コロナ禍で世の中は大きく変わりました。
いつだって先のことは分からないけれど、いつも以上に未来が見えない。自分はどのようにキャリアを歩んでいけばいいのか──就職活動をする中で、そんな悩みを抱える方もいるかもしれません。
今回、ワンキャリア編集部ではその答えを求めて、JT(日本たばこ産業)(以下、JT)の篠原瑞恵さんにお話を伺いました。
篠原さんは約30年前、JTに新卒入社し、たばこ事業本部に配属。その後マーケティング&セールス管理部長などを経て現在は、たばこ事業本部お客様満足推進部長を務めています。
まだ女性管理職が少なかった時代に前例やロールモデルがない中、常に新しい道を進んできた篠原さん。未知の世界へ踏み出す怖さはなかったのでしょうか。そして、不安を乗り越えるために必要なものとは。未開のキャリアを切り開いてきた半生を紐(ひも)解き、これからの時代を生きていくうえで、また、これから就職活動という選択に飛び込んでいく皆さんのヒントになるものを探っていきます。
篠原 瑞恵(しのはら みずえ):品質保証グループ お客様満足推進部長
1991年JT入社。国内たばこ営業部門にて、個店営業、ロジスティクス戦略、法人営業戦略等に携わる。その後、マーケティング&セールス管理部長を経て、2018年より現職。
JT入社のきっかけは『セブンスター』と「自分らしさ」
──まずは篠原さんがJTに入ったきっかけについて教えてください。篠原さんが学生だった約30年前、就職活動は今とは大きく違ったものだったと思います。当時の様子を教えていただけませんか?
篠原:そうですね。当時はスマートフォンもなく、インターネットも普及していなかった時代で、さまざまな企業の情報が載っている冊子を見て、企業選びをしていました。
バブル景気だったこともあり、どの企業も採用人数を増やしていて、学生にとっては有利な状況だったと思います。私もたくさんの企業を見ましたが、最終的にはお菓子やお酒など、嗜(し)好品に関心を持つようになりました。「その人が、その人らしくいられる時間にそばにあるもの」を嗜好品と自分なりに捉えて、そんなものに携わりたいと直感的に思い、就職活動をしていましたね。
──その中で、JTに興味を持ったきっかけは何だったのでしょう。
篠原:父が愛煙家で、『セブンスター』を吸っていたことです。父が他界してからも、お墓参りに来てくれる父の友人が『セブンスター』を必ずお墓に添えてくれていました。父のそばには、いつでも『セブンスター』がありましたね。
……という話もあるのですが、実際、就職活動でのJTとの出会いは、リクルーター活動をしていた大学の先輩から「ケーキをごちそうするから」と言われて話をしたのがきっかけです(笑)。JTの方たちは、当時学生だった私に一人ひとりがとても真摯(しんし)に向き合って対話をしてくれて、素の自分を引き出されるような感覚でした。自分らしく話ができたことが印象に強く残っていて、最終的にJTへの入社を決めました。
──「自分らしさ」が会社選びの決め手になったということですか。
篠原:非常に昔の話で、私とJTの出会い方自体は少し変わっているかもしれませんが、会社との出会いや入社のきっかけは人それぞれで、正解も不正解もありません。理論武装して自分を大きく見せて就活するよりは、自然体で自分らしく働ける会社を探すのも、一つの手法なんじゃないかなと。当時の自分やこれまでのキャリアを振り返ってみて、改めて感じているところです。
──もう少し「自分らしさ」について聞かせてください。
篠原:私自身、JTで多くの部署や仕事を経験してきました。自分がまったく希望していなかった部署や予想もしていなかった場所で働いたこともあります。働く場所や業務の内容などは30年で大きく変わりましたが、どこで何をして働くかよりも、どう働きたいかの方が大事でした。あくまで私の意見ですが、その「どう働きたいか」のカギになるのが「自分らしさ」なんじゃないかと思っています。
30年で最大のチャレンジ──ロールモデルはいない、性格的にも自信なし。それでも管理職に挑戦しようと思えた理由
──そこから30年、さまざまな経験があったと思いますが、キャリアの中で一番大きなチャレンジは何だったと思いますか?
篠原:2013年に管理職になったことです。学生時代は人前に出ることや、リーダーになってみんなを束ねることより、リーダーをサポートする立場の方が得意だと思っていました。世の中全体で見ても子育てをしながら管理職になっている女性が少ないこともあり、管理職なんて思ってもいませんでしたね。
──実際に管理職を経験してみて、どうでしたか?
篠原:リーダーとして判断をしなければならないときは、いつだって不安です。心配が先に立ってしまって、仕事上の判断はずっと怖いし、苦手だと思うことも多々あります。
ただそれ以上に、一緒にいる人の成長を見られるのは自分がやりたかったことだと強く感じます。一人ひとりとお話しして、個性や目指す姿を知って、自分なりに良さを引き出し、階段を登る方法を一緒に考える。ちょっとでも上に登れたり、勇気を持ってくれたり、変化があったときはうれしいですね。
管理職になる際、足元の不安や葛藤からモヤモヤする部分もあったのですが、こうした喜びに気づくことができた今、当時の自分には「今の自分のものさし」で物事を図り、踏み出すことを恐れるのではなく、自分らしさを土台としつつ「未来のより良い自分」に変わっていけるかどうかを大事にして、と伝えてあげたいですね。
「誰かと同じではなく、あなたのスタイルでやっていけばいい」
──これまでのお話を聞いていて、篠原さんはロールモデルのいない道を歩んできたイメージを持ちました。先人がいないことへの不安はありましたか?
篠原:初めてロールモデルを意識したのは、管理職になったときですね。当時の管理職は男性ばかりで、同じ働き方はできないと思ったときに、初めてロールモデルがいないことを不安に思いました。しかし、管理職になるのが不安だと上司に話したとき、「誰かと同じスタイルではなく、あなたはあなたのスタイルでやっていけばいい」と言ってもらったことが印象に残っています。
当時は人数が少なかったこともあり、良くも悪くも「女性管理職」という属性が付いて回る時代だったんですよね。注目されていると思い込んで、自分で自分にプレッシャーをかけていたところもあって。だから上司の一言は、不安で見失いかけていた「自分らしさ」という言葉を思い出させてくれました。
JTでは「今この部署だから、次はここに行く」というようなキャリアの既定路線はありません。だからこそ自分のキャリアを考えるときには迷うことがあります。しかしそんなときは、自分に正直になって考えてみて、どっちが自分らしいか、どっちが自分を良い方向に変えられそうか、といった視点で捉えてきました。そう考えてみると結局、性別やロールモデルがいるかいないかなんて、関係なかったんですよね。
──「自分らしく」と口にするのは簡単ですが、実際にそれを貫いたり、生かして仕事をしたりするのは、とても難しいことだと感じています。自分らしくあり続けるためのアドバイスはありますか?
篠原:その時々で演じた自分でいることはもちろんあります。でも、自分を見失わないためには、自分の「扉」を開けておくことと、「扉」から出ることが必要ではないでしょうか。
振り返ると、仕事に対するスタンスをオープンにしていましたね。いわゆる自身のWill、Can、Mustを明確にし、周囲にしっかりと伝えるようにしていました。それ自体が仕事をするうえで自分を見失わない枠になりますし、私という人間を理解してもらうきっかけにもなります。
──「周りからどう思われるか」と気になって、自分の意思を示すことを控える人もいると思いますが、理解してもらおうとする努力が大切だということですね。
篠原:そうですね。加えて、その時々の自身のワークライフバランスを踏まえて、Can notもオープンにしていました。特に仕事以外の部分でも自分が大事にしたいことを伝えたことで、周囲に理解、協力してもらうこともできましたし、自分を見失ってバランスを崩さずにすみました。人の話を聞きながらも、しっかり自分をオープンにすることが大切だと思います。
また、オープンにすることと同時に、その扉から出ることを恐れずにアップデートしていくこと。「今の自分」がどう思うかも重要ですが、外部環境の変化に応じて「未来のより良い自分」になるために、今どうするか?という問いは就活のときから変わらず持ち続けています。
日本中からたばこが「消えた」日。愛煙家を守るために、JTがとった驚きの施策とは?
──少し話を変えます。JTに入社してからの30年で、たばこを取り巻く環境が厳しくなった面もあると思います。篠原さんは、仕事のモチベーションが下がることはなかったのでしょうか。
篠原:確かに「嗜好品」である以上、たばこが嫌いという方はいらっしゃいますし、そういった意見を聞くと、つらい気持ちになることもあります。ただ、一方で「たばこが好きだ」という方がたくさんいらっしゃるのも事実で、それが仕事のモチベーションになっています。
私自身としても、会社としても忘れてはならないと思っているのが、2011年に起きた「東日本大震災」のときの経験です。JTは自社で工場を持っていて、商品を適切に流通できるよう常に需給の調整を行っていますが、あのときは違いました。工場が被災し、流通ルートも壊滅。東北だけでなく九州まで、文字通り、日本中でJTのたばこの供給が止まってしまったのです。
──当時は、実際に食べ物などの買い占めが起きていましたよね。その裏でそんなことが起きていたなんて知りませんでした……。
篠原:お客さまは他社の商品に半ば強制的にスイッチしてしまう状況で、非常に歯がゆかったのを覚えています。しかし何よりつらかったのは、商品供給というメーカーとしての最低限の責務を果たせないこと、それによってJTの商品をお求めになるお客さまにご迷惑をおかけすることでした。
そこで私たちはそんな状況でもお客さまのためにできることは何かを考え、たどり着いたのは対話でした。お会いする喫煙者のお客さまに状況をご理解いただけるよう説明し、供給できないJT製品と似た競合商品をご案内する、といったことまで取り組んでいました。
──そんなことまでしていたんですか!?
篠原:その後、どうにかして供給を再開させたのですが、久しぶりにJTのたばこを買っていただいたお客さまから感謝の手紙が届いたんです。久しぶりの味わいに安堵(あんど)したり、感動したり。そういった声を聞いて、お客さまの「たばことともにある時間」を取り戻せたのだと実感が湧いてきました。
東日本大震災は予想だにしない大災害でしたが、たばこという嗜好品がもたらす「ひとのとき」を強く実感しましたし、「JT製品がないなら他社製品でも」とたばこを必要としている方々へ寄り添い続けたことは、間違っていなかったんだとうれしく思いました。
進化し続けるたばこの可能性。でも「その人が、自分らしくいられる」という本質は変わらない
──喜ぶユーザーの様子が見えるのは、嗜好品を扱う企業の醍醐味(だいごみ)の一つかもしれませんね。30年間たばこ事業に携わっている篠原さんから見て、今のJTのたばこ事業の面白さはどこにあると思いますか?
篠原:特に最近はより面白くなっていると感じます。加熱式たばこが登場し、たばこの利用シーンが大きく変わったからです。たばことの「自分らしい」付き合い方ができるようになったと言いますか……。
──どういうことでしょう?
篠原:私たちはたばこという文化をこれからも守りたいと思っていますが、その「たばこ」自体が姿形を変えることで、より多くの喫煙者の方々の価値観や時間に寄り添える可能性があると考えています。
例えば、私たちが販売している「Ploom TECH(プルーム・テック)」「Ploom TECH+(プルーム・テックプラス)」はたばこ葉を低温で加熱する方式で、紙巻きたばこと比べると吸いごたえは若干弱くなるものの、臭いを抑えられるという周りへの配慮を重視した商品。今までの紙巻きたばこでは、考えられなかったようなニーズやシーンに対応できているというわけです。
喫煙者といっても、さまざまな方がいらっしゃいます。仕事の息抜きに吸いたい、飲み会のときに楽しみたい、などニーズによって使い方はバラバラです。個々人の要望に合わせて進化していく商品として、加熱式たばこは大きな可能性があると考えています。
──なるほど。たばこが「自分らしい『時間』を作る」ものという点は変わらないと。
篠原:もちろん、その分野でJTは後れを取っているのは事実ですし、現状への危機感は強く持っています。たばこを吸うだけにとどまらず、さまざまな付加価値を提供できるデバイスとして、これからの日常生活にどう組み込まれていくのか。答えはまったく見えていませんが、未知なものだからこそ、お客さまの生活や時間にどれだけ思いをはせることができるかがカギになると考えます。
加熱式たばこの領域においては、誰もが試行錯誤をしながら仕事をしています。誰も経験したことのない取り組みの連続だからこそ、ベテラン、若手関係なく意見を出し合える場が多いですし、実際に新入社員の声が参考になる、といったことも多々あります。
──新しいチャレンジができる環境だということですね。
篠原:はい。「失敗を恐れずチャレンジをしなさい」というメッセージは、経営トップも発信しています。社員みんなの根幹に、新しいことに挑戦しようとする思いがあるのを、近年は特に感じます。
仕事をすると新しい自分に出会える。「自分を良い方向に変えていけそうな会社」を選んで
──これまでの仕事人生を振り返って、就活生だった当時の自分へアドバイスをするとしたら、どんな言葉をかけますか?
篠原:当時は二十数年の人生で、自分の人格がすっかり出来上がった感覚でいたなと思います。それなりに自己分析をして、「私の強みはこれです」と面接で言っていましたけど、働いてみたら今まで知らなかった新しい自分が次々と出てきました。キャリアを「積み重ねる」と言いますが、まさに積み重ねてきたという印象です。
壁を乗り越える中で、これから先、はるかにたくさんの発見があるはず。そして、自分はいつだって変えられますから、「自分らしさを大切に、自分を良い方向に変えていけそうな会社を選んでね」と声をかけたいです。
──自分を良い方向に変えていけそうな会社……ですか。その意味でJTはどうでした?
篠原:大正解でした。正解という言い方が正しいかどうかは分かりませんが、周りの方の支えもあり、自分でキャリアを重ねつつ、「自分自身が正解と感じるようにしてきた」という感覚の方が正しいのかもしれません。
──ありがとうございました。最後に、コロナ禍で就活をする学生にメッセージをお願いします。
篠原:世界が急に変わって、先がまだまだ見えない状況に不安もあると思いますが、だからこそ世界は皆さんが変えていけるとも思っています。明るい未来は絶対に来ますから、そのときに皆さんが主役になってほしい。私の今の目標は、JTでも、JTを卒業した後でも、何らかの形でこれからの日本を背負っていく若い人たちと関わっていくこと。
皆さんにJTに入っていただけたらうれしいですけど、JT以外でもどこかの会社で明るい未来に向けて、楽しみに就職活動をしてほしいと思いますし、明るい未来で活躍してほしいと願っています。
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