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「ゴールドマン・サックスを選ぶ理由が、僕には見当たらなかった」 違和感の正体とは?:後編

商社 コラム 業界記事
2016年1月23日(土) | 51,349 views

※今回ワンキャリ編集部では、総合商社と外資系投資銀行・外資系コンサルに内定しながら、総合商社を選択した学生へインタビューを行いました。前編はこちら。

「スポーツの世界に比べて、就活は圧倒的にフェア」と言う彼が教えてくれた、商社に最短で内定する2つの方法

ここまで1時間程度のインタビューだっただろうか。

話を聞いた私は、素直に「凄い学生達だな…」と驚愕していた。私が就職活動をしていた時に、ここまで高い次元でものごとを考えられていただろうか?

答えはノーだ。

だが、同時に違和感も感じていた。それは“選ばれた学生感”とでも言うのだろうか。

彼らは圧倒的に優秀で、だからこそこんな高い次元で物事を語れているのではないか、ということ。私はこの違和感を、素直にぶつけてみることにした。

「ここまで述べてくれてきた話って、君たちが本当に優秀な学生だからじゃない? 

多くの学生は外銀・外コンと商社を選べない。商社に行きたくても行けないのが実態じゃないのかな?」

すると、彼らのうち1人は、こう答えた。

「肉体的な優劣で差が出る、スポーツの世界に比べて、就活は圧倒的にフェアだと思います。最低水準を超えている学生にとって、就活はただの情報戦ですよ」

更に彼は、こう続けた。

「今、商社の内定へ圧倒的に近づく方法って知っていますか? 戦略的に動いている学生は皆、知っているんですが、2つの方法があるんですよね」

商社の内定へ圧倒的に近づく方法1:“外銀・外コン枠”を狙う

1つ目の方法は、商社に存在する“外銀・外コン枠”を狙うこと。つまり、外銀・外コンのインターンや本選考を受けに行くこと。

彼らいわく、総合商社には“外銀・外コン枠”というのが存在する。外銀・外コン枠とは、「外資系投資銀行・外資系コンサルの内定をもらいながら、総合商社に入社する学生」のこと。まさに今回インタビューした彼らはその典型例にあたる。

商社の人事は、明らかにこの層を採用することに労力をかけている。例えば、“マッキンゼー内定者”、“ゴールドマン・サックス内定者”というだけで商社の内定確率はグッと上がると言われる。

これは人事の立場に立ってみると理にかなっている。新卒採用を担当する人事にとって大切なのは、「優秀な学生を採用すること」だが、面接での評価は定性的になりがち。それに対して、インターンの参加実績や内定実績は、分かりやすく“他社が認めた”という指標になる。

これはなにも商社だけに限らない。多くの企業が面接中に“他の選考状況”を聞くのは、彼らも“お墨付き”が欲しいからなのだ。外銀・外コンのインターンへの参加実績は、その分かりやすい名刺になる。

外資系での経験を引っ提げて挑む、商社の本選考

しかし、ここで自然に私はこういう疑問が湧いた。

「外銀や外コンのインターンに参加すること自体が、難しくないのか?」

彼らは単刀直入にこう答えてくれた。

「初期の外銀のインターンは、参加学生のレベルが本選考よりはバラつきがある」

「対策さえすれば参加は簡単。とりあえずトップ層向けの新卒採用サイトを読み込んで、先輩から体験談を聞けばいける」と言う。

言い換えれば、比較的参加がしやすい初期の外資のインターンに参加し、その名刺を持って、商社の選考に挑む、これが彼らの戦略なのだ。

商社の内定へ圧倒的に近づく方法2:クローズドイベントへの参加

もう1つの方法は、クローズドイベントへの参加である。具体的には、

・内定者や社員経由の紹介

・新卒採用を支援する会社経由の紹介

・企業から限定的に紹介

などのルートでしか参加できないイベントだ。クローズドなOB訪問会や、外資系出身の社員が参加するイベント、中には少人数の食事会まで、イベントの種類は様々。1つ目の方法と原理は同じで、紹介者や実績によるスクリーニングがかかっているため、何かしらの“お墨付き”があるのだ。

 「不平等?」 

そう思う人もいるだろうか。しかし、これも人事の視点からすると理にかなっている。

合同説明会では、志望度や実績にかかわらず学生がランダムに参加する。一方、“クローズトイベント”は、紹介者や実績によるスクリーニングがかかる。人事がかける熱量も高くなるのは当然だ。1人1人にかける時間も多くなり、必然的に内定者が多く出るのは理にかなっている。参加者にとっても、参加企業にとってもWin-Winなのが実態なのだ。

実際、今回インタビューした彼らは全員この2つの方法ともに実施し、外銀・総合商社の内定を獲得したという。もちろん、OB訪問を重ねて、評価を得ていくような方法は前提としてある。ただ、この2つの方法は、事前に情報を知った上で、戦略的に動かない限りなし得ない方法なのは明らかだ。

私が感じた違和感の正体。それは「情報戦を制した者独特に生じる、余裕や自信」のようなものだったのだ。

話を聞き終わった私は衝動的になにかを言いたくなった。例えば「社会人だと政治が絡むため、そこまで上手くいかないよ」「学生が思っているイメージと実際の仕事は大きく違う」といった釘を刺すような言葉だろうか…。しかし、私はすぐさまその気持ちをグッと押さえこんだ。この気持ちの正体に気付いていたからだ。それは「大人が自分より優秀な若者を見た時にとっさに取りえる、防衛本能の1つ」とでもいうのだろうか。

私は少しだけモヤっとした思いを抱えながら、静かにパソコンを閉じたのだった。

編集後記:元BCG・ワンキャリ編集長KENからの一言


「就活はただの情報戦」


編集作業を終え、帰路についた私は、このフレーズを反芻していました。

私が就職活動をしていた時、地方の学生は圧倒的に不利な状況にいました。特にBtoB産業の本社は、ほとんどが東京にあります。新卒で広告代理店やマスコミを目指していた私は、OB訪問をするにも本当に一苦労。関西からわざわざ夜行バスで東京に訪れ、OB訪問をして、ネットカフェに泊まり、選考を受ける。そんなこともやっていました。

ツテも情報も圧倒的に足りなかったのです。

ワンキャリアのビジョンは、「ITで人材業界に変化をもたらし、情報のブラックボックスを解消すること」にあります。今回の学生はたまたま関東の学生でしたが、「就活における、情報の非対称性を是正すること」への情熱は今もまだ、変わっていません。

関東の中でも情報収集に苦戦する学生はもちろん、関西、あるいは地方の学生が、いずれ「就活はただの情報戦」と言えるような環境を整えることが、我々ワンキャリ編集部の使命の1つだと感じたインタビュー記事でした。


※(続編)合わせて読みたい→現役商社マンが斬る、「あの彼が商社ではなく、ゴールドマン・サックスを選ぶべき3つの理由」

※ ワンキャリ編集部とは?:ボストン コンサルティング グループ出身の編集長KENを中心にGoogle、P&Gの元社員とインターン生達で構成される“ワンランク上のキャリアを目指す人”の為の就活メディアONE CAREERの編集チーム。長期インターンも募集中。

(Photo:Vladitto/Shutterstock.com)

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北野唯我(KEN)
取締役
北野唯我(KEN)

北野 唯我(きたの ゆいが):株式会社ワンキャリア 取締役CSO/作家
新卒で博報堂の経営企画局・経理財務局勤務。米国・台湾留学後、ボストンコンサルティンググループを経て、2016年ワンキャリアに参画、現在取締役として戦略・採用・広報部門を統括。2021年10月、同社は東京証券取引所マザーズ市場に上場。作家としても活動し、30歳のデビュー作『転職の思考法』(ダイヤモンド社)が20万部、他に『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版社)などで、著者累計40万部。

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