こんにちは、ワンキャリ編集部のトイアンナです。「外資系投資銀行」と聞くと「睡眠時間と引き換えに年収1000万円、六本木で豪遊」というようなあいまいなイメージしか持っていない方もいるのではないでしょうか。しかし、投資銀行は社風よりも部署ごとの文化差が大きく、エントリー前に部署の違いを把握することが欠かせません。
今回は初めて投資銀行を受けたいと思った方を対象に、15分で理解できる投資銀行の部門別特徴をお伝えします。
<目次>
●Part1. 部門を理解しよう
・(1)IBD部門
・(2)マーケット部門
・(3)リサーチ部門
・(4)アセット・マネジメント部門
●Part2. 募集要項の読み方
・ゴールドマン・サックス(GS)とは?
●おわりに
Part1. 部門を理解しよう
投資銀行に限らず、外資系企業では部門別採用を一般に行います。しかし投資銀行では業務が細分化されているため募集要項を一読しただけでは、部門の差が分かりづらいのが特徴です。
そこでまずは、大枠から理解していきましょう。今回は一般職と同じ扱いであるオペレーション部門などを除いた、(1)IBD、(2)マーケット、(3)リサーチ、そして別会社となる(4)アセット・マネジメントについて解説します。
(1)IBD部門
よく「俺はIBDを受ける」といった口調で語られるIBDは、投資銀行部門(Investment Banking Division)の略。採用人数も多く、花形の部門です。大まかな業務内容は下記に分かれます。
・企業の買収や売却(M&A)の提案
・資金調達の提案
IBDの使命は簡単にいえば「A社がさらに発展するためにも、B社を買いましょう」などと提案する財務のコンサルタントです。A社のためにする仕事の例として、B社がそもそもいくらぐらいで買えそうなのか、値段を算出したり、B社を買うのに必要なお金を集めるために、株式や債券、その他いろんな構成での方法を検討し、資金集めの方法を提案したりします。
部門の風土:IBDは「知的体育会系」が活躍する部門
IBDの働きぶりは「外銀はハードワークで眠れない」という一般的なイメージそのものです。なぜならば、顧客先に持って行く膨大な提案資料を作っているため。特に部署で下っ端扱いのうちは「睡眠時間が分単位でしか計算できない」と語ることも。
上が顧客へ通うための資料を全て下に回すことから、体育会系の社風になりやすいことでも知られます。睡眠時間のない中、上司の命令に高い精度で応える頭脳面も含めた体力と根性が必要とされ、「知的体育会系」が活躍しやすい部門といえます。
IBD部門についてもっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
(2)マーケット部門
株式や為替など「金融商品」を営業・売買するのがマーケット部門の仕事です。銀行や保険会社などの運用部門を顧客とし、金融商品を取引しています。
提案内容で差別化を図るIBDと違い、マーケット部門で扱う商品には投資銀行間で差がありません。従ってマーケットの営業部門は、激しい営業活動で競合より先に案件を勝ち取ります。社員いわく「接待が多すぎて急性肝炎になることもある」とのこと。
その一方で、同じマーケット部門の中でも債券などの売買を取引するトレーダーや、金融派生商品を組み込んで金融商品の設計をするストラクチャー部門はデスク業務がメイン。複数のモニターを見つめながらエクセルを鬼のように叩(たた)いて専門知識を英語でやりとり……という、「これぞ外銀」な業務を垣間見ることができます。
部門の風土:求められる素養は部署ごとでさまざま
マーケット部門が求める人材像は、部署により以下のような傾向があります。
・セールス部署:顧客と取引をする上で必要な「人柄の良さ」と「数的センス」
・トレーディング部署:市場を判断する「頭の回転スピード」や「高度な数的センス」
・マーケティング/ストラクチャリング部署:金融商品を組み合わせ、1つのパッケージ商品を作る「数的センス+顧客の要望に応える臨機応変さ」
マーケット部門は、金融市場の開閉にあわせた働き方になるため、「朝が早く、夜も早い」ことが全体の特徴として挙げられます。朝8時前には出社する人も少なくありませんが、「夜も早い」の度合いは個人の能力と、会社の風土によってかなり差があります。
マーケット部門についてもっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
・実力主義、高収入、グローバル!三拍子そろった外銀マーケット部門の内実とは?
(3)リサーチ部門
リサーチ部門は、各社が顧客に提供するサービスの土台。株式や債券といった個別の金融商品を始め、「これからの為替」といったマクロ経済まで幅広く分析し、顧客が「どこに投資するか」といった判断の材料となる記事を書きます。このようにリサーチを行う人をアナリストと呼び、記事の説得力が高いほど顧客からの注文をマーケット部門の営業が受けやすくなります。
「◯◯業界に詳しいアナリストはC社の▲▲さん」と個別で認知されるほどの高い専門性が特徴で、『日経ヴェリタス』など専門誌の人気アナリスト・ランキングの上位に入る事によって知名度を上げてゆきます。
部門の風土:学者タイプが活躍する部門
ある業界を誰よりも詳しくなることが求められるリサーチ部門では財務分析に留まらず、業界独自の知見や数学的能力・分析能力などが求められます。
採用人数が少なく、また採用される学生は学者タイプも多くいます。ミドルオフィスとして認識されることが多いリサーチ部門ですが、実際に顧客向け資料を提供しているため業務内容はフロントオフィスに近いといえます。
アナリストは「これからの経済動向」などを見る担当と「A社の株」といった個別事例を分析する担当に別れており、後者は足しげく株主総会へ通うなどオフィス外の活動も盛んに行われます。
リサーチ部門についてもっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
(4)アセット・マネジメント部門
アセット・マネジメント(アセマネ)とは、顧客となった企業や個人の「資産運用」をする会社です。投資銀行本体の一環として捉えると混乱しますが、完全な別会社として「◯◯(外資系投資銀行の名前)アセット・マネジメント株式会社」のように分かれています。
業務内容は顧客となった企業や個人の資産を増やすこと。アセット・マネジメント会社が資産を増やすため金融商品を発注するのが、外資系投資銀行です。
部門の風土:「そこそこの給与・そこそこのワーク・ライフ・バランスを保てる」が、よりハイレベルな金融知識が要求される
業界用語で「預かったお金を増やす」仕事をバイサイド、株や債券を売買してもらうマーケットのような仕事をセルサイドと呼びますが、一般的にバイサイドのほうがワーク・ライフ・バランスを取りやすいことで知られています。そのため、投資銀行からアセット・マネジメントへの転職は「そこそこの給与・そこそこのワーク・ライフ・バランスを保てる」と考える人もいます。
一方で人材には金融の深い知識が求められるため、新卒から入社するのはいわゆる「外銀」よりもさらに難易度が高いといえるでしょう(そのため、転職で投資銀行からアセマネへの転職を目指す人もいるそうです)。
アセット・マネジメント部門についてもっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
Part2. 募集要項の読み方
外資系投資銀行は細かな部門に分けて採用を行うため、前提知識なしで採用ページを見ても「何を募集していて、業務が何か全く分からない」という事態に陥りがちです。ここまでの知識でおおまかに外資系投資銀行の業務がつかめてきたかと思いますので、ここからは実際にゴールドマン・サックス(GS)の採用ページを見てみましょう。
ゴールドマン・サックス(GS)とは?
最も優秀な新卒が集まるといわれる外資系投資銀行の雄ことGS。ある社員は、「うちに弱い部門はない。全てが強いから」と語るほど、新卒にもスピーディな成長と高い仕事のクオリティが求められます。十数年前までは社員の平均ボーナスが6000万円を超えていた(※)など外銀の華やかさを象徴するような企業です。採用では政治家の側近を採用するなどコネが強く作用し、日本でも東大×体育会系の人材が好まれます。一方で天才型の尖(とが)った人材を好む性質もあり、「趣味でマージャン世界一」といった特殊なエピソードで内定を勝ち取る学生も若干名います。
人事や法務といったどの企業にも欠かせない部署を除くと、大きく(1)IBDに属する「投資銀行部門」と、(2)マーケットに属する「証券部門」の採用が、初任給1000万円スタート、六本木の街で華やかに遊ぶイメージを持たれる「ザ・外銀」の2大採用部門といえます。
金融資産の分析と情報提供を行う、(3)リサーチ部門は「投資調査部門」という名称で募集を行い、(4)アセット・マネジメントは先述の通り別会社。「ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント株式会社」で個別採用を行っています。
確定した取引の決済などを行う外銀の一般職こと(5)オペレーション部門は「業務・ファイナンス・サービス部門」として募集されています。
(※)参考:J-CASTニュース「株高に沸くウォール街、ボーナス平均2090万円! それでも金融マンがそれほど喜ばないのはなぜ」
おわりに
ここまで、外資系投資銀行の組織図と、それぞれに求められる適性を記してまいりました。一見しただけでは分かりづらい業務内容ですが、選考に時間をかけてこちらから質問する時間を与えてくれるのも外銀の特徴です。
また、業務に関しての積極的な質問は「仕事に関心がある」「ちゃんと下調べをしてきてくれている」という好印象にもつながりやすくなります。面接は、対面で外銀のプロが疑問に答えてくれる滅多(めった)にないチャンスです。ぜひ、本記事やワンキャリにある関連記事で事前学習の上、積極的にいろいろな質問をしてみてください。
▼各企業の詳しい選考フローはこちら
ゴールドマン・サックス
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【夏インターン攻略法】
・外資系投資銀行(IBD)のサマーインターンに行きたいならこう動け!〜外銀志望の戦略と選考対策〜
【職種解説】
・IBD:英語のいらない外資?外銀IBD部門の実態
・マーケット:実力主義、高収入、グローバル!三拍子そろった外銀マーケット部門の内実とは?
・リサーチ:外銀の頭脳?謎多き外銀リサーチ部門の業務を解説
・アセマネ:【業界研究:アセマネ】野村アセットマネジメント、アセットマネジメントOne、大和アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメント:隠れ優良業界⁉資産運用業界(アセットマネジメント)の実態や業務とは?
※こちらは2016年4月に公開された記事の再掲です。