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新型コロナで外資系金融が受けた影響とは?「まったり高給」はリストラで消滅するのか?

業界理解 証券 金融 外資系
2020年4月27日(月) | 25,978 views

新型コロナウイルスの感染拡大はビジネスの現場にも影響を及ぼしている。就活生が気になるのは、自分の志望業界への影響。特に、リストラのイメージが付きまとう外資系金融を志望するなら、なおさらだろう。

今回の記事では、外資系金融がどのような影響を受けているのかをリポートしていく。

<目次>
●在宅勤務によるドタバタはなし。IT大国・アメリカの実行スピードに驚いた
●東京オフィスもテレワークに順応。出社するかは日本のクライアント次第
●外資系金融の中でもビジネスへのインパクトは異なる──気になるリストラは?
●コロナショックで会社選びの基準が変わる? インフラや士業、ローリスクの業界に光

在宅勤務によるドタバタはなし。IT大国・アメリカの実行スピードに驚いた

新型コロナウイルスの感染拡大とともに関心が高まったのが、在宅勤務だ。接触を避けるためにITを活用して自宅で仕事をする「テレワーク」は、政府が2020年4月7日に7都府県を対象とした緊急事態宣言を発令したことで、さらに加速するとみられる。

ただ、都内でテレワークを実施している企業は3月末現在で26.0%(※)にとどまり、多くの企業は対応に追われているのが現状だ。

(※)参考:東京商工会議所「『新型コロナウイルス感染症への対応に関するアンケート』調査結果を取りまとめました ~テレワークを実施している企業は26.0% 実施検討中は19.5%~」


一方で、私が身を置く外資系運用会社では、在宅勤務におけるドタバタはほぼなかったと言っていいくらいだ。

私が直接知っている業界は、金融機関の中でも運用会社なのだが、本社があるアメリカにおいては、ほぼ100%テレワークが導入されていると思われる。(なお、アメリカでテレワークという表現はあまり使われない。「リモートワーク」あるいは「WFH:Work From Home」という言い方が使われることが多い)

それもそのはずだ。アメリカ全土の新型コロナウイルスによる死者数は4月16日時点で3万人を超えている。中でも、ウォール街のあるニューヨーク州は13日に死者1万人を突破したことを明らかにするなど、最も深刻な状況だ。「最悪の状況は終わった」と同州知事は述べているものの、テレワークに切り替える必要性の高さやプレッシャーは早い時期から、日本とは比べ物にならないレベルになっていたのだ。

GAFAという言葉に代表されるように、アメリカはITにおいて世界一の力を持っている。そのため、米国の金融機関はもともとITの導入に熱心であるが、テレワークへの切り替えの早さには驚くばかりだ。

テレワークへの切り替えは、思っているほど簡単にできるものではない。もともと、モバイルや自宅パソコン、電話を活用したテレワークのインフラはあったとしても、完全に切り替えるとなると、オフィスと同程度のIT機器のスペックが必要となる。

例えば、パソコンのスペックやディスプレイの台数、ブルームバーグなどの自宅使用、固定電話の転送といった対応が必要だが、米国系金融機関ではトップマネジメント層の強いリーダーシップの下、短期間で予算を取って対応している。

また、ハード面だけでなく、人事制度のテレワーク向けの改訂や、顧客情報保護などに関するコンプライアンス面での対応といったソフト面での処理についても、米国系金融機関は切り替えが早かった。

こうした対応によって、米国系運用会社の場合、運用、営業、クライアントレポーティング、オペレーション、ITから、その他バックオフィスまで、かなり高い水準でのテレワークが実行されているのが現状だ。

東京オフィスもテレワークに順応。出社するかは日本のクライアント次第

本社側ではテレワークが浸透している一方、東京オフィスではどうだろうか。

外資系運用会社の場合、東京オフィスにおけるテレワークの順応性は高い。なぜなら、本社とのコミュニケーションはもともとテレワーク、つまり、電話とメールでのコミュニケーションがメインだからだ。

日本株の自家運用などを除けば、本社(または海外の関係会社)で運用、モニタリング、リスク管理がなされ、東京オフィスはそのプロダクトを日本の顧客に案内するのが、通常業務である。このため、本社と東京オフィス間のコミュニケーションは、米国本国内での対応がスムーズである限り、それほどの問題は生じない。

他方、日本国内における顧客、銀行、証券会社、運用会社、信託銀行とのコミュニケーションは、日本企業である相手方の事情もあり、米国のように切り替えるのは難しい面もある。

また、ITスタッフや国内のサービスプロバイダの対応も、米国と同じというわけにはいかないので、全体としては、米国並みに完全にテレワークに移行するのは難しい。

特に、オペレーションなどのミドルオフィスの対応が難しく、当初はちらほらとエラーが生じて、手間取っていたところもあるようだ。

しかし、現時点ではかなりの高水準でテレワークへの移行が進んでいる。会社によって異なるかもしれないが、8割以上の役職員は自宅勤務を行っているのではないか。そして、どうしても自社あるいはビジネスパートナーである金融機関との業務の遂行上、必要な場合に限って出勤するという状況だと考えられる。

国内系の金融機関については、緊急事態宣言が発令されて以降も社会インフラとして例外的に営業の継続を要請されている業種の1つだ。店頭における対面での対応を一部制限する企業もあるようだが、営業自体は継続している。

このため、外資系金融機関とは異なり、テレワークも導入しているものの、自宅勤務と出社組とに分け、ローテーションで対応しているところが多いと聞いた。

もっとも、テレワークにおけるインフラは、米国の金融機関ほど整備されていないのが一般的なようで、自宅勤務での生産性は、オフィスでの勤務と比べると大幅に低下してしまうケースも見られるようだ。

外資系金融の中でもビジネスへのインパクトは異なる──気になるリストラは?

さて、外資系金融機関に入りたいと考えている学生にとって、今回のコロナショックで、リストラが起きるのかどうかは気になるところだろう。

海外、国内、業種を問わず、今回のコロナショックによるビジネスへの影響は甚大だ。とはいえ、同じ金融機関でも、業態によってそのインパクトは異なる。

例えば、運用会社の場合は、顧客から支払われる運用報酬が収入となるストックビジネスだ。新規案件が取れなかったとしても、既存の運用資産(AUM:Asset Under Management)があれば、運用報酬率は基本的に変わらない。一定の営業収益を得られるだろう。

他方、証券会社の場合は、ストックビジネス的な分野もあるが、基本的には有価証券の売買や投資銀行ビジネスの案件がない限り、営業収益を得ることはできない。業績が著しく悪化することは避けられないはずだ。


私はかつて、外資系運用会社を「外銀と比較すると、年をとっても働きやすいし、クビになるリスクは相対的に低い」と紹介したが、コロナショックという世界的な難局によって、皮肉にもその魅力がより鮮明になるかもしれない。

・定時帰りでも年収3,000万!? The「まったり高給」な外資系運用会社、あなたは興味ある?

ただ、現段階では、外資系金融機関の間で、特にリストラの話は聞こえてこない。

それもそのはず、本社サイドでは、とりあえず全社一丸となって危機を乗り切ろうと必死になっている段階だ。この時点で、リストラの話などが出ると、士気に影響するし、レピュテーションリスクも大きい。厳しい株主も、今のタイミングでリストラをしろとは言いにくいだろう。

とはいえ、業績への影響が最終的にどの程度になるかはまだ読めない。リストラの話があるとすれば、コロナウイルスの騒動が落ち着いたタイミング。いずれにせよ、無傷というわけにはいかないと思う。

コロナショックで会社選びの基準が変わる? インフラや士業、ローリスクの業界に光

アベノミクスによる、約7年におよぶ長期的な好況の影響もあり、私たちは、就活や転職における「リスク」についての意識が薄くなっていたのかもしれない。

若いときから活躍したい、高収入を得たいというニーズが、優秀な学生や若手社会人の間で高まり、外銀、外コン、外資メーカー、そして、ベンチャー、起業というハイリスク・ハイリターン型の業種や職種への人気が高まっていたように思う。

しかし、今回のコロナショックによって、ハイリスク型のビジネスに対する怖さを強烈に認識した人もいるではないだろうか?

今後、ハイリターンは難しいかもしれないが、そこそこのリターンが得られるローリスク型の業種やビジネスが評価されるようになるかもしれない。例えば、インフラ系の通信、鉄道、電力、ガスなどだ。同じ業界でも、有利子負債が少なく、財務健全性の高い企業が人気になる可能性もある。

また、「資格取得の難しさに見合ったリターンが得られないのではないか」と考えられていた、弁護士や公認会計士などの資格専門職の良さが再認識されるようになるかもしれない。

一方、外銀やベンチャー、起業については、人気が低下するかもしれない。いずれにせよ、人生100年時代といわれ、今後は70才くらいまで働く時代が来るだろう。そうなれば、必ずどこかで景気低迷期に直面せざるを得ないのだ。

今回のコロナショックは誰にとっても大変厳しいものだが、長いキャリア設計をする上で、教訓になる部分もあるのではないか。


【鷹津・外資系金融キャリア研究所シリーズ】

・東大法学部生が知っておきたい「年収重視なら、弁護士と外銀のどちらがオススメ?」
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・30代、年収1億円プレイヤーはどんな仕事をしている? 知られざるヘッジファンドの世界
・外資系金融に勤めるとどれだけモテる?結婚相談所にガチで聞いてみた
・リーマンショックでクビになった、外資系金融マンたちのその後
・東大生と戦う必要ナシ?MARCH・関関同立から総合商社の内定を取る方法
・定時帰りでも年収3,000万!? The「まったり高給」な外資系運用会社、あなたは興味ある?

(Photo:Stuart Monk , Mongkolchon Akesin , fizkes , l i g h t p o e t ,  yoshi0511 , everything possible/Shutterstock.com)

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外資系金融キャリア研究所
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日系証券会社⇒外資系証券会社⇒外資系運用会社。日系と外資系、証券会社と運用会社の経験があるのが特徴。
「楽して儲けること」が大好きで、ベンチャー・起業・フリーランス・個人ネットビジネス運営など、稼ぐ方法を常に模索している。
世の中にはどんな稼ぎ方があるのか、稼いだお金でどういった生活ができるかなど、お金視点からの就活・転職話をお楽しみ下さい。
ブログ「外資系金融キャリア研究所」(https://career21.jp/)

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