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業界別 採用傾向予測2020

2020.03.01

  • 採用傾向

ライター : 天野夏海

編集者 : 池田憲弘

調査協力 : 井上尚子/小林楓/木鋪万哉/松永年志規

学生から寄せられたクチコミやワンキャリアの調査より、業界動向や採用方針に関する情報を集めた。学生のリアルな声から見えてきた業界別の採用活動の特徴と、21卒の傾向予測を紹介する。

Cs総合コンサル

「とりあえず」で人気上昇、差別化に注力

企業の経営課題に対し、戦略立案から実行までを手掛け、解決を試みる総合コンサルティングファーム。この数年は学生人気の最も高い業界で、21卒の東大京大就職ランキングではアクセンチュアとアビームコンサルティングがトップ5に入った。

ただ、純粋な志望者の他にも、「選考が早いから練習として」「内定がとりあえず欲しい」など選考を受ける理由はさまざまだ。人気上昇の背景には、デジタル案件の需要増で採用数を増やしたい企業側と「とりあえずコンサル」と考える学生の思惑が合致している面もありそうだ。

企業別の動向に目を向けると、アクセンチュアの内定者数は年々増加し、「20卒では約600人に内定が出たのでは」と話す学生もいる。ただしインターンに関しては、「参加者全員、どの企業よりもレベルが高い」「参加者のレベルはあまり高くなかった」と対極のクチコミが参加者から寄せられている。採用人数の多さからとりあえず受ける人も増加している点は、業界事情を表している。

コンサル志望者の奪い合いが発生する中、案件での差別化を打ち出すのがデロイト トーマツ コンサルティングとPwCコンサルティング、PwCアドバイザリーだ。デロイトはケネディリサーチ社の調査で世界首位の評価を受けたデロイト・デジタルの日本版を2013年に設立するなど、デジタル系の案件を強化。「説明会ではTechコースの説明が入念にアナウンスされていた」という19卒内定者の声もある。一方のPwCは案件の約7割をグローバル案件が占める。「海外大卒が多い」「ボスキャリ(ボストンキャリアフォーラム)など、海外での採用も多い」といったクチコミが目立ち、特に海外経験のある学生にとって魅力的に映っている。

学生の志向に合わせた採用を行うのがアビーム。コンサルタント採用は戦略、経営、公共経営、デジタルイノベーションの4コースに分かれているため、入社後の配属先が明確なのが特徴だ。コンサル志望者の中でも興味分野が明確な学生に狙いを定めているようだ。

今後数年は、国が推進する「働き方改革」を背景に、生産性向上を狙ったIT投資は増えていくと予想される。現状ではその多くが業務自動化、特にRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)や人工知能(AI)関連の案件に流れており、システム実装までを担える総合コンサルの独壇場となっている。21卒採用でも総合コンサルの採用拡大の流れは止まらない。

Tr商社

逆風下で方針模索、ブランドは健在

コンサル業界の次にランキング上位に入るのが、総合商社だ。人気は安定的に高い反面、学生の間では「ゼネラリストを育てる」「配属先が選べないリスクがある」という業界イメージも。将来的な転職を見込んで就職する学生が増えている中、キャリアプランを明確に描きたい学生ほど応募に二の足を踏んでしまう現状が、コンサル業界との人気の差に影響している。

こうした流れを受け、各社は採用方針を模索している。伊藤忠商事を受けた20卒の慶應大学の学生からは「他の商社は通ったWebテストで落ちてしまった」「昨年度の先輩は通過したのに、優秀な同期は落ちてしまった」との声が寄せられた。これまでは就活生から「体育会」のイメージを持たれていたが、20卒の説明会で「国立大学の理系学生を積極採用したい」との方針を耳にした学生も。学生の間には「テストのボーダーラインを上げ、インテリを採用したかったのでは」との見方もある。

一方で、真逆とも言える採用方針の転換に対し、20卒内定者の中には「活躍されている方と自分のタイプが違い過ぎると感じ、辞退した」と話す学生も。企業にとって、新しいタイプの人材をどう受け入れるかは、21卒採用でも課題と言えるだろう。

「親しみやすい社風」に定評がある三井物産はオワハラ相談ホットラインを設置するなど、学生に寄り添う姿勢を見せる。「説明会で『スライドは写真を撮って構わないので、メモを取るより話を聞いてほしい』と明言してくれる姿勢に、学生への思いやりを感じた」というクチコミもあった。

旧財閥系の三菱商事は「圧倒的」なブランド力で学生を引き付ける。「とりあえず商社を志望する層は受ける」一方で、「(社風が明確な)三井物産、伊藤忠の方が『入りたい』と強く思う学生は多いかもしれない」との声もあった。

業界全体では、積極的に若手のアサインをアピールする姿勢がうかがえる。学生のクチコミの中には「若手から仕事を任されやすい社風を感じることができた」(伊藤忠商事)「(合同説明会の)イベントは入社2年目の人事の方がたった一人でやっていた」(三菱商事)といった好意的な声も。「下積みが長い」と懸念する学生にも配慮を怠らないのは、新卒を即戦力として扱うコンサルティングファームに採り負けないためか。

一方で、大手総合商社に内定した20卒の学生からは「19卒で多くの内定辞退者が出たため、20卒は大幅に内定者が増加した」との情報も。「どれだけ内定辞退者が出るか」という企業の読み次第で、21卒採用の選考結果も左右されるかもしれない。

Fi金融

採用数減少も、優秀学生にラブコール

採用数ではトップクラスの規模を誇るメガバンク。かつては日系志望の多くの学生の受け皿だったが、近年はネットバンキングやキャッシュレスの普及、IT導入による業務効率化で必要な人員が減少。リストラを含めた人員整理に動いており、新卒採用も絞っている。

一方で、優秀な学生の獲得には熱心で、各行ともインターン時にメンターをつけるなど、志望度アップを狙っている。特に注力しているのが三井住友銀行で、20卒サマーインターンの参加者は「弊社に合うかどうかを考えつつも、ぜひ本選考に進んでもらい、内定を取ってほしい。そのためにはできるだけヘルプをしたいと考えている」とメンター社員から言われたという。三菱UFJ銀行のインターンに参加した学生は「海外進出の重要性とそれが日本企業を支えることになる点を社員が話していた」と言い、グローバル志向の学生にもアピールしているとみられる。

また、フィンテック企業の台頭に伴い、手数料ビジネスからの転換を求められている中、「金融×IT」によるマネタイズに強い人材のニーズは業界内で高まっている。新サービスを企画するマーケティング職や、開発を行うエンジニアなど、巻き返しを支えてくれる人材の採用を強化していく可能性は高い。

Ad広告

電博とサイバー、学生人気が肉薄

業界2強の電通、博報堂DYグループに、サイバーエージェント(サイバー)が人気で肉薄する。

圧倒的な売り上げを誇る電通は「一人一人の学生が取り組んできたことをしっかりと聞いてもらえた」「まず人間性を評価しようという姿勢であった」とのクチコミから、学生の個性を重視する採用方針がうかがえる。ただ、「社員の方それぞれで感覚が異なることが多い会社」「(面接官に)当たり外れが出てしまうのではないか」との声もあり、面接官との相性が合否の鍵を握っている。

対する博報堂は「2次選考は1日拘束されるグループディスカッションと個人ワーク。ここで個人の能力をかなり見られました」と、実践形式で学生の個性を見極める。一方で、「班員の組み合わせという運による部分も大きいと感じた」との声もあり、運も大事なのは電通と変わらない。

一方、インターネット広告で成長するサイバーは「若手でも十分に活躍していることがよく分かる説明会」「本選考の中にインターンがあった。実際に仕事を体感できたので、ミスマッチを減らせた」など、成長性や選考の納得度に魅力を感じる学生が多いようだ。

マスメディアの広告費が減少する中、ネット広告費は増大傾向にあり、ビジネス構造が大きく変わる広告業界。採用でも、パワーバランスに変化が起きる可能性もありそうだ。そのときに電通・博報堂がサイバーを意識し、学生が「運次第」と感じないような納得感ある採用手法に転換できるかは大きなポイントだろう。

Inインフラ

LCC台頭もJAL・ANA人気高し

LCC(格安航空会社)の台頭により競争が激化している航空業界だが、「2強」とされる日本航空(JAL)、全日本空輸(ANA)は引き続き学生から人気だ。「学生の話を非常に丁寧に聞いてくれる」とのクチコミも多く、業界ならではのホスピタリティーで出会った学生の志望度を高めているようだ。

その一方で、「憧れる学生が多い職業であるがゆえに、厳しい選考」とのクチコミもある。象徴的なのが、JALが20卒採用で導入した動画選考。応募者に負荷をかけることでミーハー層をふるい落とす狙いもありそうだ。航空業界は21卒採用でも、志望者の「本気度」を見極める傾向は強まるだろう。

鉄道、海運業界に目立った変化は見られない。交通インフラの企業は、すでに知名度や安定性で一定数の学生から支持を得ている。変化が生じるのは、人口減少による人手不足が進んでインフラ業界も母集団形成に困るようになるか、ビジネスモデルの転換で新たな人材を求めるようになったときか。

ItIT

社風にマッチした高スキル人材の奪い合い

超売り手市場が続くIT業界。特にスタートアップや成長著しいメガベンチャーなどの新興IT企業では、その傾向が顕著だ。だからといって安易に就職できるわけではなく、ヤフーの選考では「とても実力主義な印象を受けました。選考もコードテストなどでした。興味本位で受けられる会社ではないと感じました」という声もあった。グーグルの説明会では「新卒よりも中途の採用に力を入れている」とのアナウンスも。特にエンジニアは新卒でもスキルの高い即戦力者の引き合いが強いようだ。

能力もさることながら、社風とのマッチが強く求められるのも新興IT企業の大きな特徴だ。グーグルについては「グーグルらしさを重視する文化があるので、そこを少しでも理解するために説明会には必ず参加した方がいい」とのクチコミがあり、明確な採用基準になっていることがうかがえる。一方、ソフトバンクは代表の孫正義氏による講義形式の説明会があり「世の動きや変化について知識を深められる有意義な時間だった。多くの就活生が孫さんに惹かれる理由が分かった」との声が寄せられた。ソフトバンク以外にも、経営者を旗印に採用ブランドを構築している新興IT企業は多い。

職種別採用であることから、就活生は領域の近しい複数の企業を受ける傾向が強く、優秀な人材ともなれば争奪戦になるケースも少なくない。「中途と新卒の境目がなくなりつつある」と言われる中、21卒におけるこの業界の採用動向が、今後の新卒採用全体の傾向を占う試金石となりそうだ。

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