経営戦略の立案にとどまらず、事業の構想から実装を一貫して担う、ドリームインキュベータ(以下、DI)。掲げるビジョン「挑戦者が 一番会いたい人になる。」は、単なるスローガンではない。日々のプロジェクトのなかで、その言葉に向き合い、行動で示す文化が根づいている。
本記事では、DIのビジネスプロデューサーとして活躍する田代氏・藪氏・佐々木氏の3名にインタビュー。個人の成長がどのように支えられ、いかにして「挑戦者の伴走者」としてのプロフェッショナリズムが磨かれていくのかを、リアルな経験談を通してひも解いていく。
<目次>
●「社会を変える 事業を創る。」に惹かれて──3人の入社理由
●戦略も投資も、原点にあるのは「挑戦」
●お題目ではない。「現場」で生きているミッション・ビジョン・バリュー
●若手に求められるのは「変化を楽しめる力」
●「挑戦を支える」ための育成環境
●「社会を変える 事業を創る。」仲間を待っている
「社会を変える 事業を創る。」に惹かれて──3人の入社理由
──皆さんがDIに入社された背景や理由を聞かせてください。
田代:私は大学院で社会課題をテーマに研究しており、「どうすれば世の中がもっと良くなるのか」という問いを持ち続けていたなかで出会ったのがDIでした。当時はまだ50人ほどの組織で、整いきっていない環境だからこそ挑戦できると思いました。
現ミッションの「社会を変える 事業を創る。」の前身でもある、創業時の「ソニーやホンダを100社つくる」という理念には非常に共感しましたし、今までにない価値を新たに見いだしていく会社だと感じました。実際に、他のコンサルティングファームが行わないような国策レベルのプロジェクトや産業構造に関わるような仕事にも取り組んでいて、「ここなら、自分の思いを形にできるかもしれない」と感じ、入社を決めました。

田代 雅明(たしろ まさあき):執行役員
2008年入社。東京工業大学大学院修了。学生時代から都市の社会課題研究を行い、新卒でドリームインキュベータに入社。入社後、15年以上、自動車、通信、IT、エレクトロニクス、エネルギーなど多種多様な業界において、成長戦略立案や新規事業、組織立ち上げプロジェクトに従事。近年では、ビジネスモデルの構築や組織改革を中心としたビジネスプロデュース活動に注力。
──ミッションに惹(ひ)かれたのですね。藪さんはいかがでしょうか?
藪:私はもともと国家プロジェクトや都市開発のような、膨大な人数で大きなプロジェクトを進める働き方に興味を持っていました。しかし、学生時代にスタートアップで働いた経験が転機となり、少人数でも大きなインパクトを出せる働き方に魅力を感じたんです。
就活ではコンサルティング業界を広く見ており、多くのコンサルティングファームが「守り」、つまり業務効率化やコスト最適化に強みを持っている印象がありました。一方で、DIは「攻め」、つまり新規事業や成長戦略に特化しており、自分がやりたいことそのもののように感じたため、入社を決めました。

藪 優太郎(やぶ ゆうたろう):シニアマネジャー
2017年入社。東京大学大学院修了。新卒でドリームインキュベータに入社後、自動車メーカー・通信・金融・インフラから一次産業にいたるまで、業界を問わず事業戦略の立案に従事。
──当時から、業界での特異性を感じていたのですね。佐々木さんは、どうしてDIに飛び込んだのでしょう。
佐々木:私は大学では情報工学を専攻し、ベンチャーでのソフトウエア開発にも関わっていました。当時は生粋の理系で技術を学ぶことが楽しかったのですが、次第に、「技術の視点だけでは社会にインパクトを与えられない」と感じるようになりました。ビジネスの視点がなければ、世の中に価値を届けられる良いプロダクトはつくれないと。
そこで、「技術」と「ビジネス」の両方を理解しながら、新しい価値をつくっていける場所を探して出会ったのがDIでした。実際に面接を通して、創業期から「事業創造」にこだわっている文化や、戦略と実行をどちらも重視するスタンスに触れて、「ここなら成長できる」と確信しました。

佐々木 克仁(ささき かつひと):アソシエイトマネジャー
2021年入社。東京大学大学院修了。新卒でドリームインキュベータに入社後、製造業・エネルギー・IT・金融など、複数業界の新規事業戦略策定に従事。近年は、DX(戦略~業務改革)に注力。
戦略も投資も、原点にあるのは「挑戦」
──DIの特徴を教えてください。
田代:2000年の創業時は「戦略」と「投資」の両輪で事業に向き合ってきました。今でこそ伴走を掲げるハンズオンのベンチャーキャピタルも増えましたが、創業当初から「戦略を描いた上で、必要があれば自分たちでお金を出し、一緒に事業を創る」というスタンスです。
現在は戦略支援に軸足を移していますが、「事業を創る」という発想や現場感は、その頃の経験がベースになっています。単なるスライドづくりではなく、事業そのものを「成長させる」ための提案や支援が、われわれのビジネスプロデュースの強みだと思っています。
──戦略立案だけで終わらせない姿勢にこだわっているのですね。
藪:実際に、私が直近で関わったプロジェクトでは、クライアントと共に数千億円規模の構想策定から連携パートナーの開拓、パイロットサービスの構築、そして実際の顧客獲得まで伴走しました。大きな構想を描いたあとは、実際に「誰と・どうやって進めていくか」や「実際にお金をもらえるか」など事業成長に必要な要素は全て詰めていくのがDIらしさだと思います。
こうしたスタイルは、実際にエンドユーザーを動かすところまでコミットしているため成功することもあれば思いがけない失敗をすることもあり、手触り感があります。仮説検証のために、自分たちで現地に足を運び連携先企業と喧々諤々(けんけんがくがく)の議論をしたり、チラシを配って顧客の生の声を拾ったり。戦略コンサルティングという枠を超えた泥臭さも含めて、社会を動かすリアルな感覚を持てるのが面白いです。
お題目ではない。「現場」で生きているミッション・ビジョン・バリュー
──DIは、「社会を変える 事業を創る。」というミッションを掲げています。MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を明文化された背景や意図を教えてください。
田代:MVVを明文化したのは、組織として次のフェーズに進むタイミングだったからです。というのも、日本の企業社会がある種の閉塞感に包まれていた時期で、「もう一度、日本から新しい価値を生み出せる組織を創りたい」という危機感が出発点でした。
ソニーグループや本田技研工業(Honda)のように、時代を動かすような企業が次々と現れていた時代の再来を信じて、われわれ自身が「社会を変える 事業を創る。」という旗を掲げたいと思ったのです。そして、それを実現するために、「挑戦者が 一番会いたい人になる。」というビジョンと「枠を超える。」というバリューを掲げました。

──理念や価値観は、日々のプロジェクトにどう影響していますか?
藪:DIで携わる新規事業のプロジェクトは、前例がないことも多く、成功の保証もありません。答えのない問いが多いため、「どちらが正解か」は誰にもわからない局面も多々あります。そのような環境では、「今この選択が本当にクライアントの挑戦に資するのか」「私は挑戦者から信頼される存在になれているか」と、自問しながら進むことが多いです。
一般的なコンサルティングが「マイナスをゼロにする」アプローチだとすれば、DIのビジネスプロデュースは「ゼロから価値を生み出す」挑戦に近いもの。だからこそ、MVVは単なる理念ではなく、迷ったときの「実行の軸」として自然と行動に表れていると感じます。
──MVVが現場の意思決定や行動に自然と織り込まれているわけですね。「枠を超える。」に込めた思いも教えてください。
田代:「新しい価値」は、業界や領域の境界線の「スキマ」や「組み合わせ」から生まれると考えています。だからこそ、決められた枠の中だけで思考し、行動していては、新しい価値は生み出せません。私たち自身がまず枠を超えて動くからこそ、クライアントにもその変化を促し、一緒に価値を形にしていけます。
現場に足を運ぶことも、専門や役割を超えて考えることも、そうした価値創造の起点になります。それがDIに根づくカルチャーであり、私自身が仕事を通じて体感していることです。
若手に求められるのは「変化を楽しめる力」
──DIでは、どのようにプロジェクトにアサインされるのでしょうか。
田代:DIはインダストリーやソリューション別の部門が存在しません。そのため、どのプロジェクトにも基本的に「誰でも関われる」設計になっています。これは「個人の成長」と「価値創出」の両方を見て柔軟にアサインするための仕組みでもあります。
たとえば、私はかつて自動車分野のプロジェクトに取り組んでいましたが、次の案件ではエネルギー業界の事業構想に携わりました。まったく異なる業界に関わることで、自分の思考の幅や価値提供の引き出しが広がっていく実感があります。
──業界をまたいで経験できることは、若手にとって大きな成長機会ですね。藪さんもそうした柔軟なキャリアを歩まれているのでしょうか?
藪:はい。私も入社直後から、事業創造という軸は一貫してありつつも、モビリティやエネルギー、ヘルスケア、AI(人工知能)など多様な領域のテーマを担当してきました。
最初はまったく知らない業界で、知識も人脈もないなかで走り出すのは大変でした。しかしさまざまな業界や領域について学びながら、動き続けるしかありません。そういう意味では、変化を自分の「学び」にできるかどうかが問われますね。
──成長のカギは、「変化を楽しめるかどうか」にあるのですね。DIでは、そうした変化に臆せず挑むための対話や風土づくりに、どのような工夫があるのでしょうか?
佐々木:DIでは入社年次にかかわらず、議論の場にしっかりと入っていくことが求められます。もちろん心理的安全性は高くて、「自分の視点や経験から語ること」が歓迎される環境なので、若手でも臆することなく発言できます。
単に「任されるから伸びる」というものではなく、対話を通じて視座を引き上げてもらっているように感じます。だからこそ、新しい環境やテーマに直面しても、前向きに飛び込めるようになるのではないでしょうか。
「挑戦を支える」ための育成環境
──若手が育つ環境についても聞かせてください。
田代:DIの育成の特徴は、「上から与える」のではなく「一緒に考える」スタンスです。たとえば1年目でも、プロジェクトの全体像をきちんと共有した上で、本人の意志に加え、ビジネスプロデューサーとしての成長に必要な要素を踏まえてアサインします。
また、入社時研修や、継続成長のためのOJT・育成プログラムは整備されていますが、プロジェクト中や、終了後にも1on1で振り返りを行い、「どこが良かったか」「どこが伸びしろか」をしっかり言語化して伝えています。こうしたフィードバックの積み重ねが、若手の成長を後押しできているはずです。
──佐々木さんが、DIで経験したご自身の学びや成長において、特に印象に残っているエピソードを教えてください。
佐々木:私の入社当時のメンターは藪で、毎週のように1on1を行っていました。1週間の振り返りや今後の進め方について話したり、「最近こんなことで悩んでいる」といった相談を聞いてもらったりして、自分の考えを整理してもらっていました。思い返すと1on1は、成長に向けた大きな支えになっていました。
改めて振り返ると、プロジェクトのなかで先輩や執行役員と議論を重ねながら、自分の思考やアウトプットの質を高めていく過程は非常に重要であったと思います。日々の業務そのものが成長の機会になっていました。

──藪さんは教育する立場として、意識していることはありますか?
藪:研修や資料だけでは伝えきれない「マインド」や「雰囲気」こそ、しっかりと受け継いでいく必要があると感じています。私自身も、入社当初に直属の先輩から「これしかないと言い切れるまで自問自答を繰り返せ」と厳しく言われたことが印象に残っています。根性論のように聞こえるかもしれませんが、プロジェクトを完遂する上では、そうした精神的な姿勢も大切です。
同時に、核心をついた論点の整理や、ロジカルシンキングの型のような「肝」もあります。こうした重要なノウハウは、研修だけではなかなか伝わりません。だからこそ、後輩たちには日々のやり取りのなかで、目に見えない「プロフェッショナルの作法」を言葉で丁寧に伝えるようにしています。
「社会を変える 事業を創る。」仲間を待っている
──最後に、DIを志望する学生や、社会を変える事業に関心のある方へメッセージをお願いします。
佐々木:私は学生時代から「向き・不向き」や「損得」にとらわれすぎない方がいいと思ってきました。10年20年先が読めない世界で、目先の合理性には大して意味がないと思っていたからです。実際、今は生成AIなどの技術が急速に進化していて、仕事の価値の出し方も大きく変わっていきます。数年前まで「エンジニアは食いっぱぐれない」と言われていたのが、今ではそれさえも確実とは言えなくなってきている。
むしろ、自分が心から楽しめることや、やっていて面白いと感じること──そういったものこそ、AIや自動化では代替できない価値を生む源になると感じています。自分が面白いと思えることを通じて、誰かに価値を提供できる。そんな経験が積める仕事を見つけてほしいと思います。
居酒屋のアルバイトや旅など、どんな体験でもいいので、「これが自分の楽しいことなんだ」と思える何かに出会ってほしい。その延長線上に、もしコンサルティング業界、ひいてはDIがあるなら、私としてはとてもうれしいですね。
──藪さんはいかがですか?
藪:長く一つの会社でパフォーマンスを出したいと考えるなら、人とのフィット感を重視することが大事だと思います。もちろん、仕事内容や事業の方向性が自分と合っているかどうかも大前提として大切です。でも、その上で「一緒に働く人たちと価値観が合うか」「将来この人たちと信頼関係を築けそうか」という視点は、就職活動のなかでも見落とさないでほしいですね。
私自身、入社して3年ほどたった頃に、コンサルティングの面白さに対する認識が少し変わりました。就活生の頃は「壮大なテーマに挑戦できる」「難しい問いを解ける」「かっこいいスライドがつくれる」みたいなことに惹かれていました。でも実際に仕事をしてみると、一番面白いのは、目の前のお客さまとのやり取りだったんです。価値を出せたときには「ありがとう」と言ってもらえるし、うまくいかなければ率直なフィードバックもいただける。このダイレクトな関係性に、深いやりがいを感じるようになりました。
このように、学生時代に「この仕事は本当に自分に向いているか」を完璧に見極めるのは難しいと思います。一方で、「この人たちと働いてみたい」「この先輩みたいになりたい」と直感的に思えるかどうかは、早い段階から判断できるポイントだと思います。そういう感覚も大事にしながら、自分に合う環境を選んでいってほしいですね。

田代:私も佐々木と同じように、「自分が納得できるかどうか」を大事にしています。どれだけ華やかに見える仕事でも、違和感があるまま続けるのは難しいと思います。だからこそ、仕事や組織を選ぶ際には、世の中の評価軸ではなく、自分自身の価値観や判断基準をしっかり持つことが大切だと思います。
たとえば、コンサルタントは人気の職業ですが、それが「自分にとってどんな意味を持つのか」「なぜ価値があると思えるのか」を、自分の言葉で説明できるかどうかが重要です。この仕事は変化が激しく、難易度も高い。だからこそ、自分の軸で納得しながら取り組めるかどうかが、長く続けるためのカギです。
私自身、DIを選んだ理由もまさにそこにありました。複数のコンサルティング会社を見ましたが、既に完成された形が出来上がっている会社ほど自分の考えや意志が事業や組織に反映されるまでに距離があると感じたんです。一方で、当時まだ社員が50人ほどだったDIでは、やれることの幅も広く、自分の納得感を大切にしながら動ける環境があると感じました。
創業から25年たった今でも、DIは常に変わり続けています。そんな環境だからこそ、「これが自分の価値観だ」「ここに納得できる」と言えるものを持っている人にとっては、非常にフィットする会社だと思います。ぜひ、「自分は何に納得できて、何に納得できないのか」を見極めた上で、働く場を選んでほしいですね。

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【制作:BRIGHTLOGG,INC./撮影:小池 大介/編集:鈴木 崚太】