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マッキンゼー、三菱商事……就活の「勝ち組」から、若手の離職が止まらない理由

コラム 転職
2018年9月1日(土) | 24,077 views

ワンキャリア執行役員の北野唯我が執筆した『転職の思考法』が発売2カ月で10万部のベストセラーになりました。今回はその出版元でビジネスマン向けに連載した記事を、学生の皆さん向けにリバイスしてお届けします。

三菱商事、三井物産、マッキンゼー、GS、電通らの社員が抱えていた切実な不安

「何歳が、転職のリミットなのか?」

と聞かれたらみなさんはなんと答えるでしょうか。

現代はすでに2人に1人が転職する時代です。加えて「人生100年時代への突入」により、一生のうちに一社だけに勤める人の割合は今後も減っていくと予測されます。僕は最近、そんな「転職が当たり前になりつつある時代」を象徴する出来事を目の当たりにしました。

以前、友人と「職業人生の設計」に関するトークイベントを実施したときでした。土日開催で有料。しかも、告知はブログのみ。僕らは10名程度の参加を想定していました。しかし、ふたを開けると定員10名に対して300名の応募がありました。加えて、応募者リストを見ると驚きました。

三菱商事、三井物産、マッキンゼー、ゴールドマン・サックス証券、電通、フジテレビなど就活の「勝ち組」と呼ばれるような若手がゴロゴロ応募してくれていたのです。不思議ではないでしょうか。なぜ、彼らのように「社会的には勝ち組」と呼ばれる人たちが、土日のイベントにわざわざ応募してくれたのか。それは日本の「構造的な問題」に起因しています。

日本の労働システムは「転職市場で価値のない40代」を大量に生産する

いわずもがなですが、日本の伝統的な大企業の多くは「年功序列制」を導入しています。最近は少しずつ「実力に基づく給与」に移行しつつあるものの、依然として年齢に基づく基本給を設けているところが少なくありません。

加えて総合職採用とジョブローテ―ションの仕組みは、深い専門性を身につけさせないまま40代に突入させることも多い。

結果的に「転職市場で価値のない40代」が大量に生み出されます。

少し前に「ウィンドウズ2000」と呼ばれる問題がネット上で話題になっていたのをご存じでしょうか? これは、商社に勤める窓際族が年収2000万円をもらっている現状を揶揄したものでした。

別の例を挙げましょう。あるキー局の社員はこう語ってくれました。「総合職でも20代は年収600万円程度。一方で何もしない50歳の人間は年収2000万円はもらっている。明らかにおかしい」と。激務で高給取りのイメージがあるキー局ですら、もうそのねじれが起きているわけです。

この「若い人が割りを食う構造」に若者は感覚的に気づいています。だからこそ、いま優秀な若者から「このままではまずい!」と飛び出そうとしているわけです。これが「就職勝ち組」といわれる人たちがイベントに殺到した構造だと思われます。

ジョブローテーションは、じつは「キャリアの選択肢」を狭めている

「若い人ばかり割りを食っている。損だ」

という気持ち。

私自身もかつて、日系の大企業に勤めていた経験があるので、この気持ちはよくわかります。正直、当時は「働かないのに給料だけ高い窓際おじさん」にイラついていました。しかし、今、人材業界にマーケット身を移し、産業構造全体を見たとき、少し違う感想を持つようになりました。

悪いのは、窓際族のおじさん以上に、むしろ「システム」です。具体的にいえば、日本の「一括採用」×「ジョブローテーション」の弱点は「転職価値のない30~40代」を大量に生み出すシステムになっていることです。

日本企業の多くが取り入れる「一括採用からのジョブローテーション」という制度はたしかに「社内のことを知るため」には素晴らしい制度です。20代のうちに3年ずつ3つ程度の部署を経験する。結果的に「社内で顔を知っている人」がどんどん増える。

この社内人脈は40~50代になったときに役に立ちます。関係各所の調整がしやすくなるからです。あるいは、仮に今の部署で活躍できなくても他の部署に回しやすくなる。つまり「社内のキャリアパス」は最大化されています。

一方、外資系企業のほとんどは違います。彼らの多くには「部署があらかじめ決められた、プロフェッショナルとしてのキャリアパス」が用意されています。3年程度実務経験を積み、若手の育成を担当しはじめ、5〜6年すると1つの領域に関してはかなり深い経験を得ます。そして30歳になる頃には、チームマネージャーを経験し、はやくも「プロフェッショナルとしてのキャリア」が完成します。

新しい専門性を付けたければ、今の専門性を軸に新たに挑戦すればいいですし、もし今の専門性をさらに深めたければ、その道を極めていけばいいわけです。少なくとも食べていくための「軸」が存在しています。

何が言いたいか?

それは「日本型の総合職採用とジョブローテーション制度は、あたかもキャリアの選択肢が広がっているように見えて、実は狭くなっている」

ということです。

求人倍率を軸に「市場価値のある自分」を目指し、優秀な人材ほど30歳前後で決意を固める

おもしろいデータがあります。

これは転職マーケットの業界別の「求人倍率」と「平均年収」です。これを見ると明らかに「どの業界、どの職種を選ぶか」で将来勝ち組になれるかどうかが決まっていることがわかります。求人倍率が高く、年収が高い企業はまさに「成長産業」です。

あなたの業界はどこに位置しているでしょうか?

さて、冒頭の質問に戻ります。

「何歳が、転職のリミットなのか?」

と聞かれたら、結論は「タイムリミットはない。しかし、市場価値は35歳までにほぼ決まる」です。

構造さえ理解すれば、今からでも、絶対に遅くありません。

2人に1人が転職する時代、一緒に自分のキャリアを振り返る機会を持ちませんか?


「学生こそ読むべき」の声多数!【発売2カ月で10万部】のベストセラー
「どうやって20代から自分のキャリアを設計していくか」を描いた、北野唯我初の著書

・このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法


【内容紹介】
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※この記事はダイヤモンド・オンラインに同タイトルで掲載した記事の転載です。


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北野唯我(KEN)
取締役
北野唯我(KEN)

北野 唯我(きたの ゆいが):株式会社ワンキャリア 取締役CSO/作家
新卒で博報堂の経営企画局・経理財務局勤務。米国・台湾留学後、ボストンコンサルティンググループを経て、2016年ワンキャリアに参画、現在取締役として戦略・採用・広報部門を統括。2021年10月、同社は東京証券取引所マザーズ市場に上場。作家としても活動し、30歳のデビュー作『転職の思考法』(ダイヤモンド社)が20万部、他に『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版社)などで、著者累計40万部。

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