多くの学生は、企業から「内定」を獲得することを目標に就活をしています。しかし、内定の他にも「内々定」という言葉があると聞いて、不安に思う学生は少なくありません。就活で後悔しないためにも、きちんと内定や内々定についての理解を深めていく必要があります。
こちらの記事では、内々定の意味と内定との違い、内々定に返事をするときのポイントや取り消されるケースまで詳しく紹介していきます。
内々定とは?
まずは内々定という言葉の意味を解説した上で、内定との違いをお伝えします。
内々定とは?
就活における「内々定」とはどのような状態を指すのでしょうか。内々定とは、新卒採用にあたって、内定が内々(うちうち)に決定していることを意味します。「ないないてい」と読みます。
採用が正式に決まる前に社内で決定している状態を内々定といい、さらにその内定が決まっている状態を内定というと分かりやすいでしょう。
内々定という言葉が使われる理由は、内定通知ができるタイミングに決まりがあることが関係しています。一般的に、内定通知が可能な時期は大学4年生の10月ごろです。
したがって、内定が内々に決定していることを学生に通知したいときは、企業は「内々定通知」という形で連絡をします。大学4年生が、10月以前に企業から合格の連絡をもらっているときは、「内々定通知を受け取った」という解釈になります。
内定との違いは?
次は、内定と内々定の違いを見ていきましょう。内定も内々定も、どちらも事前に採用が決まっている状態を指しますが、内定と内々定には大きな違いがあります。
内々定の場合は内々定通知を企業からもらったとしても、労働契約は成立していません。言ってしまえば口約束と同じです。
一般的には「内定承諾書」と呼ばれるものが、内定契約を結ぶための契約書です。企業によっては「入社承諾書」や「入社宣誓書」という呼び方をすることもありますが、同様の書類を指していると考えて良いでしょう。
内定が決まり内定承諾書と呼ばれる書類を採用候補者の学生が確認・記入して返送し、これを企業が受理すると労働契約が成立します。内定通知書そのものに法的効力はありませんが、成立した労働契約には法的効力が発生します。
つまり、内定と内々定に決定的な違いがあるとすれば、「労働契約が成立しているかどうか」という点です。一度労働契約を結ぶと、企業は正当な事由なくして契約を破棄できません。
内々定の返事をするときのポイント
続いて、内々定の連絡をもらったときの返事のポイントを整理していきましょう。内々定は口約束とはいえ、内定につながる重要な決定です。そのため、返事の仕方などのマナーには注意する必要があります。
また、内々定を受けるのか辞退するのかは、状況によって変わってくるでしょう。最低限のマナーを守りつつ、相手に伝わりやすい意思表示を行うことが大事です。
期限内に意思表示をする
企業から内々定通知を受け取ったときは、期限内に連絡をすることが大切です。
最初に、内々定者として選んでいただいたことに対するお礼を述べ、受けるのかそれとも辞退するのか、明確な返事をしましょう。なお、通知の時点で「正直、決めかねている……」となった場合には、保留の連絡もできます。
ただし、保留の可否は、あくまでも企業の判断によります。また、無期限で保留できるわけではないため、保留したいときは保留の可否と返事の期限について確認を取りましょう。
内定を承諾するときは慎重に
内定を承諾するときは、慎重に判断することが大事です。まず、内々定の連絡を受け、入社したい旨を伝えた場合には、内定に向けての手続きを行います。内定にあたっては内定承諾書・誓約書といった書類のやりとりが必要になるケースが多いでしょう。
書類にサインした段階で内定が確定するため、迷っている場合は簡単にサインしないことも大切です。冷静に考えた上で、書類を提出するかどうかを決めましょう。
また、書類の提出には期限が設けられていることが多いので、期限を守って提出することもポイントです。万が一、期限に遅れるようなことがあれば、内定取り消しにつながる恐れもあるため注意しましょう。
内々定を辞退するときのポイント
就活の状況次第では、内々定をもらったものの、やはり辞退したいと思うこともあるでしょう。しかし、せっかく内々定の連絡をもらっていると考えると、連絡の仕方には迷うものです。
そのためここからは、内々定を辞退するときのポイントを解説します。内々定を辞退したいときは、失礼がないように注意しつつ、以下のポイントを押さえて連絡をしましょう。
早めに連絡する
内々定を辞退したいときは、できる限り早めに企業へ連絡しましょう。「気まずい」「正直、面倒くさい」と思っていると連絡が遅れてしまいがちですが、気持ちが固まり次第連絡するのが最低限のマナーです。
辞退連絡が遅くなればなるほど、企業に迷惑がかかってしまいます。特に、10月1日を直前に控えたタイミングで辞退連絡をするのは、マナー違反です。多くの企業は、内定解禁になった10月1日の段階で正式に内定を出すためです。内定を出す直前で辞退したいと言われれば、企業は大切なタイミングで対応に追われます。
すべての企業が、臨機応変に採用人数をすぐ調整できるわけではありません。「辞退するなら調整のために早めに連絡がほしい」というのが企業の本音です。辞退の意思が決まったら、少しでも早い段階で連絡を入れましょう。
メールではなく電話で連絡する
内々定辞退の連絡手段は、基本的にはメールではなく電話をおすすめします。電話をしたときに採用担当者が不在だった場合はメールで伝えるのも方法の1つです。しかし、誠意のある対応を意識するなら、やはり電話の方が良いでしょう。
例えば、メールで連絡をした場合、連絡がうまく担当者へ届かないケースもあります。万が一のトラブルに備えるという意味でも、辞退の連絡は電話で確実に伝えるのが望ましいです。
また、内々定までに多くの方にお世話になってきているのも事実です。電話のほうが辞退の連絡とともに感謝の言葉も伝えやすいものです。電話をするときは、お昼休憩の時間や出社してすぐの忙しい時間帯は避けるようにしましょう。
内々定が取り消されるケース
口約束とはいえ、内々定がもらえれば多くの学生は安心します。しかし、内々定取り消しというケースは意外と少なくありません。内々定に法的拘束力はないため、企業にとっては、内々定取り消しには案外踏み切りやすいともいえます。
頻発することではありませんが可能性はゼロではないため、内々定をもらったとしても注意が必要です。ここでは、内々定が取り消される以下4つのケースについて解説します。
・学生が学校を卒業できなかった
・学生の素行に問題があった
・健康上の問題で働けなくなった
・企業の業績悪化など経営状況が変わった
それぞれのケースについて詳しく理解し、内々定が取り消しにならないよう備えましょう。
学生が学校を卒業できなかった
まず挙げられるのは、内々定をもらっていた学生が、何らかの理由によって学校を卒業できなかったときです。学校が卒業できなくなる理由として、よくある事例を挙げてみましょう。
・単位が足りなかった
・素行不良で留年した
2つ目の素行不良による留年は少々特殊なパターンですが、注意したいのは、単位不足による留年でしょう。上記のようなケースで卒業できないとなったときには、企業は内々定の取り消しを行うことができます。
したがって、内々定が決まった場合は、単位不足などに陥ることのないよう、しっかりと学業に励む必要があります。卒業できないとなれば本末転倒で、就職どころではありません。
学生の素行に問題があった
内定や内々定取り消しには、客観的に見ても正当な理由と判断される理由が必要です。そのため、学生の素行不良が原因となるケースもあります。例えば、次のような事例が挙げられるでしょう。
・学歴を詐称していた
・内々定後に犯罪行為を行った
学歴を詐称して内々定を獲得したケースは、企業側はうその情報を与えられた上で内々定を決めたことになります。詐称が発覚した段階で、内々定取り消しに至る可能性は高いでしょう。
刑事罰を受けるような犯罪行為を行った場合にも、内々定取り消しになる可能性があります。犯罪行為を行えば必ず内々定が取り消しになるわけではありませんが、犯罪の規模が大きくなればなるほど、取り消される可能性は高まるでしょう。犯罪の内容・悪質性によって判断されることもあります。
例えば、全国ニュースになるような悪質な犯罪行為を行った場合などは、企業にとってその人を入社させることで、大きな損失・イメージダウンにつながる可能性があります。多くの場合、内々定取り消しになる恐れがあるでしょう。
また近年は、SNSに悪ふざけの画像を投稿したことが問題となり、内々定取り消しへと至るケースもあります。悪ふざけの画像・動画が拡散されれば、当然、企業の目に触れる可能性も高くなるため、「バレなければ良い」では済まなくなるのです。
健康上の問題で働けなくなった
内々定の通知は受け取ったものの、その後に重大なけがや病気などの健康上のトラブルがあれば、入社しても業務ができなくなる可能性があります。そのため、健康上の理由で内々定取り消しへと至るケースも見られます。
企業も自社の業務を行ってくれることを想定して内々定を決めているため、健康上の理由で働くことが難しいとなれば、内々定取り消しが可能です。
無事に入社できるよう、健康上、気を付けられることはしっかりと気を付けたいところです。
企業の業績悪化など経営状況が変わった
学生には何も問題はなく、企業側の問題で、やむを得ず内々定が取り消されるケースもあります。例えば、企業の業績悪化などがこのケースに該当します。
万が一、人員を大幅に整理しなければならないほど業績が悪化するようであれば、企業は新卒採用も見送らなければなりません。内々定取り消しもやむを得ない……と判断できるような状況であれば、取り消しの正当な理由として認められることがあります。
実際に、過去にも不況のあおりを受けて、内定取り消しが相次いだことはありました。リーマンショックが有名です。企業側に新卒採用者を受け入れる資金の余裕がなくなったとなれば、内定者・内々定者は泣く泣く諦めるしかないでしょう。
ただし、内定・内々定を出した段階で業績悪化に至ることが明らかだった場合は、正当な理由に該当しないこともあります。あくまで予想できない状況から業績悪化に至り、どうしても受け入れが難しくなったときのみ、内定・内々定取り消しが可能だと判断されます。
内々定に関するQ&A
内々定は内定とは少々異なる部分があるため、就活を進めるときには、不安や疑問を持つことも少なくありません。
事前によくある質問と答えはしっかりとチェックし、円滑に就活を進めていきましょう。
内々定の通知が来るのはいつ?
内々定通知は内定通知解禁(4年制大学の学生の場合は4年生の10月)の前のタイミングですが、具体的には、大手企業は3月〜5月ごろの時期が多い傾向にあります。
ただし、外資系企業はさらに早いタイミングで内々定を出すケースもよく見られ、3年生の冬ごろに内々定を出す場合もあります。
また、企業によってはさらに遅い時期に内々定が出ることもあります。企業の規模、業界によって内々定の時期が大きく異なることを認識しておきましょう。
内々定はどの連絡方法でくる?
内々定通知の連絡方法は企業によって違うため、ケースバイケースといえます。電話、メール、郵便による書面など、どのような連絡方法も考えられます。
また、企業によっては、各種就職サイト経由でメッセージを送るパターンもあるため、必ずしも電話・メール・郵便とは限りません。面接をした結果、そのまま口頭で内々定の話をされることも少なくありません。
なお、「内々定」という表現が使われないケースもあり、「合格通知」などの言葉で事実上の内々定通知とすることもあります。
保留期間の目安は?
内々定をいったん保留にしたいときの期限は、企業によって大幅に異なるため、一概には言えません。早ければ数日以内、一般的には1~2週間が目安です。保留と伝えるときには必ず期限の確認を取り、その上で、できる限り早めに返事をするように心がけましょう。
おわりに
内々定通知が来ると、学生としては安心してしまいがちですが、採用を通知されただけでは、労働契約が締結されているとはいえません。企業に内々定の返事をせず放置していると、いつの間にか話が立ち消えになってしまうことも考えられます。自分の意志で就職を決め、内定を承諾したときに、ようやく就活が終わると考えて良いでしょう。