毎年、就活解禁日に合わせてワンキャリアが発表している東大・京大就活ランキング。まずは、こちらをご覧いただきたい。
※調査対象:東京大学・京都大学、または同大学院に所属する2021年度卒予定のONE CAREER会員による、企業別のお気に入り登録数を元に作成。2020年2月24日時点
これは、2021年卒の東大・京大就活ランキングだ。ワンキャリアは東大・京大の就活生の登録率が9割を超えるため、ほぼ「全体のトレンド」と認識してもらって問題ない。就活ランキングは、データをとる時期によって内容が大きく異なるが、このランキングは就活解禁日直前のデータを用いて作成している。
今年のランキングの特徴を1つ挙げるとしたら、「日系大手の明暗、分かれる」ということだろう。
過去、2017年から2019年の3年間の特徴は、「外資系企業の圧勝」という印象だった。昨年同時期のランキングでは、上位20社中11社(55%)が外資系だった一方、今年は日系大手が善戦している。正確に言うならば、日系大手の中で善戦する企業とそうでない企業に分かれているようである。
<2020年(21年卒)の6つのTOPICS>
●「電博」の時代は終わり、サイバーが「人気・実力」共に業界2位へ
●金融1位は、モルスタ・ゴールドマンを抜いて、DBJ
●軒並み下がるメガバンクで唯一浮上したSMBC。Techのイメージが好影響?
●NRI・三菱商事を押さえ、東大・京大総合1位に輝いたのは三井物産
●急上昇スタートアップには、dely・AnyMind、そして渋谷本社のもう1社がランクイン
●人気根強いコンサル、最高の体験を与えたのは、ダークホース企業?
「電博」の時代は終わり、サイバーが「人気・実力」共に業界2位へ
まず、変化が目覚ましいのは広告代理店だろう。広告業界では長らく、「電博」と呼ばれる、電通・博報堂の2社が人気を独占していた。だが、今年は博報堂が大きく順位を下げた。代わりに大きく躍進したのは、サイバーエージェント。同社は博報堂を抜き去り、全体でも40位まで上昇した。
※調査対象:東京大学・京都大学、または同大学院に所属する2021年度卒予定のONE CAREER会員による、企業別のお気に入り登録数を元に作成。2020年2月24日時点
広告業界では「電博」の時代が終わり、電通とサイバーエージェント、そして博報堂の時代がきた。「DCH(Dentsu、Cyber Agent、Hakuhodo)」の時代と言えるかもしれない。
金融1位は、モルスタ・ゴールドマンを抜いて、DBJ
金融業界でも順位に変動がある。
金融業界1位は、DBJ(日本政策投資銀行)で、モルガン・スタンレーやゴールドマン・サックスなどの外資系金融を上回る順位になった(全体で31位)。外資系企業の順位は集計時期の影響を強く受ける(※)ものの、金融機関が軒並み存在感を落としている中で、事業の内容やミッションが明確なDBJが人気を集めているのは、現代の特徴だろう。
(※)……外資系企業は一般的に選考が早いため、就活前期にとると、高順位になる傾向がある。
軒並み下がるメガバンクで唯一浮上したSMBC。Techのイメージが好影響?
メガバンク戦線にも変化が見られる。
リストラなどのニュースが飛び交う影響もあり、三菱UFJ銀行とみずほフィナンシャルグループが3年連続で順位を落としている一方で、SMBCだけが順位をV字回復させている。なぜだろうか?
※調査対象:東京大学・京都大学、または同大学院に所属する2021年度卒予定のONE CAREER会員による、企業別のお気に入り登録数を元に作成。2020年2月24日時点
その理由を現役就活生に聞くと、開口一番「Techのイメージがある」という意外な声が返ってきた。詳しく聞くと「スマホアプリやATMなど、SMBCが1番使いやすい。今の時代に合わせて、変わってきているイメージがある(20卒・関東)」という。
約10年前に就職活動をしていた筆者からすると、同行はどちらかというと体育会系でパワフルな印象が強かったが、近年の大胆な戦略変更とプロダクトの改善によって、イメージは変わってきているようだ。
三菱VS三井でいうと、同様に総合商社の中でも変化が起きている。
NRI・三菱商事を押さえ、東大・京大総合1位に輝いたのは三井物産
長らく、就活マーケットでは総合商社の人気は手堅く、三菱商事・三井物産の2強に、近年では伊藤忠商事が食い込むという構造だった。今年は、三井物産が三菱商事を超え、東大・京大総合1位を獲得した。
※調査対象:東京大学・京都大学、または同大学院に所属する2021年度卒予定のONE CAREER会員による、企業別のお気に入り登録数を元に作成。2020年2月24日時点
上の表は、この3年連続でTOP10した、8社の推移を表している。内訳は、三井物産、野村総合研究所(NRI)、アクセンチュア、三菱商事、マッキンゼー・アンド・カンパニー、伊藤忠商事、ボストンコンサルティンググループ、ベイン・アンド・カンパニーだ。
人気ランキングらしく言うならば、東大・京大生にとっての「神エイト」のような企業だろうか。
三井物産に話を戻すと、同社は4位→6位→1位と、今年ついにトップの座を獲得した。新卒採用マーケットを俯瞰(ふかん)している身からすると、総合商社の人気争いは、(1)本体の業績、(2)採用担当者の取り組みによって、順位が多少上下する。例えば、伊藤忠商事が過去最高益を上げた2017年、同社は大きく順位を伸ばし、三菱商事・三井物産と肩を並べた。
今期の三井物産のIR情報を見ると、直近の第三四半期累計でほぼ横ばい(収益5.1兆円で前年同期比+3.6%、税引き前利益4,710億円で前年同期比▲1.5%)であるため、東大・京大で総合1位を獲得したということは、採用担当者の積極的な取り組みが功を奏したということだろう。三井物産は合宿選考を実施したり、「オワハラ相談ホットライン」を設置したりするなど、学生に向き合う取り組みを継続してきたため、その成果がついに実を結んだことになる。
一方で、伊藤忠商事も負けていない。同社は、東大・京大ランキングでは8位だったものの、東大・京大以外の学生も含めた総合ランキングでは、三井物産・三菱商事を抜いて1位を獲得している。これは、同社が西日本の学生に強く支持されていることが影響しているのかもしれない。大阪大学・神戸大学のデータを見ると、同社が三井物産・三菱商事よりも高い人気を誇っている。
視点を少し変え、スタートアップはどうだろうか? 近年、スタートアップに新卒入社する上位校学生は急激に増えているのである。
急上昇スタートアップには、dely・AnyMind、そして渋谷本社のもう1社がランクイン
昨年は圏外だったが、急上昇してきたスタートアップが3社ある。それが、dely、AnyMind Group、そしてユナイテッドだ。これら3社は、昨年同時期では800位以下だったが、この1年で急激に認知を獲得し、それぞれ300位以内に食い込んだ。
これら企業の特徴の1つは積極的な発信だろう。delyは、代表取締役 堀江裕介氏の積極的なメディア露出で認知が上がったことが要因だと思われる。同様に、AnyMind GroupもSNSを中心にメディア露出が目立った。近年では、就活生がSNSを利用するのが当たり前になりつつある。
スタートアップの実態というのは、学生には極めて見えづらい。それゆえに、社長や経営陣が積極的に情報を発信することで、一気に順位が上がる傾向にある。スタートアップを検討する学生は、ぜひ経営陣の発信を参考にしてもらいたい。
人気根強いコンサル、最高の体験を与えたのは、ダークホース企業?
最後に、コンサル業界のトレンドを見てみよう。近年の就活マーケットでのコンサル人気は異様なほど高く、上位校学生にとって「とりあえずコンサル」がトレンドになっている。特に関心がなくても、「とりあえずコンサルは受けてみます」という学生がとても多いのだ。
そんな中で、「どのコンサルを受けに行けばいいのか分からない」という声もあるかもしれない。ここでは、インターンや説明会の学生満足度が高いファームを紹介したい。
※調査対象:ONE CAREER会員による、2019年度下期のクチコミ投稿点数を元に作成。5点満点。N数=20以上。
これは、学生が2019年に開催されたコンサルティングファームのイベントで、顕著に満足度が高かった企業6社を並べたものだ。1位のKPMGコンサルティングは最もイベントの満足度が高いファームであり、ここ2年で採用マーケットでの評価が変わりつつある企業の1つだろう。
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリーはM&A関連サービスを提供する会社、いわゆるFAS(Financial Advisory Service)であり、この中では毛色が違う。近年のM&A案件の増加を受け、大手FASは新卒採用を拡大していて、コンサル志望者にとっての新たな選択肢として浮上しているのだ。そのほか、船井総合研究所や日本総合研究所なども満足度が高く、学生の認知率を考慮すると、オススメの穴場企業と呼べるかもしれない。
就活に透明性を
2020年の就活解禁は、就活生にとって激動のスタートになっている。大規模合説が次々とキャンセルになる中で、学生の皆さんからは不安の声が上がっている。
どうやって就職活動を行えばいいのか?
本当に自分は就職できるのだろうか?
そう思っている学生も多いと思う。企業にとっての採用活動は、何十年も続く活動の中の1年かもしれない。しかし、もう一方の当事者である学生にとっては「人生で1度しかない、最初の就活」であるのは間違いない。
私たちが少しでも力になれることはないか?
そう考え、ワンキャリアはこの度、急遽(きゅうきょ)「ワンキャリア企業説明会LIVE」を行うことにした。人気企業の人事を招き、YouTubeで企業説明会を生放送する。放送中は学生の皆さんからの質問も可能なので、リアルタイムで視聴いただけると幸いだ。
また、今回、ワンキャリアに集まった膨大なクチコミを基に「就活生新聞」という新聞を作成した。業界別の就活傾向予測、100社の選考スケジュール、地域ごとの就活動向など、さまざまなコンテンツを用意している。Web上でも公開しているが、東京・大阪・名古屋・福岡など各地でも新聞を掲出する。機会があれば、ぜひ手にとって読んでいただきたい。
これからもワンキャリアは、「就活に透明性を」をモットーに、少しでも学生のみなさんにとって価値のある情報を届けていきたい。今回のランキングが参考になれば幸いだ。
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・【永久保存版:東大京大就活ランキング】今、本当に「受ける価値のある企業」はベイン、伊藤忠、サイバー…そして意外な企業が。
・【6/1速報:東大京大・21卒就職ランキング】マッキンゼーを抜いた1位の企業の意味/人気ベンチャー新御三家 など
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