こんにちは、ワンキャリ編集部です。「総合商社特集」の特別企画として、「商社人事インタビュー2017」の連続掲載がスタート。第4回は、住友商事。人事部 採用チーム長の藤和恒さんにインタビューを行いました。
信用重視の「組織文化」と、歴史から紐解く「住友商事ならでは」の特徴

住友商事株式会社 人事部採用チーム長 藤和恒(ふじかずひさ):
1994年入社。非鉄化燃運輸部に配属され、非鉄金属や化学品の物流業務を担当。1996年に繊維本部に異動し、アパレルの営業を担当。その後、素材や工業用繊維製品を扱う部署に異動し、開発や事業投資を担当。2007年ファッション・ブランド事業部に異動し、事業会社に出向。2011年に人事部採用チームに異動になり、新卒、キャリア、障がい者採用を担当。2015年11月より現職。
ーー多くの学生は総合商社の各社を比較して見ている時期ですが、学生が気になるのは「住友商事ならでは」の特徴です。住友商事には経営理念のベースにもなっている「住友の事業精神」がありますが、代表的な4つの項目の中で、あえて1つ大切なもの挙げるとすると何を選ばれますか。
「住友の事業精神」
1. 信用・確実
最も重要なビジネス基盤である「信用」を維持していく為、一人ひとりが「確実を旨とする」仕事、即ち、相手を裏切らない、言ったことは必ず成し遂げることを重んじなければならない。2. 浮利を追わず
価値創造を伴わない目先の利益に惑わされてはならない。自ら知恵を絞り、汗を流して、取引先や市場に価値を提供し、それに見合った対価を正々堂々と頂く事業を行うべし。3. 自利利他公私一如(じりりたこうしいちにょ)
住友の事業は、自分達だけが利潤を上げることのみを目的とするのでは不十分であり、国家や社会の利益をかなえるほどの壮大な事業でならなければならない。それだけの企画の計画性と報恩の精神、使命感を持って仕事をすべし。
4. 進取の精神
時代の変化に際しては積極的に一歩先んじるべし。時代に合わぬものは廃し、時代が必要とするものを興さねばならない。※住友商事 2018年度新卒採用ページより
藤:住友商事は2019年に創業100周年を迎えますが、住友グループの歴史は400年前に遡ります。その歴史の中で培われてきたものが「住友の事業精神」になります。ここから私があえて1つを選ぶとすると「信用・確実」になります。
この「信用・確実」はいかなるビジネスにおいても基本となり、ベースとなるもので、住友商事は何よりも「信用」を重んじる企業であり、これを大事にしていることを、実際にビジネスを経験する中で実感してきました。最後発の総合商社として、他商社から後れを取りながらスタートした当時から現在に至るまで「信用を重んじる」「確実を旨とする」この2つの信念を貫き通してきたからこそ、今の住友商事があると思います。
総合商社それぞれ似たような理念を掲げているように思えますが、歴史を紐解いていくと本質的なところで異なるところがあるということが見えてきます。住友商事の場合は、信用や謙虚さ、そして現場主義というのを企業文化として大事にしている会社だと思います。
住友商事だからこそ見える世界やできる世界がある
ーー「信用や謙虚さ、現場主義」というキーワードを、実際のビジネスに絡めてもう少し具体的に教えてください。
藤:最後発の総合商社ゆえ、商社ビジネスに対する知見もノウハウもなく、人脈もない中で他商社と戦っていくには、謙虚な姿勢で、取引先と一緒になってビジネスのことを真剣に考え、取引先のニーズに応える必要がありました。現場で一緒に汗をかいて、相手の信用をひとつひとつ積み重ねながら確実にビジネスを作り上げていくという、徹底した「現場主義」が「ハンズオン*の文化」を醸成したと思います。
事業投資においても、単なる出資者としてではなく、現場に人材を投入し、事業に深く関与することで業界やビジネスを理解し、経験を積んだ人材がさらに事業を成長させていく。「住友商事らしい」やり方で「住友商事ならでは」の価値を創造していくことをしています。
例えば、食品スーパーのサミットやドラッグストアのトモズは、総合商社が小売事業に100%出資するという意味で珍しいケースだと思いますが、過半数以上出資することで初めて「住友商事らしい」やり方が可能になります。2014年に始めたミャンマーの通信事業では、さまざまなポストに30人ほどの社員を派遣しています。プロジェクトの立ち上げ時は特に現場でないと分からないこともたくさんあり、現地パートナーや現地社員との信頼関係を構築しながら一緒になって会社や社会の発展のために尽くしています。
ビジネスに関わる上では、どの位置に自分たちが立つかによって、得られる情報や感じるものが変わり、自分たちの使命感が変わります。そこには現場主義だからこそ見える世界、できる世界があると思っています。
*ハンズオン:「手を触れる」という意味から、投資先や買収相手の企業経営に深く関与することを表す
自分たちにしかできない価値を創造して、それを実現していく面白さ

ーー「信用」や「ハンズオンの文化」によって今の住友商事があるのですね。今後の展望について考える際に、住友商事として重要な地域や分野、注目すべきトピックはありますか。
藤:中期経営計画には「市場としての育成地域」と「産業としての育成分野」を掲げていますが、地域ではブラジル・インド・ミャンマー・トルコ・サブサハラ。産業分野ではエネルギー周辺分野、アジアのリテイル、食料・農業関連ビジネスなどに力を入れています。
個人的には AIやIoTといったテクノロジーの分野に注目しています。テクノロジーの進化は総合商社のビジネスにおける在り方や考え方、ビジネスモデルを変えるくらいのインパクトをもたらす可能性があると考えています。これから各産業に広がっていくことで、総合商社がどのような産業でどのように関わっていくのか、各社のビジネスの違いや特徴がでてくるのではないでしょうか。社内でも、これらの技術を既存ビジネスに活用するだけではなく、技術を通じて次世代産業や新領域に進出していくことも検討しています。
ーーこうした展望がある中で、総合商社、なかでも住友商事で働く醍醐味を教えていただきたいです。
藤:総合商社の醍醐味は「自らビジネスそのものを創る」ところにあります。総合商社は、基本的には自社設備も製品もないので、マーケットでニーズを探してビジネスを創ることがビジネスの本質になります。さまざまな環境に身を置きながら、その時々で自分たちにしかできない価値を創造して、それを実現していくという面白さがあります。
そして総合商社の中でも住友商事で働く醍醐味というのは、経営理念や「住友の事業精神」というしっかりとした価値判断のよりどころがあり、正々堂々とビジネスをしているというところだと思います。高い志と高潔な倫理観を持ってパートナーと共にビジネスを作り上げていく、関わる全ての人を尊重しながらひとつのチームとして成果を出していく、そうして築き上げた強い信頼関係や繋がりが、次のビジネスを生み出していく。それが当たり前にできる環境があり、当たり前にやれる人材がいるところではないでしょうか。
地道な作業をひとつひとつ積み重ねながらキャリアの土台を形成する
ーー「正々堂々としたビジネスをしている」と堂々と言えることに、自信や誇りが感じられます。では、そんな住友商事はどんな資質を持った人材を求めていますか?
藤:「自らビジネスそのものを創る」とお話しましたが、ビジネスを創るというのは、自分の想いをカタチにするということです。そのためには好奇心や高い志、それを実現するための強い意志と実行力が必要になります。時代と共にビジネスは難しく複雑にもなってきています。
そういう環境の中で、常に上を目指していく、良いものを目指していかなければなりません。その過程において想定もしていなかった問題や困難が伴うこともよくあることです。それを乗り越えていかないといけないので、情熱を持って、粘り強く、貪欲に取り組めるかどうかも大事なことです。仕事は意外に泥臭いですね。
ーーなるほど。一見、学生が嫌がりそうな表現をするのはなぜですか?
藤:働き方やキャリアの歩み方を知ることは就職活動において大事なことです。総合商社に対して、スケールの大きな仕事や社会貢献性を期待している学生の方も多いです。しかし、実際にそういったことを感じられるビジネスもありますが、全てのビジネスがそうとは限りません。仕事の本質もそうでないということです。
華やかなイメージもあるかもしれませんが、実際に働いてみるとそんなイメージを感じることはなく、地道な作業の積み重ねと繰り返しです。入社してすぐにスケールの大きい仕事や社会貢献に繋がるような仕事を担当することはもちろんあります。ただ、最初は仕事の経験がなく何も持っていないのでできることは限られていますので、できる最大限のことをして貢献していきます。貢献できるようになれば、次の場で新たな経験を通じて知識やスキル、そして人脈を築いていきながらできることを増やし、できることを大きくしていく。
まずはキャリアの土台をしっかり築いてから、自分の可能性やチャンスを広げていくのが総合商社におけるキャリアになります。こういうことを理解しておかないと入社してからギャップを感じてしまうことになるので。
入社して10年間で海外を含む3つの職務を経験。若手を鍛えるガイドライン

ーー各総合商社で仕事の仕方や企業として大切にしていることがそれぞれ違うと思いますが、住友商事の文化を表すような制度や施策などがあればお聞かせください。
藤:そうですね、まず「若手の育成」に関して「指導員制度」があります。ひとりの新入社員に対して同じチームの入社5年目以上の先輩がひとり付く制度ですが、社会人としての基本姿勢から、仕事をしていく上での進め方や意識の持ち方など、1年間直接指導をしていきます。指導を受けるだけでなく、自分で考えさせることも入社直後からしていきます。
総合商社で仕事をする上では同じことをやり続けることはなく、常に自分で付加価値を付けながら担当するビジネスを大きくしていく、良くしていくことをしなければなりません。そのためには自分なりのアイデアや意見を常に考えないといけないので、考える癖をつけさせます。考えたことを先輩にぶつけても百戦錬磨の先輩が相手なので間違いなく跳ね返されますが、それを繰り返していくことで、仕事の本質や何が必要かということを学んでいきます。
また、指導員だけではなく、組織全体で新入社員を育てる文化があります。同じチームだけでなく、同じ部署や他の部署の社員も気付いたことがあれば新入社員に指摘やアドバイスをしてくれます。仕事に向き合う姿勢は真剣で厳しいですが、面倒見がいい社員が多いですね。
これも当社の成り立ちからくるものだと思っていますが、住友商事というのは他の住友系列の企業から集められた32人の素人集団からスタートしました。その素人集団が商社ビジネスや業界のことが何も分からない中でやっていくには、自分が得た情報や経験を共有することを大事にしてきました。みんなで教えあって学ぶ文化や、チームワークや風通しを大事にする文化がこうしたところから生まれてきたと思います。指導員制度が半世紀以上続く制度として根付いたものとなっているのは、そういった背景からきているものだと思います。
ーー総合商社志望の学生は、「海外勤務」についても各社で比較するポイントです。こちらについては、いかがでしょうか。
藤:海外勤務については、入社10年以内に海外勤務を含む3つの職務を経験させるガイドラインがあります。海外勤務は最低1年以上になり、早ければ2年目に「トレーニー」という立場で海外に出ます。こうした海外勤務をはじめ若手にはいろいろな経験の場を提供するのも住友商事の特徴です。成長するには経験したことがない場所で、ストレッチさせた目標を与えるようにしています。
部門の垣根を超える「コミュコミュ制度」
ーー他にも、社内での新しい取り組みとして、「部門間の繋がりを強める施策」を導入されたそうですね。
藤:中期経営計画の中で部門や地域組織をまたいで事業を創出する「組織間連携」を推進しています。経営企画部主導で各テーマに沿って20以上のワーキンググループ*が動いています。例えば、自動車関連・エネルギー関連・リテール関連・ICT関連など切り口はさまざまです。それぞれ関わりがある部門・本部の社員が集まり、自分たちの組織が有する基盤やケイパビリティ*を共有し、新規ビジネスの開発や、ビジネスモデルの高度化・イノベーションに繋げていく取り組みをしています。
また「Communication and Communication(通称コミュコミュ)」という、組織を超えたコミュニケーションを活発にしていこうとする施策もあります。社員は話を聞いてみたい組織に声を掛けて、気軽に意見交換をするところから始めるものです。社員も積極的に活用して、毎回満席になっていると聞いていますが、こういうところも住友商事らしさだなと思いますね。
*ワーキンググループ:特定の問題の調査・計画の推進のために設けられたチーム
*ケイパビリティ:スピードや効率・品質など、組織全体として得意とする能力のこと
総合商社の「何があるか分からない世界」に魅力を感じた
ーーここまで総合商社や住友商事についてお伺いしましたが、ここからは藤さんご自身のお話も聞かせてください。まず、なぜ総合商社を志望されたのですか?
藤:私は大学時代ラグビー部に所属していましたが、高いレベルの中に身を置けたことでプレイヤーとして成長もでき、それだけではなく、チームメンバーの意識も高く、人としても成長できたと思っています。そこから社会人になっても同じような「意識高く成長できる環境」で働きたいと思うようになりました。
そのイメージに近いのが総合商社だと思い、総合商社にいる先輩に話を聞きに行きましたが、「仕事は大変、厳しい」とネガティブなことしか言われず、仕事の内容はあまりイメージできませんでしたが、会う人みんながとても生き生きしていて誇りを持っているように感じました。
また、総合商社で自分が何をするのか、自分のキャリアがどうなっていくのか想像できませんでしたが、想像できないからこそ自らのキャリアを自ら切り拓いていけるのではないかと思い、そこに魅力を感じました。先が想像できるとつまらないですしね。
いい意味で「危機感」を持ち、10〜20年後のために今やるべきことを考える

ーー実際に住友商事に入社してみて、藤さんがご想像されていたものと違ったことはありますか?
藤:先輩みんながいい意味で「危機感」を持っていたことですね。自分は最初のうちは担当するビジネスだけで精一杯のところを、先輩たちは現状に満足することなく中長期のスパンで業界を俯瞰して見ている。10年、20年後のために今やるべきことは何かということを、真剣に考えているんです。その姿から、自分は全然駄目だなと思ったというか……。とても刺激を受けましたね。
ーー先輩方と肩を並べているだけで学びがある環境なんですね。そんな若手の頃の仕事で特に印象の残っているご経験はなんですか?
藤:アパレルの営業をしていた時に、ある大手小売りチェーンの担当を任された時のことです。住友商事は当時小売りとの直接取引はほとんどありませんでした。しかし、先々を考えると小売りとのビジネスを本格的に始めることが必要だろうとチームメンバーで話し合い、その時、先輩に「藤、お前が担当しろ」と言われ担当することになりました。
まだ営業に異動して3年目の時で小売りとのビジネス経験も知識もありませんでした。そんな中、1から自分で考え、先輩や周囲の人にもアドバイスをもらいながらビジネスを創っていきましたが、競合も沢山いる中で、なかなか取引が増えず苦戦しました。どうすれば取引が増えるのか、どうすれば商品を買ってもらえるのか四六時中考えていました。
周囲から認められるぐらいの取引規模にするには1年近く掛かりましたが、新しいことを手掛けることは大きな成長の機会となり、できないこと、やったことがないことに挑戦をしていかないと何も始まらないし、何も得られないということはそのとき感じました。その気持ちは今でも大事にしていますね。
自分の可能性を広げ、自分の可能性を試してもらいたい
ーー最後に、ワンキャリアを見ている多くの就活生へのメッセージをお願いします。
藤:学生の皆さんは多くの可能性を持っています。最初から「これがしたい」「こうなりたい」と決めつけるのではなく、自分がいちばん活躍できる場所はどこか、自分に合う場所はどこか、自分の可能性を広げて考えてほしいと思います。自分に合わないと思っていても実はよく話を聞いてみると自分に合う仕事や分野というのが見つかることもあります。
企業を選ぶ上で価値観や軸というのも大事ですが、それらは働いていくうちに変わる可能性があります。内面から自然に湧き上がってやる気を起こさせるような、自然体の自分の動機と合った仕事や環境の方が、実は自分に合っていたり、成果が出やすかったりします。
何をもって企業を選ぶかはみなさん次第ですが、自分にとって何が大事なのかということを最後の最後まで考えながら就職活動をしてもらいたいと思います。自分の可能性を信じ、希望に満ち溢れた皆さんと会えることを楽しみにしています。
ーー本日はありがとうございました。
ワンキャリ編集部からのコメント
住友商事の藤さんへのインタビュー、いかがでしたか。皆さんが少しでも総合商社、また住友商事への理解を深めるきっかけとなれば幸いです。さらに商社業界や住友商事への理解を深めたい方はこちらをご覧ください。
・過去の住友商事公式インタビュー
誠実・謙虚 社員による会社評価ランキング1位の総合商社、住友商事の採用像
昨年公開した本記事では、今回は語られなかった以下の内容についても触れられています。
1. 「人で選びました」が多い住友商事、3つの秘訣
2. ダイバーシティは「当たり前」
3. 就活対策で海外経験を積むくらいなら、学生のときにしかできない経験をしてほしい
・「商社人事インタビュー2017」その他の記事はこちら