前職の後輩の一人から、「会社を辞めたいが迷っているので話を聞いて欲しい」と連絡がありました。実はこういう連絡が、よくあります。
彼は、会社がつまらなくて毎週月曜が辛過ぎて、いや日曜の夕方から辛過ぎて死にそう、とのことでした。ゴリゴリのプロサラリーマンをやった後に会社を辞めたKumagaiさんなら、何かサラリーマンを辞める決心をする為の、背中を押してくれるような気の利いた一言を言ってくれるだろうと、そういう期待を込めて連絡をしてくれたのだろうと想像します。
しかし、会社員生活に不満があるのは充分に分かるものの、不満を感じているからと言っていきなり「サラリーマンという働き方」自体を否定するのはいくらなんでも飛躍し過ぎではないか、と思うんです。
自分の、職場の環境を改善する為に出来そうなことを全てやった上で、その上で「サラリーマン」という就業形態自体に問題を感じるに至ったのか。徹底的に、色々と試してみたのか。
いや、個人的には、サラリーマンって、考え方次第ではサイコーに楽しい働き方だと思うわけです。
というわけで、誠に僭越ではありますが、連絡をくれた彼に、いくつかプロアクティブな提案をさせて頂きたいなと思います。
手始めに
まず、若手が漠然と仕事に対して嫌な気持ちになる原因の1つには、「職場での人間関係」があるんじゃないか、と思います。例えば、上司が怖い。ストレスフルである。
しかしよく考えて下さい。怖いと言っても、何も彼はナイフで刺してくるわけでは無いし、親族を撲殺してくるわけでもない。怒られたりプライドを傷つけられたり、何やかんやされる状態が嫌で、勝手な想像で「怖い」という感情を自発的に作り出しているのが本質ではないかと思うんです。怖いと思うから怖い。全ては、捉え方次第。
というわけで、先ずは上司に対して変な恐怖を感じないよう、上司にアダ名を付けるところから始めると良いと思います。「ウサたん」でいきましょう。ウサたんがどんなに怒ってても、可愛いものです。
さらに上司よりも上の、部長クラスの人はもっと怖いでしょうから、もっと可愛いあだ名を付けてあげることが大切です。部長のことは、「ピコピコ☆ラブリン☆キューティクルちゃん」と呼びましょう。ピコラブちゃんです。ピコラブちゃんと呼んだ瞬間、感じる必要の無い不必要な恐怖は、瞬く間に消えます。
次長は別に元々怖い存在ではない思いますので、もう彼にはどんなあだ名を付けてあげても大丈夫です。「スギタ☆ゲンパク」でいきましょう。全く杉田でも、全く玄白でもないのに、スギタゲンパク。何の意味もなく、「あ、ゲンパクさん、照査の件なのですが…」と話しかけるのです。
もしも貴方よりも更に下の、新入りの後輩がいるのであれば、その後輩に対しては、積極的に距離を縮めるようにしましょう。後輩との距離を詰め、後輩と極端に良好な関係を築けば、職場はさらにストレスフリーになります。新人が入ってきたらいきなり「マイメン」と呼びましょう。もう少し仲良くなってきたら「マイメロちゃん」にしてみましょう。
なお、職場における自分のあだ名は、「天照大神(あまてらすおおみかみ)」にするべきです。天照大神は日本の様々な神様の中でも最高位にあたる神で、太陽の神様です。ヒラ社員の貴方が、突然、地球を照らす神となるのです。「あ、僕小学校の時から天照大神って呼ばれてるんで。」と何食わぬ顔で発表すれば、相手もそう呼ばざるを得ません。貴方は職場で「神」になります。
さて、このように呼び方を変えるだけで職場での気分はだいぶ違ってくると思います。ウサたんから天照大神に降って来た仕事を、天照大神がマイメンに振る。何て事はありませんね。
そんなウサたんも、ピコピコ☆ラブリン☆キューティクルちゃんの顔色を伺うので必死です。横には、スギタゲンパクがちょこんと座ってます。マイメロちゃんはいつも震え上がってます。恐らく、天照大神にとっては、何のストレスもない職場です。
ウサたんというあだ名をつけるタイミングで、あだ名に関して上司が苦言を呈すようであれば、そこは強気に反論しましょう。
「お言葉ですが、最近の若者は……とか、ゆとりは……とか言う前に、まずは若者の心をガッチリ掴む為、立派なウサたんになってみてはどうですか? 僕たちだって、それが本物のウサたんだと思えばついて行きますよ。」
やたら理路整然と、堂々とウサたんについて説くのです。その瞬間モノホンのサイコパスだと思われ、それ以上の議論は起こらないはずです。
次に、
あだ名を付けるだけである程度気分は変わったと思いますが、まだ会社に行くのが嫌なのであれば、それは何かしら必要以上の、何か不必要な、「しきたり」に近いものが貴方を苦しめているからかもしれません
例えば、取引先とのメールの最初につける「平素大変お世話になっております。」これが貴方を苦しめているのかもしれません。あんなものは何の意味も無いので、さっさとやめましょう
あとメールの最初に相手の名前をつけるあれもやめましょう、ToとCcをちゃんと使い分けて対応すれば大丈夫。あと、メールの最後に送り主である自分の名前を入れるアレもやめましょう。ダラダラとメールを書いてから、最後に自分の名前。相手からすれば「知っとるわアホ」って感じでしょう。どこの大馬鹿者が、最後の最後まで送り主が分からない状態でメールを読むというのか。
あと、カタい表現は、疲れるのでやめましょう。「何卒宜しくお願い申し上げます」だの何だの、ダラダラ書くのは時間の無駄です。意味のないやりとりは、全部やめましょう。徹底的にやめましょう。あと思ってることは取引先であっても、ちゃんと言いましょう。あと、顔文字は積極的に入れましょう。
貴方が今、職場で送っているメールは、こんな感じでしょうか?
タイトル:御見積り価格の件
株式会社熊谷合同会社
熊谷様
平素大変お世話になっております。
先日はお忙しい中貴重なお時間を頂戴し、誠に有難う御座いました。
足元のマーケット状況に関し様々な情報を交換することができ、また御社と弊社との今後の取り組み方針について多角的に議論を進められたものと実感しており、極めて有意義な時間であったと存じます。
さて、ご提案頂きました御見積もりの件ですが、本価格にて進めることが可能か、今一度、上長含め弊社内確認の上、近日中にこちらから折り返しご連絡をさせて頂きたいと思います。
弊社としても、原料コストの高騰による影響もあり採算の芳しくない状況が続いておりまして、苦しい回答となってしまう可能性も御座いますが、何卒ご了承頂ければ幸いです。
今後とも、引き続き何卒宜しくお願い申し上げます。
長文メール株式会社 木村
堅苦しいし、伝えるべき事に比してメール作成に必要な労力がスゴいですね。これでは仕事が苦しくなってしまうのも、仕方がありません……
こんな感じにしてみると良いと思います
タイトル:おは〜!
見積りアザっす。ってか、高っ!!!!(笑)
一回うちのウサたんに聞いてから、
すぐ連絡するね(V)o¥o(V)
とても短くなりました。
打つのが短くなった上に、こちらの思いはよりストレートに伝わっているので、無駄な議論はカットされます。トータルとして結論にたどり着くまでに削減された時間は、計り知れません。
これで少しはストレスが解消されるのではないでしょうか?
さあ、
こんな感じで、窮屈に感じている、嫌だと思っている、オカシイと思っている、なんか気になることをドンドン自分勝手に変えてみましょう。
ネクタイを外し、羽織袴で出社し、RAP調に交渉し、会食は行きつけのBAR。金髪ロン毛のドレッドにピンクのエクステを付けて、鬼殺しのパックのやつをバコバコ飲みながら葉巻きをくわえ、社内で無邪気にミニ四駆を走らせながら、「あ、ウサたんだ! 人狼ゲームしよ〜♡」
すると貴方はやがて天照大神ではなく「クレイジーバッファロー」と呼ばれるようになり、そしていつの日か、「Mr. 懲戒免職」へとそのあだ名が変わっていくでしょう。
こうなれば貴方がもともと抱えていた、「会社を辞めようかどうか迷っている」という謎の悩みは、全くの杞憂となります。迷う必要は全くありません。安心して下さい。クビです。
さて悩める後輩君へ……、これが私の精一杯の提案となるのですが、少しでも助けになれば幸いです。
ちなみに上述の提案はサラリーマンだった時の私が恐怖のあまり試すことの出来なかった偏屈な理想の数々であり、懲戒免職までに綴る数奇な世界は、未だ見ぬユートピアです。
健闘を祈ります。