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就活サイトトップ就活記事「監査だけ」は大きな誤解。公認会計士のキャリアと仕事のリアル

「監査だけ」は大きな誤解。公認会計士のキャリアと仕事のリアル

簿記 インタビュー 職種理解 企業インタビュー
2017年10月23日(月) | 55,062 views
sponsored by PwC Japan有限責任監査法人(旧:PwCあらた有限責任監査法人)

※法人名および所属部署名は取材当時のものです

こんにちは、ワンキャリ編集部です。

公認会計士は医師、弁護士とともに「三大国家資格」と称される士業の一つです。一方で、その仕事やキャリアを知る機会は少なく、「敷居が高い難関資格」というイメージが先行しています。

今回は、公認会計士育成の第一人者として活躍する国見健介さんへインタビューを行いました。自身も公認会計士資格を持つ立場から、そのキャリアの魅力を存分に語っていただきました。

「公認会計士=監査だけ」は大きな誤解。幅広いキャリアパスが世界で人気の理由

――国見さん、本日はよろしくお願いします。早速ですが、そもそも公認会計士とは何をする仕事なのか、簡単に教えていただけますか。


国見:はい。公認会計士の業務は多岐にわたりますが、代表的なのは監査業務です。簡単に言うと、企業が作成・公開する財務諸表に嘘や誤りがないかチェックしてお墨付きを与える仕事で、これは会計士の独占業務です。

また、経営の数字を読む知識を生かし、アドバイザリー業務を行うこともあります。コンサルティング業務の一種で、企業に対してM&Aや会計システム導入に関する助言を行います。

国見健介(くにみ けんすけ):

1999年公認会計士試験合格、2001年慶應義塾大学経済学部卒業、中央青山監査法人を経て、現在は東京CPA会計学院 理事、株式会社京和工芸 特別顧問、特定非営利活動法人Accountability for Change 理事を務める。


――公認会計士は一般に監査の印象が強いので、コンサルティングを行っているのは意外です。率直に言えば、そのイメージから「一度選ぶとつぶしのきかない職業」という先入観を持つ学生もいるようです。実際のところ、公認会計士にはどのような成長機会やキャリアパスがあるのでしょうか?


国見:むしろ、公認会計士の魅力はキャリアの幅広さにあると思います。公認会計士として身に付く基礎知識は、会計や監査はもちろん、経営や税務、企業法など多種多様です。これらはあらゆる組織で必要な知識なので、国境や業界を超えて活躍の機会があります。つまり、会計士として経験を積むだけでなく、コンサルタントや企業のCFOなど、自分の得意分野や興味に応じた「キャリアの扉」が無数にあるのです。グローバルの就職人気企業に四大会計事務所が軒並みランクインしているのも、それが理由でしょう。

カリスマに専門資格はいらない:士業は、普通の人が「1,000分の1人材」になれる武器だ

――なるほど。会計の専門知識を持つことでキャリアの幅が広がると。では、「こんな学生こそ公認会計士を目指すべき」という人物像はありますか?


国見:個人的な意見ですが、一つの分野で「1,000分の1」の人材になれるなら、あえて公認会計士を目指す必要はないと思います。抜群のコミュニケーションスキルがある人や、企画力がずば抜けている人、圧倒的なリーダーシップがある人は、資格がなくてもビジネスパーソンとして勝負できます。

裏を返せば、「突き抜けた素質がない人」こそ士業向きです。専門知識は、キャリアの市場価値を高める点で、競争のハードルをグッと下げてくれます。仮に、会計の専門知識を持つ人が50人に1人なら、他の能力が20人に1人レベルでも、掛け合わせて「1,000分の1」になれます。


――確かにオンリーワンの人材になる近道は、複数の強みを掛け合わせることだといいますね。


国見:私はそれぞれのキャリアを、サッカーのリオネル・メッシ選手と中田英寿選手に例えたりします。メッシ選手は、リスクをとって己の才能一つに賭けるキャリアです。彼は全ての退路を断ってバルセロナに移り、世界最高のプレーヤーになれました。しかし、その栄光の裏には、同じような選択をして日の目を見ずに去った選手たちがいるはずです。中田選手は対照的に、さまざまな組織で着実にバリューを発揮して大舞台に立つキャリアです。彼はユース、Jリーグ、海外チームと安定して結果を出し続けて、世界でトップクラスの選手になりました。向き不向きはありますが、どちらも「超一流」になるための方法論だと思います。公認会計士をはじめ、士業の資格は「中田タイプ」のキャリアを歩みやすくしてくれます。

初対面でも信頼が得られる、それが士業のアドバンテージ

――投資銀行やコンサルティングファームも、身につく専門知識やスキルの点で似ています。公認会計士ならではのアドバンテージは何でしょうか。


国見:スペシャリストとして、圧倒的な信頼感とバリューが手に入ることです。発言の説得力は、やはり士業のアドバンテージです。もし初対面の人に「私、法律に詳しいんです」と言われても信用できませんが、弁護士の名刺を渡されたら真剣に話を聞きますよね。肩書きは本質的な価値ではありませんが、例えば経営者として投資家と渡り合う時などは、資格のあるなしで信頼を得られる速度は全く違ってくると思います。私は教育者として仕事をしていますが、公認会計士資格を持っているからこそ他の教育者との差別化が容易ですし、私自身も教えられる分野が自然にできました。

レアキャラになろう。エッジの効いた経験が10年先の価値を生む

――国見さんは、教育者として多くの公認会計士を育成されています。実際に、「1,000分の1」人材として活躍する公認会計士のエピソードを教えてください。


国見:公認会計士試験に合格した後、大手監査法人の内定を蹴ってインドに渡った教え子がいます。彼は5年間をインドで過ごした後、今は日本でベンチャー企業のCFOとして活躍しています。途上国で会計やコンサルの最前線にいた経験は、そうそうコモディティにはなりません。これからアジアに進出したい企業にとって、喉から手が出るほど欲しい人材でしょう。


――大変興味深いです。しかしネックになるのは、資格取得に必要な時間と労力です。「若いうちに実務経験を積み、自分の専門性を早く見つけたい」という学生も多いと思いますが。


国見:その焦りは、キャリアを直近の1、2年で捉えているからです。私は資格取得に限らず、スキルや経験のために数年を充てるのは決して「遠回り」ではないと思います。先ほどの教え子は、その一例です。彼は新卒5年目までをインドで過ごしましたが、それでもまだ20代です。50年スパンでキャリアを考えれば、残りの45年間を圧倒的な「レアキャラ」として生きられるわけです。若いうちこそ時間や苦労を惜しまず、突き抜けた人材になるための武器を仕入れるべきだと思います。


――エッジの効いた経験や資格は、自分の市場価値を10年、20年先まで高めてくれるということですね。


国見:はい。特に勉強は努力をすれば結果が出やすいので、費用対効果が高いと思います。その点で、公認会計士は今、さらに努力が報われやすい環境といえます。私の受験時より合格率は上がっていますし、PwCあらた有限責任監査法人のように、有給で試験勉強に専念できる「育成採用職」を設けている監査法人もあります。これは、採用時点での簿記や会計の学習経験を問わず応募でき、「公認会計士を目指したい」という想いさえあれば目指せる職種です。難関資格ですから「簡単に受かるので皆チャレンジしましょう!」とは言いませんが、本気で努力する気概がある人ならば、挑戦する価値はあると思います。


――育成採用職ですか、面白いですね。会計士を目指す心理的・環境的な負担は、世間的なイメージよりも軽くなっていると。

「公認会計士はゴールキーパー」それゆえの苦労と泥臭さもある

――ここまで、キャリアの観点から公認会計士の魅力を語っていただきました。一方で、「公認会計士ゆえの苦労」もあるかと思います。それはどんな点でしょうか?


国見:公認会計士――特に監査業務の辛さは、職責を果たしているときには話題にならず、ごくまれに防げなかった会計不正は厳しく追求される点です。サッカーに例えればゴールキーパー的な仕事です。フォワードはシュート100本のうち1本でも決めればヒーローですが、キーパーは1本のミスが失点に繋がります。それでも、公認会計士たちはクライアントのためだけでなく、公共の利益に資する気概を持って働いています。監査があるからこそ、企業は社会的な信用を得て、株式市場で資金調達ができるのです。


――公認会計士は、資本主義の番人とも言われます。それゆえの社会的責任はつきものですね。他に、意外な仕事の実態はありますか?

国見:公認会計士の仕事は財務資料を読み解き、机上で結論を出すイメージがあると思います。ですが、クライアントの現場に赴いて監査をすることも実は多いのです。監査にあたって石油の備蓄量を調査する必要があれば、タンクに登って在庫を確認することもありますし、百貨店なら、在庫確認(棚卸し)に立ち会ったりもします。もちろん、統計を始めとした机上監査が前提です。そこで「ミスや不正のおそれがある」と判断した点を、現場で詳しく調べるという流れですね。


――監査には現場主義な側面があるのですね。一部の学生も「淡々とした、変化の少ない仕事」という先入観を持っているようなので、意外に感じました。


国見:会計や税務の、地味で淡々としたイメージは覆していきたいですね。すべての経済活動は、最終的に数字に落とし込まれます。ですから海外では、監査や会計はクリエイティブかつ「格好いい」知識としてリスペクトされています。反面、日本には数字ではなく感覚で判断するビジネスパーソンが未だに多いです。本来は数値をベースに来期の目標などを判断すべきなのに、どんぶり勘定をしている。これは、スポーツで言うとデータ分析をしないで、やみくもに練習を繰り返しているのと同じです。

これからの時代、磨くべきは「個の力」だ

――インタビューも終盤です。全国の学生にメッセージを頂けますか。


国見:今の日本は「どの組織に属するか」を重視しすぎて、どの分野のプロフェッショナルになるかという、「個の力」を磨く意識が弱いと思います。会計なら会計と、決めた道を極めれば、社会が目まぐるしく変わる中でも生きていけます。核となる「個の力」を、社会の変化に合わせてアウトプットするだけで良いのですから。

もちろん会社のブランドを大事にするのは良いと思います。大手企業は上に行くのに時間がかかる分、社会に与えるインパクトは絶大ですから。

学生の皆さんには、それだけで終わらず、組織の力と個の力のバランスが取れたビジネスパーソンになってほしいです。社会の変化に怯える人になるか、変化を楽しめる人になるかは、そこで差が付くのではないでしょうか。


――では、このメッセージを踏まえ、もし国見さんのお子さんが就活生だとしたら、どんなアドバイスをしますか?


国見:折れないメンタルを持つことと、人生のどこかで専門知識を詰め込むことです。そして、この2つを備えた上で好きなことを選んでほしいです。22歳の就活生のときから、安定や環境で自分の人生の優先順位を考えてしまうと、その環境が変わった瞬間に一気に苦しくなります。

好きなことが分からないなら、とりあえず挑戦して、「違う」と思ったら路線を変えたらいいのです。最初に選んだ「キャリアの扉」が当たりかハズレかなんて、考える必要はありません。「個の力」さえ磨いておけば、後々どんな選択肢もとれます。失敗を恐れずチャレンジするための一歩として、公認会計士というファーストキャリアも選択肢に入れていただけたらと思います。


――国見さん、本日はありがとうございました。


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