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「日本」を背負い、海外プロジェクトの最前線に。JBICが異次元スケールの案件に挑める理由

企業インタビュー 企業理解 インタビュー 金融 日系
2022年11月14日(月) | 14,149 views
sponsored by 国際協力銀行(JBIC)

国際ビジネスの最前線に立つといえば、どのような企業を思い浮かべますか?

総合商社やコンサル、グローバルメーカーなど、民間のプレイヤーが代表的かもしれません。ただ、規模が大きくなるほど、相手国の状況が複雑になるほど、民間だけでは踏み込めない部分も出てきます。そこで存在感を見せるのが「国際協力銀行(JBIC)」です。


「日本」を代表して、世界をより良くするために日本の力を届ける政府系金融機関。利益だけを追わないからこそ踏み込めるビジネスがあり、日本の強みであるインフラ、環境、通信といった幅広いセクターを扱える、稀有(けう)なプレイヤーでもあります。

一方で、政府系ゆえの「お堅さ」やスピードの遅さをイメージする人もいるかもしれません。今回は、そんな先入観を吹き飛ばしてくれる、2014年入行の冨山さんにお話を伺いました。

<目次>
●世界が相手の「日本代表」。海外を経験できるキャリアパス
●「政府系の金融機関」だからこそ取れるリスク、戦えるフィールドがある
●未経験、新卒1年目から海外案件のファイナンスを担当
●世界で戦える人材になるには、ジョブローテで身につく「多角的な視点」が必要だ
●時代に合わせてガラリと変わる「国益」を追求し続ける
●金融の知識は問わない。入行まで海外経験がない人も? ハードスキルよりも挑戦心が大切

世界が相手の「日本代表」。海外を経験できるキャリアパス

──本日はよろしくお願いします。経歴を拝見したところ、冨山さんは2021年の夏に日本に戻ってきたばかりということでしたが、海外はどちらに行かれていたのでしょう?


冨山:米国のワシントンD.C.ですね。世界銀行グループに出向していました。国際機関への出向は、入行以来ずっと希望を出していたので、出向が決まったときはうれしかったです。


──世界銀行というと、途上国に対して融資などを行う国際機関ですよね。スケールが大きな仕事というイメージですが、どんな仕事をしていたのでしょうか。


冨山:世界銀行には、各国が集まってさまざまな意思決定などを行う「理事会」がありまして、日本にも席が割り当てられています。そこで、日々上がってきた案件について、日本の方針を立案し、ときに表明する立場でした。

各機関の中期経営計画や予算配分といった組織運営に関わるトピックはもちろん、グローバルイシューに対する世界銀行グループのポリシー、各国向けの支援戦略、個別の投融資案件など、日々、本当に幅広いテーマが飛び込んできます。

冨山 聖(とみやま ひじり):国際協力銀行(JBIC) 調査役
2014年入行。産業投資・貿易部にて自動車セクター、石油化学セクターにおける案件組成に関わった後、2016年に財務部へ異動。2019年からは世界銀行グループに出向し、国際金融公社(IFC)・多数国間投資保証機関(MIGA)の組織・業務戦略や債務問題などに係る日本政府としての方針立案を行う。2021年に帰国し、社会インフラ部で通信セクターにおける案件組成を手掛ける。


──日本の方針を表明する立場、って要するに、日本を代表した発言をするということですよね? プレッシャーがすごそうです……。


冨山:そうですね。会議などでは大きなテーブルを各国の代表が囲み、発言の内容が「冨山が言ったこと」ではなくて、「JAPANの意見」になる重みは確かにありました。


──1つの発言が、国と国同士の関係にも影響しそうな感じが……とにかくステークホルダーが多くて、神経を使う気がします。


冨山:特に私が世界銀行で働いたタイミングは、コロナ禍で世界中が苦しんでいたので、なおさら難しい判断が求められる状況でした。

コロナ対応として世界銀行グループも緊急支援パッケージなどを矢継ぎ早に打ち出しましたが、お金を出す先進国も同様にコロナ禍で影響を受け、経済状況が厳しい。限られたリソースの中で、どう優先順位をつけるか。さまざまな立場の国がいるので、日本としての方針を示したときも、受け止め方はさまざまです。コミュニケーションの難しさを痛感しました。


──厳しい状況の中でも、手応えを感じた場面はありましたか?


冨山:例えば、JBICも押し出している「質の高いインフラ」のほか、債務持続性、防災、保健については日本が重視している分野です。コロナ禍では債務問題や保健が、災害が起きたときには防災が、というように、各国への支援戦略や個別案件を審議する際にも、日本の発言が重宝される場面がたくさんあるので、やりがいはありましたね。


──すごいですね。JBICにこんな仕事があるというのは知らなかったです。


冨山:もっとも世界銀行グループはあくまで出向先ですし、JBICの主な業務は日本企業が関与する海外案件に対する出融資であるという点で、JBICで日々担当する業務とはまた少し違ったものになります。

「政府系の金融機関」だからこそ取れるリスク、戦えるフィールドがある

──今JBICの業務の話になりましたが、今回の取材では、改めてJBICの役割や仕事についてお聞きできればと思っています。


冨山:JBICは日本の政策金融機関として、民間の金融機関を補完するという立場で、「資源の開発・取得」「日本企業の国際競争力向上」「地球環境の保全」「国際金融秩序の安定」という4つの領域で、海外を舞台に、出融資による支援を行っています。

政府系の機関なので、基本的には日本企業や日本経済の発展につながる案件を手がける、というのが特徴ですね。


──海外での開発案件や事業に関わる、となると総合商社などとも似た面があるように思います。JBICならではの立ち位置や強みを教えてください。


冨山:商社との主な違いは「事業を実施する側か、金融でそれをサポートする側か」という点です。就活でどちらかを選ぶとしたら、「どういう立場で海外の案件に携わりたいか」を考える必要があるでしょう。

ただ、JBICをはじめとする金融機関は、幅広い案件を経験しやすいという特徴があると思います。例えば、就活において「途上国の開発に関わる仕事がしたい」と考えていても、相手国や手段が具体的に決まっていないことも多いはず。その点、どのような事業でも資金調達は必要ですから、必ず金融機関が求められる場面が出てきます。


──民間の企業や金融機関とも案件への関わり方は変わるのでしょうか。


冨山:そうですね。まず民間企業とは、意思決定をする際に重視する点が変わると思います。政府系機関なので、高い利益を上げることよりも、日本や相手国のためになることを重視します。また、先ほどJBICの説明で「民間の金融機関を補完する立場」と話しましたが、具体的には、民間の金融機関や企業が負えないような大きなリスクを抱える案件を請け負うことが多いです。


──大きなリスク、とはどういうものですか?


冨山:途上国の案件には、急に政権が代わったり、国の経済状況が一変したりして、プロジェクトの進行が困難になる……といったような、おおよそ日本では考えられないようなリスクもあります。JBICの場合、各国政府とつながりがあるため、より踏み込んだリスクテイクができる。国のバックアップを得て、長期で大きな資金が出せて、初めて実現できる案件もあるのです。


──なるほど。海外展開をしようとすると、どうしても現地政府の協力が必要な場面も出てきそうですね。


冨山:何かあったときに、相手国政府とのチャネルがあるのは大きいです。大型案件だと、相手国の政府や政府系機関と直接協議することがあります。日本の代表として一歩踏み込めて、かつ、いざというときの「お守り」の役割を果たすことができるのはJBICならではです。


──世界銀行の話のときにも思いましたが、やはりステークホルダーの多さや案件の幅広さも独特ですね。


冨山:採用の現場ではよく、「クロスロードの中心にいる」という言い方をしています。日本はもちろん世界、そして官民ともに多くのステークホルダーとまんべんなくお付き合いをしています。

一緒に働くのは日本企業だけでなく、民間金融機関や外国政府、外国のスポンサーなどさまざま。いろいろな立場の人がいろいろなことを言うなか、交渉をまとめないといけない。そんな場面に何度も直面しますよ。

未経験、新卒1年目から海外案件のファイナンスを担当

──冨山さんはJBICに入行後、どのようなキャリアを歩んできたのでしょうか。


冨山:入行してまずは営業部門の「産業投資・貿易部」に2年いて、石油化学や自動車分野のファイナンスを担当しました。次は「財務部」に異動になり、約3年間、JBICの決算を見たり、連結決算の導入を手がけたりしました。そこから世界銀行グループに2年出向し、今は営業部門の「社会インフラ部」で、海底ケーブルやデータセンターといった通信セクター全般を見ています。


──バックオフィスも含めて、いろいろな部署を渡り歩いているんですね。学生にとっては、フロントオフィスの仕事がイメージしやすいと思います。営業部門の経験で思い出深いことを教えていただけますか。


冨山:ファイナンスのバックグラウンドもない中で、1、2年目に担当した仕事です。先輩と一緒に、石油化学セクターの中東でのプロジェクトファイナンス案件を任せてもらいました。

日本企業が案件を取れるかまだ分からない段階から現地に出張し、競合国の政府系機関などとファイナンスの交渉に臨みましたが、JBICの動き次第で、日本企業が受注できるかどうかも左右される可能性があるので重責を感じました。


──コンペの段階からJBICが支援することもあるんですね。一般的に、JBICとして案件に関わるのはどのタイミングからですか?


冨山:プロジェクトを組む段階からもあれば、ある程度全容が固まってきてから打診を受けることもあります。日本企業から「融資できますか?」と持ち込まれたり、民間金融機関からリスク分散で「一緒に融資しませんか」と声がかかったり。海外企業から相談を受けることや、日本政府も巻き込んで案件組成に取り組むこともあります。


──融資の可否はどのように判断するのでしょう。大きなリスクを取りやすいといっても限度がありますよね。


冨山:もちろん基準はあるのですが、それに照らし合わせる形で「これはできます」「できません」と考えているわけではありません。

一見して出融資が難しそうでも、意義があるものなら、「どうすれば、JBICや民間金融機関がファイナンスできる形に持っていけるか」を考えます。案件が固まりきっていない段階からでも入って、さまざまなプレイヤーと一緒に議論しながら案件を作り上げていけるところに面白味がありますね。


──受注前支援もそうですが、案件が固まっていない段階から相談できるのは、企業にとっては心強そうです。


冨山:JBICに対する印象として、よく「政府系機関だから動きが遅いんじゃないか」「画一的な対応しかしてくれないのでは」という声を聞きますが、かたい組織と思ったことは一度もありません。この柔軟さは入行すると実感できると思います。

世界で戦える人材になるには、ジョブローテで身につく「多角的な視点」が必要だ

──JBICに新卒で入ると、冨山さんのようにさまざまな部署を回るのが、一般的なのでしょうか。9年で4部署というのは、なかなか忙しい印象を受けました。


冨山:ジョブローテーションで、フロントオフィスも、ミドルもバックも回ります。国内だけでなく、海外の駐在員事務所での勤務や留学、私のような海外機関への出向もあるというのが一般的なキャリアパスですね。フロントとバックオフィスでは仕事が全然違うので、転職したみたいな気持ちになります(笑)。


──専門性が身につくのが遅くなるのではないか、という点でジョブローテーションにいいイメージがない学生も少なくありません。その点についてはどう考えますか?


冨山:もちろん、専門性が得られる時期が遅くなる可能性はありますが、それ以上にジョブローテーションには、多角的な視点が身につくという大きなメリットがあります。

営業部門で案件を担当するときは、与信先の信用力を審査したり、契約書の内容を交渉したり、環境への影響を検討したりと、ミドルやバックオフィスでカバーする業務も絡んできます。複数部署を経験することで、営業で新しいことを始めるときにも論点を見落としづらくなります。


──他の部署での経験が生きてくるというわけですね。


冨山:私は財務部でリスク管理や財務を学んだからこそ、その後の世界銀行グループでもスムーズに仕事ができましたし、世界銀行グループで国際機関における意思決定を経験したので、JBICに帰任してからも、例えば国際機関を巻き込む際に相手がどう動くかが想像できます。「すべての経験がためになる」とよくいわれますが、本当にそのとおりでした。

また、JBICのジョブローテーションは社内や国内だけではなく、海外を含めたキャリアパスがあります。一般的な異動とは、また違った広がりがあるように感じますね。


──ちなみに、海外勤務はどれくらいの年次で経験できるのでしょう。


冨山:希望を出していれば、入行して10年以内に少なくとも1回はチャンスがあるイメージですね。それとは別に、1年目の総合職は3カ月間、必ず海外の駐在員事務所でトレーニングを受けるという制度があります。


──広い視野、長い視点で考えたら、地道な積み重ねは大事ですよね。大きな案件を動かす以上、それに見合う実力が必要になるわけですし。


冨山:専門性という意味では、JBICは大体10年目前後から、自分がやりたい領域に沿ったアサインになるイメージです。「入行してからの数年で自分がどうなるか」に目が行く気持ちはよく分かりますが、社会人生活は長いですし、すべての仕事はつながっています。大きな仕事も、小さな仕事の積み重ねですし、すぐに成果が出るわけでもありません。

特に国家プロジェクトなど、本当に大規模な案件は、妥結して早く進むようなことはあまりないです。資金を貸し出すまでに何年もかかるというのはザラで、その間に相手国政府の政権が代わって、突然案件が立ち消えになったり、逆に、急に話が動きだしたりすることもありますから(笑)。

時代に合わせてガラリと変わる「国益」を追求し続ける


──冨山さんは学生時代、世界を舞台に立ち回るような仕事を志していたのでしょうか? JBICを志望した背景を教えてください。


冨山:大学では国際関係を学んでいて、途上国開発にずっと関心がありました。途上国に住む人々が、選択肢があって自由で満ち足りた毎日を送ることができるように、日本の力で何かしたいと思っていました。


──商社をはじめ、他にも選択肢はありそうですが、何が決め手になったのでしょう?


冨山:日本にも社会課題はたくさんあります。「日本も厳しいのに、日本のお金を海外に使うってどういうことなの?」と就活のときに問われることがありました。

そのときに考えたのは、JBICは日本企業の海外展開のサポートを含め、日本の国益に資することが大前提なので、「持続的に自分のやりたいことができそう!」ということです。高い利益を上げられるかよりも、日本や相手国のためになるかを正面から考える機会が多そうだな、と思っていました。


──なるほど。利益追求だけではない、かといってボランティアではなくビジネス。この辺りのバランスは難しいものですか?


冨山:就活生のとき、JBICの職員から「JBICの仕事は援助じゃない」と言われたことが心に残っています。これは「国益を追求していたら、今は途上国というフィールドに機会がたくさんあるというだけ」というニュアンスでした。

JBICで働いている人には、私のように「途上国開発がしたい、そのために日本企業にとっての利益を」と考えている人もいれば、「日本企業の利益」がモチベーションの軸になっている人もいます。動機は人それぞれです。


──インタビューでは「国益」という言葉が何度も出てきていますが、「何が日本のためになるのか」というのは難しい概念だと感じました。相手国や国際社会の状況も絶えず変化するので、その時々で国益の内容や意味も変わっていきそうで。


冨山:漠然とした難しい問いだと思います。分かりやすい例でいうと、コロナ禍で苦しんでいる日本企業に向け、緊急支援の枠組みを立ち上げたり、為替状況に応じてM&Aを積極的に支援したり。環境の変化が激しいので、その都度求められるものが変わっていきます。

今、手がけている通信の領域は技術革新が速く、国際競争も激しい分野です。時には日米豪連携などの大局的な視点に立って、他国と手を携えて進めており、時代の要請に応じて役割を変えていくという、JBICのダイナミックさを感じています。


──昔に比べて、考え方の多様化や世界情勢の複雑化が進んでいるように思います。仕事を進めるのが難しくなった、などの変化はありませんか?


冨山:年次を重ねることで、より難しい案件に挑戦しているというのはありますが、全体を通して言うならば、難しくなったというよりも、「変わることが求められた」が近いですね。例えばSDGsやESG(環境・社会・ガバナンス)など、社会に求められる新たな要素が出てきて、JBICとしても仕事のやり方を変えないといけない面はあります。


──時代に応じて変化するとなると、組織としてキャッチアップしていくには苦労しそうです。


冨山:社会の課題が増えるのに伴ってJBICの業務は広がり続けています。もともと、各案件に対して機械的に「できる」「できない」と判断せず検討を尽くしているので、採用人数も増やしていますが、人はいくらいても足りないというのが本音です。

金融の知識は問わない。入行まで海外経験がない人も? ハードスキルよりも挑戦心が大切

──案件の増加に人手が追いついていないと。案件が佳境のときはやはり忙しくなりますよね。


冨山:営業部門の案件を担当していると、出融資決定の直前にはいろいろなことが起きます。追加のリクエストが来てしまったり、途上国の政府が絡んでいると終盤で話をひっくり返されたり。もうお祭りみたいです。それでも普段は早めに帰れますし、財務部でも一般的な労働時間に収まっていました。


──JBICの社風についても教えてください。社員にはどんな方が多いですか?


冨山:バックグラウンドはさまざまです。私もそうですが、金融の知識や経験のある人ばかりではないですし、グローバルだからといって英語がペラペラというわけではなく、海外経験がない人もいます。

ハードスキルよりも、チャレンジングな課題に立ち向かう気概の方が重要です。知的好奇心を強く持ち、視座を高くしようなど、時代に即応していく上で、そういうマインドを持つ人が多いです。変化を楽しみ、できることを前向きに検討する人が活躍しています。


──金融の知識が不問であれば、新卒でもチャレンジしやすいですね。


冨山:仕事で必要な知識や経験は、いくらでも身につけられるでしょう。1、2年目で案件を任され、先輩を含めたチームでのサポートがあるので、OJTで一人前になるのは早いです。また、全体で700人ほどのコンパクトな会社なので、打席に立つ機会も多いですし、個々人に対して目をかけてくれる環境だと思います。2、3年でジョブローテーションがあるといっても、一人一人の事情は最大限配慮してくれますし。


──ありがとうございました。最後に就活生へのメッセージをお願いします。


冨山:就職先をどう選ぶか。頭でロジカルに考えるのは大事で、面接でも問われると思います。ただ、それだけで毎日は頑張れないと、正直、思います。それだけではなく、「やってみたい」と自然に心惹(ひ)かれる要素も大切かなと。社会人生活が長くなった今だからこそ、そう思います。その結果として、JBICのミッションに共感してくれる皆さんと一緒に仕事ができたらうれしいです。


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