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キャリアの切り札はスキルでなく、視座。MBAホルダーの東京海上日動・採用責任者が、有事で人が成長する理由を語る

インタビュー 金融 日系
2020年6月18日(木) | 10,621 views
sponsored by 東京海上日動火災保険

近年の就活生がファーストキャリアで重視するものとして「スキル」が挙げられます。ワンキャリアの調査でも、東大・京大生の多くは転職を前提に、スキルや経験を求めて就職活動をする傾向が見られます。

こうした流れに対し、「どの会社にいてもスキルは自分次第で身に付く」と話すのは、東京海上日動火災保険株式会社(以下、東京海上日動)の採用責任者である山城真さん。損害保険業界のリーディングカンパニーである同社の第一線で活躍し、海外勤務時代にはMBAも取得。山城さんが説くのは、視座を高める重要性です。


「高い視座、もしくは広い視野はビジネス経験でしか身に付きません」

東京海上日動だから見られるビジネスの景色を、山城さんにお聞きしました。

MBA取得で分かった。「スキルは短期間で身に付く。高い視座は経験でしか身に付かない」

──本日はよろしくお願いします。近年の学生は、将来の転職を前提に就職活動をする人も多く、「スキル」を重視する傾向があります。採用責任者である山城さんは、スキルの重要性をどのように考えますか。


山城:終身雇用を前提とせずにキャリアを考え、「将来に困らないようなスキル」を求めているように感じます。ですが、本気を出せばスキルは短期間で得られます。

山城 真(やましろ まこと):人事企画部人材開発室採用チームリーダー。2004年に東京海上日動火災保険株式会社へ新卒入社。コマーシャル営業部門で石油業界を担当。2013年にベトナム・ハノイに転勤となり、現地法人でマネジメントを経験。帰国後は、人事企画部人材開発室に異動し、中途採用の立ち上げを務める。2020年4月から現職。2018年にはオーストラリア・ボンド大学でGlobal Leadership(MBA)を修了。


私自身、ベトナム駐在中にMBAを取得しました。5年間の駐在期間の3年目、現地法人の経営に携わっていた経験から、経営知識を身に付けたいと考え、オーストラリアのボンド大学の通信教育を受けました。仕事をしながら夜間や休日に学びを積み重ねていった結果、3年でMBAを取得することができましたが、スキル自体はどこの会社にいたって、自分次第で身に付くことを痛感しました。ビジネスのフレームワークにしても、そうです。

そして、仮に若いころにMBAを取得したとしても、何の意味もなかったように思います。


──それはなぜでしょうか?


山城:今と比べて、視座がまだまだ低かったからです。MBAで学んだことは、とても勉強になりました。ですが、それは10年あまりの経験の中で得られた視座があったからこそ、そして学んだことをすぐに実践に移せる環境があったからこそです。高い視座、そして広い視野は、ビジネス経験でしか身に付かないとつくづく感じます。

日本ではトップでも海外ではチャレンジャー。国内での経験から「前例のない」保険を作る

──なるほど。では、ベトナム駐在中には具体的にどのような経験で視座が高まったのでしょうか。


山城:営業駐在員として派遣され、ハノイで活躍する日本企業のパートナーとして仕事をしました。

日本の法人営業は、石油、鉄鋼、不動産、通信など産業別に顧客を担当しますが、海外の場合は、名だたる上場企業から、地方に拠点を構える中小企業まで、現地で活躍する企業全てが顧客です。ハノイだけでも、1,500件近いクライアントがおり、裾野の広さを感じました。


──海外ならではの大変な点は何だったでしょうか。


山城:日本だと想像もつかないリスクがある点です。例えば、2014年にはベトナムで反中デモが起きました。中華系の工場が襲われる中、誤ってクライアントの日系企業が被害に遭うこともありました。その際に、被害に見舞われたクライアントに保険金をお支払いすべく奔走しました。


──確かに想像もつかないリスクですが、視野は広がりそうですね。特にやりがいを感じた瞬間はいつでしたか?


山城:ベトナム企業が運営する工業団地に入居しているクライアント向けに、オーダーメードの保険を作ったときです。事の発端は、工業団地の桟橋に外国籍のタンカーがぶつかり、壊してそのまま逃げたことでした。ベトナム工業団地側は「今後、同様の事故が起きた場合、修理費は当該タンカーを利用した企業に対して請求する」という日本では考えられないような方針を示しました。本来であれば、タンカーを利用した企業ではなく、タンカーを所有し運転する企業に請求すべき話です。

一方で、クライアントの加入する火災保険は自身の所有物しか補償の対象とならないため、この問題は既成の保険だと対応が困難で、クライアントはかなり困っていました。


──クライアントが所有しているわけでも、壊したわけでもない物に対して、保険金を支払えるようにするわけですものね。どのように対応したのですか?


山城:難しそうに聞こえるかもしれませんが、これまでの経験で得ていたスキルで乗り越えました。事故が起きる確率や支払金額の最大値、工場の資産価値やリスクなどから特約を設計し、補償内容を考えました。商品としてマーケットで成立するための折衝など販売調整も進めました。これはベトナム赴任前に担当していた東京の法人営業で得たスキルです。

商品化に向けて、アジアヘッドクォーターであるシンガポールの責任者に話したときは、「前例もなく、話にならない」と最初は断られました。とはいえ、困っている顧客の前で、引くことはできない……。何度も交渉する中で、商品性を認めてもらい、クライアントに提供できました。クライアントから「ありがとう」と言われながら、問題も解決し、そして商売としても成立しました。三方よしを満たした、世界で一つだけの保険を作った瞬間です。


──今のお話を聞くと、国内での経験があったから、海外でビジネスパーソンとして成長できたのでしょうか。

震災、品質問題、そしてコロナ。有事にこそ、働く意義を知り、成長する

山城:その通りです。そして、国内での経験の中で「われわれが働く意義」を考えてきたことが、私のキャリアの礎になっています。


──国内ではどのようなキャリアを歩まれてきたのですか。


山城:入社後、大学時代を過ごした京都にある支店のリテール部門に配属され、自動車業界、不動産業界、銀行業界などさまざまなチャネルの代理店を担当し、地域におけるマーケットシェアの極大化に努めました。新人ながらにして、中小企業の経営者の方と話をさせていただくことが多数あり、日本の経済を支える皆さまの思いに触れる機会が多かったです。その後は東京で石油やガスを中心としたエネルギー業界の法人営業をしました。

大きな転機は2回。2007年と2011年に訪れました。まず2007年、生命保険業界から端を発した、保険金不払いの問題(※)です。

(※)……保険業界全体で保険金の未払いや支払い漏れが相次いだ問題。1996年の保険業法の改正で損害保険会社が生命保険、生命保険会社が損害保険を扱えるようになり、競争が激化したことが背景にあったとされる。多くの保険会社に金融庁が行政処分を行い、各社が顧客本位の経営の在り方を考える契機となった。


お客さま視点が足りておらず、企業本位の対応を行っていたことが原因です。現場では何千万件もの過去の契約をさかのぼり、保険金が適切に支払われているかを確認しました。

今でこそ、生保も損保も「品質」という言葉を当たり前に使いますが、この問題は「商品クオリティの重要性を各社が実感する教訓」となったと思います。

当然ながら、当時営業担当だった私も自分自身の「品質」を意識することとなり、損害保険を前線で担うビジネスマンとしてさらなる成長を遂げる覚悟を決めました。


──2011年は、東日本大震災が起きた年ですね。


山城:損害保険の意義を痛感しました。保険金対応というのは、顧客にとってはあくまでも解決手段の一つにすぎません。ですが、いち早くお金をお支払いできるかが、その後の復興、そして社会全体に大きな影響を与えることを、まざまざと感じました。

私は当時、東京で石油やガスを中心としたエネルギー業界の法人営業として、ある石油元売会社を担当していましたが、このお客さまの石油プラントが津波の被害を受けてしまいました。社会全体の復興のため、保険金を1日でも早くお支払いするためにお客さまや社内の関係者と日々打ち合わせを行っていたことを今でも覚えております。


──「有事にこそ、われわれは働く意義に直面する」と。


山城:そうですね。私たちの先輩社員はそれを、阪神・淡路大震災でも経験していました。今でしたら新型コロナウイルスの感染拡大による影響がそうでしょう。休業補償など国だけでは機動的に動けない部分を民間でも対応できるようにするため、お客さまの要望をうまく商品開発へとつなげていくことが大事です。


──有事を経ることで得られるものは何でしょうか。


山城:有事を経験すると、社会を俯瞰(ふかん)する視座が格段に高くなります。われわれが働く社会的な意義を考えさせられるからです。

スキルは日常の仕事から培われますが、視座は社会や大きな課題と直面した経験で変わるのです。当社は比較的離職率が低いほうですが、有事を経て、仕事へのやりがいを一層感じる人が多いからだと思います。


──国内でもやりがいのある仕事ができていたのに、なぜ海外へ飛び出そうと思ったのですか?


山城:「20年後もこの会社が生き残るために、どのような経験をしていないといけないか?」を考えた結果です。現代は10〜20年後に必要なスキルが明確ではなく、混沌(こんとん)としています。ですが、過去を振り返ると、海外での経験は当たり前に必要だと感じました。


──どういうことでしょうか?


山城:保険業界は1996年の法律改正で自由化が進んで以降、企業統合や吸収合併の動きが活発になりました。恐らく、1990年代前半に入社した人からすれば「入社した直後に、こんなに企業が合併するなんて」と驚くくらいの変わりようです。

そして、東京海上日動は2000年台前半ごろから海外事業を拡大しており、当社の主なクライアントである日系企業の海外進出も活発化していました。海外勤務を志望したときは海外で身に付けたいスキルの具体像はありませんでしたが、少なくとも海外でビジネス経験を積むことは必須だと感じました。

視座を高めれば分かる「するめ」的な面白さが、東京海上日動にはある

──ベトナムから帰国され、現在は採用のお仕事をされていらっしゃいます。


山城:採用におけるキーワードの一つが「多様性」です。東京海上日動の役員は、主に新卒入社の男性で構成されています。そこへ女性、外国人、中途採用などの価値観をどのように取り入れるかが課題となってきます。

社内を批判するわけではありませんが、現状では良い意味でも悪い意味でも社員のバックグラウンドが似すぎていると感じています。海外の実務経験を人事に生かすのならば、多様な意見が組織に浸透するために新たな血を入れ込むことが私の仕事です。


──当たり前をぶっ壊していくのは、昔からあるカルチャーですか?


山城:東京海上日動のDNAといっても過言ではありません。業界柄「挑戦はするけど、失敗はできない」という側面はありましたが、今は「失敗しても良い」という色が強く出始めています。失敗を許容するという、覚悟に結びついているのです。そのため、新しいことを応援してくれる人が多く、挑戦を否定する人が否定されるカルチャーが形成されています。


──変化の過渡期に入社できるのなら、やりがいも多そうですね。山城さんが今年の新入社員だったら、どんなキャリアを歩みたいですか。


山城:これまでのキャリアと同じです。リテール、コマーシャル、そして海外という流れで働きたいです。

ただ、ジョブローテーションの期間を短縮したいですね。国内の経験もきちんと積みつつ、早く海外で経験を積んでもらうことも考えています。新卒採用の当たり前も壊していきます。


──それは、「日系大手は下積みが長い」という学生の懸念を意識した上での考えなのでしょうか。


山城:そういう意味ではありません。そもそも、「下積み」って何でしょうね。その意味がしっかり理解されないまま、言葉だけが一人歩きしているような気がします。「下積み=自分で意思決定ができない状況」と考えるなら、私はこれまでを下積みとは思っていません。当社には若手のうちから大きな裁量を与える文化があり、そして若手のチャレンジも受け入れる文化があります。その意味では1年目からずっと前線で仕事をしたという自負があります。もし「社長」になることだけが目的の人がいれば、下積みに見えるかもしれませんが(笑)。


──地方勤務や希望しない部署に行く「配属リスク」を避けたがる学生もいます。


山城:当社が全国に拠点を有している理由、それはお客さまをお守りするために必要だからです。日本中どこで災害が起きてもおかしくない時代、有事の場合にいち早く対応するためです。東京だけで働いていてその重要性が理解できるでしょうか。

また、地方勤務は、「東京だけが日本経済の全てではない」と実感できます。損保業界の顧客の広さは、唯一無二だと思います。このマーケットを知ることが、大きな世界を理解する第一歩になるのは間違いありません。海外に早く出てもらいたいのは、そうした国内で培った視野をさらに広げてほしいからです。

実際に中途採用で入社したメンバーは、新卒時代は損保業界を見ていなかったそうです。社会で働く中で、リスクに対処する重要性ややりがいを感じ、当社に応募してくれました。もちろん、1社目にベンチャー企業や外資系企業を選んでも良いと思います。働く中で、社会を見ることで、社会を感じることで損害保険の魅力が分かるのですから。

この業界は、やはり実体験を積めば積むほど理解が進む「するめ」的な魅力があります。


──なるほど。実際にカルチャーマッチしそうな学生は、どんな人材像でしょうか。


山城:誠実さ、そしてチームワークを大事にできる人です。損害保険は、他の金融商品と異なり、重ね売りができません。そのため、ノルマを根性で達成できるわけではないのです。パートナーである代理店の方といかに協働するかなど、チームで動く仕事ばかり。そのため、個人で動きたいという人には向いていないと思います。あと、バリバリお金を稼ぎたいという人も向いていないですね。


──最後に学生に向けて、メッセージをお願いします。


山城:世界遺産を訪れることが好きだった私は、就活を始めたころは不動産業界を見ていました。一緒に就活していた友人に教えられ、初めて損保業界を視野に入れたぐらいです。そんな私がこれまで16年も働き続けられている理由は、想像していたよりもはるかに面白い企業だったから。そして異動する度に成長を実感し、視座を高められたから。

どんな人も、満足できる環境が与えられているのが、東京海上日動です。

就活生の皆さんは、新型コロナウイルスの影響で先行きが不安な人は多いと思いますが、今こそピンチをチャンスに変えるプラス思考が試されるときです。Webだからこそできるチャンスが広がっている、これまでつながれなかった人と出会える。

そしていつかこのコロナが収束するまで、それまでは必ず健康一番に、体を大切にしてください。皆さんと直接お会いできる日を楽しみにしています。


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