こんにちは、ワンキャリ編集部です。今回は、総合商社と外資系投資銀行(ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー証券)・外資系コンサルに内定しながら、総合商社を選択した学生へインタビューを行いました。
※合わせて読みたい続編はこちら:現役商社マンが斬る、「あの彼が商社ではなく、ゴールドマン・サックスを選ぶべき3つの理由」
「ゴールドマン・サックスを選ぶ理由が、僕には見当たらなかったです」
身長180cm。スポーツマンらしく日焼けした肌。ギラギラした目つき。23歳の彼は、一見すると「The ゴールドマン・サックス」という印象を受ける。
外銀のオファーを断り、総合商社に入社した彼はこう続ける。
「今、優秀層の学生では、外資系金融機関の人気が明らかに落ちています。僕の周りでも、外銀を蹴って、商社に入った奴は多いです」私は驚いた。なぜなら、私が就職活動をしていた2007年はまさに、外資系投資銀行の黄金時代。業務内容もよく分からずに、多くの学生が外銀を受け、内定者をカリスマのごとく扱っていたからだ。
そして素朴に思った疑問をぶつけてみた。
「なぜ、商社なのか?」
「外資系投資銀行・外資コンサルではなく商社を選んだ理由はなんなのか?」
彼は3つの理由を教えてくれた。
真のライバルが手を組み、「日本代表」として国益をもたらす経験に惹かれる彼ら
1つ目の理由は、こうだ。
商社は、三菱商事と三井物産が協力して進めたサハリンIIプロジェクトなど、海外を舞台に手を取り合って事業を展開することが少なくない。両者は国内ではライバルだが、共に日本を背負う「日本代表」であるという自負を持っている。エネルギー・食糧・金属など「必需品」の安定供給を担っている総合商社が手掛ける案件は、日本の国益と密接に関わる領域では手を組むことがある。スラムダンクで例えると、桜木花道と流川楓の関係とでも言うのだろうか。あるいは、ナルトとサスケだろうか。普段はライバルの2人が、より大きな目的を果す為に手を組み、協力する。漫画好きなら誰でも心震える瞬間。これがビジネスの世界で味わえるのだ。
現に、ゴールドマン・サックスの内定を辞退して、総合商社へ進路を決めた彼らの1人はこう言っていた。
「一日本人として、社会、日本に貢献できる仕事に携われることが、商社を選ぶ決め手となった」マッキンゼーとBCGが手を組むことはほとんどない
彼はこう続けた。
筆者は、外資系コンサルティングファームで働いていた経験がある。実際に働いていた経験から感じるのは、「外資」と良いながら、実態は日本の為に働いている人も多い。実際に、私も日本の為に働きたいと言い、オファーをもらった。
だが、一方で、更により大きな目的のもと、マッキンゼーとBCG(ボストン コンサルティング グループ)が手を組むことはほとんどない。ライバルはやはりライバルでしかないのだ。しかし、それを超える大志が商社ではあるというのだ。
外資の『up or out』に対して、40年かけて育てる商社
2つ目の理由は、『時間軸』にある。
総合商社の育成方針を一言で言うと、「40年かけて経営人材を育てること」。
例えば、三井物産では、若手を入社後6年以内に必ず6か月~1年間海外に派遣しており、中堅にはビジネススクール進学への機会を、管理職には高度な経営スキル取得を目的としたプログラムが用意されている。他の商社も同様の仕組みを持つ。社内でも、総合商社は7年目でも若手と呼ばれる世界であり、社員や内定者も10年、20年という長いスパンで物事を考える人が多いのだ。その背景にあるのは、年功序列の考え方に加えて、「新卒を採用すること」への社会的責任。
新卒は一生に一度。仕事を探す学生側が本気なら、人事・会社としても本気でその気持ちに答えたいと考えている。結果、一度採用したからには40年という長期のスパンで育成計画を立てる。一生面倒を見るという価値観が見えかくれする。一方、外資系投資銀行・外資系コンサルの社員は、2~3年で物事を考えるタイプの人が多く在籍している。会社も「短期で使える戦力にする」育成方針を掲げ、急激な成長カーブが求められる。これが『up or out』と呼ばれるゆえんだ。ゴールドマン・サックスを選ばなかった彼も総合商社のこの考えに同調したのだろうか。
商社と外資、それぞれを選ぶ人の違いは「人生の時間軸」の捉え方
今回、彼らにインタビューしてみて気付いた共通点がある。
それは、「人生の時間軸が長いこと。物事を長期的にとらえる傾向があること」だ。
明らかに外資系投資銀行・外資系コンサルにいる人達とは時間感覚が違う。彼らは生き急いでいない。一方、外資に合う人はときに生き急いでいる印象を受ける。これが決定的な違いだ。
よって、中長期的な視点から人生プランを設計したい・腰を据えて物事に取り組みたい学生にとっては「最後まで育てきってくれる」総合商社は魅力的な環境だと言うのだ。
資源トレーディングやM&A、外銀・外コンの業務は商社でできる時代になってきた
3つ目の理由は、業務内容。
総合商社は業務の特性上、多くの子会社やパートナーを抱えている。それらの事業に関して、パートナーの相談役は商社となることが多いため、コンサルティングは商社における日常業務とも言われる。ただ、コンサル会社との違いは、「第三者」ではないこと。人・カネを投資している商社には事業パートナーを成功させる責任がある。圧倒的な当事者意識が求められ、パートナーと併走するコンサルティング業務。この業務は、商社の重要な機能の1つともいわれる。また、総合商社は従来からM&Aや資源トレーディングなどにおいて高いプレゼンスを発揮してきた。近年もその傾向は加速しており、PEファンドやバイアウト投資・アセットマネジメント事業などいわゆる金融事業にも積極的に参入がみられる。
例えば、三菱商事グループは、2009年に取得した「タカラトミー」の株式を10%超取得し、2015年に全保有株(約72億円)を売却している。売却による回収を前提とした投資は、買収先を持ち続ける従来の商社ではありえなかった形だ。また、インフラと金融を掛け合わせたインフラ金融など、深いつながりのある他産業と金融を融合させていく取り組みも行われてきている。
もちろん、これらを商社の中でも専門チームが行う仕事。全員が上記の仕事をしているとは言えないだろうが、このように外銀・外コンでしかできなかったことが総合商社でできる時代になってきている。
・国益の為に働く機会
・長期的な育成
・業務領域の広さ
要約すると上記の3つが、彼らが商社を選んだ理由なのだ。
私は彼らの話を聞き「なるほど」と思いながらも、わずかな違和感を抱き始めていた……。
<後編はこちらをご覧ください>
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・現役商社マンが斬る、「あの彼が商社ではなく、ゴールドマン・サックスを選ぶべき3つの理由」──ワンキャリ編集長KEN、Twitter @yuigak
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