モビリティ業界の「Tier1(一次サプライヤー)」と聞くと、「カーメーカーの指示通りに部品を作る仕事」というイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし、ディスプレイオーディオで世界1位(※)のシェアを誇るパナソニック オートモーティブシステムズ(通称:PAS)のリアルは、そのイメージを180度覆します。
同社は2022年にパナソニックグループの持株会社制移行に伴い発足しましたが、車載事業としては80年以上の歴史を持ちます。さらに2027年4月には「モビテラ(Mobitera Inc.)」への社名変更という新たな出発を控えています。
今回は、全社の新卒採用を担当する小山樂久さんと、電気設計開発のスペシャリストとしてハードウェア開発リーダーを務める田尻修也さんに、Tier1だからこそ味わえる上流開発の醍醐味やチーム設計のリアルについてお話を伺いました。
(※)出典:富士キメラ総研「車載電装デバイス&コンポーネンツ総調査 2026」
はじめに
──まずはお2人のご経歴や学生時代の専攻分野など、簡単な自己紹介をお願いいたします。
小山:はじめまして。新卒採用担当の小山樂久と申します。私は2018年に新卒でパナソニックへ入社し、別の事業や製造拠点の人事を経て、2026年4月より全社の新卒採用を担当しております。本日はよろしくお願いいたします。
田尻:電気設計開発スペシャリストの田尻修也と申します。学生時代は電気工学・エネルギー理工学専攻で、超電導の物性研究という化学寄りの分野にいました。入社以来一貫してハードウェア設計に携わり、現在はコックピット統合ソリューションやカーナビなどの商品開発において、ハードウェアのリーダーを務めております。
小山:PASの本社は神奈川県横浜市にあり、ここにはコーポレートだけでなく開発設計部門が多く集まっています。国内外のカーメーカー様とグローバルに取引を行っており、今後は車内の制御ユニットを統合コントロールする「コックピットハイパフォーマンスコンピューター(HPC)」や、新たな移動体験を提供する「モビリティUX」といった領域をさらに強化していく予定です。
カーメーカーの「パートナー」として挑む、仕様検討の裏側
──モビリティ業界のTier1における、実際の仕事の進め方について教えてください。
田尻:よく「カーメーカー様から仕様を受け取り、その通りに作る」と思われがちですが、実際は全く違います。私たちはカーメーカー様と一緒に「何を」「どう作るか」という段階から議論し、仕様づくりそのものに関わりながら商品を作り上げていく立場です。
定期的に会話する場がプロジェクトの前段階からあり、世の中のトレンドや新しい法規制を踏まえ、「どういった価値を、どのように実現するか」を一緒に考えて仕様化していきます。時にはカーメーカー様の開発現場に入り込み、同じチームの一員として開発を進めることもあります。単に部品を納める存在ではなく、最終的なユーザーである「クルマに乗る人」へ価値を届けるパートナーなのです。
──上流の工程から非常に深く関わることができるのですね。
田尻:はい。一例を挙げると、近年はクルマの中で扱うデータ量が増え、ECU(車載コンピューター)間の通信の高速化が強く求められています。しかし、通信の高速化を「車載」という厳しい環境下で実現するのは非常に困難です。コストを抑えつつ、そのときに最適な仕様で使えるものは何かを見つけるため、部品メーカー様とも協力して試作品を作り、性能評価を行いました。
私はプロジェクトのハードウェアリーダーとして、カーメーカー様との窓口に立ち、内部の検討を主導しました。先行開発では部品の完成度がまだ80点ということも多いですが、「あと少し検討を進めればクルマに載せられる」という最適な基準を見つけて仕様に落とし込んでいくプロセスは、非常に難しくも面白い部分でした。

田尻 修也(タジリ シュウヤ):電気設計開発 スペシャリスト
電気工学専攻/エネルギー理工学専攻 新卒でパナソニックへ入社。車載マルチメディア機器の電気設計経験を経て、現在はプロジェクトのハードウェア開発リーダーを担当。
チームワークで形にする大規模な設計開発とモノづくりのリアル
──「設計開発」のプロセスにおいて、意識されているカルチャーはありますか。
田尻:設計開発と聞くと「黙々とパソコンに向かって作業する」イメージがあるかもしれませんが、実際は多くのメンバーとのチームワークが欠かせない仕事です。
技術の中だけでもハードウェア、ソフトウェア、機構設計がありますし、技術の外でも製造、調達、品質といった様々な職能のプロフェッショナルが意見を出し合って、1つの商品を形にしていきます。私の関わるハードウェアだけでも30人以上、ソフトウェア開発も含めれば数百人規模が動く非常に大規模な開発です。社外の部品メーカー様も含めるとさらに大きくなります。
──それほど大規模なチームだと、意見の衝突や難しさもありそうですね。
田尻:おっしゃる通りです。社外のパートナー様との間でも、社内でも職能ごとでも、意見がぶつかることは日常茶飯事です。しかし、お互いがより良いものを作ろうとするからこそ、ぶつかるわけであり、折り合いをつけていくからこそ最終的に良いプロダクトにたどり着けるのだと感じています。
──その中で、田尻さんが特に面白いと感じる瞬間はどこですか。
田尻:1つ目は、ハードウェアとソフトウェアを初めて組み合わせる「結合」の瞬間です。実際に回路や基板を設計して試作品を作り、ソフトウェアを組み込んで、初めて電源を入れる瞬間は本当に緊張しますが、無事に起動して映像や音が出た瞬間に立ち会えるのは、設計者として最高に楽しい瞬間です。
2つ目は、年間100万台以上の生産規模を見据えた「量産開発のモノづくり視点」です。いかに効率よく自動化できるか、品質を落とさずに組み立てや検査を楽にできるかを製造のプロと協議して設計に落とし込みます。
自分が苦労してチームで作った商品が実際の街中を走っているのを見かけると、やはりじっと見てしまいますし、この上ないやりがいを感じます。
理系学生のリアルな疑問に本音で答える
──ここからは、理系学生からよく寄せられる疑問について、お2人の本音を伺います。
Q1. 自分に合う会社はどう考えるべき?
田尻:私は就職活動時、会社名よりも「自分が何をやりたいか、何が好きか」を一番大事にしました。好きでやっている人は強いと思うからです。私は昔から電気回路の設計開発がやりたかったので、選考でも一貫してそれを伝えていました。
小山:会社ごとに特徴や人の雰囲気は異なります。ぜひ学生の皆さんには、実際にイベントで人と会ったりインターンを受けたりして、自分の肌に合うかどうかを確かめてほしいですね。

小山 樂久(コヤマ ガク):新卒採用担当 スペシャリスト
新卒でパナソニックへ入社。車載製品事業の製造拠点の人事などを経て、2026年4月より全社新卒採用を担当。
Q2. 同じ領域を突き詰めるべき? 違う領域にも挑戦できる?
田尻:PASには、1つの技術を突き詰めるエキスパートルートと、商品開発のマネジメントを行うルートのどちらもあります。研修制度を活かしたリスキリングも可能です。私自身、最初は技術を突き詰めたいと思っていましたが、プロジェクトを経験する中で、最近はマネジメントにも、かなり興味が湧いています。
小山:社内でも、設計開発から工場の量産立ち上げへ異動するケースや、その逆もあります。ずっと同じ場所にいなくても、幅広く経験できるのは、私たちの会社規模が大きいからこその魅力です。
Q3. 学生時代の専門性と会社の事業が一致している必要がある?
田尻:全く心配いりません。私自身、学生時代は「超電導の物性研究」という完全に化学寄りのことをやっていましたが、入社後に教育研修を受け、いまは回路設計の最前線でリーダーを務めています。専門性がなくても、好きな気持ちがあれば会社のサポートを通して成長していくことができます。
小山:全く違うバックグラウンドから入社して、新しいことにチャレンジする学生さんはたくさんいます。私たちは専門性の有無だけでなく、研究活動の中でどういうプロセスを踏んできたか、その方の強みは何かを見ていきたいと考えています。

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