こんにちは、伊藤哲士です。
今まで総合商社の投資部隊や海外駐在について長ったらしい少し真面目な記事を書いてきましたが、今回の記事はぶっちゃけ一番真面目です。
最近、私と同じように、サラリーマン生活に耐えられないという思想を持った弱い若者が多くなってきたな、と思うんですよ。なぜなら私に相談して来る前職の後輩がこぞって「ウィンドウズ 2000になりたい」と結構本気で言ってくるからです。
初めて「ウィンドウズ 2000」という言葉を聞く人もいると思います。
普通の人はマイクロソフトのいつもお世話になっているOSを想像すると思います。
ですが、もちろんそういう意味ではないです!!
私が勤めていた商社業界では「窓際族で年収2000万円」という素晴らしい待遇のことを指します。
一応、窓際族の定義も押さえておきましょう。
──中高年サラリーマンのうち、すでに社内で予備軍的存在となった一群の人々を揶揄(やゆ)していうことば。
引用:物書堂「精選版 日本国語大辞典」
仕事しなくても年収2000万円が保証されている、どこかの人生アガって沖縄に住んでるお金持ちのようです。彼らは一応会社に出勤するのですが、やることがないので毎日、株や不動産の副業をしているそうです。
こんな人生、最高ですよね?
だけど、もしあなたがそんな窓際生活に夢を抱いて、いざそれを目指してウィンドウズの称号を掴み取れたとしても、そこまでのプロセスの実態、ひいては会社の闇をも知ってしまうことになり、膝から崩れ落ちることになります。
その理由を、一度は本気でウィンドウズを目指した私が、無駄に詳細に書いていきたいと思います。
【目次】
・ウィンドウズへの憧憬……そして、挑戦!
・ウィンドウズは3パターンあった
└1. 上司に壊されてウィンドウズ
└2. 正真正銘のウィンドウズ
└3. 不幸なウィンドウズ(予備軍)
・地獄のウィンドウズ。本気のニートじゃないと無理……
・仕事への「情熱」を取り戻そう
ウィンドウズへの憧憬……そして、挑戦!
私の仕事へのモチベーションが急降下した入社3年目。その夏の社内飲みで「ウィンドウズ 2000」の存在を図らずも知りました。しかし、詳しい情報を集めようとした直後に海外駐在が決まってしまいました。
「せっかく商社に入ったし海外駐在は一回くらいは行っときたいよな~」という思考で海外に羽ばたき、洗脳されたように仕事に没頭していました。その後、海外駐在から東京に帰ってきて、再び残業の日々が始まると、あの時の感覚が徐々に蘇ってきました。
「仕事したくない」
「楽したい」
「左遷されたい」
私は自分の気持ちに気づきました。東京本社での仕事、そこの雰囲気が大嫌いだと。
そこで、「いかに仕事をせずに高い年収を貰い続けるか」ということにフォーカスし、「ウィンドウズ 2000」を本格的に目指す日々を始めたのです。
窓際族を目指すといえば、 「左遷されればいいだけじゃん」 と思うかもしれませんが、あなたが若手のうちは、仕事ができなくてもなぜか許され、上司は「伸びない人は、いない」とどこかの予備校のごとく鼻息荒くあなたにどんどん仕事を振ってくれます。
ですので、窓際族を目指すには、伝統的な日本企業が設定する約12〜13年くらいのお勉強期間が終わり、出世争いが絡む年次にならないときつい。もしくは一発病気にならない限り左遷されることすら難しいのです。
早期にウィンドウズを掴み取るには、突破口を探る必要がありました。
ウィンドウズは3パターンあった
「いかにして早期に窓際族になれるのか」
これを達成すべく、私は商社在籍時代に、会社を良く知る世代である40代~50代の一般職のお姉さんにヒヤリングを続けてきました。
「僕が来週から窓際になるとしたらどんな方法がありますか?」
「う~んウツ病とかになるのが早いよね、だってあんたまだ若いから出世レースも参加できないし、上司に正論放っても若いのに元気だな~っていなされちゃうし。お医者さんに診断書作ってもらえば?」
サラリと物騒なこと言っちゃってるが、想像通り難しいらしい。(なんかおまけで「今は知らないけど上の世代の一般職はほとんどコネ、私もコネ」と無駄な情報も得てしまいました。)
そこで見えてきた「ウィンドウズ」になるためのプロセスを、以下の3パターンに分類しました。
1. 上司に壊されてウィンドウズ
2. 正真正銘のウィンドウズ
3. 不幸なウィンドウズ(予備軍)
病気になる方法(仮病)も一瞬、模索してしまったが、病気の人間が会社にきてPCで全力で副業してたら即バレして戦場に戻される可能性が高い。やはり「出世コースに乗れなくて左遷されるのがベストであること」をここで理解しました。でも、思った以上に大変そうなので、この時既にウィンドウズへの情熱が薄れていってましたが……。
では、上記の3パターンの詳細を見ていこう。
1. 上司に壊され病気になり、仕事をさせてもらえなくなった人
なかなか衝撃的だったのが、「上司に壊され病気になる」という言葉である。
皆さん気になったでしょう、「壊される」ってどういうこと……?
今はかなり減ったが、昔はパワハラ上司が横行しており、ノイローゼなど精神的な病気になる社員が多かったとのこと。「上司に壊されてウィンドウズ」とでも呼びましょうか。(そのまんま)
例えば、あるコーポレート部署の窓際社員の方は、若い頃は元気いっぱいだったのに、強烈なパワハラ上司に毎日罵声を浴びせられ、まともに会話ができなくなりました。 その方は入社してもう20年以上になるが一度も海外駐在には行っていない。但し、家庭内では元気なままの旦那さんをやっており、子供も厳しくしつけているとかなんとか。完全に「会社で働く」となると性格が一変してしまうパターンですよね。会社の闇すぎて思わず口をつぐんだ。こういった人は社内では隠れてしまっているが、少なくないみたいです。
ひどいのが、そういう「壊された人」が送られる専用の部署まであることです。
同部署の仕事はほとんどなく、例えば朝に他部署から奇跡的に問い合わせが来ても、適当に回答の下書きを作って、仕事が終わる定時に返信をしてそのまま帰るらしいです。
会社の中にも、我々が知らないことはたくさんありますね。
2. お決まりの出世レースに負けて余ったポストももらえない人
窓際族になる一番の典型パターン「出世レースで敗北した人」は、どうでもいい部署のどうでもいい管理職になるそうです。
課長代理とかなんちゃら代理とかその類です。かなり年齢いってるのに、中途半端なポストについている上司はあなたの周りにはいませんか?
でも会社は社員にやりがいを持たせないといけないので、少し重要な案件を取り扱う部署の部長代理とか、その辺に出世レース敗北者を置いたりと気を遣ってもらえるみたいです。
本当に案件のない部署のなんちゃら代理が、正真正銘の「ウィンドウズ 2000」の称号を与えられた者ですね。
3. 仕事よりも社内政治が大事な中高年
仕事はできるけど、社内政治が下手……という方、周りにいませんか? こちらは「不幸なウィンドウズ(予備軍)」です。仕事ができる人って先のことがどんどん見渡せてしまいますよね。決裁権のある上司より有能だったりして、空気を読まずどんどん上下関係なしに指摘してしまいます。
例えるなら、戦国時代の秀吉の参謀、「黒田官兵衛」のような存在で熱い人です。権力を持つ秀吉(上司)は「黒田の言ってることは正しいけど、なんかムカつく、俺のポジションが取られてしまう」と危機感を募らせ左遷をたくらみます。
この例は、私も新人時代に一緒に働いたことのあるA先輩の事例を間近で見たことがあります。上司に嫌われていたA先輩は地方に左遷され、さらにどうでもいい部署のどうでもいい管理職になりました。
しかし、その後A先輩の大逆転が待っていました。その地域で大口案件の可能性が出て来たのです。例えばエネルギーなどのビッグプロジェクトです。失敗が許されない案件であり、ここで仕事のできるA先輩に奇跡的に仕事が回ってきたのです。結果、取引先の大企業の役員とズブズブの良好な関係を築き、案件の受注までに至り、本社へ帰還、他の上司に気に入られ、役員まで登り詰めました。これ実話。元の上司の役職をあっさり抜き去ってしまいました。
仕事はできるに越したことがありませんね。背水の陣だったこともあり、A先輩もこのプロジェクトに賭けていたことは間違いないでしょう。
地獄のウィンドウズ。本気のニートじゃないと無理……
先程「出世コースに乗れなくて左遷されるのがベストである」ことを理解しましたが、さらに私を落胆させたのが実際に窓際族にいた会社のB先輩(40代)です。B先輩は「(2)出世レースに完全に負けて、お払い箱」となったみたいです。本人は認めていませんでしたが、まさに正真正銘の「ウィンドウズ 2000」の称号を与えられた者です。
小さな事業管理部署(変な名前の部署)で、4人くらいの同じ年代の人しかおらず、仕事がない部署にいました。隣の部署だったんですが、仕事中に後ろからのぞいたらYouTube開いてたのを見て、いいなーと思っていました。
そんなB先輩と2人で飲みに行くことになったんですよ(というか、誘いました)。私が担当していた国がそのB先輩が駐在していた国だったので、現地情報を詳しく聞く名目で。
さりげなく、「窓際って本当にあるんですか? あったら最高ですね」と言ったらこう答えました。
「やってみればわかるよ、あれは地獄だ。本気のニートじゃないと無理。君はもう社畜を経験してるから、何も仕事を与えられない状態には絶対に耐えられない。頼られたことのある人間はなかなか適応できずに病気になる。とにかく辛いぞ……」
私は窓際族を強く望んでるのでそんなことにはならないだろうと思ったのですが、その言葉を聞いて青ざめたわけです。確かに人は誰かに頼りにされなければ辛いのかもしれない。
また、以下のようなことを延々と言っていました。
・仕事がない状態で数日過ごすと副業をやる気にもならない
・人に頼られない辛さを思い知ることで仕事がしたくなる
・家に帰ると仕事の話をするときに腹痛が起きるようになる
・深夜2時まで毎日残業の方がマシ
そして、気づけばB先輩の話の最後らへんは、もはや自分の辛い現状ばかりで一人称ニュアンスになってました。「じゃあニートはなんで辛くないの?」と質問するまでもなく論破されたのでした。
「副業でやりがいを補うのは?」という質問も「想像以上にそんな気力湧かないよ」とリアルな回答をされました。
このように元気な人が左遷されて窓際族に行くことで壊れていくのです。その後、B先輩は結局大手メーカーに転職し、今は楽しそうに仕事していますね。当時、私はウィンドウズ倶楽部に入るためにあと6、7年待たなければならない事実に、もうなんだか膝から崩れ落ちそうになりました。こうして私の窓際族への挑戦は終わりを迎えたのでした。
仕事への「情熱」を取り戻そう
以上で、私が窓際族を目指した話は終わりです。
私も実をいうと入社したばかりの頃は明日にときめいていたし、2年目の頃はやりがいいっぱいでした。
しかし会社に慣れた3年目くらいの頃から、会社の同期とはこのような会話が盛り上がりを見せるようになったんです。
「あれ? いくら頑張っても給料に差がつかないね」
「サボってる年配組の社員の方がなんか私生活充実してる」
「あのクオリティの低い仕事で上司はクビにならないんだからサボった人間の勝ちなんだな」
もちろん、これは私の属性が社会不適合者であり、仲の良かった同期も基本的には同じ思想を持っていたからです。私がいた会社には熱い気持ちを持った社員もいたので安心してください。ちなみに、飲み会での彼らの熱い思いは、聞いてるふりしていつも寝てました、ここで謝罪します。
とまぁ、私はこういう思想の持ち主だった故に、会社で普通に働くことに耐えられない、かといって「ウィンドウズ 2000」の奪還レースも待てない、ということになり結果的に退職して独立したわけです。他に道がなかったのです。
独立初期のモチベーションは「世界を変えたい」なんてキラキラしたものではなく、「どうしても会社員に戻りたくない」という情熱でした。
そして、これは最近、変わり始めた思想なのですが、働いてるうちに仕事が楽しくなってしまい、あわよくばどっかの女優さんと深夜に個室でスパれる人間を目指そう、とか思っちゃってます。
つまり、何が言いたいのかというと、「人って仕事環境で変わっていくもの」なんですね。
あなたも今の会社で当時の私と同じように悩んでいるのであれば、仕事の成果によって給料をもらえる会社や、違う業界、もしくは自分が「貢献したい」と強く思える会社などに転職して、環境を変えてみると悩みが吹っ飛ぶこともあると思いますよ。そしたら、ピカピカの入社1年目のような「夢にときめけ! 明日にときめけ!」状態になって、仕事への「熱い情熱」も取り戻せるかもしれません。
それでも、今の会社で「ウィンドウズ 2000」を目指したい人は、「12〜15年」かかると覚悟してくださいね。あっ、ちなみに、これは前々回の投資部隊の記事で大きな案件のプロジェクトリーダーになれるまでの期間と同じですけどね。
頑張ってください、「未来のウィンドウズ」諸君。
ではでは。
【伊藤哲士の総合商社シリーズ】
第一回:『総合商社で投資がしたい』君へ。長いけど読んでくれ。投資業務の理想と現実
第二回:また長くなっちゃいました。総合商社の「海外駐在ガチャ」のアタリとハズレ。
第三回:社内でヒマして年収2000万。商社のエリート窓際族「ウィンドウズ2000」の光と闇を教えよう
第四回:「学生起業のすゝめ」内定後〜入社まで、君たちはどう過ごすか?【基礎編】
第五回:「学生起業のすゝめ」内定後〜入社まで、君たちはどう過ごすか?【実践編】
※こちらは2018年4月に公開された記事の再掲です。