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上司の唱えた「当事者意識を持て」という恐ろしい呪文。そうそれはマダンテ

コラム 社員
2016年7月20日(水) | 47,255 views

※こちらは2016年7月に公開された記事の再掲です。



新卒1年目の時に、「仕事に対してもっと当事者意識を持て」とよく言われた。


大企業の上司と新人。ありがちな光景だと思う。



「当事者意識」とは関係者であるという自覚

当時、「当事者意識」という単語の意味がよく分からなくて、ググりまくった。仕事中に、当事者意識に関する色んな文献を読み漁った。



当事者意識:

自分自身が、その事柄に直接関係すると分かっていること。関係者であるという自覚。




総合商社のトレーディング業務

総合商社に入社した僕が担当していたのは、貿易業務。ある化学製品の、「トレーディング」という仕事をしていたが、やることの本質は非常にシンプルで、とにかく物を買ってそれを売るというそれだけである。それを国内外でたくさんやる。安く買えるところを探し、それを高く売れるところに売って利ざや(※1)を稼ぐ。

(※1)利ざや……取引において、売値と買値の差額によって生じる利益



安く買うために、それを製造している人達とさまざまな方法で関係を深める。高く売るために、それを恒常的に買っている「Buyer」の人たちと関係を深める。情報を集める、海外店と連携する、他の部署と連携する……。結果的にいろいろやってるように見えるし、勿論極めるためには相応の能力が必要だが、実のところ本質は極めてシンプルだ。



「当事者意識」の効用

「当事者意識」というのは、このトレーディングという活動を押し進める上で非常に役に立つ。利ざやが出たら自分のお金が増えたかのように嬉しくて、損が出てしまったら自分のお金が無くなったのかのように悲しくなれば、それはもう、自分の時間や神経をどんどん仕事に投入するだろう。取引先との関係構築に毎夜を捧げ、マーケットの情報を得るために土日も働くに違いない。



仕事での成果が「自分のこと」のように感じるのであれば、安く買って高く売り、会社として成果をあげるということに、それ以上の理由なんていらない。


なぜそれを本気でやるのか? 自分のことだからやるんだ。当事者だからやるんだ。当たり前だ。「当事者意識」というのがどのように役に立つのかというと、単純にさらに労力を投下することに一役買うという、そういうことである。素晴らしい……。



「当事者意識」を持てなかった男

僕が仕事に対して当事者意識を持てなかったことに、特に理由はなかった。なんだか、安く買って高く売る活動、それによって会社に利ざやが出るというこの活動が、どうも自分とはあまり関係のないことのように感じたという、ただそれだけ。う〜ん、会社が儲かってもなぁ……。


だから、まあ自分が褒められる、認められる、その為だけにこの活動をしようとガムシャラにそれ以上の理由を考えず働いてみたが、一方、自分ごとではないので、実際のところやらなくて良いのであればやりたくはない。儲かれば、まあ悪い気はしないし損したらアチャ〜と思うが、まあそんなことより早く土日になってほしい。当事者意識の無い自分と、ガムシャラな姿勢は評価される現状。当事者意識の無い自分と、それを持たないといけないというプレッシャー。なにか変なものに挟まれて、苦しんだ。




「当事者意識」の持ち方

しかし、自分自身の人生を振り返ってみれば、能動的に持とうとして持った「当事者意識」なんて、これまでの人生で1つだってない。


自分が当事者意識を持っている、自分事のように感じているもの―—例えば家族のこと? 母が病気になれば自分のことのように嫌だ。妹が受験をするとなれば自分のことのようにハラハラするし、父が病気となれば、いてもたってもいられない。


それ以外のこと……例えば友人? 友達が結婚すれば自分のことのように嬉しい。あとはなに? 応援しているスポーツチーム? あとはなんだろう?



いずれにしても自分が当事者意識を持ち、自分自身の関係性を本能的に感じてしまうことはどれも、「気付いたらそういう関係になっていた」ものばかり。


「当事者意識を感じないといけない」というモチベーションで人に近づき、その人と友好関係を築いたなんて例はない。「築いた」 のでなく、「気付いた」ら当事者だったという、そういう順番だ。



上司へのクロスカウンター

「当事者意識」の意味をグーグルで調べまくり、何か釈然としなかった当時の自分のモヤモヤは、いまになってその理由が少し明確になった。当事者意識を持てと言われたその時に僕が言うべきだった、上司に対する渾身のクロスカウンター、そうそれは



「いやそもそも、当事者意識って、『持ってしまうもの』なんじゃないですか? 部下に当事者意識を持たせるという管理者としての大切な業務を放り投げて、『勝手に持て』っていう言い方はどうかと思います。


新入社員の僕が当事者意識を持てるかどうかって、上司にかかってるんじゃないですかね? これは、あなたに関係する事柄なんです。もっと僕の当事者意識に対して、当事者意識を持ってください」




これだった。




なんて恐ろしい理論なんだろうか。こんなことを言ってくる1年目はどう思われるだろう。射殺されるかもしれない。そして今では、こんなことを口に出さなくて、本当に良かったと思っている。




事実として、こんな事を口にしたところで何も生まれない。「あ、そうだったな、悪い悪い。ちょっとお前が当事者意識持てるように、俺の方もいろいろと工夫するわ。俺の努力不足だった、すまん。」となるだろうか? 絶対になりません。


というか、入社する段階で仕事に当事者意識を持てているやつは、現にいっぱいいる。やるべき理由は自分で見つけるもの。仕事のモチベーションを人任せにするような奴はそもそも会社に入ってくるな。早く、死になさい。



あの日の判断

そう、きっと「新人の当事者意識に関する上司の当事者意識」という独創的な指摘を試みたあかつきには、僕は静かに異動となりそしてサラリーマンとしての人生をそこで終えてしまっていたに違いない。


そんなことになっていたら、会社を辞めた後も、その会社と関連した仕事をいろいろとさせて貰っている、今の自分自身の働き方は絶対にありえなかっただろうなと思う。「まあよく分からないけどやらなければ怒られるし、怒られるより褒められたいし、一旦ガムシャラに働いてみるか」というあの日の判断は、今振り返ってみればそんなに悪いものでもなかったようだ。




「当事者意識」の矛先

前職の関係者には正直お世話になったなと思うし、今だって色々お世話になっている。それは会社で働いている当時では想像の出来なかったことだし、月並みな表現過ぎてアレだが、人と人との繋がり的なものに感謝しているということでもある。


「仕事」自体に当事者意識が持てなくても、取り敢えず、「会社で自分の周りにいる人達」は自分の、人生の関係者なんだと思って接した方が良いと思う。え? でも職場の先輩社員との関係構築が難しい? え、嫌い? ああ、それはねえ、人間関係というもの自体に関しての当事者意識が足りてないんだよ、きっと。


いや、それがどんな人であれ、「近しい人との人間関係」って長期的に考えると、ほんと君に凄く関連する大事な事柄なんだと思うよ。仕事に対して持てなくても、人間に対してくらいは、当事者意識を持った方が良いと思うよ。個人的には。




最強の呪文「当事者意識を持て」

そんな話を、先輩風をビュンビュンと吹かせながら社会人1年目の後輩にした。


「当事者意識の要求」という根本的な矛盾を指摘しながら、まわりまわって結局、「近しい人には、当事者意識を持てよ」とドヤ顔で言う自分は、何かがオカシイし、何だかカッコ悪いなって思うんです。それが今、凄くつらい。


「当事者意識を持て」というこの呪文は、打たれた側のHPを大きく削る一方、放つ側のMPをも大きく削ります。神様、これはマダンテですか? はい、マダンテです。

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爽やかで優しく情に厚い、品行方正で二足歩行のジェントルマン風お兄さんです。こんにちは。
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