられる良い質問と言えよう。
質問例2:「コンサルティング」は何を指すのか。業界の変化とどう向き合うか
「思考停止コンサル」の脳を再起動させる質問。これもまたいい質問だ。
コンサルティング観について個人で定義できているコンサルタントは多くない。
入社直後から膨大な量のノウハウを積み込まれる研修や息をつく間もなく案件をこなす日々で、そもそも「コンサルティング」とは何か、自分が行うべきコンサルティングとは何なのか、社会にとってどのような意義を持っているのか……などについて曖昧な認識のまま過ごしている「思考停止コンサル」は数多く存在しているからだ。
また、業界全体の変化についてもコンサルタントの中ではかなり意見が分かれるので、ヒートアップしがちな論点であると言えよう。
このように、「人によっては意見が分かれ、議論を巻き起こす要素」を持つものが質問として望ましい。意見が分かれ、価値観がぶつかる事で双方の考えを深められるからだ。
今回は私がコンサルティング業界に属するのでコンサル業界の質問例を挙げたが、どの業界でも優れた質問の本質は変わらない。
・事前にできる限り業界知識を収集し、
・回答者がキャリア上どのような点に関心があるかを推察し、
・議論が巻き起こる起爆剤となる言葉を、仮説と共に投げかける
そんな質問が「良い質問」と言えるのだ。
匿名質問サービスで質問を重ね、面接で社会人を逆評価せよ
ここまで読んでくれた方は匿名質問サービスなどを活用して答えに窮する質問を研ぎ澄まし、面接の場で社会人の逆評価をするためのツールにしてもらいたい。
コンサルの面接における逆評価の基準を伝えるなら、答えに窮する質問に別の新しい切り口・深い示唆を提示できるのは「良いコンサルタント」であり、答えにくい質問と見なして煙に巻くのは頭を使わない「えせコンサルタント」である。また、これは余談だが、コンサルタントとは変わった種族であり、自分を面接で論破できた人間を「優秀」と評価する者が多い。試さない手はない。
内容や言い方には重々気を付けつつ、「良い質問」で社会人を刺してみてはいかがだろうか。
※こちらは2018年9月に公開された記事の再掲です。
(Photo:TierneyMJ/Shutterstock.com)
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