本記事は「ABEMA TIMES」の記事を転載、一部編集したものです。2021年3月1日に「ABEMA」で放送された『どうする?withコロナの就活&働き方【12時間特番】』の模様をお届けします。放送を見た方も見逃してしまった方も、ぜひご覧ください。
今年も本格的にスタートした就職活動だが、時代変化に伴い、学生側だけでなく、採用側も新たな努力や創意工夫を迫られている。
「美人を採って何が悪い? っていう思いが大きい」。いわゆる「顔採用」がタブー視されることに疑問を呈するのは、ベンチャー企業に特化した就活サイト『CheerCareer』を運営するCheerの平塚ひかる代表取締役。
同社では「サングラスをかけて黒い服装だから威圧感があるなとか、みなさんも普段から見た目、ファーストインプレッションで勝手に判断することが多いのに、それが採用の場面ではいけないというのはどういうことだろうか」として、2種類の「顔採用」を行う。「『美』を意識し、努力を継続してきた執念、執着、エネルギーが仕事にどう向くのか、ということも含めて評価している。そして、目がパチッとしてるとか鼻が高いとかだけじゃなくて、それまでの人生が映し出されている表情やオーラを評価している。そうしたことも含めての顔採用だ」。
オンライン面接は難しい?
しかしコロナ禍ではそうした部分を見極めるのも難しそうだ。これまでも早期離職の対策に頭を悩ませてきたTSRソリューションズ人材開発室の伊藤由梨菜さんは、一度も会わずに採用の可否を決めなければならないコロナ禍の採用活動に困惑する担当者の一人だ。
「これまでの面接では、部屋に入ってきていただくところから始まっていたので、マナーや人間性といった部分が垣間見ることもできていた。しかしオンライン面接になると、質問した時に視線が横に流れるのを見て、『あらかじめ準備した答えを見ているな』と感じたり、『本当はどういうふうに思っているのかな』と感情の部分が読みにくかったりする」。
人材研究所社長で人事コンサルタントの曽和利光氏は、一般論として、「日本企業の面接はレベルが低い」と指摘する。
「あまり言うと怒られてしまうが、『あなたの強みは何ですか』、とか、『5年後、10年後にどうなりたいですか』とか、学生の意見ばかりを聞こうとする。しかしこうした質問に対しては何とでも答えられるし、うそにもならない。そこで気の利いたことを答えられれば、『うまいことを言ったな。座布団1枚、内定』、みたいになる。だから僕は『大喜利面接』と言っている(笑)。そうではなく、とにかく事実、ファクトから評価をしたり、盛ってはいないかと確認したりする、ということがベースにあったほうがいい」。
その上で、「会話の中でのアイコンタクトにはさまざまな機能があるが、オンラインではそれが難しく、実際に会うのとは同じ時間内で得られる情報量がものすごく少なくなってしまう。特に日本人は非言語の表現や情報を大切にして育っているので、『あうんの呼吸がわかる』とか、『空気が読める』とか、『以心伝心』だという人が『コミュニケーション能力が高い』と言われる。そういう認識のままでオンライン面接に臨んでしまうと話がしづらいと感じたり、たくさん質問すると『しつこいやつだ』と思われたりして、結局『わからない』となってしまう」と指摘した。
就職活動サイト『ワンキャリア』の北野唯我氏も「採用、面接官というのは素人でもできそうに見えて、非常に高い技術が必要だ。企業側はそのことを踏まえて『採用力』を上げていかないといけない。オンライン面接にも難しさがあるとはいえ、ちゃんと頭を使った人事のいる企業は、こういうことを話してもらうと学生の魅力がより伝わる、というような工夫をしている」と話していた。
SDGsがブームだけど……
そして「キャリタス就活2021」学生モニター調査結果(2020年8月)によれば、学生が企業を選ぶ基準の1位に「社会貢献」が挙げられるなど、最近の就活で何かと話題に上るのが「SDGs」だ。
ところがH&K代表取締役の安藤弘樹CEOは「『御社はやっているんですか?』って聞かれて、『いや』って答えると、『あぁ……、やってないんだ……』みたいな反応をされる」と明かす。社会貢献の大切さは分かりつつも、大手企業のように十分に取り組むことができていないことでの葛藤。「われわれのような10名くらいの会社だと、案件を取ってくるとか、納品をするとか、まずやらなきゃいけないことがあって。そこを説明しても、『SDGsやってないんだ……』って感じになってしまう」。
ジャーナリストの堀潤氏は「本当の意味でSDGsが浸透していないと感じることだが、SDGsには環境保護や社会貢献だけでなく、働きがいや経済成長も含まれている。つまり、社員が能力を発揮できて離職率が低く、成長している企業であれば、十分にSDGsに取り組み、貢献していると言っていい」と話す。
曽和氏も「事業に社会的意義があるかどうかについて、学生側がSDGsというフレームワークを使っているに過ぎないことも多いと思う。僕の会社も人事コンサルティングなので環境問題とは関係ないようにも思えるが、働きがい、ジェンダーについては取り組んでいる。ただ、そのことについて『SDGsを』とは言っていないだけだ。逆に言えば、企業側が自分たちの取り組みについてビジネスモデルを答えるだけで、社会的意義をキャッチーな言葉で伝えられていない、ということでもあると思う」と指摘。
慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は「SDGsは突き詰めれば人間の欲望の話に行き着くと思う。企業としては、どのように利益を得て、その中から何をどのように還元するのか、働く人としてはどれくらいの報酬でどこまで頑張れるか、という具合に、欲望とそれを持続可能にするシステムについて語れないと意味がない。むしろ環境や社会問題などを面接で聞くと、『こいつ薄っぺらいな』と思われてしまいかねない」とも話していた。
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