こんにちは、ワンキャリ編集部です。専門性を生かした就活について、今行うべき対策を専攻別に解説する「理系学生就活レポート」。今回は「生物・生命科学専攻」編です。本レポートを参考に、あなたの専攻が持つポテンシャルを最大限に生かしながら就活を進めましょう。
<目次> ●生物・生命科学専攻の学生がまず初めに行うべき就活対策は3つ ・基本スケジュール ・まず初めに行うべき3つの対策 ●業界・職種を絞らず、幅広く情報を集めよう ●研究内容の整理と説明準備 ・研究内容別ポイント ・職種別のポイント ●自己分析とガクチカの準備 ・自己分析 ・ガクチカの準備 ●まとめ
生物・生命科学専攻の学生がまず初めに行うべき就活対策は3つ
まずは、一般的な理系学生の就活スケジュールを確認し、全体像や各時期の忙しさを把握しましょう。次に、就活をスタートするにあたってまず初めに行うべき就活対策を3つ紹介します。
基本スケジュール
一般的な理系学生の就活スケジュールは以下のようになっています。まずは、全体像や各時期の忙しさを把握しておきましょう。
| 時期 | やるべきこと | 忙しさ | ポイント |
| 4~5月 | 説明会やイベントへの参加 夏インターンシップ選考に向けた準備 |
★ | 説明会やイベントに参加し、志望する業界・職種を検討しましょう。 また、エントリーシート(ES)や面接の準備も併せて進めておきましょう。 |
| 6~7月 | 夏インターンシップの応募・選考参加 | ★★ | 夏インターンシップの締め切りや選考が続き、次第に忙しくなります。 |
| 8~9月 | 合格した夏インターンシップへの参加 | ★★★ | 夏インターンシップへの参加に加え、研究テーマ決定や学会参加など研究のイベントも発生しがちです。 この時期は最も忙しくなる傾向にあります。 |
| 10~11月 | 秋冬インターンシップへの準備 | ★★ | 忙しさが多少落ち着き、研究にも時間を割けるようになります。 特に、夏インターンシップで志望業界・職種を絞れた場合は、秋冬インターンシップへの応募を控えめにするのもいいでしょう。 |
| 12~1月 | 秋冬インターンシップ・早期本選考への参加 | ★★ | 秋冬インターンシップに加え、早期本選考が始まります。 内定を獲得する学生も現れるようになります |
| 2~3月 | 本選考が本格化 | ★★ | 本選考が本格的に始まります。 インターンシップに参加している場合は、その負担は比較的少なくなることが多いです。 |
| 4~5月 | 多くの人が就活を終える | ★ | 多くの人が就職活動を終了し、入社先の検討を行う時期です。 |
まず初めに行うべき3つの対策
上記のスケジュールから逆算すると、就活をスタートする際にまず初めに行うべき就活対策は次の3つです。
・業界や職種を絞らず、幅広く情報を集める ・研究内容の整理と説明準備 ・自己分析とES回答の準備
それぞれの項目について、以下で詳細を説明します。
業界・職種を絞らず、幅広く情報を集めよう
まずは説明会やイベントに積極的に参加し、企業について理解を深めましょう。この際のポイントは、業界を問わず、できる限り幅広く情報を収集することです。
生物・生命科学専攻の学生の中には、食品や製薬・化粧品を手がけるメーカーの技術系職種という王道にしか焦点を向けない学生も少なくありません。しかし、最初から業界・職種を絞ってしまった場合、後になって「この業界は自分には合わないかも」となったときに、別の業界を一から調べ直す手間が生じてしまいます。
また、専攻と直接的には関連しないものの、専攻での学びを生かせる業界・企業は多数存在します。実際、専攻での学びを生かしてメーカーの事務系職種やコンサルティングファーム・商社などで内定を獲得している学生は少なくありません。
幅広い情報に触れることで、予想外の適職に出会えるチャンスがあるのです。こうした背景から、今の時期はできるだけ幅広く情報を収集しましょう。具体的に専攻を生かせる企業・職種を調べたい方は、以下を参照してみてください。
▼専攻を生かせる企業・職種を調べたい方はこちら 専攻別 キャリアデータベース![]()
研究内容の整理と説明準備
特に理系院生が就活する場合、業界・職種を問わず研究について問われる機会が非常に多いです。
しかし、面接官はあなたの研究領域に詳しくない場合がほとんどです。人事社員や事務系の社員はもちろんのこと、技術系社員であっても、あなたの研究分野に精通していることはまれです。
そのため、事前に準備しておかないとあなたの研究での頑張りがうまく伝わらない可能性が高いです。研究内容の整理と説明準備は必要不可欠な対策といえるでしょう。
さて、研究内容を整理し説明する際によくいわれるポイントは「専門用語をできるだけ使わず、初学者にも分かるように説明する」というものです。当然このポイントは非常に重要ですが、加えて研究内容や選考を受ける職種ごとに意識すべきポイントが存在するのです。
以下では、そうしたポイントを2つ説明します。
研究内容別ポイント
基礎研究に取り組んでいるあなた
基礎研究の場合、内容をそのまま伝えたとしてもその意義が理解されづらい傾向にあります。よって、具体的な内容は最低限に留めておき、その研究において何が課題になるのか、それをどのように乗り越えたのかといったエピソードを重点的に説明しましょう。また、具体的な内容に言及する際も、正確性を多少犠牲にしてでもイメージの湧きやすい説明を意識しましょう。
例1: 本来の研究:特定のタンパク質Aが細胞分裂の制御において果たす分子メカニズムの解明 簡略化した説明:細胞が増える際の「ブレーキ役となる分子(タンパク質A)」の仕組みに関する研究 例2: 本来の研究:ある種の植物が持つ、病原菌感染に対する抵抗性に関わる遺伝子B群の網羅的探索と機能解析 簡略化した説明:ある植物が病気に強い理由となる「特定の遺伝子(遺伝子B群)」を見つけ、その働きを研究
以下では、実際のESでの回答例を紹介します。
【設問】
研究概要・テーマを教えてください。
【解答】
学部では、◯◯を用いた乳化法を利用し、◯◯である◯◯由来のポリマーナノカプセル(PNC)の調製に取り組んだ。高分子化合物から成るPNCは安定性が高く、◯◯としての継続利用が期待される高機能材料である。◯◯条件下で◯◯状態を保つ◯◯は、◯◯を溶解させる特徴を持ち、◯◯のグリーンな代替として注目を集めている。カプセル内包物の漏出現象を利用することで、◯◯原因◯◯である◯◯を検知可能であり、◯◯への応用が示唆された。修士では、◯◯構造を持つ◯◯と◯◯の混合PNCの調製に取り組んでいる。◯◯は高生体適合性であり、◯◯や◯◯等の◯◯に用いられている。◯◯と◯◯がランダムに重合したポリマー膜を形成することで、生体適合性や◯◯の吸着耐性を高めたPNC調製を目指している。
※出典:アストラゼネカ|R&D職2026年卒インターンシップ選考のES
【設問】
学生時代の専攻分野や学んできたことについて、自由に記載してください。
【解答】
私の研究テーマは◯◯に含まれる◯◯および◯◯の解明です。◯◯の一種である◯◯が空気中で◯◯されると、◯◯の主要因となる◯◯での◯◯の◯◯を抑制します。しかし、◯◯の◯◯の詳細はよく分かっておらず、この機構の詳細な解明により、医薬品開発や◯◯を通じた予防医学への応用が期待されます。私の研究の社会的意義は健康長寿社会確立への貢献であり、◯◯を通して科学的に◯◯の健康効果を本気で実証したいと考えています。現在の成果は短時間かつ高収率で◯◯を取得できる酸化メソッドの確立です。◯◯や◯◯の検討を幾度も重ね、◯◯の最適化に成功しました。今後の目標は◯◯解析や◯◯解析を行い、◯◯を決定することです。
※出典:カルビー|研究コース2025年卒本選考のES
応用研究に取り組んでいるあなた
基礎研究と比べればその内容は理解されやすいため、ある程度具体的に説明すると良いでしょう。応用研究の場合「研究結果はどのように社会で活用できるのか」といった、実務への応用を見据えた質問が多い傾向にあります。スムーズに回答できるように準備をしておきましょう。
例1: 健康に良い希少な天然成分を、微生物発酵で効率よく作る研究をしています。この技術は有効成分を安価で安定供給できる特徴があり、これを活用することで、手軽な機能性食品を開発し、人々の健康増進に貢献できます。 例2: ゲノム編集で高温や乾燥に強いイネ新品種を開発しています。このイネは厳しい環境でも安定収穫できる特徴があり、これを活用することで、気候変動下の食糧生産を安定させ、食糧危機リスクの軽減に貢献できます。
以下では、実際のESでの回答例を紹介します。
【設問】
学生時代の専攻分野や研究テーマについて、自由に記載してください。
【解答】
食べ物の美味しさを数値化する研究を行っている。研究食材として◯◯を使用している。うま味成分、粗脂肪含有量、水分量などの測定・分析を行う。次に一定条件下で加熱した試料を用いて、食感に関わる硬さやもろさを明らかにする破断測定を行う。さらに味覚訓練を受けた官能評価員により、実際に食べて感じる食感・香り・味を評価する。これらの結果により、○の美味しさはどのような要素から成り立つのかを追求している。今後は香りの成分とうま味成分の関係に焦点を当てて、さらに研究を進める予定である。この研究は食品メーカーにおいて、より多くのお客様が「美味しい」と感じる様々な食品の研究開発に応用できると考えている。
※出典:カルビー|プロダクト開発コース(研究/開発/生産技術/DX推進等)2025年卒本選考のES
【設問】
研究内容を小学生が理解できるように分かりやすく400文字以内で説明してください。
【解答】
製薬に用いる◯◯という植物が持つ有効成分を高める育て方を研究している。◯◯とは違い、漢方薬やサプリメントに使用される植物で身体を強くする効果をもつ重要な植物である。現在は畑で育てているが、天気によっては品質や供給量が安定しないことが問題となっている。そこで有効成分を多く含む高品質な◯◯を安定して収穫できるよう、◯◯を育てるために必要な栄養素を含む液体(培地)を使って育てる方法を検討している。今回は◯◯を育てており、◯◯含む培地で育てた◯◯の有効成分量が約2倍高いという結果が得られた。今後は◯◯を調査し、より◯◯が育ちやすい培地を作ることと、その培地を使ってより大量に◯◯を育てられるかを確認する予定である。
※出典:資生堂|Research&Development(R&D)2025年卒本選考のES
職種別のポイント
技術系職種を受ける場合
技術系職種を受ける場合は、技術系の現場社員に対して研究を説明する「技術面接」が行われることが一般的です。研究の目的やその意義についてスムーズに説明できるようにしておきましょう。また、説明の中で用いられた専門用語や実験器具に関する質問を求められることも多いようです。基本事項を分かりやすく説明し、その分野に関する知識を備えていることを示しましょう。
【学生からのコメント】 ・実験装置の使用経験をアピールすることも有効だろう。実際、私は食品・製薬に関する研究でよく用いられる装置の使用経験を示し、入社後に活躍できることをアピールした。 ・細かい内容を話し過ぎると伝わりにくくなるため、研究の目的や面白さを重点的に話した。細かい内容は質問された際のみ伝えるようにしていた。
事務系職種を受ける場合
技術系職種とは異なり、研究内容自体の質問はあまりされない傾向にあります。代わりに、研究におけるチーム経験や困難に対する向き合い方といった観点から質問をされる場合が多いです。これまでの経験を思い出し、その時の考え・取った行動を整理しておきましょう。
【学生からのコメント】 ・面接官に応じて回答の粒度を柔軟に変えることが重要だ。私は、面接官が生物学に関する知識を少しは有しているのか、そもそも理系の研究に対する解像度が高くないのかなどを、研究概要を述べた際の様子から判断し、それに応じて説明の方法をアレンジするようにしていた。 ・大事なことは、自身が取り組む研究のイメージを相手に抱いてもらうこと。そのために、基本的な用語であってもかみ砕いた表現にすることを意識していた。
自己分析とガクチカの準備
自己分析
企業探しを進めながら、自己分析も進めておきましょう。自己分析を丁寧に行っておくことで、面接で学生時代に力を入れたこと(以下、ガクチカ)や自己PRの深掘りを受けた際でも、一貫性を保ちながら回答が可能です。実際の面接で、一貫性を意識しながら回答をすることは容易ではありません。だからこそ、早めに自己分析を進めておき、自身を説明する練習を多く積んでおきましょう。具体的な対策方法は以下の記事を参照してみてください。
▼自己PRの書き方はこちら 【自己PRのテンプレ】就活で使える強みの書き方を解説|例文付き
ガクチカの準備
自己分析と併せて、ガクチカの内容についても考えておきましょう。特に6~7月は夏インターンシップのエントリーが集中しますが、提出する多くのESでガクチカが問われます。そのため、早めに「どのエピソードについて話すのか」を決めておき、その時の自身の考えや取った行動について整理しておきましょう。具体的な対策方法は以下の記事を参照してみてください。
▼ガクチカの書き方はこちら ガクチカ例文30選!高評価を得る作成方法とテーマ・文字数別ESを紹介
まとめ
今、生物・生命科学専攻の学生が行うべき就活対策は次の3つです。
・業界や職種を絞らず、幅広く情報を集める ・研究内容の整理と説明準備 ・自己分析とES回答の準備
ここまで述べた内容を元に早めに準備を進めることで、専攻のポテンシャルを最大限生かして業務を進めましょう。
