失敗、それは誰もが避けて通れない道。
連載企画「しくじリーマン」では、社会人たちが経験した失敗談と、そこから得た学びを皆さんにお届けします。
今回はトイアンナさんのエピソードを紹介します。上司との相性が最悪だったトイさん、その原因と解決策とは……?
こんにちは、トイアンナです。突然ですが「マイクロマネジャー」という言葉はご存知でしょうか。マイクロマネジャーとは、細かいことまで口を出す上司や先輩を指す言葉です。細かく口を出しすぎることから悪い上司の例として引き合いに出される一方で、マイクロマネジャーなしには大損失に繋がるミスを起こしかねません。あけすけに言ってしまえば部署に一人は欲しいが、自分の上司だとしんどい人材がマイクロマネジャーです。
私のしくじり:「マイクロマネジャー」な上司と毎日、不毛な言い争いをして疲弊した
そしてお恥ずかしながら、私はマイクロマネジャーです。自分のブログにも書きましたが、さんざん細かく指導されて嫌気がさしていたくせに、気づけば自分が細かい事をグチグチ言う「嫌な先輩」になっていました。そこで私と同じ轍を踏まないよう、今回はいつの間にかマイクロマネジャーになってしまった私の失敗談をお伝えしたいと思っています。
マイクロマネジャーになりやすい素質
よく誤解されることですが、マイクロマネジャーになりやすい人はもともと完璧ではありません。むしろ原稿1本書けば必ず誤字を2つ3つ出してしまう、私のような人間も多く含まれます。ミスが多い人間は新入りのときにお叱りを受けやすいので「細かいところを注意しなきゃ」と学びます。そしてこの学びが数年後、後輩指導へ反映されてしまうのです。これがマイクロマネジャーが発現するキッカケの1つ。
そして個人的には「マイクロマネジャーになりやすい人」という素質もあると考えています。
・準備を完璧にしたことに満足して本番がおざなりになりやすい
・学生時代から勉強法に自分なりのこだわりがあった
・人が気付かないくらい余計な気遣いもついやってしまう
・自分では真面目だと思っていないが、人からクソ真面目だと言われる
独断ながらこれらに当てはまる人はずばり、マイクロマネジャーになりやすい人です。私はミスが多い上に上記の条件に全て当てはまり、マイクロマネジャーになりやすい素質をこれでもかと持っていました。
そして、そんなマイクロマネジャーになりやすい人が一番潰れやすいのは、自分と同じマイクロマネジャーに指導されているときです。
半角スペースか全角スペースかで言い争う
幸か不幸か、私はマイクロマネジャーの元に就く経験が多くありました。マイクロマネジャーにはその人なりの「完璧な仕事、かくあるべし」というこだわりが多く、部下はそのこだわりが読めず苦戦するものです。そして自分自身もマイクロマネジャーだと、お互いのこだわりを押し付けてぶつかり合うことになります。
その中でも我ながら「自分、アホだな」と思った経験があります。ある企画でメール配信型広告を作っていたときのことです。
上司:トイさん、なんで「〇〇 〇〇様」のところは名字と名前の間が半角スペースなのに「拝啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます」の間は全角スペースなの? こういう手抜きがあるからいつまでたっても私の仕事が終わらないんだけど?
私 :いえ、「名字 名前」の間は半角スペースの方が一連の名前だと認識しやすいと思い、わざと半角にしました。逆に「拝啓 時下ますます〜」は文節が区切られるので全角に……。
上司:は? なんでそんなところこだわるの!?
私 :(上司はなんでそんなところこだわるの!?)
……不毛な議論です。顧客は半角スペースだろうが全角スペースだろうが気にもしないでしょう。しかしマイクロマネジャーはこのこだわりを「優れた成果へ向けた努力」だと思ってしまいます。私がもっと適当な人間だったら上司のこだわりすら「そんなもんか」と流せたはずです。しかし私は私でこだわりがありました。
このように、ハッキリ言ってどうでもいい言い争いを毎日のように繰り返した半年後には、上司と私の双方が休職を考えるほど疲弊していました。半角スペースを巡る喧嘩で、危うくキャリアにスペースを作るところでした。アホとしか言いようがありません。
外資系企業は人事異動が頻繁にあるため、異動の多い上司より部下がプロジェクトの知見を持っていることも起こります。また上下関係も日系企業と比べればフラットなため、上司部下で意見を交わすことがよしとされます。お互いに目的意識が同じなら大変過ごしやすい職場環境ですが、マイクロマネジャー同士だと「部下なのに上司のこだわりを無視して勝手にやって」 VS 「経歴が浅いくせに上から好き勝手言っちゃって」と譲れない試合が始まってしまいがちです。
しくじりから得た学び:こだわりを、聞き出そう
こうして、マイクロマネジャーと身近に接し、また自身もマイクロマネジャーとなってしまったことで、学んだことが2つあります。
1点目は「マイクロマネジャーだから嫌な上司だ」という考えを改める点。マイクロマネジャーに当たり続けた人生で分かったのは、マイクロ型でも優しい指導ができる人は大勢いるという点でした。マイクロでもいいマネジャーは「細かいとこ私は気にしちゃうタイプだから最後いじらせて」とこだわりへ自覚的です。また、これは自戒でもあるのですがこだわりを絶対的なものとして押し付けません。
逆に問題のあるマイクロマネジャーは自分のこだわりに過ぎないささいな点こそが仕事の優劣を決めると勘違いし、それに気づけない部下へ人格攻撃をしてきます。実際、私が休職まで考えたマイクロマネジャーの何が嫌だったかを振り返ると「何度言っても(私の考えた)完璧な仕事ができないなんて、知能に問題あるんじゃない?」「さっさと頭の検査しに病院行けよ、無能」などマイクロマネジメントそのものより、できない相手への人格攻撃にあったと気付きました。
そして、2点目は、マイクロマネジャーとうまく付き合う方法です。それは「相手のこだわりを、最初に聞き出そう」ということ。
別に半角スペースだろうが全角スペースだろうが人が死ぬわけでなし、相手のこだわりに合わせてもいいはず。マイクロマネジャーは試作品を出すとあれやこれやと怒りだすので、作業を始める前に相手のこだわりポイントを聞いてから手を動かすと楽にコトが進みます。
疲弊しきった上司から離れ、別のマイクロマネジャーに当たってからは手を動かす前に確認を取ってから動きました。「まず動け、動きながら考えろ」とされるガツガツ系外資では異端のやり方ですが、この方が結果としてスムーズに承認を得られました。
「マイクロマネジャー型であること」ではなく、人格の問題
どんなマネジメントスタイルであれ、人格攻撃をする上司には問題があり、逆にマネジメントの手法が何であれ、よい上司はよい上司なのです。ですからあなたが仮に「マイクロマネジャーのもとで病みそう」なら、それはマイクロマネジメントのせいではありません。その上司の問題です。
それに気付けたため「上司の人格攻撃に問題があります。証拠として録音データを提出します。上司を異動させてください。さもなければ私は辞めます」と強気で交渉できました。そして次に出会った上司もまたマイクロでしたが、最高の上司でした。
ですから休職したり、異動したりして別のマイクロマネジャーに当たっても次は大丈夫。相手が何であれ、病むくらいなら逃げましょう。それがこの記事の最後に添える、一番大事なメッセージです。
いかがでしたか?
先人の失敗に学び、よりよい社会人生活に備えてくださいね。では、また次の「しくじリーマン」のエピソードでお会いしましょう。