2015年Mr.慶應の小林廣輝(こばやしひろき)が、現役学生ならではの目線で各業界の「トップランナー」の先輩方にインタビューを行う連載企画「大学生(モラトリアム)で何が悪い」。
初回の先輩はバイリンガールChikaさん。「外コンを辞めてクリエイターになった理由」に迫りました。
コバヒロ:はじめまして! 本日はお忙しいなかお時間を取ってくださってありがとうございます。
さっそく質問ですが、チカさんはアメリカの大学を出られて日本の外資コンサルに就職し、その後YouTube クリエイターになられた経歴をお持ちですが、なぜこの道を選ばれたのでしょうか。
外資コンサルというと「The優等生企業&ハイパー高給取り」というイメージで、そこからYouTube クリエイターという道を選ばれたのには何か理由やきっかけがあるのかと思いまして。
チカさん:なるほど(笑)。
その質問はよく聞かれるのですが、「これがきっかけでYouTube クリエイターになりました!」というようないわゆるターニングポイントは無かったんですよね。実際に、大学を卒業した後も、2〜3年日本で働いてから海外で仕事をしようと思っていましたし。
多くの偶然がたまたま重なって、YouTube クリエイターとしての仕事を始めることになったんです。というのも、今のチャンネルの原型は友人だけに向けたレクチャー動画だったんですよね。英文法の「a」「the」の違いについて自分なりに調べてYouTubeでシェアするといった具合に動画を少しずつ増やしていって。
そうしているうちに気付いたらチャンネル登録者数も増えていて、現在の形になったという感じですね。
コバヒロ:「ターニングポイントなんて無い」とのことですが、その決断の際に軸としていた考えなどはあるのでしょうか。
吉田ちか(よしだ・ちか)
小学校1年生の時に両親の仕事の都合で渡米。大学卒業まで、アメリカのシアトルで12年間過ごす。日本に帰国後、外資系コンサルティング会社に就職する。2011年からYouTube上の英会話番組『バイリンガール英会話』を開始。現在の登録者数は80万人を超え、Airbnbといったさまざまな企業とのタイアップを行っている。2015年5月には自身初となる書籍「バイリンガール英会話: YouTubeとマンガでso much fun!(KADOKAWA/メディアファクトリー)」を出版した。
チカさん:もちろん給料はコンサルの方がもらえていましたが、YouTubeの方がポテンシャルがあると思ったんですよね。
例えば、コンサルで働いている時にある大きなプロジェクトを任されたことがあって。その最後の成果物ができた時に、自分が関わったはずなのに最終成果が自分からほど遠く感じてしまったんですよね。「これは本当に自分がやった仕事なのか」といった具合に。それから自分は「本当に今後10年以上企業のシステムの導入をしていきたいのか」と考えるようになりました。
当時の会社では、コンサルでのキャリア無しでは今の自分はいないと思うくらいに多くの事を学ばせていただきましたが、やはり0から何かを自分の手で作り上げ、その作品を多くの人の役に立てていきたいという思いが捨てきれず。考えるうちに「クリエイターとして活動していきたい」という思いが強くなったので、コンサルを退職してYouTube クリエイターとしてのキャリアを選択しました。
YouTubeに自分の作った動画をあげるのは良い意味で先が見えず、自分個人として活動していけると思ったんです。そういう意味で「ポテンシャルがある」と判断しました。あとは、YouTubeチャンネルも2万人の方に登録していただけるまでに成長していて、企業からのタイアップの依頼もあったので、「個人だけでなくて企業も自分の動画に価値を感じてくれているんだ」と思えたことがこのキャリア選択を後押ししてくれたのだと思いますね。
「想像力」さえあれば失敗なんて無い
コバヒロ:小並な僕が同じ立場だったら、まず頭をよぎるのは「失敗したらどうしようか、路頭に迷ったらどうしようか、学費の支払いが……」といったような不安な気がするのですが、失敗を恐れる気持ちはなかったんですか?
チカさん:もちろん私も失敗することは考えますよ。でも「想像力」があれば「失敗」も失敗ではなくなると思っています。だから、自分のやりたいことを始めてそれを全力でやるだけですね。
コバヒロ:その「想像力」とは具体的にはどのようなものでしょうか?
チカさん:「想像力」とは自分が今働いたり活動したりしている領域以外の場所で、自分の持つリソースを生かせるのかを考える能力のことです。例えば、メーカーの営業職での経験は「相手のニーズを引き出し、そのニーズをベースに商品提案をする」という点でコンサルティングの仕事に生かすことができますよね。私がYouTubeクリエイターになることを決めたときにも「全力でやってダメでも、その活動と経験を評価してくれる会社が絶対にある」ということをまず考えました。今現在やっている仕事を全力でこなしてスキルを身に付ければ絶対にその後につながっていくと。
人生の「模範解答」は自分にしか分からない
小林廣輝(こばやし ひろき)プロフィール
慶應義塾大学4年生。2015年Mr.慶應。所属ゼミは崔在東研究会で、2016年2月より米国Utah Univ.に留学。2014年に全国大学サッカー同好会リーグで優勝した慶應大学理工学部体育会サッカー部にGKとして所属。学外では日本と中国の学生の代表で構成されるJapan-China StudentsConference34期の議員として日中関係の根底からの関係改善を務め、現在も日中関係の会議に精力的に参加。モラトリアム世代を代表したライターとして精力的に活動している。2016年からワンキャリアでインターン中。
コバヒロ:チカさんはかなり「挑戦的」な進路選択をされていると感じます。
ですが、今の僕の周りの学生を見ているとその真逆である「保守的」な進路選択を行う人が多いと思うのです。というのも、「社会的な見られ方」「年収」「親がどう思うか」といった要因でまず志望する会社や分野を絞って、その絞られた少ない選択肢の中から「自分に合った」職業を選択している現状があるのではないかと。
純粋に「自分のやりたい事はこれだからこの道に進むんだ」と宣言できる学生の方が少数の気がするのですが、チカさんは進路を決める際に世間に漂う「周りの価値観」を参考にしたり気にしたりしたことはなかったのでしょうか。
チカさん:自分のことって自分しか分からないと思うんですよね。
過去も未来も自分の人生を歩むのは自分しかいないわけで。そんな誰も経験したことのない唯一無二の人生について誰かにアドバイス求めても本当に有益な情報なんて得られないと思うんです。
たとえ親であっても親友でも、自分の人生とは全く違う人生を歩んでいるでしょう。だから結局は、自分の人生の先達は「自分」なんだと思います。もっと掘り下げれば「自分は本当何をやりたいかorやるべきか」はこの世で自分しか分からないということですね。
ちなみに、親について話しますと私は基本的には「事後報告」です(笑)。
親と20年も一緒に過ごしていたら自分がこの相談をしたら親がどう反応してくるかぐらい分かると思うのであえて相談しないことが多いですね。
コバヒロ:確かにそうですね! 自分の「進むべき道」を本当の意味で理解しているのは自分だけということですね。お話を伺っていて思ったのですが、チカさんがそのような考え方をするようになったのは海外での学校教育が影響しているのでしょうか。日本ではそのような考え方をしている方はごく少数のような気がしまして。反対に、昨年米国のUtah大学に留学していた際に仲良くなった現地の友人がチカさんの考え方と似ていて。向こうの同世代は日本よりも個人自分の考えをしっかり持ちそれに基づいて行動をしていると感じました。今回のインタビューでチカさんのお話を伺ってそれに近いものを感じました。
チカさん:確かに海外教育の影響はあると思います。もちろん、どちらの国の教育が良いというわけではありませんが、私が教育を受けた米国の教育は「答えの無い問題の答えを自分なりに導き出す」といったものだった気がします。
例えば、当時学校で出された課題が「なんか発表してください」という内容で(笑)。確か、私は春巻きの作り方の実演をしたと記憶しているのですが、こういう課題だけとっても、まず枠組みだけ与えてその範囲内で自分なりに仮説を立てて、最終的にそれを証明するロジックを組んでいくという点が日本と海外(米国)の教育で圧倒的に違っている点だと思いますね。
きっと「自分は何がやりたいのか」という答えが無い問いに対して明確な答えを持っているのもこの教育があったから培われたのだと思いますね。
外コン・クリエイターの経験を通して得た人生の公式:「運」=「準備×チャンス」
コバヒロ:ではそんなチカさんが今人生選択で大切にされている座右の銘のようなものはありますか。よろしければ教えていただきたいです。
チカさん:「Luck is where preparation meets opportunity(幸運とは準備が機会に出会うこと)」ですね。
おそらく、運ですべてが上手くいくということはほとんどの場合なくて、運良くチャンスを掴んだその瞬間までにどれだけ準備をしているかが、上手くいくか否かを左右すると思うんです。
今正直にお話すると、コンサルにいた最初の4年間は「仕事をしながら私がやりたいのはこれじゃない」なんて思いつつも、具体的に何をやりたいかは分からない状態でした。
だから、働きながらネイルサロンを経営してみたり、パーティー主催のお仕事をしてみたりといろんな方面で自分のやってみたいことに挑戦していったんですよね。
その中で自分の得意と不得意も分かってきて。たどり着いたのがこのYouTubeクリエイターというお仕事だったんです。
「自分がやりたいことにチャレンジすること」が自分にとっての「preparation(準備)」だったんだと思いますね。
踏み入れた新しいステージの中で自分なりに全力でもがいたりした長年にわたる複合的な経験が今の「バイリンガールChika」としての仕事に生きているのだと思います。
コバヒロ:つまり今の輝かしいご活躍は今までの幾重もの「挑戦」の結果ということですね。
「これだ!」と思うものは学生時代の挑戦からしか見つからない
コバヒロ:最後にこの記事を見てくださっているワンキャリア3万人のユーザーと新卒社会人を含めた世代に向けて何か一言いただきたいです!
チカさん:本当に自分に正直に「やりたい」と思ったらトライしてみてください。とにかく若い時代にいっぱい挑戦をして失敗と成功を繰り返せば最終的に「これだ」と思うものが見つかると思います。頑張ってくださいね。
コバヒロの編集後記
ワンキャリアでは2016年11月頃から関わらせて頂いているのですが、業務をしていく中で感じていた事がありました。
それは、「本当に今日を本気で生きているのか」ということ。
チカさんにお話を伺ったことで、どこか崇高な大きな目標を立てそれを実践するのに遮二無二になれていない自分がいることに気付きました。
「その時のためにとにかく最大限の準備をしておくべき」というチカさんの力強い言葉は、社会人へ残り1年を切り今後の人生について迷い、挑戦をしようとしている自分にとって他に代え難いアドバイスでした。
動画でもインタビュー中、「えっ! そうなんだ!」と常に前のめりで接してくださったチカさん。
どこの馬の骨か分からない僕のインタビュー依頼を快く引き受けてくださり、さらにはインタビュー後に人生相談までしていただき本当にありがとうございました。
2ショット写真は額縁に入れて部屋に飾っておきますね!