はじめまして、熊谷と申します。就活生の皆さんは、就活真只中といったところでしょうか?
振り返ると、三井物産に在籍した当時から現在に至るまで、相当数の商社志望の学生からOB訪問を受けてきました。その経験を踏まえ、まさに面接ラッシュのこのタイミングで、今から非常に気の抜けたショボい記事を書きます。テーマは「面接やOB訪問でなされる会話のフワフワ感」です。
何かの参考にしていただければ幸いです。何の参考にしていただかなくても特段問題はございません。
OB訪問でなされるフワフワした会話(OB目線)
就活生:ほ、本日は、お時間を頂戴し誠に有難う御座います。
OB:あ、そんなに畏まらなくて良いですよ。僕、基本的に鼻糞みたいな人間なんで。鼻糞と話してると思ってください。
就活生:いえいえ、お忙しい中お時間を頂き、大変感謝しております。早速ですが、熊谷さんは普段はどんなお仕事をされているのですか?
〜OB脳内〜
は、鼻糞のくだり、流された……ホジってほしかった……鼻糞だけに
〜以上脳内、0.01秒〜
OB:ええ〜っと、物流の商売ですね。化学製品のトレーディングと呼ばれる仕事をしています。日本とか韓国で買ったものを、東南アジアとかインドに売ってます。
就活生:物流の仕事ですね。有難う御座います。僕は将来、日本のためになる仕事をしたいと思っています。化学品の物流商売というのは、やはり日本のためになるような仕事なのでしょうか?
〜OB脳内〜
あれ? 仕事自体の詳細は、掘り下げなくて良いのかな?
あんまり詳細は興味ないのかな? どんなことをしてるのか、イメージできてるかな?日本のため、か。話変わったな。これはけっこう難しいぞ……
〜以上脳内、0.13秒〜
OB:僕は日本に対するこだわりが全く無くて、日本のためになっているという感覚を覚えたことも全く無いですね。
就活生:な、なるほど、大変失礼致しました……。「商社の仕事は日本のためになる」という風にお聞きしていたのですが、実際はそんなことないということでしょうか?
〜OB脳内〜
あ、あれ? 謝ることじゃないぞ。良いぞ、良いんだぞ、日本のためと思って働いてももちろん、良いんだぞ……
〜以上脳内、0.04秒〜
OB:あ、全然謝ることではないんですけど、日本のためというのは、考え方次第なので難しいなって思っています。
例えば物流の商売をしていて、商社として、全く同じ製品を日本のメーカーから買うか中国のメーカーから買うか迷っていたとしますよね。中国品の方が安かった場合、商社としてはどうしたら良いでしょう?
日本のメーカーの売上げをたててあげるために無理して高い日本品を買う。それであんまり利益が出なくても頑張ってサムライスピリットで売る。これは日本のためになってるような気がしますよね?
一方、日本の会社は見捨てて、安い中国品を買って商社としてウンと利益を出す。ガッツリ儲けて、日本国に税金をおさめる。これも日本のためになってる気がしますよね?
どっちの方が、日本のためになってますかね?
就活生:は、はい……え〜っと、はい、そうですね……え、え〜っと……
〜OB脳内〜
あ、あれ? ちょっと変な空気だな。テンパらせてしまったかな?い、良いんだぞ。ガツンと思ったことを言ってくれて、良いんだぞ……
〜以上脳内、0.02秒〜
就活生:…………
OB:あ、別にどっちが正解とかじゃなくて、何をもって「日本のため」とするのかって、よくよく考えると結構難しい問題で、それって突き詰めると個人の価値観に大きく依存する話になっちゃうんじゃないかと思うんです。
だから個人的には、一般的な形で「この仕事はこのように日本のためになる」と話すのは難しいな、と。あくまで取り組んでいる人間の捉え方次第かなと思います。
就活生:な、なるほど。そ、それは、人によるということですね。有難う御座います、大変参考になります。では、お仕事をされていて、やりがいを感じる瞬間というのはどのような瞬間でしょうか?
〜OB脳内〜
う、うおおおおおおっと!!!! 日本のための話が、終わってしまったああああ!!!!!! も、もう良いのかな?? 大丈夫かな?? 伝わってるかな? 納得してるかな? どう思ってるんだろう?つ、次はやりがい? 物凄い展開力だ。
「やりがい」っていうのはこれまた人によってかなり定義が異なるから難しいな。とりあえず、漠然と「嬉しいと思う瞬間」ということで良いかな?
それでいくと、まあ商売で儲かったら嬉しいかな。まあ儲かったら嬉しいというのは、儲かったことが褒められて承認欲求が満たされたからとか、他人との比較優位を感じたからとか、ゲームをクリアした感覚とか、そういうところから来るんだろうなあ。
だとすると、正確に「承認されたとき・比較優位を感じたとき・ゲームクリアしたとき」と答えた方が良いか? いやでも伝わりにくいな、これは。
まあ、いずれにしても、いったん簡素に答えるか。
〜以上脳内、0.38秒〜
OB:え〜っと、まあ例えば新しい商売ができて儲かったとき、とかですかね。
就活生:なるほど、やりがいを感じるのは「新しい商売ができて儲かったとき」ですね、有難う御座います。では、熊谷さんが将来描いているキャリアは……
OB:(白目)
OB訪問での会話がフワフワしてしまう理由
「フワフワ」というのは、相手と自分が踏み込んで会話をできていないな、という、あの感覚です。
就活生の側としてフワフワしているなと感じたときは、安心してください、もれなくOB側もフワフワを感じています。なんなら、就活生以上にフワフワを感じています。あの、なんとなく、表面的なやりとりに留まっている感じのアレを、全身で感じています。
会話がフワフワしている状態だと、無論、何を言っても相手の心には響きません。ただ、お互いの発した言葉、その字面だけが宙に浮かんでいるかのような、不思議で寂しい感覚になっています。
会話は、何故フワフワするのか
何故フワフワするのか。これは、使っている言葉の定義が微妙に違う、前提となる情報が違う等、細かくいえば理由はいろいろあると思うんですが、こと就活期のOB訪問や面接における一番の要因は、「就活生がOBや面接官に対して必要以上に精神的に身構えているから」だと思います。
相手を思う気持ちがあまりにも強いから
精神的に身構えるというのは、相手のことを必要以上に凄いと思ってしまい緊張状態に陥るということです。
「この質問をしたら、こんな風に思われるかもしれない……」
「あ、まずい今、こんな風に思われてるかもしれない……」
「会話をした後の結果や印象」に拘りすぎることが、かえって会話を不自然なものにしてしまう。相手に良く思われたい、相手に悪く思われたく無い、という気持ちが余りにも強くなってしまうことで、自分の発する細かな発言一つ一つに異常なほどの神経を使ってしまう、これにより自分の言葉で話すことが出来なくなるんだと思います。
好きな女子と話すのも、面接も、OB訪問も同じ
これは、男子が、めちゃくちゃ好きな女子と初めて話せた……なんてときも一緒かもしれないですね。
「か、、、髪型可愛いねと言ったらどうなるだろう? 顔はどうなんだよと思われるかな? いや普通に喜んでくれるかな? このタイミングで髪型を褒めるのって、なんか不自然かな? ど、どうしよう、どうしようどうしようどどどどどおお」
好きな女子とうまく話せない、OB訪問で素朴に思っていることを聞けない、面接で聞かれてもないことまでベラベラと話してしまう、といった所作は、ザックリくくると同じような背景があるんじゃないかと思います。
どんな場面でも会話は相手との「コミュニケーション」
面接でもOB訪問でも同じですが、いったん会話をし始めたら、それが何であれあくまで相手との「コミュニケーションである」ということを心掛けた方が良いです。「自分が素朴に、本当に思っていることを自分の言葉で言う」ということを、いつも以上に意識した方が良いと思います。
「え、それって、どういう意味ですか?」
「あ、僕はその感覚は分からないんですけど……」
「すみません、あまりよく理解できないので、詳しく教えてください……」
本当にそう思っているのであれば、上記のようなことを言っても、相手は何一つ失礼だとは感じません。面接だから聞いてはいけないとか分からないと言ってはいけないとか、そんな変な決まりは無いはずです。だからもう、ドンドン素朴なことを言った方が良いです。
フワフワさせず、安心感を与える
ちなみに、恐らくこれは、自分に自信がある人ほど簡単にできます。
「自分は何かしらで結果を残してきた」「自分はありのままでもイケてるはずだ」「まあ、最悪どう思われても良いや」という気持ちがある方が、相手の話に素直な反応ができる。
それによって相手は安心感(フワフワ感の対義語)を感じ、言葉がスッと脳に流れ込んでくる状態になるわけです。ある程度雑で自分に自信があって相手の思ってることを気にせずにズカズカ言う男の方が、相手の出方を伺ってキョドってる優しい男子よりもモテてしまう……ことに若干通ずるところがありますね。
自分についての発表内容以前に、会話が成り立つかどうか
実際の面接の場は時間も短いですし、「何を言ってるか」とか「ESに何が書いてある」とか「どういう考えがある」といった自己申告の発表以前に、こういった「ちゃんと会話らしい会話になっているのか」という点でけっこう印象は決まってしまう気がします。
結局のところ、これは逆説的になんですが、採用する側に立つと「緊張感のある面接」というのはそういう「内面から溢れ出るような自信」を試すには優れているという側面もあるんじゃないかな、なんて思ったりもします。
会話がしっくりこない人から、サクサク落としていけば良いので。
いや……で、でも……じゃあOB訪問や面接での会話がフワフワしないためには……ど、どうしたら良いんだよおおおッッっ!!!!!!
そ、そ、そ、そんなこと言われても、やっぱ社会に出たこと無いから社会人って何か凄いのかもって思っちゃうし、面接官は怖ぇええし、思ったこと言うなんて、素直に振る舞うなんて、いつも通りでいるなんて、そんなの無理だよ!!!!!!!
面接はじまった瞬間、緊張で何がなんだか分からなくなっちまうんだよ、面接開始2秒失禁待った無しなんだよおおおおおおおお!!!!!!! 助けてくれよおオオオオオオッ
という方もいるかと思います。今では何とも思いませんが、僕も元来、目上の人(&偉い人)がとても苦手でした。もう苦手というか、何なら「嫌い」でした。
自分なりの勝ちパターンを作ればいい
で、肝心の対策なんですが、残念ながらこればかりは各人の精神構造に起因する話なので一概に「こうすれば自分らしく話せる」という都合の良い普遍的な必殺技は無いです。しかし、自分の中でのメンタルの持って行きかたの勝ちパターンを作れば良いだけなので、工夫の仕様はいくらでもあるんじゃないかな、と思います。
というわけで、僭越ですが僕の方から「面接時に相手を凄いと思いすぎない(=余裕を持っていつも通り会話をする)ための画期的な方法」を、8つ提案させていただくので、自分に合ったスタイルを採用するなり、参考にするなり、全く参考にしないなりしていただければと思います。
画期的な提案その1:不安や疑問も含めて、全部、正直に言葉にする。
×「仕事についてご説明頂き、有難う御座います。(よ、よし、なんかよく分からなかったけど、こ、こんな基本的なことを聞いたら勉強不足と思われるかもしれないから、つ、次の質問にいこう……)」
○「仕事についてご説明いただき、ありがとうございます。ちょっと、勉強不足と思われてしまうかもしれないんですが、物流商売というものが正直なところ良く分かっていなくて、具体的にどのようなことをするのか詳しく教えていただけますか……?」
×「私は、サークルで代表をやっておりまして、100人を巻き込む大規模なイベントを運営しました。そこで代表としてリーダーシップを発揮しました。そこでは……」
○「ただの学生のお遊びだと思われるかもしれないんですが、サークル活動を割と真面目に取り組んでまして、そこで僕なりにリーダーシップを発揮しました。
何か今、サークル活動に取り組むって結局遊びじゃんって思われてそうで怖いんですが(笑)、本当に、本気で取り組んでたんです! どんな風に大真面目に取り組んでいたかというとですね……」
Point!:自分が気になっていることを、あえて全部口に出してしまうことが大切です。重要なのは「面接で何を言うか、どう答えるか」を細かく決めないことです。大筋しか決めない。あとは、その場の雰囲気で、相手に合わせて、気軽にお喋りをする
画期的な提案その2:最初から、自分の緊張をネタにする。
面接官:それでは弊社を志望した理由を教えてください。
就活生:す、すすすっすすすみません、ぼ、ぼぼぼぼぼ僕、極度のあがりショウでして、もう今、今、今頭が軽いパニック状態になっておりましてこれから話すことが少し支離滅裂になるかもっしれないんですがボボッボボ僕としてはどうにか自分の等身大の思いを伝えたいと思っていr路終えjorポワkペオkフォペ和jポエアwk:pfかw時ぇワイj;得和k:区ぁ買うぇ:御f家w; という考えで、グローバルに働くチャンスのある御社を志望しました(最後だけ真顔)。
Point!:相手を、プっと笑わせれば勝ちです。
画期的な提案その3:面接官を凄いと思わないために、「面接官の方が自分よりも早く死ぬ」という事実に、極端に着目する
面接官:それでは弊社を志望した理由を教えてください。
就活生:(うお〜、このオッサンこんな偉そうな顔してるけど、俺より早く死ぬんだろうなあああああ〜。いや〜死ぬんだろうな〜。
俺、見るんだろうな〜こいつがいなくなってしまった後の世界を、こいつ先に死ぬからなああああ〜。俺にしか見られない後の世界、あるんだろうなああああ〜〜〜)
え〜っと、私が御社を志望したのはですねぇ、まあ大した理由は無いんですが……
Point!:とにかく、相手の方が先に死ぬというその事実によって相手が「凄くない」感じに見えればオッケーです
画期的な提案その4:誰も気付いていないが、実は自分は……「神」なのだ。と思い込む。
面接官:それでは弊社を志望した理由を教えてください。
就活生:(ふっふっふっふ……なかなかに面白い面接官だ……。この俺に、「動機」を求めてくるとはね……。くっくっくっくっく……。まさか俺の返答次第では俺を落とそうっていうんじゃないだろうねぇ?
こいつは今、「神」を採用する千載一遇のチャンスであることを認識しているのかぁ?
良いのかなぁぁぁあ……? この天才を……この逸材を……逃してぇぇぇ……?)
いやあ何となくですよ、何となく。フィーリングっていうんですかねぇ?
Point!:とにかく自分を「神」だと思い込むことが重要。周到な自己洗脳を行った上で、当日は徹底したストロングスタイルを貫こう!
画期的な提案その5:面接官を、鉄骨だと思い込む
面接官:それでは弊社を志望した理由を教えてください。
就活生:(なっ……な、なんということだ……。て、鉄骨が……喋った?!?!
う、嘘だろ……俺は夢でも見てるのか???! 何が起こってるんだ…?!)
おお、おおお、おおああおあお……
Point!:素晴らしい作戦ではあるものの、鉄骨が喋るという衝撃で、全く別次元の緊張感が生まれてしまうのがたまにきず。
画期的な提案その6:面接官が自分を試しているんじゃない、「自分が面接官を試しているんだ」と思い込む
面接官:それでは弊社を志望した理……
就活生:いやいや面接官さん、まあ緊張せずリラックスしていろいろと話しましょうよ。そんな身構えなくても、僕も大した人間じゃないですからね。ハ〜っはっっはっは。
はい、それではまず僕のESを見た感想から教えていただけますか? その上で、僕と、こうして1対1で会いたいな、と思った動機もお願いします。
あとは面接官としての、あなたの強みと弱み。あとは面接官として今後どのようなキャリアを……
Point!:面接官が緊張してしまわないよう、相手がリラックスして回答できるような雰囲気をつくってあげよう!
画期的な提案その7:面接官の姿が、全く見えないと思い込む
面接官:それでは弊社を志望した理由を教えてください。
就活生:(なっ……な、なんということだ……。ど、どこからか……声が聞こえる?!?!
う、嘘だろ……、俺は夢でも見てるのか?! 幻術をかけられたのか?? くそ、て……敵は……何処だッ?!?!?!)
Point!:かなりの確率で挙動不審だと思われる上に緊張はとけないという、非常にハイリスク/ローリターンな作戦だ!
画期的な提案その8:実は面接官はスパイ、そうそれも3重スパイであることを突き止めた俺はわざと面接官を泳がせこの面接のタイミングで敵陣の真の狙いをrockあfけあっlyou baby wk:pくぁpふぁ:えk;あぇwpkjryめ、め、
面接、頑張ってください!!!!!!
KENからのコメント:OB訪問も、面接もコミュニケーションが大事
「面接やOB訪問はプレゼンじゃなくて、会話」
これは私が就職活動をしていたとき、とある人事に言われた印象的な一言です。
その真意は「面接やOB訪問では、自分が言いたいことを言うのではなく、普通に会話をすることに集中した方がいい」ということ。
今回執筆いただいたライターの熊谷さんは三井物産で働かれた後、ヘッジファンドに籍を置くIQ280のお方です。
その文体は、舞城王太郎を彷彿とさせる圧倒的なパワーと、予測不可能な論理展開。まるでパワフルなジャズを聞いているような感覚を覚えます。この記事を読まれた方も、そのエネルギーとキャリアの知恵を感じていただけたのではないでしょうか。
熊谷さんの次回作も楽しみですね!
※こちらは2016年6月に公開された記事の再掲です。