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戦略コンサルのリアルなキャリア事情:主なネクストキャリアと「何にもなれなかった優等生」にならないために

コンサル キャリア
2020年3月2日(月) | 39,783 views

2月になり、コンサルティングファーム内定者も大半が出揃った頃だろうか。

日系大手企業の選考を受け続ける者、コンサルタントとしてどうありたいかを深く考え始めた者、いったん就職活動から離れて残りの学生生活を楽しもうとする者、ネットワーキングに精を出す者……。さまざまな過ごし方をしているのではなかろうか。

今回はそんなコンサル内定者から多くの質問が寄せられた、「戦略コンサルタントのキャリア」について語ろうと思う。記事前半では社外のキャリア、後半は社内でのキャリアについて話したい。

そもそも、社外へ旅立つのは「UP or Out」より前向きな理由から

コンサルといえば「Up or Out」がまかり通ってきた業界という印象が強いだろう。だが、好景気もあり、近年はどのファームも競争色が薄くなっている。転職・独立する動機は、これから紹介するように前向きな理由が大半だ。

いつまでこの好況が続くかは分からないが、もしこの記事の読者に「入社後に解雇されてしまったらどうしよう」と選考を受けることさえ思い留まっている方がいるのであれば、それは杞憂(きゆう)だ。ぜひとも気にせず挑戦していただきたい。

戦略コンサルタントのネクストキャリアは、事業会社と他ファームが大半

ここからは、戦略コンサルタントが新卒のファームを離れる場合のネクストキャリアを見ていこう。その主な行き先と実情についてご紹介したい。

現役コンサルタントの筆者が知る限り(数十人程度)では、下記のような構成だ。8割以上が、事業会社と他ファームへの転職という結果になった。

1. 事業会社:50%
2. 他ファーム:35%
3. 投資銀行・PE・VC:10%
4. 起業:3%
5. その他:2%

※数値は筆者の知る限りでの比率


1. 事業会社:50%

ネクストキャリアとして最も多く聞くのが、事業会社だ。

ひとえに「事業会社」と言っても、日系大手企業の経営企画室、ITベンチャーの役員、オーナー社長の右腕など、ポジションや業界の幅は広い。

キャリアチェンジの経緯というのも

・転職サイトやエージェントの公募案件で転職する人
・プロジェクトに熱が入り過ぎたあまり、クライアントの重職にスライドする人
・知り合いが社長を務める会社に引き抜かれる人
・突然「やりたい業界が見つかった」と悟りを開き、企業にアプローチし始める人

などさまざまだ。

巷では「転職市場では、以前ほどコンサル出身者の人気は高くない」という声も聞くが、筆者の周囲では2019年現在でも全くそのような様子は伺えない。

マネージャー以下の社員ですら、モデル年収2,000万円クラスの求人案件が持ち掛けられる事もしばしばだ。いまだに、破格の条件の求人案件が転がっているのだ。

まだまだ事業会社における戦略コンサル出身者人気は陰りを見せないだろう。


2. 他ファーム:35%

1位が事業会社なのは想像通りかもしれないが、他ファームへの転職も非常に多い。

コンサルタントを続ける人が多い理由はさまざまだが、

・ファーム間で業務内容が似通っている
・案件のテーマが多様かつ期間が決まっているため飽きにくい
・待遇が世間一般に比べて高い水準にある

などはよく耳にする。

自社製品を持つメーカーなどと異なり、競争優位性が各人に依存する業界である点も大きい。各人のポータブルスキルがモノを言う世界になったために、腕に自信がある人は「強くてニューゲーム」を選びやすい業界なのだ。

また、コンサルタントのキャリアを選びつつも、他ファームに移ってしまう直接的な理由は、

・高待遇の提示による引き抜き
・社内の人間関係の悪化
・興味分野に強いファームで働く機会の出現

あたりが多いだろう。コンサルティングファームはギルド的な組織であるため、懇意にしている上司が転職(or 独立)する際に、それに引っ張られて転職するケースも存在している。


3. 投資銀行・PEファンド:10%

投資銀行(特にIBD)やPEファンドへの転職も耳にする。

まず、新卒就活では「就活強者」のファーストキャリアとして度々比較されるIBDについて。IBDは金融の専門知識が求められる、特殊かつ専門的な業界だ。そのため、培ったコンサルティングスキルよりも、ポテンシャルを評価された若手が入社するケースが大半だろう。転職事例としても、新卒2〜3年目程度のコンサルタントが第2新卒として入社する場合が多い。

総数としてはコンサルティングファームからIBDに入る人数よりも、IBDからコンサルティングファームに入る人数の方が多い。IBDもキャリアの志向や能力面で母集団が近い事から、新卒入社の社員に大した能力差はない業界ではあるが、業界経験を重視するか否かによってこの転職の可能性の差が生まれるのであろう。IBDからコンサルに転職する場合も、やはりコンサルタントやアナリストなどのスタッフクラスで入社する場合が大半だが、コンサル→IBDに転職する場合に比べて中途社員の年齢層は広い。30歳手前で転職してくるケースも存在する。

「ダブルで内定を獲得したので、どちらもキャリアとして経験したい」という恵まれた変わり者は、先にIBDを経験した方が無難な選択かもしれない。


次に、PEファンドへの転職も、ジュニアポジションでの採用が中心だ。

PEファンドのミドル(VP)層以上は基本的に業界経験者の採用が中心だ。コンサルタントから転職する場合は、他の業界未経験者と同様に財務分析などを行うジュニアポジションから入るのが一般的である。

実務では数字周りを得意とする投資銀行出身者や監査法人出身者と競争することになるが、抽象的な概念を整理することが得意な戦略コンサルタントの場合、同じ土俵で勝負するのは苦戦を強いられるという話も聞く。そのため将来的にPEファンドへの転職を狙う人は、ファーム所属時からファンド依頼の事業DD(デューデリジェンス)やバリューアップ案件を積極的に行うなど、PEに入った後にも行う業務で足腰を鍛えてから挑む場合が多い。


4. 起業・独立:3%

言わずもがな、起業・独立する人も一般的な大企業に比べて多く存在する。まずは現職のコンサルティング業務と並行で起業準備をしつつ、事業が軌道に乗ったらファームを去る……という場合が多い。

詳細な打率は分からないが、起業後に「大失敗した」というケースはあまり聞かない。「経営の定石」を収集し続ける戦略コンサルタント特有の強みだろう。

また、懇意にしていたクライアントに気に入られて独立して直接取引を始めてしまう(ファームの中抜きまで収入源にしてしまう)猛者や、起業の資金繰りのために現職のクライアントから資金調達をする人もいる。

スレスレの話ではあるが、そこまで支援してくれるほどに経営者へのリーチがある点も、コンサルタントのキャリアの魅力だろう。


5. その他:2%

その他にも、民間非営利団体(NPO)や教職、政治家などに転身する人も存在する。

コンサルタントがもともと「人に何かを教える仕事」であることから教職になる方もいる。民間非営利団体(NPO)や政界への転身は意外かもしれないが、経営周りでは社会性に関わる論点も多い。そうしたプロジェクトの性質から、収入ではなく社会的意義を重視してネクストキャリアの選択を行う人もいるのだろう。

アラフォーで社内に残るのは「抜群の結果を残した伝説予備軍」と、「賢くもあと一歩で何にもなれなかった優等生」

一方の、ファーム内でのキャリアについても見ていこう。

基本的に起業・転職するコンサルタントは、血気盛んで体力も有り余っている20代後半から30代前半の社員が中心だ。そのタイミングを過ぎて新卒のファームに残った人間は何かというと、「抜群の結果を残した伝説予備軍のコンサルタント」と、「賢くもあと一歩で何にもなれなかった優等生」の2つに分かれる。

前者は、どのファームでも数年に1人、花形として存在する「次期パートナー候補」だ。20代でマネ―ジャー、30代半ばファームの経営の中枢を担うパートナーに昇進……と、絵に描いたような出世をするスーパーエリート層。人柄も良く、頭も切れる。内外ともに認める「デキるコンサルタント」だ。

内定者諸君も、知っているパートナーの中に1人くらいは心当たりがあるのではなかろうか。まさにその人こそ、そうした「伝説予備軍」を経て伝説になった方である。


一方、そうではない人間も残っている。ファームのキック(≒ Out)要件を満たさない程度に優秀ではあるものの、向上心が薄れてしまった元優秀層。つまり、「万年マネージャー」やその予備軍達である。

彼らは、決して凡才ではない。有名大学を卒業し、海外有名大のMBAを取得したようなそうそうたる学歴・経歴を持っている「優等生」ということも往々にしてある。そんな彼らでさえ、歳を重ねて体力は衰え、思考の切れ味は鈍くなり、気を抜けばこの層に落ち着いてしまうのだ。

最終的にマネージャーには出世するものの、景気の波を受けて真っ先に再編候補になる人材だろう。内定者諸君が想像する「華々しいコンサルタント像」からはかけ離れた存在なのは間違いない。

大成のカギは「自分の価値を能動的に再定義し続けられるか」

「伝説予備軍」と「万年マネージャー」、この両者では何が違ったのか。

共に働いていて思うに、社内で結果を残しているコンサルタントには共通項がある。それは、自分の「天職」を受け身に待ち続けるのではなく、自分の価値やあるべきキャリアを能動的に再定義し続ける姿勢を持つこと。それも数年ではない。数十年ものスパンで持ち続けるのだ。

「イケてる」コンサルタントはミドルからシニア層ですら、かなりの部分まで自分を客観視し、若手の自分にさえフィードバックを求めに来る。

一方で、中にはマネージャーとしては優秀な者でさえ、自身のキャリアについて尋ねられると「うーん、どうしようかな……」とデザートを迷う女子大生のような反応を見せる。それは、普段から考えが及んでいないためだ。目の前の仕事に対しては一流の彼も、自分のキャリアに関しての考えは二流ということもままある。その先に待つであろう未来は……あえて語らないでおこう。


いかがだっただろうか。

この記事はコンサルティングファームの内定者向けに書いているが、もしあなたがコンサル0年生なら、いつまでも「とりあえずコンサルに入りながら力をつけて、自分のやりたい事を探す」といった、受動的で甘い学生レベルの考えを持つのはやめなくてはいけないのが分かるだろう。この記事を読んだ今から、自分の価値を常に自問自答し続けてほしい。

問いの内容は個人差があるだろうが、「自分は、1人の人間として何ができるのか」を中心に考えるといいだろう。まずは人の話をうまく整理・図示する事でも良いし、複雑な分析を正確に行い、回せるようになっておくことでも良い。そして、その問いを何年・何十年先までその問いを持ち続けていくことだ。

兎にも角にも、コンサルタントにおけるキャリアの成功は、常に自分の価値を自問自答し続け、その大きさを望む方向へ拡大することに他ならない。

少しでも、今後のキャリアを考える参考になれば幸いだ。


(Photo:Sam Wordley/Shutterstock.com)

▼【ライター:秋田(@akita_consul)】の他の記事はこちら!
・その質問に「争点」はあるか。戦略コンサルタントが思う、イケてない質問・イケてる質問
・「つい贔屓してしまう人間」であれ!戦略コンサルタントがジョブで見た、イケてない学生・イケてる学生
・戦略コンサルのリアルなキャリア事情:主なネクストキャリアと「何にもなれなかった優等生」にならないために
・戦略コンサルタントの上位10%は何を実践しているのか?新人が意識すべき働き方のポイント

※こちらは2019年2月に公開された記事の再掲です。

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秋田
ライター
秋田

戦略コンサルティングファーム勤務。中期経営計画策定、組織改編業務などに従事。上司に顎で使われる社畜社会人をエンジョイしながらも、就活生時代に戦略コンサル、投資銀行(IBD)等に内定した経験から、息抜きに就活生からの質問も受ける。アイコンは知らない人(フリー素材)。

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