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就活サイトトップ就活記事父よ、母よ。まずはお前が仕事を楽しめ。「就活のアドバイ...

父よ、母よ。まずはお前が仕事を楽しめ。「就活のアドバイス」はその次だ。

コラム
2017年6月16日(金) | 14,330 views

― 仕事選びには「アドバイス」がつきものだ。

現に、就活生は、81%の人がアドバイスを参考にするという。一方で親も、37%の人が「子どもの就活活動を手伝っている」と答えている。


だが、ハッキリ言うが、親から子どもへの、ほとんどの就活アドバイスは全く役に立たない。


なぜか?

これを考えるには「アドバイスの本質」について知る必要がある。

事業価値の分析・財務分析ができる親なんて、ほとんどいない

親から子に送られるアドバイスの多くは、「あそこはいい会社だから受けてみたら?」というものだ。しかし、そのアドバイスにほとんど価値はない。

いい会社である、ということは少なくとも「その事業が健全であり、今後も利益を出し続けていること」が大前提にある。だが、ほとんどの社会人は財務分析や、事業分析などできない。大人になれば誰でも財務3表や有価証券報告書や決算書を読みこなし、いい会社かどうかを判断できるようになるわけではない。

これは、私自身、シード期のベンチャーの役員として働いて体感することでもある。大企業で普通に働いてきた人に「事業の成長性なんて分かるはずがない」。そもそも事業の成長性を見る力は、投資を専門とする人々や起業家の専門知識であり、あなたの親はおそらくそれらのトレーニングを受けていない。


すなわち、ほとんどの親が

「いい会社か、どうか」など、そもそも分かるはずがないのだ。

「人気企業に行け」というアドバイスは「とりあえず東大いけ」と言っているだけで、アドバイスとして価値がない

もちろん、親にも知見がある。

それが「人気企業に行け」というブランド志向のアドバイスだ。確かにブランド力がある企業は志望者が多く、結果的に優秀な人材も集まりやすい。従って、このアドバイスにも一理はある。

だが、それは例えるのであれば、受験生に向かって「とりあえず、東大行け」といっているもので、アドバイスとしての価値はない。

子どもからすると「そんなもん知っているわ。行けるもんなら、俺だって行きたいし」で終了なのだ。だから、アドバイスとしてはノーバリューだ。

親がやるべき支援は、「金と人の工面」のみだ

では、親は本質的には何をサポートすべきなのだろうか?

下の図を見てほしい。

そもそも、アドバイスの価値とは、「本質的に大事だが、本人ではできないこと」に存在している。例えば、あなたが弁護士を雇うのは、人生にとって大事な問題であるが「自分では対処できないから」ではないだろうか。これと同様だ。

では、就活生にとって「大事であるが、自分ではやりづらいこと」は何かというと、それは2つだ。


1つは「お金の工面」

2つは「人の紹介」


これが親が就職活動においてやれる、最大公約数な支援なのだ。


仕事に「生きていくため」と「人生を豊かにするため」の2つの側面があるとしたら、ここまでは「生きていくため」すなわち「お金を稼ぐため」のアドバイスや支援の話だ。

しかし、私は「人生を豊かにするため」の支援こそを親に行ってほしいと思う。

この思いは私の過去の経験に基づいている。

あのとき、私が本当に知りたかったのは「仕事の本質的な楽しさ」

多くの人にとっての父親像と同様に、私にとって憧れの存在は父だった。今でも覚えている。小学2年だった私は父が勤める会社の同僚たちが行う草野球を観に行くことがあった。4番でピッチャーの父がフェンスのない大きな野原に特大のホームランを打ち、ベースを駆け抜ける姿を見て、私は心を躍らせた。

「この人は何でもできる人だ!」と。

だが、いつ頃だっただろうか。

家に帰った父が少しずつ、会社の愚痴を言うようになった。仕事の話で笑わなくなった。高校生になった私は必要レベルには幼かったが、それを「ダサい」と一言で切るほどには、未熟ではなかった。父が、私たち家族の財政を支えてくれていることは十分に感じていたのだ。


ただ、そんな彼の背中を見て私は一つの事実を心に刻み込んだ。

「仕事とは、辛くて、大変なものなんだ」と。

有価証券報告書を読み込み、財務分析するような学生に足りなかった視点

私は高校時代にある大きな失敗をした経験から、「事業」と「組織」に対して普通の大学生よりも強い関心があった。就職活動のときも、気になる企業の有価証券報告書を読み込み、売上高や営業利益の推移などを財務分析するような痛い子だった。

「へー、電通て、ROAが高いビジネスモデルなんだ!」

などと、全く誰にも共感されない部分で電通の面白さを感じていたものだった。

だが、その興奮というのは「単なる知的好奇心としての楽しさ」であり、仕事を通して何をしたいか、何が面白いのか、全く分からなかった。そもそも仕事とはダルいもので、しんどいものだという価値観が確立されていたからだ。

つまり、どんなに頑張っても頑張っても、企業を分析してみても、私は、一番大事な「仕事への期待感」を掴むことができなかったのだ。

仕事の楽しさは、「何の因子によって決定されているのか」を見つけてほしい

そして、実際に社会に出てみると私は驚いた。

なぜなら「仕事をめちゃくちゃに楽しんでいる人」というのが、確かに存在したのだ。そして、どうやらそれは会社の形態にはよらないようだった。外資系とか、日系とかは関係ない。メーカーだから、商社だからとかも関係ない。その違いを生む唯一で最大の因子はたった1つで


「親が仕事を楽しんでいる姿を若い頃に見ていたか、否か」だったのだ。


子どもにとって親は強烈なサンプルであることは間違いない。

確かにOB/OG訪問は学生にとってサンプルを集める行為だ。だが、それに対応する社員にとってそれはあくまで「仕事」であるため、本音は語れないし、語らない。やはり、親とは代わりのきかない「圧倒的なサンプル」であり、仕事を楽しめるかどうかを決める因子なのだ。


だから、私は自分の虚栄心を満たすためだけに子どもに仕事選びのアドバイスをする親を前にすると、声を大にして言いたくなるのだ。


「父よ、母よ。まずはお前が仕事を楽しめ。

 就活のアドバイスはその次だ」と。



北野唯我(KEN)

──記事一覧はこちら:ワンキャリア北野唯我/KEN特集

──Twitterはこちら:@yuigak

──ブログはこちら:新卒採用メディア執行役員のブログ

「キャリアを考える 親のこと」特集|記事一覧
Vol.1 トイアンナ:就活を邪魔する親と、感謝される親の違いとは?LINEで見るトップ学生の本音
Vol.2 りょかち:「大人サンプル」を親以外に増やすことの効能
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Vol.4 北野唯我(KEN):父よ、母よ。まずはお前が仕事を楽しめ。「就活のアドバイス」はその次だ。
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取締役
北野唯我(KEN)

北野 唯我(きたの ゆいが):株式会社ワンキャリア 取締役CSO/作家
新卒で博報堂の経営企画局・経理財務局勤務。米国・台湾留学後、ボストンコンサルティンググループを経て、2016年ワンキャリアに参画、現在取締役として戦略・採用・広報部門を統括。2021年10月、同社は東京証券取引所マザーズ市場に上場。作家としても活動し、30歳のデビュー作『転職の思考法』(ダイヤモンド社)が20万部、他に『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版社)などで、著者累計40万部。

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