「税金」というと、多くの学生にとってあまりなじみがないものかもしれませんが、社会に出ると一気に身近なものになります。
所得税や住民税といったものから、法人税や関税など。個人だけではなく、企業のビジネスに税金というのは無視できない存在だからです。さらにビジネスのグローバル化が進む中、税金の仕組みは複雑になり続けているのです。
今回ご紹介するEY税理士法人は、グローバルビジネスで「税務」に課題を抱える企業を救う、税務のプロフェッショナル集団です。
税理士法人と聞けば、「税理士の職場でしょ」「資格なんて持ってないし、難しそう」と思うかもしれませんが、EY税理士法人のスタイルは、世界を舞台に活躍する税務プロフェッショナルといえるでしょう。
コンサルタントのように課題を把握してアドバイスし、クライアントの成長を支えている──知られざる「税務プロフェッショナル」の世界について、シニアスタッフの坂口航一さんとシュウ・セシリアさんに、話を聞きました。
資格がなくてもOK。インターンシップで税務の「イメージ」が覆った
──税理士法人というと、「税務プロフェッショナル集団」というイメージがありますが、もともと、お二人とも税理士や公認会計士などを目指していたのでしょうか?
坂口:いえ、全くなかったですね(笑)。学生時代は、抽象的ではありますが「誰かにアドバイスして頼られるプロフェッショナル」に憧れており、コンサルティング業界しか見ていませんでした。もちろん、税理士法人という存在は知っていましたが、自分がまさか税理士法人で働くことになるとは思いませんでした。
シュウ:私も、最初は税理士法人に行こうと考えていたわけではありませんでした。部屋にこもって、ひたすら数字に向き合っているイメージだったので……(笑)。就活イベントの「ボストンキャリアフォーラム」に参加したときも、見ていたのは主に金融系の企業でした。スペイン語と中国語が話せるので、そのスキルを生かせる仕事を探しておりました。
──なるほど。では、EY税理士法人に興味を持ったきっかけは何だったのでしょう。
坂口:就活イベントに参加してEYを知ったのですが、EY税理士法人から「サービスの説明をしたい」と連絡を受け、面談をすることになったのです。
話をしてみると、税理士法人でも企業にアドバイスする仕事があるんだと初めて知りました。税理士、というと淡々と書類を作っているイメージがあったのですが、インターンシップに参加して見方が大きく変わりましたね。
シュウ:私は「そろそろ就活を頑張らないと」と思っていたとき、EYのインターンシップの情報に出会ったのがきっかけですね。正直、税理士法人って何をするのかも分からなかったのですが、「やって損はない」と思って申し込みました。
シュウ・セシリア:新卒でEYに入社。移転価格関連のプロジェクト(文書化、二国間事前確認等)を担当し、現在シニアスタッフ3年目。二国間事前確認プロジェクト(日英・日星・日米・日墨等)、相互協議プロジェクト(日墨)、移転価格文書化対応(グローバルドキュメンテーション、MF/LF作成)、移転価格関連のデュー・デリジェンスなどに携わる。
──お二人ともインターンシップが入り口だったんですね。
坂口:関税チームに声をかけていただき、3週間のインターンシップに参加したのですが、税務コンサルティングでクライアントの課題を解決する仕事なのだと分かりました。
ワークショップ型ではなく、実際の業務に関わることで、当初志望していたコンサルティング業界よりも自分の英語力が生かせ、よりグローバルな案件に携われると感じて、入社を決めました。
シュウ:私は1年半の長期インターンシップでしたが、「移転価格」の領域を担当しました。同じ企業グループ内で国外の関連会社と取引する際に発生する税金を扱うチームです。
当時は「移転価格」という言葉も知りませんでしたが、先輩が基礎から丁寧に教えてくれました。単に作業を頼まれるのではなく、今プロジェクトのどの段階なのか、今後どうなるかなど、細かく説明してくれました。
「税務にはこんな仕事もあるんだ」と新しい発見ができ、若手にもフラットに接してくれる雰囲気にも触れて、安心して入社を決められました。
──坂口さんもシュウさんも税理士などの資格は持っていなかった、ということですよね。それでも入社できるものなのでしょうか。
坂口:入社にあたって資格は必ずしも必要ありません。一方で、昇格をしていく際に資格が必要になることもあります。実務を通して知識を学んでいくことになるので、無理なく資格が目指せるようになっています。
ミスが起きれば数億円単位の損失も? 企業と「税金」の切っても切れない関係
──お二人ともインターンシップを通じて「税務」に対するイメージが変わったということですが、EY税理士法人が、どんな仕事をしているか知らない学生は多いと思います。そもそも、なぜ企業は「税務プロフェッショナル」たちに案件を依頼するのでしょうか?
坂口:ルールが複雑であり、違反したときの代償が大きいからですね。私は関税に関するアドバイザリーが主な仕事なのですが、特に国を跨(また)ぐような税金については、ルールに解釈の余地があるものも多く、細部は専門家が検証しないと分かりにくいケースが多くあります。一般的な企業では、どうしても対応がうやむやになりがちです。
しかし、適切なルールに基づかずに案件を進めてしまうと、税務調査で指摘を受けたり、余分なコストがかかったりします。例えば、担当者がルールを正確に把握せずに、「FTA(Free Trade Agreement:自由貿易協定)」を使って、関税0%で商品を輸出しようとしたところ、勘違いや手続き上のミスが発覚して、膨大な数の国に対して事後に数億円規模の支払いが生じたケースもあったと聞いています。
坂口 航一(さかぐち こういち):新卒でEYに入社。主に関税に関するアドバイザリー業務に従事し、現在シニアスタッフ。自由貿易協定(FTA)や減免税制度の活用による関税コストの削減サポート、WTO関税評価協定等に基づく関税評価のアドバイス、商流変更に関する関税アドバイスの提供などに携わる。
──うわあ……。ミスが起きると、とんでもない損失が生まれてしまうこともあるんですね。
坂口:逆にいえば、仕組みを理解していればコストをうまく圧縮できるということでもあり、それが企業への提供価値になります。関税は特に経営へのインパクトが大きいです。「関税が3%」と聞くと低いイメージがあるかもしれませんが、法人税に換算すると30%に相当するといわれています。
先ほどお話ししたFTAを利用して、その3%をなくせれば、経営コストを圧縮できます。ただ、そのためには「製品の原産地をたどって分析する」といった作業も必要になることもあります。
シュウ:私が担当している移転価格の領域は最近、多くの会社が意識するようになってきました。一定規模の取引がある会社は書類を準備する必要がある規定ができ、税務調査で尋ねられることも増えました。EYで移転価格を扱う部署もこの5年ほどでメンバーは大幅に増加し需要が高まっています。
──その場合、書類作成の支援をするという形になるのでしょうか。
シュウ:それ以外にも、税務調査の立ち合いや説明のためのロジック構築などをサポートします。移転価格は、国家間での「税の取り合い」という側面があるので、両方の国に納得してもらえる形で整合性を考える必要があります。
オリンピックにも税金がある。「税務コンサルティング」が扱う領域は広い
──実際、どのような形でプロジェクトが始まるのですか?
坂口:クライアントから、ある課題に対して解決方法はないかと聞かれることもありますし、企業の経営・役員層に該当するパートナーが営業して案件をいただくこともあります。EYはグローバルにオフィスがあるので、海外のチームと連携して進める案件も多いです。
シュウ:移転価格の場合は、税務調査に備えて危機感を持った担当者から相談をいただくケースと、文書を準備するコンプライアンス対応として、毎年コンスタントにオファーが来るケースがありますね。
──アドバイザリーということで、コンサルティングファームと似た形で案件が進むことも多そうですね。
坂口:はい。ただ、一般的なコンサルタントだと、一定期間、1つのプロジェクトに集中するかもしれませんが、私の場合は5~7件が同時に進行します。短期間にいろいろなことを経験できる方が、早く成長できると感じています。
一緒に案件を進めるのはクライアントの経理部や貿易管理部、事業部などです。関税は企業でも深く知られていない領域なので、たとえ経理部が相手でも、一から説明するといった場面も少なくありません。
──文字通り「専門家」として関わる形なんですね。お二人が印象に残っているプロジェクトを教えてください。
シュウ:EYでは企業だけでなく、国税当局の支援をすることもあります。私は日本とメキシコとの間の「事前確認」の申請に関わりました。事前確認というのは、2国の国税当局の間で、今後数年間の企業の課税方針について合意してもらう制度です。その申請のお手伝いもしています。
──国と国との取引にも関わることがあるんですか! それは意外でした。
シュウ:スペイン語の文書を読み込み、国税当局の審査をクリアできるよう、メキシコにあるEYのオフィスとやりとりを重ねました。膨大な資料を全て英訳するわけにもいかないので、自分が日本語に訳して説明する場面も多かったです。スペイン語が使えるというユニークなバリューを生かすこともでき、この仕事をしていて良かったと思いました。
坂口:私は東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会開催に向けて、関税の観点から、大会組織委員会をクライアントとしてコンサルティングしたのが印象に残っていますね。
──え? オリンピックと関税って何か関係があるんですか?
坂口:オリンピックには国内外に多数のステークホルダーが関わっています。大会期間中だけを考えても、選手やスタッフ、審判、海外メディアなど多数の外国人が来ますし、大会で使用するモノも日本に大量に出入りします。関税はモノが輸入される際に発生しますので、そのような観点から、大会開催に向けて、組織委員会のサポートを行いました。大規模な国際的イベントに貢献できて、とても貴重な経験だったと思っています。
「サポート」の色が強い日本企業の税務部門、世界の常識は「税務=経営戦略」
──面白いですね……! 基本的には海外が絡む案件が中心、ということなのでしょうか。
坂口:そうですね。部署によるところもありますが、関税は輸出入に関することなので、扱う案件は100%海外とのやりとりです。海外企業からのさまざまな質問に英語で回答することもあります。
シュウ:国外にある会社との取引なので、私もすべてクロスボーダーの案件です。日本企業の海外進出だけでなく、海外企業でも日本に拠点があって取引があれば、日本でのコンプライアンス対応が必要になるため、彼らにもサービスを提供します。
──国境を越え、さまざまな企業の対応をご覧になっていると思います。日本と海外で比べたときに、違いはありますか?
坂口:例えば自動車だと、日本に輸入される製品の関税は0%です。日本企業の場合、「海外のことは海外子会社に任せる」という意識が強いためか、関税への意識は低いと感じます。後になって、日本の本社が海外のトラブルを把握するという話も少なくありません。
シュウ:日本企業の場合は現地法人がメインに動くことが多いですが、海外企業だと子会社の状況を本社できっちり管理しているケースが多いと感じます。日本企業では税務部門は「サポート」という色合いが強いですが、外資系企業ではもっとアクティブに、積極的に「税務」を戦略の重要な指標の一つとして考えている印象です。
──確かにお話を聞く限り、税金への対応は、経営に大きな影響を与えそうですよね。海外企業だと事業を成長させるためのCFO(最高財務責任者)を重視しているイメージがあります。
シュウ:日本企業はどちらかといえば、税金についてはコンプライアンス目的で対応しており、「払わなきゃいけないので払いましょう」という雰囲気なのかもしれません。逆にいえば、その点がビジネスチャンスでもあるとは思いますね。
坂口:日本は、本社が海外子会社に対する関与やコネクションが弱い傾向があるので、新しくFTAが締結されたとき、子会社側が「なんで本社が入ってくるんだ」と抵抗することがあります。そういうとき、150以上の国・地域に700拠点を持つEYのグローバルネットワークは強みになります。
──海外のオフィスとはどのように連携するのですか?
坂口:簡単にいえば、クライアントの側にEYの現地の専門家がいるイメージです。そもそも関税をよく理解していなかったり、課題を把握していなかったりする企業が多いので、「圧倒的な知識をもってベストなソリューションを提供する」という価値を、クライアントに寄り添って提供できます。
シュウ:本社に事後報告するのではなく、進行中のタイミングで現地のEYオフィスから日本のオフィスに連絡が来て、本社と進捗(しんちょく)管理するという対応もできます。早い段階でリスクの芽を摘めるのが、グローバル展開しているメリットですね。
「税金」は世界の共通言語。海外で働きたい人にとっては魅力的なキャリアに
──実際にEY税理士法人に新卒で入社する場合、どのようなキャリアを歩むことになるのでしょうか。
坂口:自分のやりたいことをベースに、フレキシブルに決まります。インターンシップで実際の業務が分かるので、最終的に「合わないな」と感じたら別部門に進むこともあります。私の場合は、関税がとても合っていたので自ら選びました。
シュウ:「あなたはここね」と一方的に配属を告げられる会社が多いかもしれませんが、EYではそんなことはありません。カウンセラーと年に3~4回キャリアに関するミーティングがあるので、やりたいことや興味のあることを伝えて、別の部署に異動することだってあります。海外赴任への道も開けています。
──「税務プロフェッショナル」と一口に言っても、さまざまですね。ファーストキャリアに選ぶ魅力についても教えてください。
シュウ:グローバルで働きたい、という人にはおすすめできる職種だと思います。知識や分析の方法などは基本的にどの地域でも同じなので、海外に行きやすいです。日本でなくてもできる、どこでも働けるというのは大きな魅力ですね。
坂口:関税に関していえば、基本的にはWTO協定(※)に基づいています。世界中どこでも通用するビジネスの共通言語、といっても過言ではありません。また、関税の仕事を通じてサプライチェーンの仕組みを学べる点も、個人的には魅力的だと考えます。
(※)……貿易に関連する様々な国際ルールを定めている
──税金(タックス)という「横串」でさまざまなビジネスの現場を理解できるということですね。社内の雰囲気も教えてください。
シュウ:移転価格のチームには海外経験のある人も多く、固定観念にとらわれず、何を言っても否定されません。一方的な会話があまりなくて、すごくフラットな組織です。
坂口:本当に優しい人ばかりで、分からないことがあると、忙しくても時間を取って向き合ってくれる姿が印象的です。新卒で入社した人に対しては「関税を知らない」という前提で接してくれます。知識がないうちは、失敗するのが当然なので、その上でどう成長できるかを一緒に考えてくれるのでありがたいです。
──未経験者に向けたフォローはちゃんとあるということですね。
シュウ:新卒で入社してから数カ月の研修があり、その後も毎月、いろいろな研修をオンラインで受けられます。しかも「研修して終わり」ではなく、アップデートするためにその都度、最新の状況を伝えてくれます。自分でも勉強しつつ、周りが教えてくれるという体制が充実しています。
「税務って難しそう」を超えて一歩踏み込む。イメージで判断するのはもったいない
──EYはパーパス(存在意義)にBuilding a better working world(より良い社会の構築を目指して)を掲げています。お二人はパーパスというか、EYでの仕事を通じて成し遂げたいことはありますか?
坂口:「人に頼られるプロフェッショナルになりたい」と思ってEYに入りましたが、実際にクライアントから頼られているという実感があります。それが個人としてのパーパスに近いものなのかもしれませんね。経験や知識を積み、提供できるアドバイスの質を高めていきたいですし、「今回もちょっと聞いてみよう」と思ってもらえたり、次の案件につながったりするようにしたいです。
シュウ:私のパーパスは、「クライアントに喜んでもらい、助けになるサービスを提供すること」です。同時並行で複数のプロジェクトをする分、クライアントとの関係性が薄くなる恐れもあります。税務なので雑談するようなコミュニケーションが取りづらい面があるかもしれません。それでも少し雑談する中で、フラットな形で相談してもらえる相手になりたいです。
──ありがとうございました。最後に就活生にメッセージをお願いします。
シュウ:私たちは2人とも、「税務って何?」という状態からスタートしました。学生のときに「税務って難しそう」のまま終わっていたら、今の自分はなかったと思います。固定観念を捨てて、実際にやっていることを見てほしいですね。
坂口:そうですね。「ひたすら数字の分析をするのかな?」と思っていたら、実際にやっているのは税務コンサルティングでした。インターンシップに参加できれば、EYが自分に合うかどうかは分かります。自分の好奇心がどこにあるのかを、ぜひ入社前につかんでほしいです。
シュウ:イメージで志望先を絞る学生もいると思います。「コンサルティングファームは何となくかっこ良い、税理士法人はどのような業務を行っているのかよく分からない……」というふうに(笑)。EY税理士法人はタックスを軸としたコンサルティングファームです。先入観に縛られ、入口で選択肢から外してしまうのはもったいないので、少しでも興味があるものはとりあえず調べてみると良いと思います。皆さまのご応募お待ちしております!
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