OB訪問体験記
〜あなたの代わりに訪問してみた〜
※ ワンキャリ編集部のライターが就活生の代わりにOB訪問を行う「OB訪問体験記」の連載。今回は、ライター ぷったが商社のOBへ訪問を行いました。
汐留のカフェも昼を前に、少し混雑してきた。
飛び交う英語に負けないよう、声のボリュームを少し上げてみる。
採用される人材像について、もっと知りたい。
Kさんから見る「僕たちの姿」について、深く切り込んでいく。
やりたいことがある人間は商社に来るな
ぷった:D社は新入社員にこのような人材として育ってほしい、というビジョンはありますか?
Kさん:弊社では、「経営人材の育成」が掲げられています。現在、弊社ではグループ全体の利益における事業投資の割合が高まっています。見込みのある企業を買収し経営したり、パートナー企業とジョイントベンチャーを立ち上げたりしています。ということは、買収したグループ会社やジョイントベンチャーの立ち上げが行える人間が必要になりますね。そこに着目して「商社に入れば経営を学べる」と、将来自分で経営したいという願望を持って、弊社を受けてくださる学生さんも結構いるのですが、私は正直、やりたいことがあるなら商社には来ないほうが良いと思います(笑)。
ぷった:えっ。ぜひその理由を聞かせてください!
Kさん:確かに商社では経営を学べますし、規模の小さい子会社が担当の場合は若いうちからその経営に携わることができます。いわば、経営の擬似体験は可能なわけです。だから、学生さんの中には「最初からリスクを取って起業や経営をするより、まずは商社でプレ演習をしてから……」という気持ちで来る方も多い(笑)。でも商社は最初の配属の運次第で、やりたいことがあってもそれと関係のない部署に何年も居続けることになってしまう可能性もある。本当にやりたいことがあるなら、やっぱりリスクを冒してでも「自分がやりたい事業領域を選んだほうが良い」と思います。
商社は「セカンドベスト」なんです
ぷった:特に商社に集まるような優秀な学生は、優秀だからこそリスクを取ることにどうしても躊躇してしまう傾向はあるかもしれませんね。
Kさん:そう、商社は「セカンドベスト」なんです。何でもできるから。でも、やりたいことがある人にとっては「ベスト」ではないんです。仕事のやり方も非常に厳密だし、演習の場として商社を使うくらいなら、若いんだし、もっと最初からチャレンジしてほしい。せっかく優秀なんだから。
草食系就活生が増えている
ぷった:商社を受ける就活生の特徴として、どういった人が挙げられるでしょうか?
Kさん:私が入社した頃は部活一筋の人や学生団体のリーダーなど、優秀かつ華やかな学生生活をおくっていた人が多かったですね。そして「必ず海外で働きたい!」って人が多かった。でも最近は、派手な学生生活を過ごしていなくとも、物事を粘り強く続けて結果を出してきたような人を採用にする傾向にあり、パワーのある学生は少なくなっているように思います。私たちより上の世代って、全力でバカやって豪快に笑っているような、そういうパワフルさがある人が結構いるんです。けれど今の学生にはそれがあまりない。
ぷった:バリバリ派手に働くイメージの商社マンですが、どちらかというと内向的な学生が多くなったということでしょうか?
Kさん:そうですね。あと、一昔前では考えられなかったのですが、「必ず海外で働きたい!」という願望が強くない学生も見かけるようになりました。でも、時代の流れを考えたら仕方ないことだとは思います。優秀さの質が変わっているというか、安定志向の学生が増えています。優秀で先を見通せるからこそ、「リスクを取って一発大きく当てるより、慎重に足場を固めてからその先を考えるようになっている」という感じですかね。商社のような「伝統的な日系企業」に好んで入ってくる人のタイプが今と昔ではっきり変わったのは、そこが大きいと思います。
「光っている」と思う志望動機は?
ぷった:そのような現状でも、Kさんが「光っている」と感じる志望動機には、何か共通点がありますか?
Kさん:そうですね……具体的には次の2点に当てはまることが多いと思います。
1. やりたいことに対する中長期的な視点が明確である
2. 商社でできること・できないことを把握していて、その上で商社を志望している
商社は必ずしもやりたいことができるとは限らない職場ですが、2番目までカバーできている人は非常に少ないですね。
ぷった:反対に気をつけるべき点はありますか?
Kさん:この2点をカバーすることですね。これらがカバーできていないと納得感に欠けます。例えば「将来は、仕事で日本に貢献したいんです」と言う学生がいるが、どうしてそう考えるのかが明確でない人が多い。
こちらとしては学生のモチベーションの源泉を見たいので、日本に貢献したいというモチベーションが生まれた理由がわからないのであれば面接は通らない。どんな理由で商社を志望してもいいが、その理由がキチンと説明できること、を求めている会社です。
ぷった:なるほど、少しずつ商社についての理解を深めることができました。本日はお忙しい中、ありがとうございました。
Kさん:こちらこそありがとうございました。
「どういうビジョンを持って、商社を受けるのか?」
今までと違って慎重派でも採用されるようになった、意外な事実。
僕でも、D社を受けられるかもしれない。
手を振って別れた後も、志望動機について僕は考え続けていた」
▼OB訪問体験記:総合商社シリーズ▼
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【総合商社B社】
就活のホンネ編:「商社の同期には、OB訪問を積極的にしてない人も多くいる」みやけようのOB訪問体験記 Vol.3
仕事のホンネ編:「商社では『自信』が持てないコンプレックスと向き合った若手こそ生き残る」みやけようのOB訪問体験記 Vol.4
【総合商社C社】
就活のホンネ編:「総合商社は『保守的な選択肢』に見える」みやけようのOB訪問体験記 Vol.5
仕事のホンネ編:「『組織』より『歴史』を重んじる文化なんです」みやけようのOB訪問体験記 Vol.6
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就活のホンネ編:「やりたいことがあるなら商社に来るな」OB訪問体験記Vol.20