(※1)出典:富士経済「グローバル家電市場調査 2026」調べ(グローバル空調メーカーの空調機器事業売り上げランキング2024年実績)
はじめに:なぜ、名だたるメーカーから「ダイキン」へ移ったのか
──本日は、異なるバックグラウンドを持ちながら、現在はダイキンの機械系エンジニアとして活躍されているお2人に、仕事のリアルを伺います。まずは自己紹介と、これまでの経歴を教えてください。
武内:私は現在、テクノロジー・イノベーションセンター(TIC)でアプライド(大型空調)向けの圧縮機開発を担当しています。前職は重工業メーカーの研究所で、回転機械の要素技術開発に携わっていました。専門は機械力学と潤滑です。2022年にダイキンへ入社しました。
原田:私は生産技術センターの工法革新グループで、リーダーを務めています。前職は工作機械メーカーの機械設計職で、2008年にダイキンへ転職しました。現在は、家庭用空調からアプライド空調まで、空調機の性能を左右する金属加工、接合、塑性加工といった生産技術開発全般を担っています。
──お2人とも、キャリア入社ですが、なぜダイキンという舞台を選んだのでしょうか。
武内:重工時代の仕事もやりがいはありましたが、組織が大きく、どうしても「特定の技術領域」にのみ関わることが多かったです。エンジニア人生が半分ほど過ぎた頃、「残りの半分は、1つの製品の最初から最後まで、一連で関わってみたい」という強い思いが芽生えました。空調専業で世界のトップを走り、自社で一貫して製品を創り上げるダイキンなら、それが叶うと考えたのが決め手です。
原田:私は前職で様々な工業製品を作る元となる「マザーマシン」と呼ばれる工作機械を作っていた際、その機械を使って実際にモノを作るユーザー側の視点に立ちたい、という興味が湧きました。また、自身の地元である大阪に世界一の空調メーカーがあるという点も、挑戦を後押ししてくれました。
空調の心臓部「圧縮機」と、ダイキンを支える3つのコア技術
──ダイキンの技術の根幹について教えていただけますか。
武内:エアコンの仕組みをシンプルに言えば、室内機と室外機の間を「冷媒」というガスが循環し、熱を運ぶことで冷暖房を行っています。この冷媒を循環させる「心臓」の役割を担うのが、圧縮機(コンプレッサー)です。
ダイキンの強みは、この圧縮機を自社で開発・生産している点にあります。具体的には、以下の3つが私たちのコア技術です。
1. インバータ技術:圧縮機の回転数を細かく制御し、無駄な電力消費を抑える省エネの要。
2. ヒートポンプ技術:空気中の熱を効率よく集めて移動させる技術。脱炭素社会に向けた「燃やさない暖房」の鍵。
3. 冷媒制御技術:1つの室外機で複数の室内機をコントロールする際、最適な量の冷媒を流す高度な制御技術。
──製品ラインアップも、私たちが想像する「家庭用エアコン」に留まらないそうですね。
武内:その通りです。家庭用から、オフィスビル、さらには空港やスタジアム、そして生成AIを支えるデータセンター用の大型空調機(アプライド)まで。空調という枠組みの中でも、動くもの・流れるもの・構造の強度を保つものなど求められる機械技術は極めて幅広く、奥が深いため、機械系技術者の活躍のフィールドは広いです。

武内 遼太(タケウチ リョウタ):ダイキン工業株式会社 テクノロジー・イノベーションセンター グループリーダー
重工メーカーで回転機械向けの要素技術開発を経験し、2022年にダイキンへ転職。大空間空調(アプライド)向けのターボ圧縮機およびスクリュー圧縮機の先行技術開発に携わる。専門は機械力学・潤滑。
データセンター需要で激変する「アプライド空調」開発
──武内さんが担当されている「アプライド空調」領域について、詳しく教えてください。
武内:私は「チラー」(※2)と呼ばれる、冷温水をつくって建物全体に送る大型装置用の圧縮機を開発しています。特に最近は、生成AIの普及に伴うデータセンター向けの需要が急増しています。膨大な計算を行うサーバーが発する熱を冷やすため、かつてないほど大型で高効率な空調が求められているんです。
(※2)……チラー(Chiller)。水などの液体を冷やしたり温めたりして、それを循環させることで冷暖房を行う大型の装置。
──具体的に、どのような技術課題に挑んでいるのでしょうか。
武内:私たちが挑戦しているのは、1台で家庭用エアコン約1,500台〜3,000台分もの冷却能力を持つモンスターマシンです。ここで活用している1つの技術が「磁気軸受(じきじくうけ)」です。
これは電磁力で回転体を浮かせて回す技術で、摩擦がないため極めて高効率ですが、ミクロン単位の隙間を維持する制御が非常に難しく、大型になればなるほど、運転中の歪(ゆが)みや振動の影響が無視できなくなります。そうなると軸受け単体の設計に留まらず、製品全体を見ながら設計段階でこれらを完全につぶし込む必要があり、難易度は極めて高いです。
失敗が許されない「生産技術」の真剣勝負
──原田さんは、そうした高度な設計を「形にする」役割ですね。
原田:はい。生産技術の役割は、開発側が追求した設計仕様を、確実に、安く、高品質に量産することです。
アプライド機の場合、1台作るのに丸1日かかることもあります。溶接や加工を1つミスすれば、巨大な材料がすべてが無駄になる。「ごめん」では済まされないプレッシャーの中で、私たちは日々、金属の接合や加工の「スイートスポット(最適条件)」を探っています。
──家庭用エアコンのような「量産」とは、また異なる難しさがあるのでしょうか。
原田:家庭用は圧倒的な「コスト競争力」が求められます。今までと同じ作り方では世界では勝てません。設計、生産技術、製造、品質管理、調達が一体となった「総合力」で戦う必要があります。
例えば、金属を溶接する際の熱の入れ方やスピード、固まる時間のコントロール。これらが少しズレるだけで品質は変わります。私たちは物理的な制約をすべて受け入れた上で、いかにシンプルかつ安定して作れるかを追求しています。超えるべき壁が高いほど、条件を見つけ出したときの達成感は大きいですね。

原田 真征(ハラダ マサユキ):ダイキン工業株式会社 生産技術センター グループリーダー
工作機械メーカーで機械設計を経験し、2008年にダイキンへ転職。生産技術職として、家庭用~アプライド用途までの生産技術開発に携わる。開発者とコンカレントしながら、空調機の効率化、コスト低減に寄与する金属加工、接合、塑性加工を中心に実行。
ダイキンの社風:組織の壁を溶かす「ワイガヤ」と「挑戦心」
──転職者のお2人から見て、ダイキンの組織や文化はどう映っていますか。
武内:非常に風通しが良いですね。私が所属するTICでは、プロジェクトごとに専門家が集まりますが、立場に関係なく議論を戦わせる「ワイガヤ」の文化が浸透しています。
圧縮機の開発でも、モータや軸受のスペシャリストが集まって開発を進めていますが、自分の領域だけに閉じこもらず、1つの製品として最高のものを作るために意見を出し合います。先日、大型の回転体が初めて浮上して回り始めたときは、チーム全員でガッツポーズをして喜び合いました。こうした一体感はダイキンならではだと感じます。
原田:「やりたい」と言ったことに対して、「まずはやってみろ」と背中を押してくれる空気がありますね。新しい技術を工場に導入するのはリスクを伴うため、慎重になりがちですが、それが「お客様のため」になるなら、組織の壁を超えて協力し合える。失敗を恐れずに挑戦できる環境が、エンジニアの成長を加速させていると感じます。
成長環境:エンジニアのキャリアは「π型」へ進化する
──ダイキンで働くことで、どのようなスキルが身につくのでしょうか。
武内:私はもともと「潤滑」や「振動」という狭い領域のスペシャリスト(I型人材)でした。しかしダイキンでは、製品全体を統括する視点が求められます。専門外の領域も学び、他部署と連携する中で、広い視野を持つ技術マネージャーへと成長できました。
原田:生産技術のキャリアも非常に幅広いです。1つの技術を極めるスペシャリストから、複数の技術をマネジメントするT型、さらには経営や財務の知識を持ち、海外工場の立ち上げや経営まで担う「π(パイ)型人材」へとステップアップできます。
ダイキンは現在、世界170以上の国・地域に事業を展開し、90以上の生産拠点を持っています。若いうちからグローバルな舞台で活躍し、自分の技術で世界を動かす実感を味わえる。これは大きな魅力ではないでしょうか。
就活生へのアドバイス
──最後に、これから就活を始める学生へのメッセージをお願いします。
武内:ダイキンは、自分の「やりたい」という熱意を形にできる会社です。失敗を恐れずに挑戦できる環境があり、それを支えてくれる仲間がいます。モノづくりの面白さを全身で味わいたいという人には、最高の環境だと思います。
原田:私たちが求めているのは、壁にぶつかっても逃げずに、試行錯誤を楽しめる仲間です。設計、生産技術、製造といった異なる立場の人たちが、最高の1台を作るためにぶつかり合う。そのエネルギーをプラスに変えて、一緒に世界一のモノづくりに挑戦しましょう。

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