こんにちは、ワンキャリ編集部です。
ワンキャリ編集部が総力を上げてお届けする【業界研究:第1弾】。今回は日本産業の要ともいえる自動車業界の中からトヨタ自動車(以下トヨタ)・本田技研工業(以下ホンダ)・日産自動車(以下日産)の主要3社について特集します。
昔も今も就活生に人気で知名度も高い自動車メーカーですが、各社の事業や社風の差は意外と知られていません。日本を代表する自動車メーカーの金融事業の実態や、求める人材像が総合商社や大手広告代理店と共通していることなど自動車メーカーの意外な一面にも迫ります。自動車メーカーに就職したいと考える学生はもちろん、もともと自動車業界に興味がない人もぜひご一読ください。
<目次>
●実は「おいしい」自動車メーカーの金融事業
●自動車メーカーが金融事業でもうけられるのは「流れができているから」
●トヨタ自動車:業界最大手、隙のない世界王者
・企業の文化に従う社風
●本田技研工業:多角的な事業領域が強み
・「技術屋集団」の社風
●日産自動車:中国・ロシアに強く、海外展開進行中
・「半外資系」の社風
●年収・待遇はほぼ同じ。評価制度に若干の差あり
●選考の特徴
・共通ポイント
・企業別の選考ポイント
●おわりに
実は「おいしい」自動車メーカーの金融事業
突然ですが自動車メーカーは自動車の販売を行うだけではないことをご存じでしょうか?
近年自動車メーカーでは自動車事業に加え金融事業が大きな収入源になっています。
トヨタの財務情報を見ると、自動車事業の利益率が約8.6%(売上約27兆円・営業利益約2.0兆円)なのに対し、金融事業の利益率は約15%(売上約2.2兆円・営業利益約0.3兆円)と利益率でいうと金融事業は自動車事業よりも「おいしい」事業なのです。また、金融事業の営業利益が2017年度0.29兆円だったのに対し2018年度は約0.32兆円であることからも、今後さらに規模が拡大する見込みのある事業といえるでしょう(※1)。
(※1)出典:トヨタ自動車「有価証券報告書 2019年3月期 P.20」
自動車メーカーが金融事業でもうけられるのは「流れができているから」
これらの金融事業は一般的な銀行などの金融とは異なり、資産運用や自動車ローン・リースに限定しています。自動車を購入する消費者が同時にローン・リースを契約することも多く、自動車業界と金融業界は「流れがある」事業なのです。
ちなみに3社の総資産に対する金融事業の全体に占める資産比率は、日産が最も大きく約58%、ホンダが約50%、トヨタが約46%です(※2)。
その中でもトヨタの約24兆円もの金融事業の総資産の半分以上(17兆円)が金融債権、つまり消費者のローンやディーラーへの貸付金です。巨大な金融資産の半分以上を使って金融事業に注力しています。
それでは、3社それぞれの特徴を見ていきましょう。
(※2)出典:2018年度 有価証券報告書「日産自動車 P.97/本田技研工業 P.98/トヨタ自動車 P.145」
トヨタ自動車:業界最大手、隙のない世界王者
売上シェア世界2位(※3)
売上高約30兆円、海外売上比率は約72%(内訳は北米約35%、アジア約18%、欧州約10%)(※4)
トヨタは28カ国・地域に50以上の海外生産拠点を持ち、地球規模で偏りなく事業を展開しています。
加えて、幅広い価格設定でバランスの良い販売戦略をとっており、大きな欠点がない安定した収益基盤を誇ります。世界販売台数は1位のフォルクスワーゲンに次いで、僅差で2位の座に就いています。
製造は自動車のみに注力しており、営業利益(約2.5兆円)のうち自動車業が約83%(約2.0兆円)、金融業が約13%(約0.3兆円)を占めます。
成長性も高く、昨年度は一昨年度に比べて営業利益が約2.8%(約2.41兆円から約2.47兆円に)増加しています。まさに日本が世界に誇る企業といえるでしょう(※5)。
3社の中で拠点数が最も多く世界中で働けるチャンスがある企業です。世界を股にかけて働きたい人にとってはうってつけでしょう。
(※3)参考:オートモーティブ・ジョブス「【2019年版】世界自動車メーカー売上高ランキング ―トヨタは30兆円超えも、2位に後退」
(※4)出典:トヨタ自動車「有価証券報告書 2019年3月期 P.29」
(※5)出典:トヨタ自動車「有価証券報告書 2019年3月期 P.19」
企業の文化に従う社風
トヨタは社内制度が整備され、個々人は担当職務をそつなくこなすことが重要とされています。
社員には「トヨタで働くことで大企業的な働き方のノウハウを全て学べる」と絶賛する人と、「仕事が固定的で面白くなく、まるで歯車のように同じことをさせられる」と批判する人がおり適性次第で向き不向きが別れるようです。
本田技研工業:多角的な事業領域が強み
売上シェア世界6位(※3)
売上高約16兆円、海外売上比率は約85%(内訳は北米約47%、アジア約22%、欧州約4%)(※6)
この3社の中だと自動車事業は一歩遅れがちですが、ホンダは二輪事業で世界1位のシェア(約3割)を占めることから世界に名の通った会社です(※6)。主にアジア・アフリカで二輪自動車の人気が高く、そのブランド力の上で自動車業が安定した販売を行っています。
また、汎用機(芝刈り機、発電機、船外エンジンなど)や小型ジェット、ロボット事業でも一定の成功を収めおり、その多角的な技術力・開発力の高さは世界の注目を集めています。
(※6)出典:本田技研工業「有価証券報告書 第95期 P.127」
(※7)参考:一般社団法人 日本自動車工業会「世界に誇る『ジャパンブランド』バイク」
「技術屋集団」の社風
ホンダは技術へのこだわりと、夢に忠実という面で「職人気質」を持つ企業です。
バイク、自動車、F1、ロボットなどを製作したホンダが、創業者本田宗一郎の夢である飛行機の製作を完成させるまでをあらわした動画があります。
これを見ればホンダの「The Power of Dreams」というメッセージが理解できるでしょう。
日産自動車:中国・ロシアに強く、海外展開進行中
売上シェア世界10位(※3)
売上高約12兆円、海外売上比率は約80%(内訳は北米約50%、アジア約9%、欧州約13%)(※8)
ルノー社と業務提携した日産は2012年から順調に売り上げを約9.4兆円から約11.6兆円へと伸ばしております(※9)。そんな日産は電気自動車分野において高い技術力を持っており、電気自動車である「ノート e-POWER」は、2018年度の登録車販売台数で日本一を達成しています(※10)。また日産は海外展開にも積極的であり、中国に加え、ロシアやブラジル、アセアン諸国での高いシェア獲得を目指しており、「グローバルシェア8%」を目標にしています(※11)。グローバルリーダー育成のための海外研修も充実しており、G-FTPという制度では半年~2年の研修生として海外拠点に派遣され専門知識を学ぶことができ、海外志向の人にはとても充実した環境といえるでしょう。
(※8)出典:日産自動車「有価証券報告書 第120期 P.102」
(※9)出典:バフェット・コード「日産自動車」
(※10)参考:ベストカーWeb「ノート、日産車で初めて年間販売台数首位獲得!!!! 悲願達成!!」
(※11)参考:日本経済新聞「日産、世界シェア8%へ再挑戦 22年度までの中計」
「半外資系」の社風
日産は欧州最大の自動車メーカー、ルノーと業務提携を行ったことで企業風土が外資風に変化しつつあります。ルノー出身の社員も多く、社内での会話も英語が多くなっており、グロ−バルマーケットコース採用では入社時にTOEIC730点以上が必須など、社員に対して高い英語力を求めるようにもなりました(選考対策ページより)。
また、2018年度のグローバルでの女性管理職比率は13.6%であり、日本の平均である12%を上回っています(※12)。2023年までに16%に達することを目標にしており、ジェンダー平等の推進を図っています(※13)。日系企業ですが海外志向のある人にもなじみやすくなっているといえるでしょう。
(※12)参考:日本経済新聞「世界の女性管理職比率は27%、ILO 日本はG7最低」
(※13)出典:日産自動車「サステナビリティレポート 2019 P.26」
年収・待遇はほぼ同じ。評価制度に若干の差あり
3社の平均年収は以下の通り、目立った差はありません(※14)。
・トヨタ:約852万円
・ホンダ:約820万円
・日産:約815万円
(※14)出典:2018年度 有価証券報告書「トヨタ自動車 P.11」/「本田技研工業 P.14」/「日産自動車 P.12」
しかし評価基準が若干異なり、日産・ホンダ・トヨタの順で実力主義的な評価制度となっています。実際に働く社員の声をもとにまとめると以下のような傾向がみられます。
トヨタは完全に年功序列で、給与も一斉に上がるといわれています。そのため、成果を上げても給与には響きにくいです。「労働量と給与が見合っていない」と不満を言う若手も多くいるようです。
ホンダも年功序列ですが仕事が他社よりも個人重視なスタイルのため人事評価は個人単位が多く、給与も多少の差がつきます。
日産も外資系の文化が浸透してきたとはいえ、年功序列制度も残っており、一概に実力主義とは言い切れません。しかし上司による個人評価が人事評価に関わるなど外資系の影響を受けた制度に変わりつつあります。
選考の特徴
共通ポイント
まず共通することとして、「チームワーク」や「周囲を巻き込む力」「リーダーシップ」に重きを置いています。
3社とも世界規模の会社であり、各国の現地工場やその担当者、ディーラーなど多くのステークホルダー(利害関係者)と一体になって「自動車を売る」ことが求められているためです。
この求める人物像は総合商社や大手広告代理店内定者の人物像と共通します。実際、もともと自動車メーカー志望以外の人も数多く自動車メーカーに内定しているといった話もあります。逆にいえば、総合商社や大手広告代理店志望者は、自動車業界を受けると有効な練習になるでしょう。
企業別の選考ポイント
トヨタはトップダウン体質へのカルチャーフィットが非常に重要です。面接では「チームで成し遂げた経験」を何度も聞かれます。「チームで常に仕事を行う」という社風に合う協調的な人物が向いています。
ホンダは「ホンダに入って何がしたいか?」というようにその人が成し遂げたい夢を深く聞いてきます。創業者に「飛行機を飛ばしたい」という夢があったように、それに負けないくらい夢を熱く語れるような人がホンダの選考は通りやすいといわれています。
日産は選考コースが総合職と専門職に分かれています。専門職は英語面接があるなど外資系のような選考で特別な対策が必要です。一方、総合職は「なぜ日産なのか」といった志望動機や過去の努力経験など3社の中では最も一般的な選考です。ただし、総合職でも英語力は重要視されます。英語力を証明できるように就活のタイミングまでにTOEICでハイスコアを取得しておくと効果的です。
おわりに
自動車メーカー3社の比較はいかがでしたか。知っているようで実は知っていない人が多い自動車メーカー業界ですが、この記事が参考になりましたら幸いです。
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