「流れ作業のように消化される面接」「型どおりのグループワークをこなすだけのインターン」。就職活動において、そんな通過儀礼的な選考プロセスに違和感を抱く学生は少なくないだろう。そうした中で、多くの学生から支持を集め、「就活クチコミアワード2026(※)」で総合1位に輝いたのが、コンサルティングファームのRe-grit Partners (リグリットパートナーズ)だ。
同社が何より徹底しているのは、説明会からインターン、本選考に至るすべての接点を単なる合否判定の場ではなく、参加するたびに確かな成長とフィードバックが得られる「体験創造」の場とすることである。
なぜ彼らは、自社への入社という結果にとらわれず、学生一人一人にここまで本気で向き合うのか。自社の新卒採用で培った知見を企業の採用・人材開発支援へと広げる髙尾氏と、新卒採用の最前線を牽引する島村氏へのインタビューを通じ、その根底にある思想、AI時代に求められるコンサルタントの価値、そして若手が挑戦し成長できる環境について紐解く。
(※)出典:ワンキャリア「就活クチコミアワード2026 人気企業ランキング」調べ
<目次>
●「何人採れたか」ではなく「何を残せたか」。採用を体験として再設計する理由
●学生が持ち帰るギフトは、自己変革の成功体験と人とのつながり
●「合わないと分かる」ことも価値。納得のいく意思決定を支える選考
●「人を動かす」のではなく、「人が動き出す」。HREとTREに込めた想い
●AI時代のコンサルに必要なのは、信頼関係と「実行までやり切る力」
●クチコミアワード総合1位は、泥臭い徹底の積み重ね。自分の意思で未来を選ぶ学生へ
「何人採れたか」ではなく「何を残せたか」。採用を体験として再設計する理由
──多くの企業で、選考の各接点での最適化は行われていると思います。その中で貴社が採用を「一貫した体験」として捉え直した背景を教えてください。
髙尾:採用活動は、1回きりのイベントではなく、接点ごとにバトンをつないでいくリレーのようなものです。「インターンが良かった」「面接が良かった」という記憶がそれぞれ「点」で終わってしまうと、最後のキャリア選択につながりにくいんです。だからこそ、説明会からインターン、本選考、内定後までを1つのストーリーとしてつなぎ、学生の人生の糧になる体験として届けようと考えました。
島村:実際にイベントや選考を通じて一人一人と濃密に関わる回数を増やしたことで、学生さん自身も当社の選考を「一連の線」として受け止めてくれるようになり、対話の深まり方が大きく変わったと感じます。
──かつては説明会の参加者が0人の日もあったそうですね。そこからどう変わったのでしょうか。
髙尾:2023年当時、説明会の参加者が0人だったときに痛感したのは、自社の知名度不足だけではありません。「何のために学生に来てもらい、自分たちは何を提供できるのか」という問いに、十分に答えられていなかったのです。そこから「どう集めるか」という企業側の都合ではなく、「目の前の1人に何を残せるか」という学生側の視点へと発想を切り替えました。

ニトリ、日系大手コンサルティングファームを経て2023年にリグリットパートナーズへ入社。新卒採用の改革や就活クチコミアワード受賞を牽引。現在は自社の新卒採用を担う組織と、企業向けの採用・人材開発支援を担う組織を管掌し、自社で磨いた「体験創造」の知見を社外にも展開している。
──お二人の考える「良い体験」とは何でしょうか。
髙尾:私が考える「良い体験」には、2つの条件があります。
1つ目は、「企業らしさが、一貫したストーリーとして伝わること」です。
例えば、有名なテーマパークでは、スタッフの挨拶から音楽、アトラクション、夜の演出に至るまで、すべてが1つの世界観で統一されていますよね。だからこそ、訪れた人の心に特別な体験として残るのだと思います。
採用活動も同じです。説明会で伝えるメッセージ、インターンでの体験、面接官との対話、さらには採用メール1通に至るまで、すべての接点でその企業らしい価値観や想いが一貫して伝わることが重要だと考えています。
2つ目は、「学生が持ち帰れるギフト(成長の種)が明確であること」です。
私たちは、学生に参加してもらう際、「この体験を通じて、何を持ち帰ってもらいたいか」を必ず考えます。
それは、自分でも気づいていなかった強みや課題かもしれませんし、新しい考え方や、一歩踏み出す勇気かもしれません。大切なのは、参加する前と後で、その学生の中に何かしらの前向きな変化が生まれていることです。
企業の想いや価値観が一貫して伝わり、同時に学生自身にも成長や気づきが残る。
この2つがそろって初めて、学生が周囲の評価や企業の知名度だけに左右されず、自分自身の意思で納得のいくキャリアを選択できるようになる。そんな体験こそが、私たちの考える「良い体験」です。
学生が持ち帰るギフトは、自己変革の成功体験と人とのつながり
──学生へ渡す「ギフト」とは、具体的にどのようなものですか。
髙尾:多くの企業は、インターンについて「どんなテーマのワークにするか」から考えがちですが、私たちは「参加後に学生をどの状態まで成長させたいか」というゴールから逆算します。象徴的なのが、3日間のインターンでお渡しする「紙の個別フィードバックシート」です。学生の強みだけでなく、チームが苦しいときにどう振る舞ったかなどの課題も含め、自己変革のヒントを率直に言語化して手渡します。
島村:初日は「周りより優秀に見られたい」と力んでいた学生も、毎日の1on1で率直なフィードバックを受けると、2日目、3日目には自分の課題を受け止め、行動をガラリと変えていきます。その自己変革の成功体験こそが、何よりのギフトです。
髙尾:手渡すスキルも、当社でしか使えない内向きなものではなく、論理的思考や課題解決、プレゼン技法など、どの企業でも一生使える普遍的なビジネススキルにこだわっています。
──目に見えるスキルだけでなく、人との「繋がり」も資産になると伺いました。
髙尾:AIの進化によって情報へのアクセスが広がるほど、人との信頼関係は、ますます大切な資産になると考えています。メンターを務める視座の高い当社の内定者インターンメンバーや、本気でぶつかり合った同期の仲間との繋がりは一生モノの財産になります。最終的に当社を選ばなかった学生さんの就活の相談に乗ることも珍しくありません。選考の合否や入社先にかかわらず、出会った学生の未来が少しでも前に進むなら、その関わりには価値がある。そう考えているからこそ、自社の採用成果だけにとらわれず、目の前の1人に向き合いたいのです。
「合わないと分かる」ことも価値。納得のいく意思決定を支える選考
──面接などの本選考プロセスにおいても、その思想は一貫しているのでしょうか。
島村:はい。学生さんからよく言っていただけるのは、「リグリットパートナーズには、型どおりの面接をする人がいない」ということです。事前に準備した質問を順番に投げかけるのではなく、どのようなキャリアを描いているのか、これまでどんな価値観で行動してきたのかを、対話を通じて深掘りします。面接後には丁寧なフィードバックを行い、その内容は次の面接官にも引き継ぎます。前回の対話やフィードバックをどう受け止め、その後の行動にどうつなげているのか。そうした変化のプロセスまで大切にしています。

ニトリで店舗運営、旗艦店の立ち上げ・マネジメントなどを経験し、2025年にリグリットパートナーズへ参画。現在は新卒採用責任者として、採用全体の設計と現場運用を牽引。「就活を変革する」を掲げ、学生が納得してキャリアを選べる候補者体験を追求している。
──自社のハードな側面も包み隠さず伝えると伺っています。志望度が下がってしまうリスクはありませんか。
島村:お互いにとって不幸なミスマッチを防ぐためには不可欠だと考えています。当社の環境は若手のうちから打席が多く、一定のハードワークが求められるのも事実です。そこで「できます」と着飾って入社しても、入社後にギャップで苦しむだけです。だからこそ面接では、言葉通りの信ぴょう性はもちろん、「締め切り直前やトラブルなどの苦しい状況で、周囲とどう向き合って乗り越えてきたのか」「その粘り強さがうちの現場でも発揮できるか」を、過去の経験から深く確かめています。
髙尾:就職活動は、最初のキャリアを自分自身の意思で選ぶ大切な機会です。インターンで密度の高いコンサルティングワークに挑戦する中で、「この仕事にやりがいを感じる」と気づく人もいれば、「自分が目指す働き方とは違う」「当社のカルチャーとは合わない」と感じる人もいます。どちらの気づきにも価値があると思っています。自分と深く向き合ったうえで、別の道へ進むと納得して決断できたのなら、それも学生の明日からの行動を変えた、紛れもない「良い体験」です。
──なぜ社員や経営陣が、そこまで本気で新卒採用に向き合えるのでしょうか。
髙尾:シンプルに、経営トップが新卒採用に本気だからです。代表の山木をはじめ、経営陣は「新卒こそが会社のカルチャーを創る宝であり、新卒次第で会社の未来が決まる」という覚悟を持っています。トップが本気だからこそ現場の社員もコミットできるのだと思います。
「人を動かす」のではなく、「人が動き出す」。HREとTREに込めた想い
──その姿勢は、組織の名前にも表れているのでしょうか。髙尾さんが管掌する、自社の新卒採用を担うTREと、企業の採用・人材開発を支援するHREには、それぞれどのような想いが込められていますか。
髙尾:一般的にHRは「Human Resources(人的資源)」の略ですが、私たちは人を単なる「資源」ではなく、Relationship(関係性)を通じて可能性を広げていく存在として捉えています。学生と企業、社員と組織、上司と部下。信頼し合い、本音で向き合える関係性があるからこそ、一人一人の挑戦や成長が生まれると思うんです。そうした考えから、企業の採用・人材開発を支援する組織を「HR Enablement Team(HRE)」、自社の新卒採用を担う組織を「TR Experience Team(TRE)」としています。HREでは人と組織の関係性を育み、可能性を引き出すことを、TREでは学生と企業が互いを理解し、自分の意思で未来を選ぶための体験を重視しています。領域は異なっても、目指すのは同じです。人を一方的に評価・管理するのではなく、関係性と体験を通じて、一人一人が自分の意思で動き出せる状態をつくりたいと考えています。
──HREが掲げるMission「ヒトの体験を、より豊かに」には、どのような意味があるのでしょうか。
髙尾:人事の仕事は、採用人数や制度の導入だけで完結するものではありません。応募者が選考で何を感じたか、社員が仕事を通じてどんな可能性に気づけたか。その積み重ねが、個人のキャリアも組織の未来も変えていきます。例えば、採用段階でどれだけ魅力的なメッセージを伝えても、入社後の育成や日々の働く体験と一致していなければ、本当の意味で良い採用だったとは言えません。だからこそ、採用という入口だけでなく、その先の成長や活躍まで一貫して考えたい。施策を「実施したか」ではなく、「人の体験をどう豊かにし、どんな行動や関係性の変化を生んだか」で捉え、自社で実践してきた体験創造を企業の人・組織づくりにも広げていくのがHREです。
──一方、TREのMissionは「感じて、動く。その瞬間の、となりにいる」ですね。島村さんは、どのように捉えていますか。
島村:学生の人生を決めるのは、私たちではなく学生自身です。私たちが考える感動は、ただ心地よい時間を過ごすことではなく、感じたことが次の行動につながることです。対話を通じて自分の強みや課題に気づく。インターンで仲間と本気で向き合い、昨日までできなかったことに挑戦する。そんな「心が動く瞬間」の隣にいることが、TREの役割です。内定承諾に至るかどうかだけでなく、参加した学生が「明日からこう動こう」と自分の未来を前に進められる体験を提供したいと考えています。
──HREとTREで共通して掲げるVision「『あの瞬間があったから』を、増やす」には、どんな未来への想いが込められているのでしょうか。
髙尾:誰にでも、人生を振り返ったときに「あの人と出会えたから」「あの言葉をもらえたから」と思い出す瞬間があるはずです。私たちが増やしたいのは、あとから人生の転機だったと気づける体験です。入社を決めた学生だけでなく、別の企業に進む学生にも。採用だけでなく、入社後の育成や日々の仕事の中にも。TREが自社の採用で磨いた体験創造を、HREがさまざまな企業や組織へ広げる。その循環によって、人生の可能性が動き出す瞬間を1つでも多くつくりたいと思っています。
AI時代のコンサルに必要なのは、信頼関係と「実行までやり切る力」
──学生一人一人の可能性を信じ、本気で向き合う姿勢は、クライアントに伴走するコンサルティングの仕事にも通じるように感じます。AIが進化する今、コンサルタントに求められる本質的な価値とは何でしょうか。
島村:事業の構想や戦略を描くだけでは、コンサルタントとしての価値を示すことが難しくなっていくと考えています。クライアントに深く寄り添い、現場で汗をかきながら一緒に成果を形にできるファームの価値が、今後ますます高まっていくはずです。
髙尾:AIの進化によって、情報収集や分析のスピードは大きく変わりました。ただ、どれだけ優れた戦略を描いても、現場の人が納得し、実際の行動が変わらなければ成果にはつながりません。だからこそ、論理的に課題を捉える力を土台に、相手の立場を深く理解し、信頼関係を築き、周囲を巻き込みながら実行までやり切る力が重要だと考えています。私たちが採用活動で大切にしている、一人一人と本気で向き合い、可能性を引き出すという姿勢は、クライアントに向き合う姿勢そのものでもあるんです。

──そうした人間力やコンサルティングスキルを身につけるために、貴社にはどのような成長環境があるのでしょうか。
髙尾:人材育成には、仕事上の経験からの学びを7割、周囲からの助言やフィードバックを2割、研修・学習を1割と捉える「7:2:1」という考え方があります。厳密な配分というより、実践から学ぶ機会の重要性を示すモデルです。当社でも、若手が経験を通じて学ぶ機会を大切にしています。 「将来CxOになりたい」という気概を持つメンバーも多く、上司は部下の成長を積極的に支えています。そのため、新卒1年目であっても大企業クライアントとの定例ミーティングを任せ、「ミスをしたら自分がカバーするから思い切りやってこい」と挑戦を後押ししています。打席数の多さと仕事の難易度が、若手の成長を促していると感じます。
──クライアントワークだけでなく、自社経営に参画する制度もあるそうですね。
髙尾:はい、「コンサルティングプラスワン」という制度があります。クライアント案件に従事しながら、採用、研修、マーケティング、ナレッジ整備といった自社の経営機能にも参画できる仕組みです。事業会社の当事者として意思決定の連続を経験できるため、ここでも「7割の経験」を加速させることができます。実際に、新卒入社したメンバーが自ら事業を立ち上げ、スポーツ関連の新規ビジネスで事業責任者を務めている事例もあります。
クチコミアワード総合1位は、泥臭い徹底の積み重ね。自分の意思で未来を選ぶ学生へ
──「就活クチコミアワード総合1位」という評価について、率直にどう受け止めていますか。
髙尾:狙って獲得した賞ではありません。ただ、学生一人一人に感動体験を届けること、そしてそれを全社員が同じ熱量で泥臭く徹底し続けた結果が、学生の皆さんに差別化として届いたのかなと思っています。
──最後に、これから就職活動に臨む学生へメッセージをお願いします。
島村:コンサルティング業界を志望する学生さんから「どのファームも同じに見える」という声をよく聞きます。しかし、事業内容が似て見えても、組織のカラーや人、成長環境はそれぞれ違います。企業名や待遇といった比較軸に加え、どんな仲間と何に挑戦できるかまで見てほしいです。20代から成長し、将来世の中に変革をもたらしたいと願う方には、ぜひ一度当社のインターンシップに足を運んでもらいたいですね。
髙尾:就職活動は、企業から評価されるだけの時間ではなく、自分自身の可能性に気づき、これからの人生を自分の意思で選んでいく時間だと思っています。AIの普及で知識や情報にアクセスする手段は広がりましたが、大学名や企業の知名度だけで、一人一人の将来の可能性が決まるわけではありません。当社でも、選考なしで参加できる初期のイベントなど、まず一歩を踏み出せる機会を設けています。
だからこそ、当社を選ぶかどうかにかかわらず、私たちとの対話やインターンシップを通じて、新しい気づきや次の一歩につながる何かを持ち帰ってほしいです。大切なのは、これから何を学び、どんな自分になっていきたいかを、自分の言葉で考えることです。そして、いつか人生を振り返ったときに、「あの瞬間があったから、今の自分がいる」と思える。そんな出会いや体験を、1人でも多くの学生に届けていきたいですね。

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【制作:BRIGHTLOGG,INC./撮影:河合 信幸】