あまたあるコンサルティングファームの中でも独自の存在感を放つアーサー・ディ・リトル(以下、ADL)。世界最初の経営コンサルティングファームとして知られ、特に日本オフィスは世界各国の他拠点に比べても大きな存在感を示しています。
「0から1を生むより、1を100にすることに興味がある」。そう語るのは、2021年に新卒で入社した大室祐磨氏。バイオ系の研究を経て、ヘルスケア以外にも半導体・自動車・デジタル・金融・消費財領域などで数々のプロジェクトに参画してきました。
一方で、サステナビリティ領域に関心を持ち、NPOでの活動や交換留学を経験したのち、2022年にADLへ入社した陳暁穎氏は、消費財・半導体・エネルギーなど幅広い領域で新規事業や海外戦略、サステナビリティ戦略の策定に携わっています。
新卒で入社して最前線で活躍するお二人に、ADLという組織のリアル、そして若手だからこそ得られる成長機会について伺いました。
<目次>
●「ワンプール」だからこそかなう、自由なプロジェクト選択
●若手でも「1を100に」するダイナミズムに関われる
●ロジックだけでは届かない。感情に寄り添う「伝え方」
●コンサルのテーマは意外と「身近」
●自由なキャリア設計をかなえる「ワンプール制」
「ワンプール」だからこそかなう、自由なプロジェクト選択
──入社から現在まで、どのような業務を経験されてきましたか?
大室:入社して4年になります。学生時代はバイオ系の研究をしていたこともあり、ヘルスケア領域の案件に多く携わってきました。他にもデジタルや消費材、自動車等のプロジェクトも幅広く経験しています。ADLという組織の大きな特徴の1つが、ワンプール制を採用しているということ。若手の時代に特定のプラクティス(特定の業界や機能ごとの専門グループ)に縛られることなくプロジェクトごとに手を挙げて希望を出せるので、自分の関心に合った仕事を選びやすいのが魅力です。
陳:入社して3年になりますが、大室と同じようにいろいろな領域を経験しています。消費財、半導体、エネルギーと業界も多様ですし、イシューも新規事業からビジョン策定までさまざまです。中国出身というバックグラウンドを生かして、海外販売戦略の案件にも携わっています。
──多くの選択肢がある中で、なぜADLにひかれたのでしょう。
大室:大学・大学院の経験が生かせるのではと考え、最初は医療機器メーカーや化学メーカーで研究開発職を志望していました。ただ、「優れた技術の種を社会に実装していく」ということに強い関心があり、次第にコンサルや総合商社にも興味を持ち始めました。
最終的にADLを選んだのは、「Linking people, technology & strategy」という理念に強く共感したからです。技術をどう社会につなげるかという問いに真正面から取り組んでいる会社だと感じましたし、日本オフィスがグローバルの中でも高いプレゼンスを持っている点も魅力でした。日本企業のイノベーションに深くコミットできる環境があると思いましたね。

大室 祐磨(おおむろ ゆうま)
同志社大学 生命医科学部 医工学科卒業、東京大学大学院 工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻修了後、2021年に新卒でADLに入社。ヘルスケア・ライフサイエンス、半導体、機械メーカー、自動車、デジタル、消費財、金融などにおける事業戦略・M&A戦略・R&D戦略の策定支援やビジネスデューデリジェンスに従事。
陳:私は学生時代からサステナビリティに関心があって、NPOの活動や交換留学などを通じて「サステナ×ビジネス」というテーマを追っていました。多様な企業の視点から社会課題に向き合い、支援を通じて社会を動かす仕組みの創出に関われる点に、コンサルの魅力を感じました。
ADLを選んだ決め手は、「自分という人間を最も丁寧に見てくれた会社」だったことです。インターン中にうまく成果が出せなかった場面があったのですが、通常30分の予定だったフィードバックの時間を、メンターの方が1時間以上かけてくれました。その中で、単なるパフォーマンスの評価にとどまらず、「なぜうまくいかなかったのか」「どんな志向でキャリアを考えているのか」「人生において何を大事にしたいのか」といった人間性や価値観の部分まで真摯(しんし)に対話していただいたことが強く印象に残っています。「ここまで深く向き合ってくれた会社なら、自分も本気で向き合える」と思い、入社を決意しました。
若手でも「1を100に」するダイナミズムに関われる
──ADLで働く魅力は、どんなところですか?
大室:学生として研究をしていたとき、優れた刺激的な技術を知る機会も多くありました。しかし、それがどう社会に役立つのか、ビジネスとして育っていくのかという視点が欠けていることに課題感を抱いている自分もいました。私は0から1を生むよりも「1を100にしていく」という働き方に向いていると感じていたので、まさにその思いを実現できる環境があることが何よりの魅力です。若手であってもクライアントの意思決定に深く関わることのできる場面が多く、自分の提案が実際にビジネスを動かしていく感覚が得られるのが醍醐味(だいごみ)です。
陳:私も、ADLには若手であっても「対等な1人の人」として見てもらえる文化があると感じています。誰が言ったかではなく、何を言ったかで議論されるフラットな風土があり、成長の機会がたくさん転がっています。また、1つの企業だけでなく、複数の企業をつなぎながら社会全体のエコシステムを動かしていけるという点も、コンサルならではのやりがいです。サステナビリティのような大きなテーマでも、実務レベルから社会に影響を与えるアプローチができるのは魅力ですね。

陳 暁穎(ちん ぎょうえい)
東京大学 経済学部 経営学科卒業後、2022年に新卒でADLに入社。現在は飲料食品・半導体・エネルギー等領域における新規事業立案・海外事業戦略の策定支援をはじめとする多彩なプロジェクトに携わる。
大室:就活中に「若手に大きな裁量がある」というフレーズをよく耳にすることがありますが、正直なところ、これはある程度の「理想論」に過ぎないものだと思っていました。ところがADLでは、その裁量が想像を上回る形で現実のものとなり、良い意味でのギャップを感じました。
1年目からプロジェクトの中で大きなパートを任されましたし、2年目には日系の化学メーカーの欧州事業戦略プロジェクトで、スウェーデンのオフィスにいる入社したてのメンバーをガイドしながら、前線でプロジェクトを引っ張る立場を任されました。クライアントである上場企業の副社長への報告を担っただけでなく、メンバーへの指示やサポートに関しては全て英語で直接コミュニケーションを取っていました。プロジェクトリーダーにサポートいただきながらも、基本的には「自走してほしい」というスタンスでしたし、非常にチャレンジングでしたが、その分やりがいも大きかったことを覚えています。
ロジックだけでは届かない。感情に寄り添う「伝え方」
──陳さんは入社後、どのようなギャップを感じましたか?陳:入社前の想像と大きく異なっていたのは、「コンサル=ロジカル」というイメージが、実際にはそれだけでは十分ではなかったという点です。
私が入社して最初に携わったのはクライアント先に常駐するプロジェクトで、事業部長クラスの方々と日々密にコミュニケーションを取る必要がありました。
印象的だったのは、役員層には通用するようなストーリーを描いたつもりであっても、事業部長レベルの方からは「本当にそうか?」といった反応が返ってくることもあったことと、それに対してADLのシニアメンバーが分析の視点や表現方法を巧みに調整しながら、確実に合意形成へと導いていた姿です。
そこで、コンサルで重要なのは、ただ正しいことを伝えるだけではなく、相手の立場と関心に合わせて伝え方を工夫しながら、相手の納得を引き出すプロセスであると強く実感しました。

──ベテランのビジネスパーソンでも難しいような「根回し」のスキルですね。これは入社後に身につけられたのですか?
陳:はい、入社後に少しずつ身につけていきました。最初はもちろんうまくいくことばかりではありませんでした。例えば、クライアントの事業が伸び悩んでいる中で、私たちの提案が「3年前にやっておけばもっと良かったのに」というようなものだと、伝え方を誤ると反感を買う可能性があるわけです。
そこで真正面からぶつかるのではなく、「なぜ今こういう状況なのか」を丁寧に整理し、相手にも納得感を持っていただけるよう進めました。まさに「ディスカッション」から始めるという感覚です。自分が主張する前に、まず共感してもらうための段取りが大切なのだということを学びました。
大室:陳の言う通りで、「クライアントの言っていることの背景に目を向ける」という姿勢も非常に重要です。特に若手の頃は「言われたことを額面通りに受け取め、真面目に答える」ことに必死になりがちですが、本当に求められている答えは何なのか、その背景にはどのような事情があるのかを読み取る力が必要とされます。
コンサルのテーマは意外と「身近」
──陳さんは経済学部出身とのことですが、文系だからとハンデを感じることはありませんでしたか?
陳:「ADLのコンサル=理系」というイメージがあったので、正直なところ、自分に務まるのかどうか不安でした。ですが、入社してみるとまったくそんなことはなく、むしろ文系でも楽しめるプロジェクトばかりです。
例えば「中国で日本のお酒をどう販売するか」や「マインドフルネス領域において新規事業をどう立ち上げるか」など消費者目線に近いテーマにも数多く関わってきました。また、半導体材料の事業性評価や、各国のエネルギーシナリオを踏まえた投資ポートフォリオの策定といった、一見技術チックなテーマにも携わってきましたが、「技術そのもの」ではなく、「市場構造やビジネスモデルを理解する」ことが求められましたので、ハンデなく取り組むことができました。
大室:例えば医療機器の案件でも、「どのような構造で価格戦略が崩れたのか」といった制度や市場の仕組みを捉えることが重要であり、技術的なバックグラウンドが直接求められる場面は実際には多くありません。

陳:社内でも文系出身者がたくさん活躍していますので、「この人は文系」「この人は理系」といった区別をされることもまったくありません。プロジェクトごとに新たな知識をキャッチアップするのが当たり前の世界ですので、前提知識の有無よりも、学び続けようとする姿勢が大切なのです。
自由なキャリア設計をかなえる「ワンプール制」
──「ワンプール制」でプロジェクトを希望する形ですよね。
大室:はい。全プロジェクト情報が社内で公開されています。シニアが獲得してきた案件の概要や得られるスキルなどが一覧になっていて、ジュニアはそれを見て「面白そうだな」と思った案件に順位をつけて希望を出します。最終的に、会社側とマッチングしてアサインされる仕組みです。
陳:担当できる件数は基本的に1人につき1件なのですが、タイミング次第では調整してもらうことも可能です。例えば私が今関わっている案件も、実は提案段階からリストで見かけて興味を持っていたのですが、その時点ではスケジュールが合わず……。相談したところ、シニアがクライアントとも相談の上、開始時期が1カ月ずれたため、無事に参加できることになりました。
大室:「ワンプール制」だと、業界特化型のキャリア形成がしづらいのではないかと心配する方もいらっしゃるかもしれませんが、スペシャリストを目指したいと思ったときには、その領域の案件を継続的に選べばよいだけなので、業界に深い知見を持つ存在になれないなどというリスクは一切ありません。中途入社で特定業界に強い方もいますし、逆にシニアになっても多様な案件を渡り歩きたいという人もいる。制度としても文化としても、自分でキャリアを設計できる自由度がありますね。
──最後に、どんな人がADLに向いていると思いますか?
大室:「社会を良くしたい」といった熱意がある人には、とてもフィットする環境だと思います。私自身も最初は研究開発職としてのキャリアを考えていましたが、より広い視点で社会や産業を俯瞰(ふかん)したいという気持ちからコンサルという選択肢に魅力を感じるようになりました。事業会社の中にいると、どうしても組織の都合に左右されてしまう部分がありますが、コンサルタントとして外から関わることで、より柔軟に意思決定に携わることができます。
陳:この会社を楽しめるかどうかは、やはり「共感力」がカギだと思います。世界のどこかで、あるテーマに本気で取り組んでいる企業と人がいる。そんな人たちを支援したいという共感力を持てるかどうかがキーだと思います。誰かの挑戦を後押ししたい気持ちがある人には、ぴったりの職場ですね。
大室:キャリアを選ぶ際には「自分の中でどうしても譲れないものは?」「逆にやりたくないことは何?」など、さまざまな角度から自分に問いかけてみることも大事でしょう。さまざまな業界の人に会って情報を集めて、ぜひご自身にマッチするキャリアをつかみ取ってください。そうした見極めを経て、最後にADLを選んでもらえたらうれしいです。
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【制作:BRIGHTLOGG,INC./撮影:小池 大介/編集:鈴木 崚太】