皆さんはコンサルティングファームにどのようなイメージをお持ちですか。
とても魅力的な成長環境があるといわれている一方で、「労働時間が長い」そして「付いて来られない者は切り捨てられる」といった、イメージを抱いている方もいるのではないでしょうか。
今回はグローバルコンサルティングファームの、マッキンゼー・アンド・カンパニー(以下、マッキンゼー)で働く高橋智将さん、飯田梓さん、上田知洋さんにお話を伺い、マッキンゼーで働く人の「本音」と、同社からたくさんの優秀な人材が輩出される理由をひもとく中で、上記のイメージとは異なる「とことん個人に寄り添い、そのキャリア形成に寄与する組織」の姿が見えてきました。
<目次> ●三者三様の志望動機が示す、「Make your own McKinsey」という文化
●効率的にインパクトを出す。チームで戦う。マッキンゼーでの働き方の実態とは
●個人の多様な挑戦を後押しする文化と豊富な機会。「留学」や「出向」も。
●「起業家」を目指す人がマッキンゼーを選ぶべき3つの理由
●初めから目標がなくてもいい。「やりたいこと」を見つけ、実現できる場所がマッキンゼー
・右:上田 知洋(うえだ ともひろ):アソシエイト
東京大学 工学部卒、2022年入社。戦略策定、デューデリジェンスや全社変革等のプロジェクトに携わる。入社前に教育系サービスの会社を創業し、2021年に売却。
・中央:高橋 智将(たかはし ともまさ):エンゲージメントマネージャー
東京大学 理学系研究科天文学専攻修士卒、2015年入社。主にデータ活用による戦略策定、オペレーション改革プロジェクトをリード。2019年から1年間、インペリアル・カレッジ・ロンドンに留学。
・左:飯田 梓(いいだ あずさ):アソシエイト
一橋大学 社会学部卒、2020年入社。公的機関を中心とした戦略策定プロジェクトに携わる。2022年度に官公庁へ1年間出向。
三者三様の志望動機が示す、「Make your own McKinsey」という文化
──まずは、みなさんが新卒でマッキンゼーを志望した理由について教えてください。
上田:マッキンゼーに入社することが、早く成長するための最適解だと思ったからです。私は大学生のころから、特に若い内は成長することにフォーカスするならば「何をやるか」よりも「誰とやるか」が重要だと考えていました。
きっかけは、大学を休学し、1年半ほどインターンシップをした、あるスタートアップでの経験です。そのスタートアップには、規模は大手からスタートアップ、業種もコンサルティング、投資銀行から製造業、IT、商社など、さまざまなバックグラウンドを持つ方がそろっていました。
もちろん、みなさんとても優秀でしたし、すべてのフィードバックが成長の糧になりましたが、その中でもコンサルティング業界、特にマッキンゼー出身の方々と仕事をしているときが、最も成長を感じました。であれば、マッキンゼーに飛び込むことが成長への最短距離なのだろうと考え、入社を決めました。
飯田:私は、世界を舞台に、リーダーシップを発揮している人材を多数輩出しているところに魅力を感じ、マッキンゼーを選びました。
途上国の保健医療の問題解決を目指すビル&メリンダ・ゲイツ財団(ゲイツ財団)で活躍されていた馬渕俊介さん(※1)や、国連での勤務を経て、途上国で最も支援が届きにくいラストマイルの貧困削減に挑むコペルニクを設立した中村俊裕さんなど、マッキンゼーの卒業生の中には、世界をよりよい方向へと導くリーダーがたくさんいます。
就活生のとき、マッキンゼーが多くのグローバルリーダーを輩出している理由が知りたいと思い、説明会に参加しました。そこで、コンサルティングファームとしてクライアントの成長に寄与し、社会にインパクトを与えるのはもちろん、人材の育成にも注力していることを知りました。
「Make your own McKinsey」という言葉があるように、マッキンゼーには「自身のキャリアを自分で設計する」考え方が根付いており、個人の選ぶ道筋を最大限尊重してくれます。説明会で出会った社員のみなさんが「私はこんなことがしたくてマッキンゼーを選んだ」と目をきらきらさせながら語っていた姿が印象的でした。マッキンゼーであれば、独立したプロフェッショナルになれるのではないかと思い、入社を決意しました。
(※1)……現在は、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)で保健システム・パンデミック対策部長を務める
──高橋さんはいかがですか?
高橋:一言で言えば「選考が楽しかったから」です。私は理系の大学院に通っていたこともあって、いわゆる「就職活動」は熱心にやっていませんでした。
高橋:たまたま他の業界を検討している中でコンサルティングファームについて知り、業界について調べてみると、どうやらマッキンゼーという会社が有名らしいと(笑)。
応募してみたところ選考がとても楽しかったし、性に合っていると感じました。具体的には、仮説を立て、その検証を繰り返しながら課題を解決するコンサルティングの仕事は、サイエンスに近いと思いました。理学部出身の私にとっては慣れ親しんだ思考プロセスでしたし、この仕事なら楽しんでできるのではないかと思い、入社を決めました。
効率的にインパクトを出す。チームで戦う。マッキンゼーでの働き方の実態とは
──コンサルティング業界では長時間労働や実力主義などのイメージが誇張されることも多々あると思います。みなさんは、就職活動を進めている中でそのような点についてどのように感じていましたか?
高橋:私はあまり気にしていませんでした。たしかに今振り返ると、入社当時の8年前はかなり働いていたと思います。でも、それも昔の話で今は深夜遅くまで働くようなことはほとんどしていません。就活生のみなさんとお話していると、「かなり話が盛られているな」と感じます(笑)。実際、夕食時を過ぎたら、オフィスにいる人はほとんどいませんからね。
上田:私も起業やベンチャー企業での経験から、長く働くことに対する抵抗はあまりなかったので、入社直後はとにかく長時間働いていました。すると、当時の先輩から「長時間働かないと成果が出せないということは、優先順位付けができていない証拠だ」とフィードバックされたのです。「長く働けばいいと思っているなら、それはプロフェッショナルとして間違っている」と。
上田:私もコンサルティング業界に対して「長時間労働が当たり前」というイメージを持っていたので、そのフィードバックをいただいたのは想定外のことでした。しかし、同時に徹底したプロフェッショナリズムを感じて、とてもいい文化が根付いているなと思いましたね。
──かつてのイメージが染みつき、それが更新されていないわけですね。実態とイメージには大きな乖離(かいり)があると。
高橋:そうですね。それに、就職活動時にはたしかに「Up or Out」という言葉を聞いてはいましたが、入社して実際のところを観察してみると「会社を辞めること」に対するイメージがずいぶん一般にいわれるイメージと違うことが分かりました。というのも、マッキンゼーを辞める人の多くが「他にもっとやりたいことが見つかったから辞める」んですよね。
マッキンゼーでは、退職を「卒業」と言います。まさにその通りで、会社を辞めるのはネガティブなことではなく、自分のやりたいことに近づく新たな一歩だというイメージが強い。だから、退職する人には「卒業おめでとう」と声を掛けます。
──飯田さんはいかがでしょう。コンサルティング業界やマッキンゼーにネガティブなイメージをお持ちでしたか?
飯田:「キレキレな人が集まっている環境で、私はやっていけるのだろうか」と少し怖いイメージはありました。ただ、就職活動を進める中でそのイメージは変わりました。というのも説明会の中で、社員の方が「マッキンゼーは、チームで戦う」と言っていたからです。
飯田:入社してみると、先輩たちの言葉がうそではないことを実感しました。例えば、プロジェクトに入ると、まずチームで個々人の強みやプロジェクトで伸ばしたいことを共有し、どのようにサポートしあうとチームの価値が最大化されるかを話し合います。
また、マッキンゼーでは「協調性」も評価項目の1つとなっています。新人時代から、国内・世界各地のエキスパートからの知見をどのように活用すれば、クライアントの複雑な経営課題を解くことができるかを考えます。マッキンゼーという会社一体の知を持ってインパクトを最大化するために協調性は不可欠ですし、評価項目の1つとなるのは当然だと感じました。
──なるほど。新人時代から、個としてではなく、「チームの中で」バリューを発揮することが求められ、それは評価にも反映されるわけですね。
飯田:はい。ですから、入社前に抱いていた「やっていけるだろうか」という恐怖心はすぐに払拭されましたし、常にチームで戦っている実感があります。
個人の多様な挑戦を後押しする文化と豊富な機会。「留学」や「出向」も。
──「自分のキャリアは自分で選択する」という文化があるとおっしゃっていましたが、具体的にはどのようなことをされているのでしょうか?
飯田:あるとき社内で社会貢献活動のアイデアを募り、特に優れたアイデアに対しては、会社として長期的に投資するというコンテストがありました。
私は学生時代から児童虐待の問題に関心を持っていたので、これはチャンスだと思い応募しました。「一緒にやろう」「こうすればもっとインパクトを出せるのではないか」と言ってくれる同僚にも恵まれ、会社からの支援を得て、プロジェクトをスタートさせることに。自らの「やりたいこと」を仕事にできる環境があることは、とてもありがたいです。
──通常業務として携わるプロジェクトを選択できるだけではなく、さまざまな形で自らの思いや希望を形にする機会があるのですね。
飯田:会社が個人のキャリア形成をサポートする意味で、マッキンゼーは「外」に出ることも推奨しています。
──「外」に出ること?
飯田:はい。選択肢は3つあります。1つ目は「トランスファー」で、一時的に海外のオフィスに移籍すること。2つ目は「出向」で、官公庁や他の民間企業で働くこと。3つ目は高橋さんが経験されたような「留学」です。
実際に多くのメンバーが社外に飛び出す経験をしています。私も出向を希望し、2022年度はある官公庁で勤務しました。1人の国家公務員として、マッキンゼーで培った問題解決能力も活用しながら政策を考える時間は、とても充実していました。
高橋:私は留学を経験しています。通常は MBA取得を支援する制度なのですが、私の場合はデータサイエンスを学びに留学をさせてもらいました。
私が留学したのは、マッキンゼー内にデータサイエンスの専門組織が立ち上げられる直前だったこともあり、特別に留学の機会を得ることができました。
当時の私はデータサイエンスに関する知見が浅く、そんな自身にフラストレーションを感じていたんです。だから、もっとデータサイエンスを学ばなければならない。そんな気持ちで留学を希望したんです。
──あくまでも理想の自分に近づくための留学だったと。留学を経て、どのような変化がありましたか?
高橋:留学で学んだ知識が、結果的に仕事に生きている部分はあります。ただそれは私にとっての本質ではなくて、一番大切なのは自分の興味、強みを見つめ直せたことにあると思っています。私は今も自分のことをビジネスマンではなくサイエンティストだと思っているんです。仕事中はもちろん、プライベートの時間でも、私の価値基準はそれが理学を修めた者として胸を張れるかどうかにあります。
留学先での経験は、私が「何を知っており」「何を知らないのか」を明確にし、今後のキャリア選択の如何によって「学ぶべきこと」「他人ができないが自分にはできること」を、より見えるようにしてくれました。そういう意味で、留学は私のキャリアにとって、とても大きな経験になったと感じています。自分のパッションをサポートしてくれたマッキンゼーにはとても感謝しています。
「起業家」を目指す人がマッキンゼーを選ぶべき3つの理由
──留学や出向など、さまざまなキャリアの選択肢が用意されているんですね。また、マッキンゼーはたくさんの起業家を輩出していますが、「起業家になりたい」という目標を持っている方が、マッキンゼーを選択するメリットはどのような点にあると思いますか?
上田:3つ挙げるとすれば「市場選定」「組織」「環境」ですね。私はスタートアップでのインターンを経験した後、大学に籍を置きつつ会社を立ち上げたのですが、そのときは起業当初から1年以内にExitすることだけを考えて、事業を構築しました。結果的には、起業から約1年後には年換算の営業利益ベースで1億円まで事業を伸ばし、無事に売却できたんです。
当時は「このままやっていけば、数年後の営業利益は、もしかしたら10億円には届かないかもしれないけれど、5億円は超えるだろうな」と思っていました。ただ、その先が見えなかったんですよね。つまり、売上を100億円、500億円と伸ばすことはまったくイメージができなかった。
そのときに特に大きなボトルネックだと感じたのが「市場選定」と「組織」なんです。何を目指すのかにもよりますが、やはり起業する上で市場選定は非常に重要だと思います。これまでお話してきたように、マッキンゼーには主体的に携わるプロジェクトを選べる環境があるので、希望すればありとあらゆるマーケットに入り込めます。実際に、私も初めの1年半で製造業、電力、保険、ファンド、教育、証券会社、介護などとさまざまな業界を経験できました。このような経験はもし仮に起業するとしたら、市場選定において、大いに参考になるはずです。
上田:また、売上を伸ばし続けるためには、基本的には生産性を維持しながら「組織」を拡大させる必要がありますが、言うは易しで、実際これがとにかく難しいんです。同時に、その方法は教えてもらえるようなものではなく、実際に経験しながら学ぶしかないとも感じました。
マッキンゼーはトランスフォーメーションのような事業・組織の両面から会社全体の変革をサポートするプロジェクトにも強みを持っています。「巨大な組織はどのようなダイナミクスで動いているのか」、「どうすればそのような組織において社員の行動変容を促し、トランスフォーメーションを成し遂げられるのか」を実地で見られるのです。会社規模やフェーズが違ったとしても、後に起業家としてイチから組織をつくり、拡大させる際に生かせる経験になると思います。
──3つ目のメリットである「環境」とはどのような意味なのでしょう?
上田:これが一番重要かもしれません。というのも、どれだけ学生時代に「起業をする」と目標を掲げ、その目標を達成するために会社を選んだとしても、身の回りに起業を考えている人、実際に起業する人がいなければ、次第にその環境に慣れてしまい、自身も行動しなくなってしまうと思うんです。だから、起業を目標に掲げるならば、実際に「起業する人」あるいは「起業に向けて行動している人」が多い環境に身を置かなければならないと思っています。
初めから目標がなくてもいい。「やりたいこと」を見つけ、実現できる場所がマッキンゼー
上田:私はまだ入社して1年半しかたっていませんが、本当にたくさんの成長機会があることを実感しています。ビジネスにはさまざまな能力が求められますが、マッキンゼーには全方位的な成長が可能な環境があります。
だからこそ、入社する段階で「やりたいことを1つには絞れないけれど、さまざまな世界を知って、とにかく成長したい」という人にとっては、これ以上ない会社だと感じています。
──入社の段階で、目標が決まっていない方も多いのでしょうか?
高橋:そちらの方が多数派だと思います。実際、私もそうでした。就職活動中の面談で、当時のパートナーから「どうしてうちを受けたの?」と聞かれて、「何をやっているかもわかっていませんし、特にやりたいこともないのですが、面白そうだから受けました」と答えたら「そっちのタイプか」と。
高橋:そして、「そういう人はたくさんいるから、それで大丈夫だよ」と言ってくれました。いま、私が就活生から同じことを言われたら、同じように答えます。
ここで過ごす時間は、ある意味では究極のモラトリアムなのです(笑)。
──目標が決まっている人も、そうでない人も、それぞれのメンバーが望む成長を遂げるための環境があるのですね。飯田さんはマッキンゼーのどのような点が魅力だと感じていますか?
飯田:社会課題解決をリードしていく上で重要な役割を果たす、「問題解決能力」が身につく点です。社会課題の中には、その粒度の大きさから「そもそもどこから手を付けるべきか」判然としない場合もあります。例えば、私が向き合っていた「虐待などの理由から実親と暮らせない子どもを受け入れる里親を、どのように増やすべきか」もその1つです。
ですが、それを「里親に関心がある人はどのような人と想定すべきか」「いつどのような困りごとを抱えていると想定すべきか」「困りごとを解決するためにはどのような施策が有効か」など分解して考えることで、検証すべきこと、ひいては解決策が明確になります。マッキンゼーで働く中で鍛えられるのは、このような力です。社会課題の解決をけん引したい人にとって、マッキンゼーほど魅力的な環境はないと、私は信じています。
高橋:正直、エントリーして面接を受けるだけならば何のリスクもありません。面接は会社と社員の雰囲気を知るための重要な機会になりますし、少しでも興味がある方はとりあえずエントリーしてみればいいのではないかと思います。まずは面接に来ていただき、そこで自分に合う場所なのかどうかを見極めてもらいたいです。
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【取材・執筆:鷲尾諒太郎/撮影:遠藤素子/編集:萩原遥】