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「デベロッパーは旧態依然」のイメージを打ち破る。三井不動産のIT経営・グローバル進出の真相

企業インタビュー インタビュー 不動産 日系
2020年7月20日(月) | 35,167 views
sponsored by 三井不動産

※こちらは2019年11月に公開された記事の再掲です。


売上高1兆9,000億円、営業利益2,800億円、デベロッパー業界でも不動の1位の座にある三井不動産。

同社は業界のリーディングカンパニーとして、日本初の大型ショッピングセンターや超高層ビルなど、時代に先駆けて新しい価値を創造してきました。2025年に向けて、「建物」「不動産」の枠を超えた未来の街づくり、海外営業利益の倍増を目指すなど、現在も挑戦のDNAは衰えていません。


今回は、人事部人材開発グループの角田さんに同社の絶えざる挑戦についてお話を伺いました。学生が抱く「財閥系で不動産というと、旧態依然としているのでは?」というイメージの真偽に切り込みます。

8人で始めた新規事業に、7年間で5,000億円を投資──戦後一貫して続く開拓者の気質

角田 佑介(かくだ ゆうすけ):三井不動産株式会社 人事部 人材開発グループ所属。2011年入社。商業施設(コレド室町、ららテラス武蔵小杉など)の開発に1年半、新規事業として発足したロジスティクス本部の立上げメンバーとして施設開発、用地取得業務やREIT立上げなどに6年ほど従事。2018年より新卒採用担当。


──角田さんが入社から8年半の間に担当してきた業務の中で、特に印象的だった仕事は何ですか?


角田:入社2年目から約7年間携わった新規事業の立ち上げです。企業向けの物流倉庫を開発するロジスティクス本部に、発足メンバーとして参加しました。

すでに社内にノウハウがあるオフィスビル、商業施設などと違い、物流倉庫のことは何も決まっていなかったので、何もかも1から考える必要がありました。例えば、トラックの停車スペースの長さや幅などの設計基準も分からないほど。何度も専門家にヒアリングするなど、とにかく手探りの毎日でとても忙しかったですね。

複合型物流施設「MFIP羽田」


──「財閥系」「不動産」と聞くと、「新規事業を始めるにも、意思決定が慎重で保守的」といったイメージを持つ学生もいると思うのですが。


角田:確かに、学生さんからもよく誤解される点ですが、実態は違います。三井不動産は戦後の財閥解体で、不動産をあまり持たない状態からスタートしている会社なので、自ら新開拓地を切り開いていった歴史があります。現在でもその風土は受け継がれていて、「挑戦」というDNAが根付いているんです。会社全体で新規事業を応援する雰囲気がありますし、やると決めたらスピード感はすごいですよ。

ロジスティクス本部も、私が所属した約7年間でメンバーは8人から50人にまで増え、国内約30拠点、総投資見込み額5,000億円規模にまで一気に拡大しました。まるで1つのベンチャー企業が成長していくようなプロセスだったと思います。


──7年間で5,000億円を投資するとは、新規事業への覚悟を感じます。


角田:三井不動産が数々の日本初を達成していることにも、開拓者の精神が表れていると思います。霞が関ビルディングは日本初の超高層ビルですし、千葉県船橋市の「ららぽーとTOKYO-BAY」は日本初の大型ショッピングセンター。不動産投資を小口化し、J-REIT(J-リート)という投資しやすい仕組みを作ったのも三井不動産が最初でした。

1968年に建てられた日本初の超高層ビル「霞が関ビルディング」

日本橋にガス発電プラントを建設? 三井不動産は東京をアップデートする

──この記事で初めてデベロッパーや三井不動産を知るという学生に向けて、事業内容を教えていただけますか?


角田:簡単に言うと、デベロッパーの仕事は「土地を仕入れ、そこに建てる施設を企画し、できた施設を運営すること」。その中でも三井不動産は、オフィスビル・商業施設・ホテル・住宅など多様なアセットを扱う「総合デベロッパー」です。

実は、世界的に見ると総合デベロッパーは珍しい業態です。分業制が進んでいる国では、住宅事業だけ、ホテル事業だけというように、専門デベロッパーとなるケースが多いんです。


──なるほど、「住宅専業」「ホテル専業」ではなく、さまざまな種類の不動産の開発に関わっていると。特定の建物に限らず、街全体の発展に関われるのは、魅力的ですね。


角田:はい。近年は特に、特定の建物だけではなく、エリア全体の価値を高める方法を模索しています。例えば、「日本橋スマートエネルギープロジェクト」。東京ガスさんと連携して、日本橋室町三井タワーの地下にガス発電プラントを作ることで、周辺地域に電気と熱を安定供給できるようになりました。既存建物を含めたエネルギー供給が出来る仕組みは日本初です。災害で停電が起こっても日本橋地域を支えられますし、普段から省エネ・省CO2のエコフレンドリーな街づくりの実現を目指していきます。


──デベロッパーが発電まで手がけているとは意外です。


角田:単に建物を作って終わりというのではなく、エリアの価値を高めるために必要なサービスは積極的にやっていくということですね。今後はこの都心型スマートシティモデルを豊洲など、他のエリアにも展開する予定です。


──「街づくりの主役が建物から人になった」と言えるかもしれませんね。


角田:当社は街のイベント運営などにも積極的に関わっています。具体的には、夏の風物詩となったアートアクアリウム、日本橋の橋洗いなどのイベントを行なっていて、地域の方々に街への愛着を深めてもらおうとしています。三井不動産は特定の建物に限らず街全体にコミットし、「その街に訪れること・住むこと・働くことへの安心感」を高めていきたいのです。

日本橋エリアのイベントスペース「福徳の森」


角田:このような「街づくりの一層の進化」は、長期経営方針「VISION 2025」の主要な取り組みの1つとして掲げられているテーマです。単純に施設の床を貸すだけではなく、その床を使ってどのようなサービスを提供できるのか。従来のデベロッパーのビジネスモデルであるハードビジネスから、ソフトビジネスへの転換が必要となっています。

Facebookが街づくりに参入する時代──日本政府も認める三井不動産の「攻めのIT経営」

──長期経営方針「VISION 2025」では、「街づくりの一層の進化」以外に何を掲げているのでしょうか?


角田:「リアルエステートテック活⽤によるビジネスモデルの⾰新」「海外事業の飛躍的な成長」です。

まず「リアルエステートテック活⽤」ですが、背景には、テクノロジーの加速度的な進化に伴い、私たちの日々の暮らしも大きく変化していることがあります。先ほどの街づくりの一層の進化ともつながりますが、従来のハードだけのビジネスモデルの枠にとらわれない、テクノロジーを使った新たなサービス提供が必要となっているのです。

現在、三井不動産はテクノロジーを活用したスマートシティの開発に着手しています。例えば千葉県の柏の葉では、自動運転バスの実証実験を行なっています。


──自動運転バスの試みは人手不足が叫ばれる地方にも展開できそうです。


角田:はい。少子高齢化、労働力減少など今後世界の国々が直面するであろう課題に今遭遇している日本は「課題先進国」と呼ばれています。このように社会課題を街づくりを通して解決できれば、日本はもちろん、世界中にノウハウを広げ変化を起こせるかもしれません。三井不動産グループが持つ7.3兆円のアセットが世界を変えるITの実証フィールドになるかもしれないと思うと、ワクワクしますね。

──世界の都市開発というと、Facebookがアメリカのシリコンバレーで都市開発を進めています。


角田:不動産領域の門外漢だったはずのメガIT企業が街づくりに進出している現状は、私たち総合デベロッパーも強く意識しなくてはなりません。私たちは「建物」「不動産」より、もっと高い視点から俯瞰(ふかん)して街づくりを考える必要があるのです。


――新規ビジネスの創出という観点で、他にどのような取り組みがありますか?


角田:ベンチャー共創事業の「31 VENTURES」では、コワーキングスペースを運営し、ビジネスマッチングからベンチャー企業への出資まで行なっています。また、新規事業を提案できる制度「MAG!C」なども整ってきました。

こうした実績から、三井不動産はデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に取り組んでいる企業として経済産業省に評価されており、ヤフーやディー・エヌ・エーと並んで「攻めのIT経営銘柄2019」に選定されています。

海外売上高の倍増に必要なのは、自社ブランド力と街づくりノウハウ

ららぽーとクアラルンプールの完成イメージ図


──「海外事業の飛躍的な成長」についても教えてください。


角田:2025年前後をめどに、海外事業の営業利益の割合を全体の30%、金額にして1,000億円。2018年の約2倍にまで伸ばすことを目指しています。


──海外営業利益の倍増とは、非常に思い切った目標に思えます。


角田:はい。そもそも「不動産業の海外進出は難しい」という事実を考えねばなりません。生活に密接している不動産には、人々の思いがこもっています。国内での開発でも地権者や近隣住民の方と厳しい交渉になりますから、海外の土地を開発するのはさらに難しい。


──確かに、「海外事業者に自分の街を開発されたい」という人は、そういないかもしれませんね。


角田:なので、海外での不動産開発においては、事業機会の獲得、行政の許認可取得、近隣交渉などを一緒に実施してくれる、信頼できるパートナー選定がなによりも肝要です。ただし、そのようなパートナーにも日本の総合デベロッパーと一緒に事業をする意義を資金力以外に感じ取ってもらわなければ、ただの投資家と同じ立ち位置に終わります。実際、日本企業の海外不動産案件はマイナー投資が中心で、ほとんど投資業のようになりがちでした。

三井不動産は総合デベロッパーとしての意地があります。今後、地に足をつけて海外利益を伸ばすためにポイントとなるのは、具体的には2点かと考えています。1点目が自社ブランドの展開です。三井不動産が開発する施設のブランド力を国内のみならず、グローバルに高めていく必要があると考えています。街に外資の高級ホテルができたら誰もが喜ぶのと同じように、「三井不動産が開発するららぽーとなら是非!」と感じてもらえることが理想です。現在は、台湾や中国、マレーシアといった国々に「ららぽーと」や「三井アウトレットパーク」といった自社ブランドでの開発を展開しています


──2点目は何でしょうか?


角田:2点目は総合デベロッパーのノウハウです。先ほど、多種多様なアセットを開発するデベロッパーは世界でも稀有(けう)だという話をしましたが、何がいいかというと、一社で街づくりができるノウハウを持っているということです。現在では、ニューヨークやロンドンといった先進国での大規模再開発に携わっていますよ。

「旧態依然」「グローバルに働けない」デベロッパーにまつわる学生のイメージを一刀両断

──ここからは社風や業務について伺いたいと思います。本取材にあたり学生にヒアリングしたところ、デベロッパーに対し、「旧態依然としていて、社風が挑戦的ではなさそう」「グローバルに働けるイメージがない」といった声が上がりました。角田さんは、これらのコメントについてどう思いますか?


角田:まず「旧態依然としていて挑戦的ではない」というイメージについては、先述した「VISION2025」の取り組みを聞けば、そうではないと分かっていただけると思います。これまでと同じビジネスモデルでは成長できないことを強く自覚しています。


──「グローバルに働けるのか」についても教えてください。


角田:先述の通り、グローバル展開は加速しており、海外に関わるチャンスも非常に増えています。

海外駐在に関して言えば、現在は70名ほどのメンバーが台湾やニューヨークなど14の拠点で勤務をしています。まずは国内で不動産の業務などを経験した後、若手のうちから海外で働けるケースもありますよ。

また、国内にいながらも海外との接点は少なくありません。私自身、海外駐在の経験はありませんが、ロジスティクス本部時代、シンガポールのデベロッパーと協力してタイの案件に携わりました。


──特に物流の領域は海外とのやりとりが必須ですから、国内にいてもグローバルに働けそうです。


角田:ビジネス全体がどんどんグローバル化している時代ですから、学生には「グローバル」の先を考えてほしいんです。

角田:「三井不動産ではグローバルに働けますか?」と聞いてくる学生はよくいますが、「具体的にどのように働きたいのか、何がしたいのか」まで考えてほしいことを伝えています。

それこそ「人生の大半は海外にいたい」という学生は他の業界も見てみるべきかと思いますが、「海外の街づくりに関わりたい」という学生はぜひ三井不動産を見に来てほしいですね。


──三井不動産の「グローバル×都市開発」という仕事の魅力は何でしょうか?


角田:やはり、デベロッパーは生活に根付いた不動産を開発しますから「現地の人々とのリアルな折衝」があることが魅力だと思います。

このリアルさを求めて他業界から転職されてくる方も増えています。例えばグローバル企業に勤めている方が、「念願の海外駐在がかなったが、現地の管理業務が中心だった」「もっと手触り感を持って働きたい」といった理由で転職してくるケースも少なくありません。

2〜3人の少人数チームこそが仕事のやりがい。チームを巻き込むのは「意見発信の力」

──ここまでのお話で、デベロッパー、三井不動産の事業や働き方の理解が深まってきました。この記事を読んで三井不動産に興味を持った学生に向けて、角田さんが感じる仕事のやりがいをお話しいただけますか?


角田:私は、チームみんなで困難を乗り越え、目標を実現できたときが一番やりがいを感じますね。

正直、働いていく中でつらいことはいくらでもあると思います。それこそ、1年目のときに担当した住民説明会では話すら聞いてもらえなかったり、時には感情的で厳しい言葉を浴びせられたりという経験もしました。このとき、心の支えとなったのはチームメンバーです。彼らと一緒だったからこそ、最後までやりきることができました。


──1つのチームは何人くらいで構成されているのでしょうか?


角田:どの案件でも大体2〜3人ほどです。この少人数のチームで、地域住民・行政・関係企業など数え切れないステークホルダーとやりとりをしていきます。


──2〜3人とは少ないですね! チームで動くことが多い三井不動産では優れたチームワークが欠かせないのではないかと思いますが、そのためにはどのような能力が必要でしょうか?


角田:まずは、「自分の意見を発信すること」でしょう。

当社ではよく、「○○さんだったらどう思う?」と聞かれます。常日頃から自分はこう思う、こうしたいという思いをもって仕事をすることが求められているんです。まず、自分の意見・考えを発信することはリーダーシップ、ひいてはチームワークの第一歩だと思っています。

それに加えて、デベロッパーはさまざまな立場の方やステークホルダーと会話することが多い仕事なので、常に相手が置かれている状況を正しく理解した上での円滑なコミュニケーション力が求められます。

──それでは最後に、デベロッパーや三井不動産に興味を持った学生にメッセージをお願いします。


角田:デベロッパーの仕事は最終的には交渉に行き着くことがほとんどです。人と人との交渉ではロジックだけをぶつけても成立せず、人間性そのものが勝負を決めます。

ですから、選考で重視しているのは志望動機だけではなく「何によって自分の人間性を磨いてきたのか」。学生生活に何をやってきたのか、どのような困難をどのように乗り越えてきたのかを、自分の言葉で語ってほしいと思います。サークル活動、アルバイト、研究内容など、なんでも結構です。

恐れずに自身の意見を発信できる学生は、入社後もチームメンバーやステークホルダーを巻き込んでいける人材だと思います。選考で、皆さんの熱い気持ちを聞けることを楽しみにしています。


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【ライター:スギモトアイ/編集:辻竜太郎/カメラマン:加川拓磨】

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