経営コンサルティング業界全体の採用人数が増加し、就活人気ランキングの上位を総なめにする昨今。もはや「経営コンサルタント」という肩書だけでエッジの立ったキャリアを手に入れるのは至難の業でしょう。
今回は、突き抜けた経営コンサルタントとして成長するためのヒントを得るべく、A.T. カーニーで若くして活躍するパートナーの大島さんとプリンシパルの肖さんにお話を聞きました。
UP or OUT(昇進か退職か)のイメージが根強い外資系経営コンサルティングファームにおいて、「10年、20年単位のキャリア形成」を採用メッセージに掲げるA.T. カーニーは異色の存在です。
大島さんはエネルギー分野で、肖さんはアナリティクス分野で独自のキャリアを重ねていますが、新卒入社時にはその分野に進むことは想像もつかなかったといいます。「遊びを持つことが大切」「一緒に働くなら不器用な人がいい」と語る真意は、一体どこにあるのでしょうか?
お二人の話からは、これから経営コンサルタントを志す上で必須といえる、長期的なキャリアの思考法を学ぶことができました。
パートナーとプリンシパルがそろい踏み。突き抜ける秘訣(ひけつ)は「遊び」を持つこと
──本日はよろしくお願いします。まずは、入社から現在に至るまでのキャリアをお聞かせください。
大島:入社から3年くらいは、金融機関を中心にさまざまなプロジェクトに携わっていました。たまたまアサインされたエネルギー関連のプロジェクトに興味を持って、今に至るまでの専門分野になりました。業界では2016年の電力小売全面自由化によって消費者が電力会社を選べるようになって以来、ダイナミックな変化が続いています。近年は環境負荷をいかに軽減するかも重要視されるようになり、こうした変化に対応するための戦略づくりを支援しています。
肖:私も入社から数年は幅広い業務を経験しました。最初の2年は金融機関のバリューアッププロジェクトに多く携わり、次の2年では、東南アジアや中国に進出したい日系企業のパートナー企業選び、交渉、現地法人の設立支援などを担当しました。その後、入社5年目で一度A.T. カーニーを退職し、「出戻り」を経験しています。現在はデータアナリティクスを専門分野として、主にクライアント企業のオペレーション改善を支援しています。
──エネルギーとデータアナリティクスは、どちらも注目を集めている分野ですね。何を専門にするか、若手の頃から決めていたのですか?
肖:いいえ、自分がアナリティクスの専門家になるなんて想像していませんでした。若手の頃はアジアを飛び回るプロジェクトが楽しかったので、その道を極めようと思っていましたね。
大島:同じく、はっきりとした方向性は決まっていませんでしたね。大学時代は農学部でしたから、エネルギー分野について詳しいわけでもありませんでした。目の前の仕事に向き合う中で、好きなことと役に立てることがマッチしたのがこの分野だったのだと思います。
大島 翼(おおしま つばさ):エネルギープラクティス パートナー
東京大学 農学部卒、2011年新卒入社。入社後は金融、消費財関連のプロジェクトを担当。経済産業省 資源エネルギー庁に約1年出向し、電力事業法改正に係る市場整備を担当する。その後は電力・ガス・エネルギー業界を中心に戦略、M&A、オペレーション、アセット・マネジメント、事業管理、人事・組織などを手がけている。
──意外なお答えです。どのように現在の専門分野と出会ったのですか。
大島:与えられた役割を全うすることは大前提として、仕事のなかで「遊び」を持たせるようにしていました。
──「遊び」ですか。どういうことでしょう?
大島:効率よく仕事をこなすだけでなく、自分の興味を仕事に生かせないかと試行錯誤をしていました。私はシミュレーションやモデリングが好きだったので、仕事を頼まれたときにはセオリー通りの方法に加えて、自主的にプログラムを書くなどして別解を探しました。こうした寄り道を続けていくうちに、エネルギー分野では需給や価格を予測する上でシミュレーションが役立つことが分かったのです。自分が提案した別解がプロジェクトで評価され、「この分野なら活躍できそうだ」と確信を持てました。
──肖さんはいかがですか?
肖 俊毅(しょう しゅんぎ):アナリティクス プリンシパル
大阪大学 経済学部卒、京都大学 経営管理大学院修了、2012年入社。金融機関のバリューアッププロジェクトのほか、アジアに進出する日系企業の支援を行う。入社5年目に退職し、ベンチャー企業の立ち上げを経験。その後、A.T. カーニーに戻り全社改革プロジェクトを主に担当。近年は戦略オペレーションプラクティス、アナリティクスプラクティクスに取り組む。
肖:私の場合は、時を経てチャンスが巡ってきました。学生時代はロボコンに熱中していて、データをもとに何かを改善することが大好きだったので「これが仕事にできたらいいのに」と思っていました。入社当時は専門技能に特化したポジションがまだまだ珍しい時代でしたが、最近になってデータを活用した業務効率化や最適化のニーズが高まり、やりたいことを追求できる環境が整ったというわけです。
多様化が進む業界だからこそ、始めはエッジのないジェネラリストでいい
──経営コンサルティング業界の採用人数が増えていることで、人材が均質化するのではないか……と不安視する学生もいます。これから経営コンサルタントを目指す人も、お二人のように個性を伸ばせるでしょうか?
大島:経営コンサルタントの人口が増えることによって、人材は均質化どころか多様化が進むはずです。むしろ個性を尖(とが)らせる絶好のタイミングだと思いますね。
──興味深いです。それはなぜですか?
大島:医療業界をイメージしてみてください。医師が少ない時代は一人の医師がどんな病気にも対応する必要がありましたが、現代は医師の人口が増え、専門分野に特化した高度な治療ができるようになりました。また、医師の選択肢が増えたことで「親しみやすい先生に診てもらいたい」「難しい手術はこの先生にお願いしたい」など、個人の強みにも目が向けられやすくなりました。経営コンサルティング業界においても、一人ひとりがキャラクターを持つことの必要性は高まっていくでしょう。
肖:だからこそ、新卒で経営コンサルタントとして働く方には、確固たる軸が見つかるまで右往左往してほしいですね。実感として、5年目くらいまではエッジのないジェネラリストでもいいと思います。
──専門性やキャラクターが重要なら、早い段階から方向性を定めたほうが良いのではありませんか?
肖:始めに想定したゴールが間違っていることもよくあります。経験の浅いうちに自分探しに時間を費やすより、実際にさまざまなプロジェクトに携わってほしいですね。目の前の仕事に真剣に取り組み、ジェネラリストとして成長する過程で見つけた得意分野を大切にすることが、結果として水準の高いプロフェッショナルになれる近道ではないかと思います。
──自分の得意分野を見つけるまでにはある程度の時間がかかりそうですね。かつての「経営コンサルタントは3年働けば一人前」という定説は、今や崩れつつあるのでしょうか。
大島:ビジネスの基礎力が身につくという点では、2〜3年もあれば転職市場で十分に評価される人材に成長できると思います。しかし、経営コンサルタントとして一人前を目指したいのならば、これまで以上に高い経験値が求められます。
出戻り、副業、出向……。10年、20年先も活躍できるA.T. カーニーのキャリアパス
──そう考えると、A.T. カーニーが長期的なキャリア形成をうたっているのも納得感があります。実際のところ、長く働いている社員はどのくらいいるのでしょうか?
肖:社内には勤続10年、20年以上の社員がかなりの人数います。私が新卒入社した代でも、私のような「出戻り」を含めて半数以上が在籍していますね。
──外資系ファームで想像するような「太く短いキャリア」とは真逆ですね。
肖:A.T. カーニーは、いい意味で一つの場所に縛られることなく活躍を続けられる環境が整っているからだと思います。いきなり「10年、20年この会社で働いてくれ」と言われても困るかもしれないけれど、外の世界を見た上で戻れる場所があるのは心強いですね。最近では、自分の会社を経営したり副業に取り組んだりしている社員も増えていますよ。
大島:確かに、社外での学びも応援してくれる会社だと感じますね。私は入社3年目で経済産業省 資源エネルギー庁に出向したのですが、きっかけは上司からのすすめでした。経営コンサルタントとしてのキャリアに悩んでいた私を見て、当時のパートナーが経済産業省にかけあって出向枠を作ってくれました。
──それは驚きです。若手の悩みにも目をかけてくれるのですね。
肖:200人ほどの小規模な組織ということもあって、個人が尊重されやすいのかもしれません。プロジェクトの配属希望はもちろん、興味のある業界や機能に特化したポジションを目指すこともできますし、海外オフィスや関連会社に出向・転籍する道もありますよ。
──長期のキャリアパスは単なるスローガンではなく、積み重ねてきた実績があるのですね。
少数精鋭で最高の答えを出す。受け継がれるのは、課題とピュアに向き合う企業文化
──長く活躍するためには、企業のカルチャーとマッチするかどうかも重要です。A.T. カーニーには、どんな文化や特色がありますか?
肖:社内で掲げているキーワードがいくつかありますが、そのなかでも「Tangible results(目に見える成果)」と「Essential rightness(本質的な正しさ)」は特にA.T. カーニーらしいと感じます。「私たちが本質的に目指すべきは、素晴らしい戦略を作ることでも、優れたオペレーションを提供することでもなく、クライアントに良い変化を生むことだ」という共通認識が社内にありますね。
──肖さんが担当するアナリティクス領域は、総合系ファームやIT企業など、多数の競合プレーヤーがいます。担当するプロジェクトにも自社のカラーを感じますか?
肖:そうですね。当社のアナリティクスが得意とするのは、クライアント固有のオペレーショナルな課題に向き合うことです。大規模なファームの場合は画一的なフレームワークによって、誰がどんなクライアントを担当しても過不足なく合格点を取れます。一方の私たちは、良くも悪くもオーダーメイドです。少数精鋭で知恵を絞り、クライアントにとって最高の答えを出すことにこだわっています。弊社のアナリティクスは、そのような試行錯誤が必要な固有なオペレーションや制約を抱えたクライアントに対して、特にバリューを発揮できています。
大島:A.T. カーニーの強みが生きるのは、曖昧さや手探りの部分があるフィールドなのかもしれません。プロジェクトのスコープやソリューションありきにならず、クライアントに「それは何のために、どうして必要なんですか?」と正面から問いかけることこそが、私たちのような戦略ファームの意義だと思っています。
肖:会社としての利益を追求するのなら、クライアントに課題を残し続けてプロジェクトを長期化させたり、あれこれとソリューションを導入したりするほうがお金になるわけですよね。でも、それはA.T. カーニーの企業文化に反するのでやりません。あくまでも課題解決にこだわる姿勢は、職人らしいかもしれませんね。
不器用でもいい。考えることを楽しめるなら、問題解決の仕事は何年たっても楽しい
──最後のパートでは、A.T. カーニーで活躍できる人物像に迫っていきたいと思います。そもそも、お二人はどうして今の会社を選んだのですか。
大島:アルバイト先の上司が経営コンサルティングファーム出身だったこともあり、就活では興味本位でコンサルティング業界を見ていました。A.T. カーニーに興味を持ったのはジョブ選考がとにかく楽しかったからです。
ジョブにはメンターの社員がつくのですが、私の指導を担当してくれたのが関灘茂(現A.T. カーニー 代表取締役 マネージングディレクター ジャパン 日本代表)でした。関灘は「こういうことも考えてみたらどうだろう?」というアドバイスが上手で、一緒に話していると頭が整理され、仮説が進化する実感がありました。適切に問いを設定し、答えを出すプロセスが好きなんだと気付いた瞬間でしたね。
肖:1on1形式の選考は思い出深いですね。私も経営コンサルティングファームを何社か受けたのですが、他のファームはグループワークが中心だったので苦手意識がありました。みんなで頑張ったのに、なぜかチームの中で私だけが落ちてしまうこともあって……(笑)。当時の自分を振り返ってみると、問いに向き合うのは好きだけれど、人と向き合うのは苦手だったのかもしれません。
A.T. カーニーの選考は一貫して個人面接だったおかげもあってか、居心地がよかったです。社員と話していても誰かを蹴落とそうとする人がいなくて、じっくりと対話してくれる印象がありました。人間関係の良さは、今も変わらない魅力だと思いますね。
──お二人とも、課題を解決することに楽しさを感じていたのですね。働き始めたころの気持ちは、今も続いていますか?
大島:問いを解く楽しさはずっと続いています。むしろ、キャリアを重ねた今のほうが社会的なインパクトの大きな課題に取り組めるので、面白さが増しています。
肖:同感です。時代とともに向き合う問いが変化するので、飽きることがないですね。私が入社した2010年代は金融機関のバリューアップや効率化のプロジェクトが花形でしたが、現在は原料不足による供給不安をどのようにして解消するかに主眼が置かれています。経営コンサルティングの仕事は日本社会が直面している課題を反映しているので、問いの設定の仕方や解の方向性が多彩で楽しいです。
──最後に、一緒に働きたいと思う人物像について教えてください。
肖:不器用な人がいいです。アナリティクスを中心に取り組む経営コンサルタントとしては、与えられたことを効率よくこなすよりも、職人や専門家のように好奇心をもって答えを追求できるかが重要だと思います。たとえ要領が悪くても、答えが出るまで思考と努力を続けられる人と波長が合いそうです。
大島:相手に伝えるためのテクニックは後から改善できますからね。考えることが好きで、何をどれだけ考えているかが大切だと思います。アピールが上手でなくてもいいから、考え抜いたことへの自負が内面からにじみ出ている人がいいですね。
──就活の時点できれいにまとまる必要はありませんね。本日はありがとうございました。
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