「数を稼げ」か「量より質」か。就活の正解はどっち?
前回の記事では、「内定を持つことで新たな内定を生みやすくなるスパイラル」について述べた。
読者の皆さんからポジティブな反応が多かった一方、「それは分かったから、どうやったらその内定取れるか教えてくれよオイ」という心の声も筆者のもとに多数寄せられている。
本記事では、焦る学生の皆様へその回答をお伝えしようと思うが、その前にクイズを。
どうか焦らず、以下の2名のアドバイスのうち、どちらが正解か考えてほしい。
A先輩:就活は数だよ数! 回数を重ねて経験を積みながらやるといいよ!
B先輩:1社1社深く企業分析して、数より質を重視するといいと思う。
さて、あなたはどちらのアドバイスが正しいと思うだろうか? あるいは自分ならどちらを選ぶだろうか。
連載:「就活工学」シリーズ
第1回:熱い志望動機が生む「非モテ」の悲劇
第2回:「内定が内定を生む」内定スパイラルの秘密
モテも内定も、試行回数とヒットレシオの掛け合わせ
答えの前に、恋愛工学における美しきモテの恒等式を紹介したい。
モテ=試行回数(アタック数)×ヒットレシオ(f)
※ヒットレシオ=f(イケメン度、金持ち度)
これがモテの恒等式、スタティスティカルアービトラージ(統計的アプローチ)だ。
分かりやすく言うと、モテ度は異性に声を掛ける回数と、その成功率の掛け合わせで決まり、成功率はイケメン度と金持ち度により決まるということだ。
一見当たり前だが、この恒等式に込められているのは、試行回数と成功率の両輪を見る必要があるということ。特に本連載がオマージュしている小説『ぼくは愛を証明しようと思う。』の主人公が最初そうだったように、初心者がいきなり小手先のテクニックでヒットレシオを高めようと思っても、すぐに改善できる可能性は限りなく低い。そのため、試行回数がより重要な指標になるのだ。
では、恋愛のスタティスティカルアービトラージを就活に当てはめるとどうなるか?
こんな恒等式になるだろう。
内定=試行回数(エントリー数)×ヒットレシオ(f')
※ヒットレシオ=f'(実績・学歴、人間性)
説明するまでもないかもしれないが、恋愛と同様に、就活も試行回数とヒットレシオを高めていくことが基本戦略となる。恋愛同様、ヒットレシオの改善がすぐにできるに越したことはないが、難しいことの方が多いため、まずは試行回数が大事になるのだ。
そのアドバイスは「君にとっての正解」か?
クイズの正解はもうお分かりだろう。
A先輩とB先輩のアドバイスのどちらが正しいかの答えは「ヒットレシオによる」だ。
例えば東大理三で学生時代に輝かしい実績を持っているC君と、それほど偏差値も高くない大学でサークルの副代表をやっていたD君で、どっちがヒットレシオが高いかなんて言うまでもないだろう。
なので、ヒットレシオが高いC君にとって「そんなにたくさんの企業を受ける必要はないよ」というアドバイスは正解でも、D君にとっては不正解であり、数をこなすことが必要となる。
目指す企業のレベルと競争相手になる他の学生を鑑みて、スペックが特別優れた人を除き、この記事の読者はヒットレシオが著しく高くないD君タイプが多いだろうと想定している。まして、この時期の20年卒だとすると、それほど就活に慣れていない学生も多いのではないだろうか。
ならば…………上述した通り、就活工学の真骨頂は、とにかく試行回数を稼ぐこととなる。
非モテ回避の基本戦略は数! 数! 数!
「何だ、数か。結局当たり前のことじゃん」
と思うだろうか。侮ることなかれ。
これをおろそかにして選考に落ち続け、「非モテ就活生」と化す高学歴系就活生がどれだけいるか。
・ベンチャーとか日系大手とかオワコンじゃね? 外資とコンサルしか俺受けねーわ
・説明会とかインターンとかもうちょっと就活を勉強してからにするわ
・何か一生懸命「就活」してるけど? 就活ってなんなのダッセw
・数受けるのもいいけど、一社一社企業研究しなよ
・内定もらっても行かないような企業にエントリーしてどうするの?
・就活って何からしたらいいか分からない。誰かと一緒に説明会に、、、
こう思っているあなたはかなり危険だ。耳が痛い人もいるのではないだろうか(めいこさんの渾身(こんしん)の記事でも触れられていたので併せて見てほしい)
圧倒的(※)なスペックや実績を持っていない学生は、数! 数! 数! これはベースにすべきだ。
(※)「圧倒的な」という言葉も絶対的な基準があるわけではなく、労働市場における他の就活生との競争になる。その競争において「圧倒的」という意味だ。
非モテ代表は「中堅学部」で「量より質」の高学歴系就活生
筆者が特に「気をつけた方がいい」と思っているのは、早慶のような上位大学の、中堅以下の学部にいる高学歴『系』就活生だ。
同じ大学でも学部ごとにヒットレシオは異なるにもかかわらずコミュニティは同じなので、例えば「エントリー数は不要だ」という戦術が共通だと思ってしまう。しかも、学歴にそれなりの自信を持っているから、難関企業にただでさえ少ないエントリーを集中させる。
だが、難関企業の競争相手は、同じ大学の上位学部や東大の学生くんたちだ。自身の実績で彼らに勝てるかはよく考えた方がいい。
少ないエントリーを難関企業ばかりに集中させ、選考に落ち続けた結果、君はどうなるか?
自信を喪失し、非モテ就活生の代表となる。
これは何を隠そう、筆者自身が経験した恐怖だ。内定のための一丁目一番地である「自信」を、エントリー数(とその選び方)をおろそかにした結果、損なってしまうのだ。
内定スパイラルは豊富なエントリーから生まれる
もし豊富にエントリーをしていれば「まー、ここが駄目でも他に選考が進んでいる企業もあるし、どっか受かるか」という余裕が生まれる。この自信が内定スパイラルにつながる。
長くなってしまったので、ここで前回と合わせて「非モテ就活生の回避法」をまとめてみたい。
1. 非モテの原因は自信がないこと
2. 自信をつけるためには「内定」が必要
3. 内定にはスタティスティカルアービトラージが必要
4. 大切なのは試行回数とヒットレシオ
5. ヒットレシオが高いハイスペ以外は数!
とにかくまずは数を稼ぐ!!
筆者が隠した嘘ではないが本当でもないこと
最後に。勘の鋭い読者ならお気づきかもしれないが、この記事を本文のまま捉えると、「モテや内定は試行回数とヒットレシオの両輪だ」と言いながら、試行回数以外に自分でコントロールできる領域が少ないと感じるかもしれない。
筆者も先に認めておくが、この記事では一部「本当のこと」をあえて言っていない。
何が「本当のこと」でないか?
次回の記事「Easy Win First」を楽しみにしていてほしい。