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コンサルタントとして輝けるのはファームだけじゃない。監査法人が掲げる「守りのコンサル」という一手

日系 コンサル インタビュー ワンキャリ編集部 企業インタビュー
2017年10月6日(金) | 49,080 views
sponsored by PwC Japan有限責任監査法人(旧:PwCあらた有限責任監査法人)

※法人名、所属部署名など掲載内容は取材当時のものです

こんにちは、ワンキャリ編集部です。

「監査法人」と聞くと、何を連想しますか? 「公認会計士だけが集まる・お堅い風土・地道な監査業務が延々と続く……。」そんなイメージを覆す、リスクコンサルタントという職務があります。

今回は、PwCあらた有限責任監査法人(以下、PwCあらた)の海老原さんへインタビューを行いました。公認会計士資格を必要とせず、企業をリスク管理でサポートする「守りのコンサル」の魅力をお伝えします。

3年目で営業成績1位。「抜きん出てしまった」不安の中で見つけた、コンサルタントというキャリア

――今日はよろしくお願いします。まず、海老原さんご自身のご経歴をお聞かせいただけますか。


海老原:私は大学を卒業後、営業職でベンチャー系のコンサルティングファームに就職しました。入社2年目で書籍を執筆し、3年目で営業成績が社内1位と順調なキャリアを歩む一方で、いきなり抜きん出てしまったことに不安をおぼえました。「30代、40代になった時に、口ばかりで実務のできない人材としてキャリアを終えてしまうのでは……。」と感じたんです。そんな時、コンサルタントとしての実務経験を積もうと思い、総合コンサルティングファームにITコンサルタントとして転職しました。金融機関のIT戦略立案を担当し、大規模プロジェクトの計画や管理、要件定義などをしていました。

海老原 直樹(えびはら なおき):

PwCあらた有限責任監査法人 システム・プロセス・アシュアランス部 マネージャー

2006年に慶應義塾大学を卒業し、新卒でベンチャー系のコンサルティングファームに就職。営業として、書籍出版のプロデュースや国内各所でのセミナー講演を経験した。2010年、総合コンサルティングファームに転職し、 ITコンサルタントとして証券会社の大規模システム開発プロジェクトに参画。同社を退職後、1年間の海外生活を経て、2015年9月PwCあらた有限責任監査法人に転職。異業種からの金融事業参入の支援、海外子会社管理の支援等、システムリスクを中心としたアドバイザリー業務を担当している。


――その後、総合コンサルティングファームからPwCあらたに転職されるまでの経緯を教えてください。


海老原:4年間勤めた会社を辞めた理由は、ワーク・ライフ・バランスの取りにくさでした。繁忙期には週100時間ほど働くこともあり、30歳の当時「この働き方を40歳まで続けられない」と感じたのです。その反動もあって、退職後の1年間は海外で気ままに暮らしていました。そこから日本に戻ってきたのは、当時の先輩がPwCあらたで働いていて、「おまえも来ないか」と誘われたのがきっかけです。

新たなビジネスの「予定通りのスタート」を支える、監査法人の専門性

――そんな海老原さんは現在、SPA(システム・プロセス・アシュアランス)部門のリスクコンサルタントを務めています。耳慣れない職名ですが、どのようなお仕事をしているのでしょうか?


海老原:そもそも監査法人は、社員全員が公認会計士というわけではありません。監査業務で得たリスク管理の知見を、「守りのコンサルティング」として企業に提供する役割も担っています。私が在籍するSPA部門もそのひとつで、ITの領域に特化し、企業のさまざまなリスクの解決にあたります。私の場合は、クライアントが日々利用しているシステムやビジネスプロセスに対して、リスク対策としての内部統制が適切に機能しているかを分析・評価したり、ITを管理するための組織やガバナンスの設計・構築に向けたアドバイスを行ったりします。

――具体的に、クライアントはどのような課題を抱えているのですか?


海老原:私が最近担当した案件として、金融事業に新規参入する企業を支援したケースでは、「金融の知見がない」ことがクライアントの最大の懸念でした。金融事業は免許制のビジネスなので、法律やガイドラインを満たさなければ、最悪のケースでは業務停止や免許剥奪もありえます。つまり、ビジネスが止まってしまうわけですね。

このケース以外でも、私たちのビジネスは「クライアントのビジネスにおいて、何がリスクなのか」というリスクの洗い出しから始めます。ITの領域のみならず、ビジネスモデルそのものを考慮して、クライアントにとって何が最適かを検討しアドバイスを行います。一方で、過剰な「守り」はクライアントのコスト負担をやみくもに増やてしまいかねません。提案にあたっては、PwCのナレッジや社内の有識者に確認・相談するように心がけています。

このように、私達のアドバイスによってクライアントのビジネスが形になったり、改善施策が動き出す瞬間は感慨深いですね。例えばクライアントから「これで予定通りスタートできます!」と言われた時の喜びは格別です。


――「予定通りのスタート」は、事業戦略や組織に潜むリスクまでカバーしてこそですね。とはいえ、リスク管理やITシステムに関する支援は、総合コンサルティングファームも得意とするところです。監査法人ならではの強みはなんでしょうか?


海老原:監査法人としての強みは、第三者としての独立性だと思っています。コンサルティングファームではクライアントの計画作りからシステム構築・運用まで支援することもありますが、監査法人ではクライアントのシステム構築を直接担うことはなく、あくまでシステムやその管理態勢を評価する側に立ちます。そのため、時には金融庁の目線や法律の観点から、第三者として中立な目線でアドバイスできるのが強みです。

例えるならば、会社やITシステムに対して健康診断を実施するようなものです。これは、近年のクライアントニーズに非常にマッチしています。デジタライゼーションの流れにおいて、ビジネスプロセスの多くが自動化・システム化されていく中で、専門性と客観性をもつ監査法人の知見がますます求められていると感じています。

Fintechブームを支える「守りのコンサルティング」

――なるほど。こうした「守りのコンサルティング」の具体例として、印象的な仕事のエピソードを教えていただけますか。


海老原:非金融事業を行っていた企業がFintech技術を用いて融資サービスを始めるにあたり、そのITシステムを管理するためのルールや組織づくりを支援しました。

世界的に金融ビジネスの市場規模は拡大していて、IT企業を中心に異業種からの参入が増えています。いわゆる「Fintech」の流れですね。


――非金融事業者の一例として、特にEC事業者※は、金融ビジネスに積極的な印象があります。その背景はどこにあるのでしょうか。

※EC事業者:EC=Electric Commerce(電子商取引)事業者。インターネット上で物品やサービスの売買を扱う企業を指す


海老原:あくまで私見ですが、EC事業者が保有する膨大な売上データを活かして、ポテンシャルの高い企業に資金提供ができる点が挙げられます。例えば、ドローンやVR関連製品に注力しているショップがあるとします。過去の財務データだけを見ると「まだ儲かっていない」と判断してしまい、銀行や信用金庫といった既存の金融機関では融資は厳しいかもしれません。一方のEC事業者は、自社の売上データから、市場のトレンドや出店事業者の成長性を測れます。「この会社は将来的に売上が伸びる」と予測できるので、そのショップへ積極的に融資することができるというわけです。

「君は普通の会社は向かない」だから選んだ、コンサルティングという道

――大変興味深いお話です。続いては観点を変え、コンサルタントとして活躍する海老原さんのキャリア観をお聞きします。そもそも、ファーストキャリアにコンサルティングファームの営業職を選んだきっかけは何だったのですか?


海老原:思い返すと私は性格が生意気で、人のいうことを聞かない学生でした(笑)。学生時代、尊敬しているゼミの教授に就職活動の相談をしたら、「君は普通の会社は向かない」と言われたほどです。就活中は華やかなマスコミや当時話題だったIT系の広告事業にも興味はありましたが、決められた仕事をこなすライン業務よりもコンサルティングのようなスタッフ業務の方が面白そうだと感じ、最終的にコンサルティングファームを選びました。

監査法人は「正しさ」、コンサルティングファームは「利益」を追求する

――コンサルのバラエティに富んだ仕事は、確かに魅力的ですね。そんな海老原さんの実感として、監査法人のコンサルティング部門とコンサルティングファームの違いはどこにあると思われますか。


海老原:大きく「つぶしのきく専門性」と「働く上で重視されるマインド」の2点があります。まず前者について、コンサルティングファームの場合は大規模プロジェクトを受注すると、コンサルタントには「最低3カ月程度、長ければ1年程度ずっとその仕事をやりなさい」と仕事が割り振られます。ですから、その時々でクライアントにとって優先度の高い案件をたらい回しにされ、浅く広いスキルしか身に付かないケースもありえます。ITコンサルタントで言うと、5年、10年と業務経験を積んだのに「システム開発プロジェクトの管理はできるけれど、システムの中身はよく分からない」という状態になりがちです。対して監査法人は、会計やITといった基礎的な知識に加え、セキュリティやBCP※、外部委託管理など、リスク分野の専門性も若手のうちから求められますし、身に付けることができます。

※事業継続計画(Business continuity planning、BCP):災害などの緊急事態が発生した際、企業が損害を最小限に抑え、事業の継続や復旧を図るための計画のこと。


――では、後者の「働く上で重視されるマインド」に関しては、どのような違いがありますか。

 

海老原:コンサルティングファームが「利益」を求める一方、監査法人は「正しさ、誠実さ」を追求します。「利益」を求めるコンサルティングファームでは、上司も部下に対して高い成果やパフォーマンスを求めます。もちろん監査法人でも成果は求められますが、それ以上に「正しく、誠実であること」が求められます。そのため、上司が部下に求めるのは「正しい判断をするために適切な手順を踏んでいるか」「その判断が正しいか」ということになります。私達はクライアントに対しても、法律やルール上できないことは「できない」とはっきり言いますし、クライアントからもそういった姿勢を期待されています。

正しさは時間では測れない。だから定時退社が当たり前

――その「正しさ、誠実さ」を重視する価値観は、業務以外にも表れているのでしょうか?


海老原:ワーク・ライフ・バランスの保ちやすさが挙げられます。コンサルティングファームで求められる成果やパフォーマンスとは、クライアントに提供する価値を最大化することです。プレゼン資料を細部まで作り込んだりと、時間を掛けようと思えばどこまでもできてしまいます。ですが、監査法人が重視する「正しさ」は、時間を掛ければ掛けるほど増すわけではありません。ですから、仕事にもメリハリをつけやすいのだと思います。

具体的に言えば、私達の勤務時間は9時15分〜17時15分と、一般企業よりも短めです。3月決算のクライアントが多いので4、5月は繁忙期になりますが、それ以外は20時ごろにはほとんどの人が退社しています。プライベートな時間が取りやすい分、資格取得や専門性を伸ばすための勉強をしている人が多いというのも特徴です。

なので、インターンシップや会社説明会でお会いする学生さんに対しては、「新卒からバリバリ働いて成長したい」というのならコンサルティングファームという選択もありえますし、「10〜20年という先を見据えて、専門性を付けたい」と思うならば、監査法人も選択肢となり得るとお伝えしています。

20代は負けてもいい。30代で追いついて、40代で抜きん出ろ

――最後に、ワンキャリアを見ている就活生たちに一言いただけますか。


海老原:学生時代、ゼミの教授に言われて印象的だった言葉があります。「20代は負けていていい。30代で追いついて、40代で抜きん出ろ」と。私自身、その言葉を常に意識してキャリアを選択してきました。

皆さんがファーストキャリアを選ぶ時も、「自分がどんな20代を過ごしたいか」という視点に加えて「どんな30代、40代、50代を過ごしたいか」という側面も考えてみてほしいと思います。


――インタビューを通して監査法人の「お堅そう」な先入観を破る、気さくなお人柄が伝わってきました。海老原さん、本日はありがとうございました。


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