こんにちは、ワンキャリ編集部です。
3月を迎えたものの、例年とは大きく違う状況で、旅行や行事がなくなり、就活もオンライン……などなど、家で過ごす時間が長い人も多いのではないでしょうか。
そんなときこそ、「ワンキャリ文庫」!
ワンキャリ編集部が、就活やキャリア選択を手助けする書籍を厳選してお届けする本シリーズもついに3本目です。
今回は、第2回に引き続き実際のコンサル内定者本人たちが、コンサル志望なら必読の「バイブル」や、実際に内定に役立った者・内定者向け書籍を2冊を要約・紹介します!
実際の内定者本人たちが自分の経験を踏まえながら、書籍から学ぶべき視点や就活に役立つポイントを解説。「この本を読むと、どんな思考が身につくのか」をより深く理解できるのではないでしょうか。
動き出した本選考や迫る入社を前に、「準備はしたけど、もう一歩リードしたい」「改めて勉強しておきたい」と感じている人は、ぜひ参考にしてみてください!
「イエス」を引き出す秘密とは?人間の本能を読み解く1冊
まず紹介するのは、『影響力の武器』。
社会心理学者として数多くの業績を残し業界を席巻してきたロバート・B・チャルディーニの名著です。
そんな本著を紹介してくれたSさんは、「人間の本能」を言語化してしまったという恐るべき彼の書籍から、コンサルに限らずどの業界でも必要な考え方を学んだのだとか……。
誠信書房
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推薦者Sさん:21年卒でコンサル志望。ロールキャベツ型男子を自称。某外資コンサルの内定をサクッと獲得しながらも、彼の就活はまだまだ続く。就活を愛しているとのことだが、その理由は「キレイな人事とたくさん会えるから」とノーロジカル。好きな選考は個人面接。
「人の本能」を活用して行動を操る
「論理的かつ正当な発言をしたのにもかかわらず、周りの人が賛同してくれない」
多くの人が、このような状況に悩んだことがあるのではないでしょうか。僕もその1人です。
『影響力の武器』では、多数の実験を通して「人間がどのような事実に基づいて無意識下に行動してしまうのか」を分析しています。
以下では、その分析を元に、チャルディーニが言語化した人間の行動心理の一部に関して紹介していきます。
相手のイエスを引き出すための行動4選
1. 返報性の心理
まず紹介する方法は、「あなたが最初に相手にとって利益のある行動すること」です。
チャルディーニによると、行為の受け手(take)が将来それに対してお返し(give)をすることを義務づける人間心理が働いているといいます。
ホワイトデーのお返しもそんなところある……かもしれないですね。
返報性が多くの人に機能する条件
(1)「いただいたらお礼をする」ギブアンドテイクの価値観が染み付いている日本文化
(2)ギブアンドテイクを成立させなければ、社会から不承認を得るリスクがあること
2. 自身の言動に一貫性を保とうとする心理
2つ目の方法は、「議題における相手の立場を明確にさせることで、立場に沿った要求に応じさせる」ことです。
多くの人は「自分の言葉、信念、考え方、行為を一貫したものにしたい」もしくは、一貫して貫くことで、「洗練されている人物として他者に認知されたい」という欲求があるのだとか。これは、その心理に働きかける方法です。
「男に二言はない」みたいな話でしょうか。性別は関係ないですが、意見がフラフラして定まらない人よりも、芯のある人の方が信用したくなるし、人間として魅力的ですよね。
相手に承諾をさせやすくする方法
(1)最初に相手側にスタンスを取らせること
人は、一度示した自分の言動に一貫性を持たせようとする本能がある
(2)まず軽い要求を承諾させ、そこに大きな要求を重ねること
人は自分の意思決定を正当化する傾向がある。たとえ大きな要求への承諾が誤りでも前述の意思決定を貫くために正当化する理由を探す
3. 好意を感じている人に対してイエス心理
続いて3つ目は、「相手のあなたへの好感度をあげること」です。
チャルディーニは、多くの人は自分が好意を感じている人に対してイエスと言ってしまう傾向があると述べています。また、ここに現れている本能心理として、自分と同じコミュニティに属する人や似た考えを持つ人をひいきすることもあげられます。
相手から好意を得る方法
(1)身体的魅力
身体的な美しさは社会的相互作用の中で有利にはたらく。それはその美しさがハロー効果を生じさせ、才能や親切さ、知性など、その他の特性に関する評価を一段と上げる利益をもたらす
(2)相手への同調発言
私たちは自分と似た意見を持つ人に対して、好意を持つ傾向が強い
(3)相手への称賛発言
お世辞は一般に好意を高め、承諾を引き出しやすい
(4)単純接触回数
人と接触を繰り返しなじみを持つようになると、大抵の場合は好意を促進する1つの要因となる。一方で接触すること自体は好意を得るものではなく、好意を抱いている場合にその程度を促進するものである。
4. 権威への自動服従心理
最後に紹介する方法は、「相手にあなたの権威を感じさせること」です。
本著によると、人間は「本当の権威者は優れた知識と権力を持っているため、そうした人の命令に従うことが適応的な行為である」と認識している割合が高いといいます。
一歩間違えばパワハラになりかねない手ですが、確かに上司や見るからに目上の人の要求に対して「ノー」というのは難しいものです。
権威を他人に感じさせる3つの代表的要素
(1)肩書
(2)服装 (時計、カバン、靴など)
(3)自動車
日常生活での「実験」のススメ
さて、ここで私がこれらの行動心理学を元に実行した経験をお話しさせてください。
私は数カ月前に、あるインターンの選考会に参加しました。
その選考会では10人1グループでディスカッションが行われたのですが、なんと通過できるのは2グループに1人!!!
倍率約20倍の選考を見事通過したメンバーは、「相手の意見が間違っていても否定せず尊重することで、自分の味方にする」という「返報性」と「好意」の2つを自然と活用できている学生でした。私も、もちろん通過しています。
……するとどうでしょう。私のことを、「倍率20倍の選考に通過した学生」と認識したのではないですか?
これも「権威」のアピールの1つかもしれませんね(笑)。
ここまで、他人からイエスを得るための行動心理学について説明してみました。
コンサルタントを目指す皆さんは、クライアントである企業の経営者に対して調査結果を報告したり、経営方針に関して助言したりすることが求められています。
一方で企業経営者は、つい数カ月前に企業について調べ始めたあなたの意見なんか聞いてくれない可能性もあります。
そんなときにこそ「人間の本能」に訴えかける今回の心理学を思い出してください。
「素晴らしい! あなたの意見に同意するよ」
と声を掛けてくれる経営陣が増えるかもしれません。
全てが詰まった1冊。「ロジカル」に迷ったらこれを読め!
コンサル向け書籍最後の1冊は、論理的に考えられるようになりたい、説得力のある話ができるようになりたい、などのニーズを持つ新社会人や若手向けの定番、『ロジカル・シンキング』。
東洋経済新報社
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「◯◯社の人から、あの案件の返事もらってきて。今日中ね。」
ビジネスの場では、業界も職種も関係なくさまざまな場面で「相手から欲しい反応を引き出す」スキルが役立ちます。
本著では、そんなビジネスパーソンに必須のコミュニケーション方法が解説されています。
解説者のNさんは内定後にこの本を読んだそうですが、選考内で社員が語ったアドバイスと通ずる内容が多く、驚いたそうです。
推薦者Nさん:20年卒。日系大手志向の就活をしていたが、3年12月に外コンのセミナーにたまたま参加し一目ぼれ。趣味はサッカーの戦術分析をゲームに落とし込むこと。
「メッセージ」とは何か
「相手を説得し、自分の欲しい反応を相手から引き出す」
一見難しそうに見えますが、ビジネスの場おけるコミュニケーションでは常にこのスキルが求められます。
本著で解説されるシンプルな方法とは、一言でいえば「メッセージ」を伝えること。
さて、ここでいう「メッセージ」は、以下の3つの要素で成り立っています。
(1)「課題」
(2)「答え」
(3)「自分が相手に期待している反応」
あなたが何か話す時、それを聞いた相手が「こういう課題があって、この人はこう考えていて、自分にこうしてほしいんだな」というところまで理解してくれていれば、この要素を満たしたメッセージを伝えられているといえます。
日常の簡単なコミュニケーションの例で考えてみましょう。
メールで、仲の良い上司をランチに誘う場面を想像してみてください。
「相談があるので3月中にランチに行きたいです!」
これだけだと「課題」についてしか言及されていないので相手は「分かった」と反応することしかできません。
メッセージとしての役割を果たすためには
課題……相談があるので3月中にランチに行きたいので日程を決めたいです。
答え……私は毎週月曜日と水曜日が空いているのでそのどこかを希望しています。
相手に期待する反応……できるだけ早い日程で空いている日を教えていただきたいです。
と送れば最終的に自分がどんな反応をすればいいのかが上司に伝わりやすいですよね。
では、早速それぞれの要素をどうやって満たしていくか、考えていきましょう。
「課題」「自分が相手に期待する反応」の2点を明確にし、最後に「答え」について考えていきます。
1.「課題」を確認する
まずは課題です。簡単に言えば、話し合いの議題や現状の問題は何かということです。「『課題』は何か」について文書を書く際や会議中に、繰り返し確認し、自分と相手の認識を一致させます。
2.「相手に期待する反応」を確認する
次に考えるべきことは、相手に求める反応です。簡単に分類すると、以下の3つに分かれます。
・「理解」してもらうこと
・「意見や助言、判断などをフィードバック」してもらうこと
・「行動」してもらうこと
自分が相手に求める反応がどれに属するのか認識し、事前に反応を引き出すためのプランを練りましょう。
3. 「答え」の内容を考える
「課題」「相手に期待する反応」の2点を確認して初めて、課題に対する「答え」の中身を考えられます。「答え」には説得力が不可欠ですが、往々にして十分ではないときがあります。
「話の明らかな重複、漏れ、ズレ」や「話のとび」が生じるからです。
これらの問題をなくすための技術が、MECE(ミーシー)とSo What? /Why So? 。この2つの技を駆使することで思考を整理できます。
MECEとSo What
MECEとは、端的に言えば「漏れなく、ダブりなく」という意味です。抽象的な表現かもしれませんが、答えをまず大きな1つのものとしてとらえ、それがどのような「部分」から構成されているのかを考えていこうということです。
日本地図をイメージしてください。北海道、本州、四国、九州と、沖縄などの島々が、隙間なく重なることもなくぴったりと埋まるようになっています。答えを考える際は、意味のある切り口ごとに要素をグルーピングし、全体の構造を見やすくしましょう。
次にSo What? とは、手持ちの材料から「結局どういうことなのか」を抽出する作業です。
例えば、企業説明会で「わが社の行ったアンケートでは、働くモチベーションには美味しい食堂がだと80%の人が答えていました!」とだけ急に言われても、「それで?」と疑問に思ってしまいますよね。
ここで求められているのは、「だから本社に安くて美味しい食堂を新設します!」などの、「働くモチベーションに食堂は大事と多くの人が考えている」というファクトに対する示唆です。
そして、So What? したものに対しては逆に、「なぜそのようなことが言えるのか」と結果から考えるWhy So? と問うことで論理に飛躍がないか確認できます。
これで論理的なコミュニケーションの「部品」はそろいました。しかし、相手に納得してもらうためには「部品」を「論理」の構造に組み立てて示す必要があります。その組み立て方は、下の図を参考にしてください。
論理の基本構造には3つの要件があります。
1.結論が課題(テーマ)の「答え」になっている
2.縦方向に結論を頂点としてSo What?/Why So?の関係が成り立つ
3.横方向に同一階層内の複数の要素がMECEな関係にある
あくまで過不足のない論理であればよいので、上の画像のようなピラミッド構造はできるだけコンパクトにしましょう。
さあ、ここまで読んだあなたは、もう論理的なメッセージを組み立てられるはず!
この技術は、もちろん選考においても非常に役立ちます。
意外にも、話を論理的に整理できていない就活生は少なくありません。友人との面接練習やグループ面接で自分以外の人の面接をいくつか見てきましたが、感情的で中途半端なメッセージしか伝えられていない人に多く出会いました。
例えば、「海外で住んだ経験から、海外で働きたいと思うようになりました。海外で活躍する場が一番多いのが商社であると思ったので御社を志望します!!」とか。
これだけ言われても、あなたが面接官だったら「ふうん。それで?」と思いませんか?
「南米に住んでいた経験から日本の豊かさに気付き、世界中の人に物が行きわたる状態を作りたいと思うようになりました。それに加え、実は父が自営業を営んでおり、自分もその背中を見て育ってきたため会社の経営にも憧れを抱いているんです。以上の2点をかなえられるのが御社であると考え、志望します」
と話した方が説得力がありますよね。
選考というのは結局、面接官に対して自分の「メッセージ」を伝え、相手から自分が思っている反応を引き出せればいいんです。
あるファームの面接担当者も、「話が飛んでいるESや、どのようなメッセージかが分かりにくいESは評価しない」と語っていました。
特に面接では、話を構造化しておくことが役立ちます。
私も就活のときは自分の面接で話す内容を構造化して考えていたので、どんな質問に対しても回答につまることはほとんどありませんでした。
私は就活を終えてからこの本を読みましたが、面接官や社員に言われたことばかりで、正直もっと早く読めばよかったと思っています(笑)。
この本を読み、ロジカルなコミュニケーションを実践することで、ぜひ他の学生に差をつけて就活に挑んでください!
おわりに
ワンキャリ文庫vol.3 コンサル向け書籍編(後編)、いかがでしたでしょうか?
忙しい時期に本を読むのは気合が必要です。
だからこそ、紹介だけでなく解説にもになっているこの記事を、電車の中や寝る前にサクッと読み返してほしいと思います!
詳しい内容を知りたい人は、ぜひ自分でも手に取ってみてください。
これからも、ワンキャリ編集部からおすすめの書籍をどんどん紹介していきますので、ぜひご覧ください!
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(Photo:rezen/Shutterstock.com)