「マーケティング」という言葉に、何を想像するだろうか。華やかな広告、SNSで話題を生むクリエイティブ……。多くの学生がそのイメージに惹かれ、この職種を志す。しかし、ラクスルが重要視するマーケティングは「事業を勝たせるための価値創造」だ。
今回、話を聞いたのは、P&G Japanでのマーケティングのキャリアを活かして「ラクスルで事業を企画する道」を選んだ中嶋氏と、「仕組みを創る側」に携わることを決断した新卒入社の楠氏。彼らの仕事は、マーケターではなく「事業開発(BizDev)」だ。それはなぜなのか──「マーケティングを極めたいなら、あえて一度、事業そのものを経験せよ」。2人の言葉が、あなたの描くキャリアのイメージを塗り替える。
<目次>
●2人が選んだ「事業開発」という生き方
●成功も失敗も糧にする。次の挑戦へ伴走する環境と、育まれるマインドセット
●顧客起点で商売の「仕組み」を構築する。ラクスルが導く事業創造の最前線
●職種の枠を飛び越えよ。事業成長に向けて、あらゆる手段を尽くすマインドセット
2人が選んだ「事業開発」という生き方
──まずはお2人の原体験から伺います。なぜ「ラクスル」を選んだのでしょうか。
楠:大学時代、長期インターンでSEOに取り組み、自分で仮説を持って検証し、数字をハックすることに快感を覚えていました。しかし、Googleのアルゴリズムアップデートでルールが変わり続ける経験をし、努力やノウハウが長期でストックしていく感覚が持ちにくく、違和感を覚えることがありました。この経験から、自分には長期的に価値が積み上がっていくと感じられることが大事だと気付き、「仕組みを創る側」になりたいと強く思うようになりました。GAFAMのような完成されたプラットフォームではなく、未完成な産業に仕組みを持ち込もうとするラクスルのビジョンは、当時の僕がまさに求めていたものでした。
中嶋:私は新卒でP&G Japanに入り、3年ほどマーケティングを経験しました。P&G Japanでは消費者に選ばれるブランドに育てる「ブランドビルディング」と、ブランドを1つの事業と見立ててマネジメントする「ブランドマネジメント」という2つの役割があります。私は次第に、後者の「事業的な側面」に強く惹かれるようになりました。
──より経営や事業に近い領域に魅力を感じていたのですね。転職活動はどのような軸で行ったのですか。
中嶋:転職活動時には「次もマーケティング」と考えていましたが、転職エージェントとの対話を通じて、私が希望する業務内容、つまりPL(損益)を見ながら数字を作ることは世間一般では「事業企画(BizDev)」と呼ばれていると気付いたのです。そこからは、事業を一から十まで差配できる環境を探しました。他社では特定のKPI改善や営業を任されるケースが多い中、ラクスルだけは「事業をまるごと全部任せる」と言ってくれました。その度量の大きさに惹かれ、入社を決めました。

中嶋 岬(なかじま みさき):ラクスル株式会社 ラクスル事業本部 マーケティング統括部 統括部長
早稲田大学政治経済学部を卒業後、新卒でP&G Japanに入社しマーケティング本部にて消費財の事業・マーケティング戦略立案と実行に従事。2019年7月にラクスルへ入社。入社後はノベルティ事業に参画し、グロースフェーズの事業責任者となる。同事業部を経て、現在はマーケティング統括部長として事業横断のマーケティング戦略・実行を担う。
──「まるごと任される」というのは、自由である反面、非常に責任が重いですね。不安はなかったのでしょうか。
中嶋:もちろんありました。でも「事業企画をしたい」という好奇心の方が勝りました。当時は更地に自分たちの手で仕組みを築いていくフェーズでしたが、最初の1年間は上司が伴走し、事業の創り方を叩き込んでくれました。完全に任されるまでの期間があったからこそ、今の自分があると思っています。
──一方で楠さんが、起業の選択肢もありながら、ラクスルを選んだのはなぜでしょうか。
楠:当時、起業の選択肢もありながらも、やるなら「大きい仕組み」を創りたい気持ちが強かったのが大きかったです。当時の自分にはそれを実現できるビジョンも、その世界を見た経験もありませんでした。「思い描けないものは実現できない」。そう感じたからこそ、大きな仕組み創りに挑んでいるラクスルで、未知の世界を知ることから始めようと決断しました。
成功も失敗も糧にする。次の挑戦へ伴走する環境と、育まれるマインドセット
──実際に入社してからは、どのように事業を創り、動かしてこられたのでしょうか。
中嶋:私は入社後、紙の印刷以外の領域へビジネスを広げるノベルティ事業の立ち上げを担いました。最初はプレイヤーとして顧客ニーズを掘り下げるところから始めましたが、4年弱かけて売上ゼロの状態から年間売上15億円の規模まで成長させ、その過程で部署化し事業部長を任されました。ラクスルが面白いのは、任せ方の時間軸が長く、かつ責任が明確なことです。ひとたび教育担当の上司の手を離れたら、自分の判断が事業の生死を分けるようになる。事業が伸びれば組織が大きくなり、必然的に自分自身の視座も引き上がりました。
──楠さんは1年目から多くの職種を経験されたそうですね。その中で得た学びはありましたか。
楠:僕は1年目に、広告事業のノバセルで戦略策定から分析、営業まで、様々な職種を経験しました。しかし、2年目にSaaSプロダクトの事業開発に回った際、初速が全く出ず、大きな壁にぶつかりました。理由は単純で、自分で営業に行くべきだったのに、椅子に座って画面上の顧客データを見て頭をひねっていたからです。その時、上司から「もっとお客様に会いに行かなきゃいけない」というフィードバックを受け、そこから営業へシフトし、お客様のリアルな声に泥臭く向き合いながらプロダクトと営業組織を立ち上げていきました。現場に足を運ばなければ事業は創れないと痛感した、僕にとって大きな原点となる体験です。

楠 勇真(くすのき ゆうま):ラクスルグループ 株式会社FUSION 取締役 CRO(最高収益責任者)
東京大学経済学部卒。2020年4月にラクスル株式会社に新卒で入社。広告領域の新規事業「ノバセル」に配属され、約40社のお客様のマーケティング戦略をサポート。2年目にはラクスル史上最年少マネージャーとしてSaaSの事業開発を担当し、3年目からは営業部長としてノバセル営業部門を統括。その後、ノバセル株式会社 事業開発部 マネージャーとしてAIを用いたWeb広告事業を立ち上げ、事業責任者を務める。現在はグループ会社であるFUSION取締役CROとしてスタッフ部門を統括。
──楠さんは現在、グループ会社のCRO(Chief Revenue Officer:最高収益責任者)という役割を担っています。若手であっても、これほど巨大な裁量を渡されるのはなぜなのでしょうか。
楠:2025年にラクスルグループにジョインしたWeb広告代理店のFUSIONにCROとして出向し、PMI(Post Merger Integration)と事業成長の全責任を担っています。売上を追うだけでなく、オペレーションの刷新から利益を含めたPL全体の管掌まで、やるべきことは多岐にわたります。若手であっても、これほど巨大な裁量と責任を渡してもらえるのはラクスルの凄みですね。
中嶋:これはラクスルに「事業開発人材を社内で育成する」意向があるからです。ラクスルにおける事業開発は、産業に非連続な変化を起こすために、マーケティングはもちろん、サプライチェーン、プロダクト、オペレーションまで横断的に扱う必要があります。非常に高いレベルが求められる上、カルチャーフィットも重視するため、「若手を抜擢し、自前で育てる」を念頭に、中長期にかけて事業開発(BizDev)組織を築き上げてきた経緯があるのです。
──非常に難易度の高い役割ですが、若手が学べる環境や風土は用意されているのでしょうか。
中嶋:スキルの習得も当然必要ですが、私たちが一番大切にしているのは「オーナーシップ(当事者意識)」というマインドセットです。このオーナーシップは、意識するだけで身に付くものではなく、事業の前線で活躍している優秀な上司の隣について、「これが本当のオーナーシップなんだな」と背中を見ながら肌で感じるような体制でしか体得できないものです。だからこそ、私たちはあえて「徒弟制」のような形で、事業に没頭するマインドを現場で伝承していくことにこだわっています。
顧客起点で商売の「仕組み」を構築する。ラクスルが導く事業創造の最前線
──学生の多くは「マーケティング=広告・PR」というイメージを抱いています。お2人は今、マーケティングをどう捉えていますか?
中嶋:私は、日々の業務の中でマーケティングという言葉をあえて意識しないようにしています。マーケティングをやろう、というより「事業をやろう」という感覚が一番近い。あえて言語化するなら、それは「商売」です。100億円使って50億円売ることは、ある意味では簡単かもしれません。でも、それは商売とは呼びませんよね。顧客が何に困っているかを見極める「顧客起点」は大前提ですが、それと同じくらい、ビジネスとして継続させるために利益を出すことも重要です。根底には、「売上は顧客に提供した価値の総量である」という考えがあるためです。適切な価格で商品を提供し、広告費などを含めた費用を差し引いても利益が出るということは、それだけ顧客に価値が提供できているという証拠です。顧客起点で価値を設計しながら、同時にPL責任を負う。そのプロセスすべてがマーケティングであり、本質だと思っています。
楠:僕は、マーケティングとは「経営そのもの」だと思っています。学生時代はプロモーションの側面しか見ていませんでしたが、実際は事業を作る際のインサイト発掘から、組織作り、さらには採用まで、あらゆるシーンでマーケティングの考え方が応用できることに気付きました。採用では「どんな人に加わってほしいか」を定義し、その人たちにとっての自社の魅力を設計する。これも立派なマーケティングです。あらゆる場面で求められる「目的を達成するための技能」が、この言葉には含まれていると感じています。

──ラクスルのアイデンティティとも言える「仕組み」ですが、お2人はこれをどう捉えていますか。
中嶋:「仕組み」とは人や顧客企業に依存せず、再現性のあるものだと捉えています。私たちがやりたいのは、印刷や物流といった、構造が固定化されて時代の変化への適応が遅れている産業を、テクノロジーとオペレーションで変革することです。再現性のある「仕組み」を築くことで、産業をあるべき姿へ塗り替えていく。その「仕組みを創るプロセス」まで含めて、私たちはマーケティングや事業開発と呼んでいます。
楠:実際、社内では「解像度」や「仕組み化」という言葉が、日々いたるところで飛び交っています。打ち合わせのたびに「それは本当に仕組みとしてスケールするのか?」「顧客の解像度は低いままではないか?」と徹底的に問われる。この高い要求水準と価値判断基準が、単なるプロモーションの枠を超えた「仕組みの創造者」としての筋肉を鍛え上げることにつながっているのだと思います。
職種の枠を飛び越えよ。事業成長に向けて、あらゆる手段を尽くすマインドセット
──ラクスルのマーケター・事業創造者という視点に立つと、求められる素養も変わってきそうです。改めてラクスルで活躍するのは、どのような人でしょうか。
楠:一番は「手段へのこだわりがない人」です。「マーケティングがやりたい」という人も、実は手段の目的化に陥ってしまうケースは多い。「壮大なプロモーションをやりたい」というように手段が目的化している人は、本来達成しなければいけない目的とその手段が合致しない時に遠回りのことに向かう傾向があり、成長が加速しません。逆に「目的に合うなら得意じゃなくてもやる」「目的に合うなら全部楽しい」と思えるメンタリティを持つ人が、ラクスルでは圧倒的にパフォーマンスを発揮します。そして「素直さ」ですね。まずは先人が築いてきた知見を素直に受け入れ、そこから自分の色を出していく柔軟性が肝心です。
中嶋:事業に没頭できることがポイントです。自己の成長を目的とするのではなく、事業の成長を目的として没頭する。その結果が自己成長につながっている。そんな人が活躍していますね。以前、飲み会でふと目に入った割り箸の袋を見て「これ、どんな仕組みで印刷されているんだろう?」と気になってしまう先輩がいました。四六時中、事業のことを考えてしまうほど没頭できる純粋な好奇心を持っている人が、ラクスルでは圧倒的に強いですね。義務ではなく、遊ぶのと同じくらい楽しいゲームとして捉えられる仲間と一緒に、この国の産業を仕組みから変えていきたいと思っています。
──最後に、マーケティングに興味を持つ学生に向けて、メッセージをお願いします。
楠:マーケティングという言葉を狭く捉えてしまってはもったいない気がします。あらゆるシーンで求められる「目的を達成するための技能」として捉え直したとき、皆さんの可能性は一気に広がるはずです。その広がった可能性を武器に、僕たちと一緒に産業の仕組みを創り替えていく皆さんの挑戦を、楽しみに待っています。
中嶋:マーケティングを極めたい人こそ、一度「事業の全体観」を掴んでみてください。マーケティングは職能であり、手段です。目的である事業の全体像、つまり産業や事業の仕組みやサプライチェーン、顧客のリアルな痛みを深く理解すれば、マーケティングの精度は劇的に高まります。「マーケター」という言葉に縛られず、1人の事業責任者として目の前のお客様に価値を届ける。その手触り感を一緒に味わいましょう。

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