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新卒でGoogle Japanに入社し、Google米国本社に転籍したのになぜ1年でやめたのか

起業 コラム
2019年2月8日(金) | 14,204 views

※こちらの記事は2019年1月25日にnoteに掲載された「同タイトル」を、ご本人の許可の元に一部加筆修正し、転載したものです。


2018年3月、丸4年いたGoogleを退職しました。


遅ればせながらいわゆる退職エントリ(なぜGoogleに入り、何をして、なぜ辞めたのか、今後何をするのか)


を整理して書こうを思ったのですが、ぐるぐる考えている内に人生で大事にしている2つのキーワードに行き着いてしまいました。

それらの言葉をポイントに上記を説明できたらなと思います。


その前にまず略歴です。

・八王子市出身、都立八王子東高校卒業
・東京大学経済学部卒業 (マーケティングのゼミに所属。大学4年次にはスウェーデンに留学、その後世界1周して帰国。)
・2014年新卒でGoogle Japanに入社、その後17年からはGoogle US(サンフランシスコ、マウンテンビュー本社)に転籍し、計丸4年勤める

人生で大事にしていることに入る前に、

就職と転籍について簡単に書きたいと思います。

そもそもなぜGoogle Japanに入社したのか

僕の就活の軸は、ズバリ「自立する力を身につけること」と「最新の情報・人に触れられる場所」でした。

「自分でも将来的に何かをやりたいな、でも決まっていない……。」と漠然と思っていたのが恥ずかしながら本音のところで、きたるべきタイミングに備え、自己研鑽と世界への見識を広げ、可能性を広げておこうという思いでした。(今思うととても薄いですね……。)


それまで1利用者であったGoogleを『就職先』として直接的に意識したのは以下がキッカケでした。

・4つ上の兄もGoogleを就職先として検討していた
・大学2年次にGoogleの卒業生2人が創業したスタートアップ(ソーシャルランチ)でインターンをしていた。


「地球上で最も使われるインターネットサービスを提供する企業はどう考え、どう製品/サービスをつくっているのだろう」という単純な興味が最初の動機でした。

父親がドイツに駐在していたことから、いつかは自分も「海外でも働いてみたい」と思うようになり、父兄がエンジニア(そして新しいもの好き)だったこともあり自然と小さい頃からインターネットの楽しさに触れていたことも影響していたのかもしれません。

(より深い動機は後述しますね。)


通常の選考フローを経て、14年ビジネス新卒としてGoogleに入社しました。(入社後、選考フローの一部も見るようになったので、別途書ける範囲でまとめられればいいなと思います。)

Google Japanでは何をしていたの?

Google Japan では広告製品の領域をメインに行なっていました。

最初の1年半が営業、残りの1年弱がマーケティングでした。


前者では、1日に何十本も電話をかける営業にはじまり、アジアで初めてスタートした営業プログラムチームのリーダー(といっても3人)として営業としての実務、組織づくりを行っていました。


後者では、いわゆる対企業向けの新規獲得のマーケティングを管轄していました。

どの市場を開拓するかという戦略策定から、メール、ダイレクトメール、ウェブ、イベント等の企画運営まで、営業チームやクリエイティブチームとともに泥臭く何でもできることはやる、という形です。

「人材の採用にYouTube広告を用いる」という新規企画では、国内のいくつかの人材・採用関係の大賞もとることができました。


一部スタートアップのブランディング担当として、スタートアップのアクセラレーターでメンターをやってたりもしました。(今起業した身になると、「それっぽい教科書的なこと」を偉そうに言っていた自分がとても恥ずかしいですね……。)

Google米国本社に転籍した理由とその方法

Google米国本社への転籍は、APMM(Associate Product Marketing Manager)という若手マーケティング職の特権を利用したものでした。


具体的には、世界中のGoogleオフィスのAPMMが、自分が希望する国のチームに移籍できる権利を得るという仕組みです。イメージとしては、世界規模の席取りゲームという感じです。一定期間の間で同時に職=席が空き、狙いを定めて座りにいく。当然選考があり、落ちる場合もあります。違うのは、自席に座り続けてもよい(移籍しなくてもよい)ということです。


僕が転籍したタイミングでは確か、世界中で約70ポジションほど(担当領域も、広告から検索、クラウドサービス、スマートフォン、MapやPhotoまで)がオープンになっており、そこから自分が希望するポジションを選び、応募するという形でした。まさに 『転職』という形で、自分のこれまでの社内での実績を記したレジュメを提出し、希望先のチームのマネージャーやチームメンバーと面接をしていきます。


元々海外で働いてみたい、よりチャレンジングな環境で命を燃やしたいという思いもある中で、転籍のタイミングややれる責任範囲(国や職務によってそこはマチマチ。)を考え精査を重ねた結果、

やっぱり米国本社に1度は行ってGoogleの本丸で挑戦しよう! 日本で自分がやってきたことを米国(ひいてはグローバル全体)にも逆輸出して大和魂見せてやろうじゃないか! と本社の広告チームに転籍することを決めました。


(実は、もう1候補として インドネシアにて『インターネットインフラの普及』と『スタートアップの支援』を担う気合の入った職もあったのですがまさかのビザ取得が難しいという理由で取り下げになりました。もしこちらに行っていたら人生どうなっていたのだろうか……)


シリコンバレー本社(厳密にはサンフランシスコに週3日、マウンテンビューと呼ばれる本社に週2日いました。)に転籍した後は、(Google Japanを一度退職して、US側に現地入社する形でした。)

日本で行っていた同領域である、新規獲得マーケティングをリードするという形で、アメリカ市場向けのダイレクトマーケティングキャンペーンや、人材採用にYouTubeを用いる日本の企画の導入、CMO向け大規模イベント、マーケティングプロセスのデータ解析を主に行っていました。

ニューヨークでのイベント時に撮ったチーム写真


ココらへんの広告・マーケティングまわりの話や、シリコンバレーでの生活についてはまた別途まとめたいと思います。(沢山あります。笑)




で、ここからが本題です。

ここに書くことが、Google米国本社を1年で辞めた理由とつながります。

最初に以下のように書きました。

ぐるぐる考えている内に人生で大事にしている2つのキーワードに行き着いてしまいました。

そのキーワードを順に説明をしたいと思います。


「チーム」と「ぬくもり」


というもの。

これが僕にとってすごく重要であることに気づきました。

キーワード(1):僕は「よいチーム」を作りたいんだと思う。

まず一つめのキーワードは「チーム」。

僕はこれまでの人生、常に「チーム」という存在に支えられ、時に「チーム」ゆえの苦難にぶち当たりながら、成長してきたという自負があります。


中学で、たった2名のバスケットボール部を率いることになった時、

高校で、部活のメンバーが夏休み明けに一気に辞めてしまった時、

大学で、留学から帰ってきたらゼミの同期が半分辞めてしまっていた時、


常に「よいチームとは何か、どうやったらよいチームをつくれるのか」を考えてきました。


当時の答えは「心が沸き立つ共通の目標をもつこと。

そしてそれを叶えるために、得意分野が異なるメンバーが集い、互いに補いながら達成にむかうこと」でした。


そういった意味でGoogleはまさにお手本のようにチームを作れている会社でした。

「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」という究極的なビジョンに向かって、

まさに世界中から多種多様な人材を集め、

テクノロジーを駆使して常に互いに情報共有をして(社員が8万人以上になった今でも、週に1度全社ビデオミーティングがある!)、

一丸になって世界を良くする方向に進んでいる。


Googleの持つテクノロジーに興奮し、インターネットの社会実装の一翼を担いたい思うのと同時に、

グローバルのフィールドで、世界をより良くするために最高のチームをつくっているGoogleという組織自体に心を惹かれ、学びたい、中で働いてみたい! と強く思うようになっていました。


Googleの新卒時のケース面接でこんなことを聞かれました。(もう5年前のことだし大丈夫ですよね……?)

「あなたは、5人チームのマネージャー。今日は大事なプレゼン本番。それぞれ担当領域を決めて順番にプレゼンしていく予定でしたが、気合の入りすぎたJohnは1人で一気に全てプレゼンしてしましました。(おいおい)
さて、プレゼン後、あなたはチームに対して、またJohnに対して何をする?」

設定と僕の回答はさておき、(興味がある方は是非直接お話しましょう!)

Googleがチームを重要な要素として見ている質問だなあと今でも思います。


さて、Googleに入ってやっていた仕事をチームを軸にして整理すると以下のことがありました。

・新しい営業組織(アジア初のプログラム)のチームを0からつくる
・マーケティングチームに移動後、先輩メンバー、マネージャーが次々と抜けてしまう事件発生(学生の頃を思い出す)→ 周りの力を借りつつ新規獲得マーケティングチームを再建する
・営業とインサイドセールス、マーケティングをワンチームとして密な協力体制を牽引する(日本でも、アメリカでもやりました! 特にアメリカではそれぞれのチームのいる場所が地理的にも離れていることもあり、転籍した直後はとても悪い雰囲気でした……。)

基本的には、しがらみ/部署/国を超えてチームをつくり、掲げた目標に対して一丸になってやりきるということを愚直に繰り返していたんだなと思います。


と同時に、チームが瓦解する渦中にもいた中で学んだのは、

まさにGoogleが昨今強調している部分ではありますが、


「よいチーム」とは、

「心理的安全性が守られている、つまりチームメンバー同士がリスクを取ることを安全だと感じ、お互いに対して弱い部分をさらけだせる環境である」ということです。

Googleが公式にまとめているサイトもあるのでご興味があればご覧ください。(Google re:Work)


共通の目標のもとに単純に優秀で多様な人材が集まるだけではなく、

互いに「裸」になれる場所をつくる、その場を維持する努力をし続けること極めて大事なんだと身を持って経験できました。


僕がなぜここまで「チーム」にこだわるのかというと、恐らく「自分では何もできない」ということを強く理解しているからだと思います。

もちろんちょっと得意な領域や一定の結果をだせる部分もあるかとは思いますが、互いに補い、高め合うメンバーがいてこそより大きなインパクトを生めるのだということを何度も経験しているし、信じています。

だからこそ、自分の弱みを出し合い、いわば補ってほしい部分を公開することが「よいチーム」にとって根本であるということが非常にしっくりきます。


ではなぜ、米国本社まで行ったGoogleを1年で辞めることにしたのか?


端的に言うと理由は2つ。


1つ目の理由は、社会にインパクトを生む「よいチーム」を自分でも作りたくなった、ということ。


どうしても「Googleという強力な基盤があるからこそ出来ているのではないか」ということが頭の中をチラつくわけです。

当然大部分はその通りですし、目的のための手段として「チーム」が組成されるわけで、Googleという基盤をうまく利用することで、何十何百倍ものインパクトを結果として生むことができる可能性も理解した上です。


それでもなお、自分たちなりの「チーム」でどこまでできるのかを挑戦したいという気持ちがムクムクと湧いてきてしまいました。


この気持ちをより後押ししたのが、まず既にGoogleを卒業して、起業したり、より小さな企業/団体で「チーム」づくりをしている同期や先輩の姿を見ていたためでした。僕もやっていきたいと。

(僕の代のGoogle同期は既に半数以上がGoogleを卒業しており、むしろ「橋本やっとじゃん!」という空気感すらありました。笑)


2つ目の理由は、シリコンバレーというチャレンジとリスクテイクを称賛し、起業家が尊敬される風土に浸かったことでした。


元々Google米国本社に転籍する際には、「まあ3年くらいは頑張って、グリーンカードも取得した上で、ゆくゆくはアメリカで家族とともに暮らしていくというのもありなのかな〜」とぼんやり考えていました。

(昨今、アメリカへのビザ/グリーンカード取得が年々厳しくなっている中でやはりGoogleを冠していると比較的に取りやすいとのことでした。(※)ここはより最近の状況に詳しい方にお聞きください!)


しかし、Googleの米国本社で出会った同世代の社員や現地の友人と飲み交わしたり、サンフランシスコのスタートアップだらけの通りを歩いたりする中で、良い意味でよりカジュアルに自分で「起業」していくというイメージが湧いてくるようになりました。

(よく冗談みたいな話で、「サンフランシスコの隣の席で起業家が投資家にピッチを行い、その場で投資が決まっている」というのがありますがマジでした。笑)


特にサンフランシスコでanyplace(ホテルに「住める」サービス)を起業した内藤君には大きく影響を受けました。

 (僕自身anyplace を利用して半年ほど市内のホテルに住んでいたのですが、その隣の部屋に内藤くんが住んでいました。笑)

 大学卒業後単身サンフランシスコに渡り、0から現地で起業をした内藤君の話を聞いて(詳しくは彼のブログで)、「カッコよいな」と思うのと同時に、自分でもよりリスクをとってチャレンジをしていかねば! と強く思うようになりました。


ちょうど同時期に、大学のサークルの同期で元々卒業してからも近況報告を定期的にしていた高田もBCG(ボストンコンサルティング)のロサンゼルスオフィスで偶然働いていました。(高田の退職エントリはこちら)


良い機会だということで二人でアリゾナのセドナ〜アンテロープキャニオンのドライブに行くことになり、互いに昼夜議論をする中で、より具体的に一緒に起業をして、「チーム」を作って行こうという話になったのです。(高田も同様に「起業する」ということをより解像度を上げイメージしているタイミングでした。)


(蛇足ですが、アリゾナのだだっ広い砂漠をドライブ中に、完全に相手の過失で横からぶつけられ事故になったこともあり、改めて「いつ死んでもおかしくない、やりたいことを早くやっていかねば!」と思いが強まりました。その事故のために、目的であったアンテロープキャニオンを体験することができませんでした……。笑)

調子に乗って浮かれているけど、この後待っていたのは……。

キーワード(2):僕は「ぬくもり」を大切にしたいんだと思う。

もう一つのキーワードは「ぬくもり」です。

これは「今後何をするのか」に関わってくる部分です。

僕は人間味というか、『血の通ったリアルな心の動き』というものを人生においてすごく大切にしたいなと思っています。


これはこれまで世界中を旅行しまくったことに強く影響されているのですが、結局何かを理解しよう、思いを寄せようとした時にはそこに関与する人間の姿やことばを、見たり聞いたりしないことには深く入り込めないなと実感しているからです。

(旅をして見知らぬ土地に行く度に、事前の知識や思い込みがひっくり返る経験は誰しもあるはずです。)



もちろん、集合のデータとして1歩引いて客観的に観察することも大事ですし、機械的な最適処理を繰り返し効率解を導き出していくことも必要ですが、人を心から動かすには一人ひとりのリアルを感じ取らないことにはできないと思っている節もあります。


Googleにいて、様々なマーケティングのデータ解析や数字に基づく意思決定を行う中で(特にアメリカにおいてはより明確にその部分の仕事をしていました)、

果たして本当に関与する人にとって長期的に良い影響を与えられているのか(そもそも人を心から動かせているのか、むしろ考えなくさせているだけではないのか)は時に悩むところでもありました。



また、社内の意思決定プロセスの中でも、結果としてあがってくる「数字」だけに極端にフォーカスするがあまり、その「数字」を生み出しいる過程の人間心理を見落としてしまい、全く見当違いのディスカッションしていることもありました。

(例えば、ある追うべき数字の値落ちているとマーケティング視点上で見えている場合も、実は営業の1個人が面倒事を無くすために、敢えて計測のタグを落とすようにしていたなんてこともあるわけです。)

(※)僕が仕事をしていたのはGoogleでも本当に一部であり、どの分野でも常にそうだという訳では当然ありませんし、データで分析すること自体を否定するものではもちろんありません。


そんな課題意識が今僕たちが行っている事業にもつながってきています。

いま挑戦していること

最初は、サプリメント通販事業に挑戦していたのですが、色々ありこの事業は畳みました。ただ、その事業をやる中で感じたことから新しい事業(社会課題)の芽を発見しました。


幸運にも、現在、得意領域も性格も異なる大学時代の同期3名で、【COMMUNE】というコミュニティを軸としてエンゲージメントを向上するマーケティングツールを提供する会社を始めました。


共通の目標を持ち、互いに補いながら、さらけだしながら経営ができているわけですが、さらに「よいチーム」を作るためにはどうしたらよいのか、ということは常に考えているところです。


多分終わりはない問いなのでしょうが、これまでの人生で経験したこと、Googleで学んだことを活かしつつ「自分たちなりのチーム」をつくるということに勤しんでいきたいと思っています。


また、「コミュニティ」を通じて、いままさに抜け落ちてしまいがちなリアルな「ぬくもり」を大切に温め、ユーザーをさらに一段深い部分で理解し、よりよい方向に心を動かす、ということを愚直に叶えていければと思っています。


まだまだやりたいことの1%も実現できていませんが、「よいチーム」で「ぬくもり」を大切にしたサービスを展開できるよう精進していきたいと思っています!


一緒に「よいチーム」を研究し、「ぬくもり」を大切に実行していくメンバーは常に募集しています!




長くなりましたが、改めてお世話になったGoogleの皆様、本当にありがとうございました。

自分が憧れる企業にて熱中して仕事ができたということは、人生をより豊かにする貴重な経験だと思っています。皆様との出会いに感謝申し上げます。


やっぱりGoogleランチは懐かしく、どうしても惹かれてしまいますね……。

是非気軽に食事・コーヒーに誘っていただければ嬉しいです。

起業1年目のHard Things話を手土産に喜び勇んで謹んで馳せ参じる所存です。


今後ともよろしくお願いいたします!


橋本翔太


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(Photo:akoppo/Shutterstock.com)


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