こんにちは、ワンキャリ編集部です。「総合商社特集」の特別企画として、「商社人事インタビュー2017」の連続掲載がスタート。第2回は、電力や穀物事業を強みとし、「若手に挑戦させる」風土といわれる丸紅。今回は、人事部 採用・人材開発課長 野村容さんにインタビューを行いました。
丸紅株式会社 人事部 採用・人材開発課長 野村 容 氏(のむら よう):
1994年、丸紅入社。10年間法務部に所属した後、リスクマネジメント部、経営企画部、広報部とコーポレート業務に一貫して携わる。2011年より3年間はタイ・バンコクへ駐在し、人事・総務等、丸紅泰国会社の管理業務を担当するとともに、広報部からの駐在員として、ASEANやインドを駆け回る。その後人事部へ異動し、採用・人材開発課長として、採用・研修関連業務全てを統括。
入社1年目から1人で海外出張も。早く大きく育ってほしいから与える「挑戦の機会」
ーー総合商社の中でも、丸紅は「若手に挑戦させる会社」と伺っています。まずは、野村さんご自身のキャリアから、その実態をお教えいただけますか。
野村:はい、おっしゃる通り丸紅は入社1年目から1人で海外出張にも行かせる、早く大きく育ってほしいからと、若手にどんどん挑戦させる会社です。私自身は、94年に入社して以来法務部に10年、リスクマネジメント部に1年、経営企画部に3年、その後広報に配属されてバンコクに駐在、そして現在は人事部と、さまざまな部署を経験してきましたが、常に挑戦の連続でした。
入社2年目で40億円の合弁会社設立という「ダイナミックかつクリエイティブな仕事」に携わる
ーーキャリアの前半では主にどんな業務をご担当されたのでしょうか。法務部やリスクマネジメント部は、イメージが分かりにくい学生もいると思うので、その辺りも含めてお教えいただけますか。
野村:総合商社は、全産業と取引関係にあり、国内外にいろいろな取引先がいます。つまり、契約1つとってみても、業界によって慣習が異なるし、商社の立ち位置や取引先との関係も異なります。全てがカスタムメイド。営業の人と一緒になり、さまざまな業界について知見を深め、慣習を踏まえて、相手との関係性の中で取引条件を落とし込んでいく。それが本当に面白かった。企業法務をやりたいと思う人がいたら、絶対に商社がいいと心の底から思いますね。
入社2年目の時には、資本金40億円規模の合弁会社をつくる法務業務を、全部ひとりでやらせてもらいました。ダイナミックだし、クリエイティブな仕事でしたね。
丸紅と伊藤忠商事で資本金300億円の新会社を設立:30歳にして会社分割の「日本初の事例」を担当
ーーかなりの範囲を任されるんですね。さまざまなご経験をされていらっしゃる中で、後世に「語り継ぎたい」と思うお仕事を1つ挙げるとするとどんなご経験でしょうか。
野村:入社7年目、30歳くらいの時に法務部で手掛けた、伊藤忠商事さんと丸紅の鉄鋼部門の統合に関する法務業務ですね。課長に「お前が担当な」と言われて、ほとんど一人で任されました。
当時まだ施行前だった「会社分割」という新しい法律を徹底的に勉強して、対応しました。上場企業同士の共同会社分割としては日本初の事例だったと思います。それでできたのが、現在の伊藤忠丸紅鉄鋼(MISI:Marubeni-Itochu Steel Inc.)です。
3枚ぐらいのレポートをまとめ、法務部から社長に「会社分割で行きましょう」と提案して、それが採用されて。相手側の伊藤忠商事さんにも週に2、3回は通っていたので「野村くんの席作っておくよ」、「定期買ったら?」と言われるくらいに親しくなって。普段はライバルでもある伊藤忠商事さんと共同でやっていく難しさ、面白さもありましたね。
資本金300億円の大きな会社を作ったわけですが、当時は「会社分割といえば丸紅と伊藤忠商事の例だ」と後からいわれるような仕事にしたかった。そういう思いで取り組みました。課長からはかなり任されていましたが、ちゃんと見てくれていたんだと思うんですね。時々鋭い質問がパッと来るんですけれど、それに少しでも答えられない自分がいると、まだまだだなと、感じたものです。
外国企業として初めて、ミャンマーの首都ネピドーに事務所を開設。日系メディアへ大きなニュースを届けた海外駐在・広報部の役割
ーー商社といえば「海外駐在」も学生は気になると思います。野村さんは、広報部所属中に初の海外駐在と、少し珍しいご経験をされていると思いますが、どのような業務を?
野村:元々は広報部に海外駐在なんてなかったんです。しかし、これからはアジアだ、現地からの情報発信が重要だということで、バンコク駐在になったんですね。実はバンコクにはほとんどの日系メディアがいますし、アジアの総局のような位置付けになっているのです。バンコクを拠点に、アセアンやインドをカバー。私もそれに倣いました。
2011年にはタイのお隣りの国ミャンマーでテイン・セイン氏が大統領になり、民主化が進められました。丸紅は、1942年に当時のラングーン(現ヤンゴン)に支店を配置、以来ミャンマーに深く入り込んでいましたが、2011年11月に会長が民間企業の人間としては初めてテイン・セイン前大統領に招かれ、首都ネピドーでの面談を果たしました。
その後丸紅は、ネピドーに世界初となる外国企業の事務所を作ったのですが、これは大きなニュースになりました。バンコクにいる日系メディアの人たちから問い合わせを受けて、ミャンマーを何度も案内し、ミャンマーに強い丸紅をアピールしましたね。
日本という国に商社が存在する意義は、「資源の獲得」と「技術の輸出」の2つにより、日本の存在感を世界に示すこと
ーー先ほどのミャンマーの例のように、グローバルな事業展開が総合商社の大きな特徴だと思いますが、なぜ丸紅はこうした事業展開を進めるのでしょうか。
野村:そもそも、商社の存在意義は2つあると考えています。ひとつは穀物とか食べ物も含めて「資源のない日本に資源を持ってくる」ということ。それから「日本の技術の輸出」により世界を豊かにすることで、「日本のプレゼンスを高める」ということです。その中で、丸紅が特に得意としているのは、穀物と電力です。
「中国に売るなら丸紅に売れ」穀物トレードでもイノベーションを起こし、「丸紅の存在感」を世界に誇示
ーー「穀物と電力には、特に丸紅の存在意義がある」ということでしょうか。
野村:そうです。例えば穀物では、丸紅が日本の穀物輸入を守ったといえるかもしれません。元々日本は長い間世界No.1の穀物輸入国でしたが、2008年に中国が大豆だけで4,000万トン輸入する、日本を超える世界一の輸入大国となりました。中国で家畜の飼料として大豆粕の需要が急増したことが背景にあります。
これは穀物トレードの世界では衝撃的なニュースでした。日本が「穀物の絶対無二の大口顧客」だった時代が終わりを告げ、日本のバイイング・パワーが相対的に低下することで、今後穀物の必要な輸入量を確保できなくなるかもしれないという転換点だったんです。
ーーなるほど。そこで丸紅はどうされたんですか。
野村:丸紅は、2009年4月に中国のSINOGRAIN社と提携し「中国の輸入を丸紅がお手伝いする」という関係を築きました。この提携は、業界をあっと言わせましたが、中国のバイイング・パワーの一部を丸紅が身に付けることによって、「中国に売るには、丸紅に売れ」と見られるようになり、丸紅の穀物取扱量はそれまでの年1000万トン程度から、年2,000万トン程度へ増えていきました。穀物トレードの中での丸紅の存在感を上げて取引量を確保することにより、きちんと日本へも届けることができたのです。
グローバル化により日本の立ち位置が変わっていく中で、日本の食料資源の確保のために、どうやって世界の穀物メジャーに負けないバイイング・パワーを手にするかという視点から考えたんですね。こうして、今では年6,000万トンを超えるまでに取引量を拡大しています。
ーーなんというか、アクロバティックなやり方ですが理にかなってますね。
野村:そうですね、かっこいい言葉を使うと「イノベーション」の視点を持って取り組んだ事例です。これも実は30代前半の社員が活躍した仕事でした。バブルの崩壊やアジア通貨危機、新興国の台頭など、ここ20年くらいの間に世界は大きく変化しています。
そういう中で、イノベーションの視点を持って、今日のやり方は明日には通用しないかもしれないという危機感を持ちながらビジネスを変えていかないと、我々が生き残れないだけではなくて日本がダメになると、そんな気概を若手からトップまで、誰しもが持ち、その想いを体現しています。
世界23カ国60箇所は日本トップクラス。電力という社会インフラで世界の発展を支える丸紅
ーー電力に関して、丸紅の存在感はどういったところにあるのでしょうか。
野村:丸紅は、現時点で世界23カ国に60カ所ほどの発電所を保有し、発電事業を行っています。日本企業ではトップクラス、世界でも有数のプレーヤーになっています。IPP(Independent Power Producer:独立発電事業者)というビジネスですが、例えば開発途上国など資金に乏しい国では、丸紅が自らの資金で発電所をつくり、保有や運営を手掛け、作った電気だけを政府や民間企業に買ってもらうというモデルを組んでいます。
先方は何百、何千億という巨額の資金が不要、その一方、丸紅は20〜30年という長期スパンで建設・運営などにかかった費用を回収できればいい。国の発展を、電力供給によって後押しする、Win-Winのビジネスですね。
グローバルで競争がある市場。丸紅が「穴」を作ると市場でフェアな経済競争が失われかねない
ーー存在感というイメージをもう少しシャープにしたいのでお伺いします。もし仮に、穀物や電力の分野から丸紅がいなくなると、世界はどうなると思いますか。
野村:丸紅がいなくなると、穀物分野でも電力分野でも、世界のトッププレーヤーが1人いなくなる、つまり、より寡占化が進んでしまうということなんですね。経済競争の健全性が保たれないと、穀物や電気の価格が跳ね上がってしまうかもしれない。丸紅という会社が持続的に成長していくことによって、健全な競争環境が保たれる。それが世界の豊かさにつながっていけばと思っているんです。
「鞄持ちからスタート」と考えている人は要らない。若手が意見を投げ込むカルチャー
ーー改めて、丸紅に入社してほしい学生として「求める人物像」について詳しくお伺いしたいです。
野村:現社長の國分が策定した「丸紅スピリット」が参考になります。「大きな志で未来を築け」「挑戦者たれ」「自由闊達に議論を尽くせ」「困難を強(したた)かに突破せよ」「常に迷わず正義を貫け」という、5つを掲げています。
ーーなるほど、この「丸紅スピリット」を踏まえて、具体的にどういった人が欲しいかどうかお教えいただけますか。
野村:誤解を恐れずにお伝えすると、「鞄持ちからスタート」と考えている人は、向いていないのではないかと思います。丸紅では新人の初海外出張も課長の鞄持ちではなく、1人でいくことが多い。そして契約するまで帰ってくるなと(笑)。
「お前はまだペーペーだからそんな発言をするな」ではなく、「若手でもではなく、若手だからこそアイデアを出せ」というカルチャーです。若手が意見を投げ込むことを歓迎しますし、それを求めています。そして、良いアイデアは多様性のある組織から生まれるので、いろんな考えを持った方々に来てもらいたい。
ーー大手企業に通常に抱くイメージとは少し違った内容ですね。
野村:若くして挑戦させる故に、困難な仕事に本人が直面する機会も多いですからね。そこで若手に意見を投げ込めるだけの「当事者意識」が必要なんです。あとは、頭でっかちにならず、頭も足も動かせる行動派で、やり抜くバイタリティのある方が活躍できるのではと思います。
アイデアの「独自性」よりも、アイデアを実現させる「こだわり」の方がよっぽど大切
ーーワンキャリアに訪れる学生にむけてメッセージをいただきたいです。
野村:メッセージは2つあります。1つ目は、面白い視点、独自の視点を持とうとするより、「これは自分のことなんだ」という当事者意識を持つ人がビジネスで勝つということ。誰かに相談されたことだったとしても、全部自分のことと捉えられたら、一生懸命考えるじゃないですか。何か問題があったら「失敗しちゃったのはそのメンバーだけど、解決しなくちゃいけないのはみんななんだから、みんなで解決しよう」という圧倒的な当事者意識を持てる人が、丸紅にはあっていると思うんですね。結局は、いいアイデアがあっても、それを実現させられるかが全てなので、アイデアを実現させる「こだわり」、つまり当事者意識を持って最後までやり抜く人は、ぜひ丸紅へ挑戦してほしいです。
自分の原動力を呼び覚ます「夢」と「喜びへの感受性」
ーーもう1つのメッセージはなんでしょうか。
野村:もう1つは、「ビッグビジネスをやってみたい」「国のためになりたい」、そういった「夢」をぜひ持っていてほしいです。どんな仕事でも、そこに仕事があるということは誰かの役に立っているのだと感じ、そこに「喜びを想像できる感受性」は大事だと思うんです。夢を持っている人はどこの部署に配属になっても、忙しく仕事をしていても、ふと顔を上げた時に「ここで頑張らないとあの国に電気が灯らないんだ、絶対この案件を勝ち取ってあの国に電気を通してやるんだ!」というような想像ができる。それが原動力になりますね。
ーー最後に、特に総合商社を志望されている学生に伝えておきたいことはございますか。
野村:総合商社のビジネスは各社似ていることが多いと思いますが、絶対に違うのは人です。ですからできればOB・OG訪問をして2、3人に会ってみて、社風を感じて、自分に合うなと感じたところを選ぶのがいいと思います。
ーー野村さんご自身の経験から、求める人物像まで多岐に渡るお話、どうもありがとうございました。
ワンキャリ編集部からのコメント
丸紅の野村さんへのインタビュー、いかがでしたか。皆さんが少しでも総合商社、また丸紅への理解を深めるきっかけとなれば幸いです。さらに商社業界や丸紅への理解を深めたい方はこちらをご覧ください。
・過去の丸紅公式インタビュー
「7年目までに必ず海外へ」丸紅の若手に挑戦させる人材戦略
昨年公開した本記事では、今回は語られなかった以下の内容についても触れられています。
1. V字回復を果たした丸紅の歴史と「丸紅スピリット」への想い
2. 海外駐在のチャンス:入社7年目までに必ず海外へ
3. コンサルや外銀と総合商社の比較(「トレーディングから投資」ではなく、「トレーディングと投資」。外銀からの転職者が語る丸紅の魅力)
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・「商社人事インタビュー2017」その他の記事はこちら