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日本を変える提言は現場から生まれる。コンサルファーム×シンクタンクとしてのNRIが伝えたい社会課題と向き合う醍醐味

企業理解 インタビュー コンサル 日系
2020年10月9日(金) | 13,230 views
sponsored by 野村総合研究所

ワンキャリアの東大・京大就活ランキングでも、毎年上位にランクインし、学生人気が高い野村総合研究所(NRI)。コンサルティングファームの印象が強いですが、1965年に日本初の民間総合シンクタンクとして創業したことが始まりです。

シンクタンクの機能も持つNRIは、政府から自治体、民間企業までを幅広く支援し、国内外における社会問題の解決に貢献してきました。グローバルの戦略ファームらも名を連ねる中、全世界、グローバルで1位の営利目的のシンクタンク(※1)と評価されています。一方、シンクタンクは学生に馴染(なじ)みがない業界のため、具体的な業務内容や入社後に働くイメージが持ちにくいかもしれません。

今回は、NRIにおけるシンクタンクの魅力ならびにシンクタンク機能が民間企業のコンサルティングにどのように生きてくるのかについて、経営コンサルティング部門の駒村さんと岸さんにお話を伺いました。

(※1)参考:野村総合研究所が「Global Go To Think Tank Index Report」の「Best For-Profit Think Tank」カテゴリーで初の1位に

民間と公共、双方に自由に関わりたいからNRIへ

──駒村さんも岸さんも、シンクタンクの仕事に関心があり、NRIに新卒入社したそうですね。自己紹介も含め、NRIへ興味を持ったきっかけについて教えていただけませんか?


駒村:「個社ではなく、多様なフィールドで社会や産業の発展や豊かさの向上に貢献したい」という思いで就職先を考えていました。当時国家公務員採用一種試験に合格していたこともあり、経済産業省かNRIかで迷っていましたが、NRIの冬インターンで社員とたくさん話し、NRIの方が自由度高くさまざまな分野に関われると考えました。


駒村 和彦(こまむら かずひこ):社会システムコンサルティング部 ソーシャルイノベーショングループ グループマネージャー、MBA。2007年にNRIへ新卒入社し、経済産業省、内閣府などの中央省庁を中心としたクライアントに対し、イノベーション政策、スタートアップ支援政策、産学連携などの政策提言・実行支援に取り組む。NRIサッカー部で現役時代は10番を背負う。


──インターンは当時も同じような内容だったのですか?


駒村:はい、今とほぼ変わりません。それぞれの社員が好き勝手に言っている自由さを、生で味わえたのがインターンの収穫だったと思います。「この分野は自分がやりたい」と言えば、自分の案件として開拓できることを肌で感じました。


岸:私は博士号を持つ新卒として入社しました。専門は土木で、衛星データの解析結果から地球環境を考えるなど、データを通して「公共に資する示唆を出すこと」を学生のときから行っていました。


岸 浩稔(きし ひろとし):ICTメディア・サービス産業コンサルティング部 メディア・サービスグループ 主任コンサルタント、Ph.D.。土木工学を専攻し、2013年にNRIに新卒入社。入社後は通信や放送、リテールなどB to C向けの企業に対するコンサルティングサービスを中心に事業創造を行う。デジタルマーケティング、「AI(人工知能)と社会」というトピックも守備範囲。NRIサッカー部で現役時のポジションはDF(ディフェンダー)。


就職先を考えるにあたり、いろいろなトピックに触れたいと思い、公共も民間も扱うNRIを選びました。現在も民間案件と公共案件をパラレルに進められているので、その点はイメージ通りでした。


──お二人とも公共と民間、どちらの領域にも関心があって入社されたのですね。周囲も同じような方が多いですか?


岸:どちらの領域にも関心がある人は非常に多く、駒村さんのように、官庁とシンクタンクで迷う人もいますね。


駒村:両方に関心を持つ人が多いため、「この間公開された政策は〜」という会話を日常的にする人もいます。このあたりが、シンクタンクらしいところですね。一方で、隣の席のメンバーが民間案件を担当し、戦略コンサルティングファームらしい業務をやっていることもあります。このバラエティーの豊かさは非常に面白い点です。

AIがもたらす未来予測からインドとの外交支援まで。シンクタンクが議論の種を作り出す

──お二人は入社後、どのようなプロジェクトに携わりましたか?


駒村:私は経済産業省、国土交通省、内閣府などの中央省庁のプロジェクトを取り扱うチームで、イノベーション政策、スタートアップ支援や産学連携の支援を現在の担当テーマとしています。「どうすれば世の中に新しいコトを起こすことができるか」を考える「コト起こし」を、政策面から支援する仕事です。

印象的なのは、2017年に携わった日印政府間会合の支援です。インドに大勢いる高度IT人材へのニーズは、日本では製造業を中心に高く、どうマッチングさせるかを両国の政府間会合で話し合いました。この会合をサポートするプロジェクトにプロジェクトリーダーとして参加しました。


──2017年は、まさに日本とインドの関係が深まっていったタイミングですね。


駒村:そうですね。このときはインド各地の大学に直接訪問し「どんな人材を育てていて、どんな就職先を学生に提供したいのか」などをヒアリングしました。そうした生の声を資料にまとめ、議論の方向性を日本政府側に提言しました。NRIのインド拠点の現地メンバーとも連携しながら準備を進め、シンクタンクの醍醐味(だいごみ)と同時に国をまたいだ仕事の面白さも感じました。


──両国の議論をデザインするのは、面白そうな仕事ですね。岸さんは、NRIでこれまでどのようなプロジェクトに参加しましたか?


岸:私は通信や放送、小売や消費財などB to C向けの企業に対するコンサルティングサービスを通じた事業創出を行っています。「デジタルマーケティング」、「AIと社会」というトピックも守備範囲です。

例えば、2015年末にNRIが発表した「日本の労働人口の約49%が人工知能やロボットなどで代替可能に」というリリースに携わりました。


──「AIは人間の仕事を奪う」みたいな話題で、よくこのデータが使われていましたよね。あのリリースが出て以降、AIという言葉をニュースで見ない日はなくなった印象です。


岸:そうですね。あのリリースを出したときの反応として覚えているのが「仕事が半分なくなるかもしれないという予測を述べただけで、どうすべきかを一つも言っていないのが良い」という社内のコンサルタントからのコメントです。中には、「私たちの業界は定義が違うと思うので、代替される職種から外してください」という問い合わせもありましたが、「客観的に統計上の定義から分析した結果を掲載しています」とご説明いたしました。


──客観的なデータを示すことで、賛否両論が生まれたのでしょうね。


岸:テクノロジーが社会にどのような影響を与えるかを、皆が考えるきっかけになれたのはうれしいですね。

議論自体も「AIは人間の仕事を奪う」という話で終わらず、「やりたくない仕事はAIに任せて、人間は付加価値の高い仕事をしよう」というテクノロジーとの付き合い方への提言がありました。その後、働き方改革、ジョブ型雇用、コロナ禍での働き方など、今でも議論が継続しています。

地方創生を机上の空論に終わらせない。現場発の課題解決で、国だけではできない仕事を

──今のお二人のお仕事は議論を喚起させるきっかけ作りの面が大きい気がしました。シンクタンクの業務はそうした「アイデア出し」が多いのでしょうか。


駒村:いえ、机上の空論に終わらせずに実行を支援するのも重要な役割です。NRIの特徴は、現場に赴いて徹底した事実確認を行い、それに基づいて課題分析と問題解決を行う「現地現物」を大事にしている点です。


──シンクタンクの役割も国によって違うので、定義が難しいですが、NRIは現場主義・問題解決を大事にしているのですね。具体的なプロジェクト例はありますか。


駒村:山形県鶴岡市や新潟県といった地方自治体の支援の一環として進めている「地方創生×イノベーション」の取り組みが一例です。地方都市では自治体や金融機関が起業やスタートアップを支援する制度を用意していて、大学もあるので産学連携のチャンスもありますが、持続的な地方創生につながるエコシステムの構築には至っていません。

私たちはイノベーション・エコシステムの現状分析をする手法を用いながら「それぞれのプレイヤーはいるけど、お互いが連携するための『かき混ぜ役』がいないのでは」などと具体的な問題を提起したり、具体的なアクションに落とし込むことを支援していたりします。


──イノベーションが起きやすい環境を考える仕事ですね。


駒村:これを机上の空論にしないために必要なのが、他プロジェクトの知見です。例えば、自動車業界での新規事業の起こし方を分析したときの知見が、このプロジェクトに生きるかもしれません。具体的な事例を踏まえて自治体の皆さんと議論していきました。


──民間の案件の知見を生かせるのも、NRIならではですね。


駒村:別のプロジェクトの経験が生きるのは、NRIだとよく起こることです。また、社内にはさまざまな経験を持った第一人者がいるため、疑問に思ったことや、ふと考えたことを社内の誰かに壁打ちすれば、知りたいことがすぐに返ってきます。


──岸さんは実行支援に関する印象的なプロジェクトはありますか。


岸:2014年に地方の課題を東京のリソースで解くことを掲げ、ハッカソン(※2)を企画しました。石川県金沢市の商店街や子育て向上委員会から課題をヒアリングし、それをサービスやアプリにまで落とし込み、完成したプロダクトは地域の方々へ提供しました。今でこそハッカソンはよく聞かれる事例だと思いますが、当時としては珍しいイベントでした。

(※2)……ハッカソン:エンジニアやデザイナーからなるチームで、決められた時間内に集中してサービスやアプリ開発を行うイベント。ハック(高い技術力を持ってシステムを操ること)とマラソンを組み合わせた造語。


──当時としては珍しい事例を全国に先駆けて実施できたのは、なぜでしょうか?


岸:官僚の方たちが問題意識を持っていたことが大きいですね。自治体の方も問題意識は持っていましたが、国の協力もあることで地方創生の文脈でイベントを企画することができました。


──地方創生は国にとっても大きな課題ですよね。その実行支援をするのが、NRIの役割なのですね。


駒村:そうですね。国ができないことをやるのが、NRIの役割だと思っています。制度を作ってもそれで終わりではなく、実際に自治体や企業に使ってもらえるように制度を運用し、その結果を検証することが大事です。それを国のリソースだけで対応するのは難しく、NRIが関係者を巻き込んで、仕組みが回るようにすることも大きな役割です。

また、イシュー設定も役割の一つです。現地に行って直接話を聞き、国が当初に想定していた課題は正しいのか、優先度の高い課題が別にないのかを検討し、現場の視点から国の方と議論できるのは面白いです。


岸:政策全体に対し、最先端の内容を産官学の有識者と議論しながら進められるのもシンクタンク機能を持つNRIならではだと思います。現在、駒村さんと連携して進めている案件は、大企業とスタートアップとの間を人材が流動的に動けるようにする経済産業省のプロジェクトです。


駒村:シリコンバレー、シンガポールなど人材の流動性がある地域と同様、日本でも流動化を加速させたいといわれる一方、日本は企業を退職しづらい仕組みになっています。解決に向け、大企業やアカデミアなど、産学関わらず関係者を巻き込めるのは面白いですね。

「相似形」を見つける力はシンクタンクにもコンサルにも必要

──シンクタンク機能があるNRIならではのやりがいがお話から伝わりました。一方で、コンサルティング機能も持っているNRIで働くからこそ身についた視点、考え方やスキルはありますか?


岸:いろいろな知見を活用しながら、アナロジー(類推)を利かせられる点です。「地方創生×イノベーション」の取り組みを考える際に自動車業界の事例を参考にすることもそうですが、「AとBの関係は、CとDの関係に似ている」と考えながら解決方法を考えることは、コンサルが課題解決をする場面でも重要です。シンクタンクとしていろいろなプロジェクトに関われるNRIだからこそ、培われたともいえます。


駒村:この力があると、情報に対する理解力と課題分析力も高まります。初めてのご相談でも「あのとき経験したあの案件の相似形だな」と考えられるようになるため、プロジェクトに全く手が付かないといったことは経験がありません。


岸:特に最近、「環境×金融」のように業界を掛け算するような相談が増えています。VUCA(※)時代ともいわれますが、「複雑で前例のない問題を、どう考えたら解くべき課題を設定し、解決に向かうことができるか?」は、アナロジーをきっかけに考えることが有効です。

(※)……先の全く読めない、不安定で不透明な状態のこと。「Volatility」(不安定性)、「Uncertainty」(不確実性)、「Complexity」(複雑性)、「Ambiguity」(曖昧模糊(あいまいもこ))という4つの単語の頭文字をとった略語。


──コンサルタントやシンクタンクに求められる役割やテーマも変わってきているのでしょうか?


岸:個人的には変わっていないと思います。シンクタンクの人たちは、時代を縦に見て、過去から未来への議論をします。「今後はこういう政策が必要だ」、「こういう点を考えた方が社会に資する良い議論になる」という考え方でプロジェクトを進めます。

一方コンサルタントは、いろいろなトピックを横串で見て、「Aではなく、Bが当てはまるのではないか?」、「それよりもCを参考にした方が良いのではないか?」とやや幅広い目線から現場の課題を解決するのが仕事です。

本質的にはどちらも同じであり、テクノロジーの発展に合わせ、その内容が変化している印象です。


駒村:あえて変化した点を話すなら、テクノロジーの変化によって新たなビジネスが誕生する「テクノロジー・ドリブン」の世界になってきている点です。社会の変化を起こす出発点はGAFAのような民間企業であるため、公的な制度やルールは後から追いつく状態になっています。

このとき、NRIに求められる役割はエコシステムの全体像を提案することです。例えば「空飛ぶ車」を産業化するとき、国は単にルールを決めるだけではなく、ベンチャー企業と一緒になって「そういう世の中を作るには、どんな新しいルールのデザインが必要か」を議論することも求められます。官民で新しい産業像やエコシステム像を作るイメージです。


──少し先の未来を実現するために、自分たちができることを考える必要がありそうですね。


駒村:多様なプレイヤーを巻き込んで、その議論の場を作ること自体が、NRIの役割だと感じています。ちょっと先の世界観が試せるような実証実験を提案するようなことも求められますね。

国との信頼関係があるNRIで描く自由なキャリア

──最近では、官公庁の案件にも外資系コンサルティングファームが参加しているケースもあります。そうしたファームと比べた際のNRIの強みを教えてください。


駒村:長年プロジェクトを継続してきたことで培われた知見や意思決定プロセスへの理解度の高さ、それらに裏付けられた組織レベル・個人レベルでの官公庁との信頼関係だと思います。官公庁の職員は異動も多いため、長く関わっていると、NRIの方がお客さまよりも政策の背景や制度の実務に詳しいケースも少なくありません。

また一概に言えませんが、大手外資系ファームは、ビッグイシューを中心に人材を集める傾向にあるため、プロジェクトへの関わり方に差が見られます。成果物への信頼感、NRIというファームとそこで働くコンサルタントとの継続性から得られる安心感で関係性が構築されているのは、日系シンクタンクならではです。

さらに、入社2、3年目からプロジェクトをリードし知見をためられる点や、やりたいテーマや分野に関わることもできる自由度も大きな魅力です。


駒村: NRIでは、ジョブローテーションも含め、入社してから2年間で多いと20テーマ近くのプロジェクトに触れます。それによって各産業やテーマから、自身のフィット感や社会的ニーズを含めて確認できます。フィット感がある案件にチャレンジしていくプロセスを経て、少しずつテーマが定まっていくと思います。


岸:スティーブ・ジョブズの「Connecting the Dots」がまさに当てはまると思います。いろいろやっていく中で、振り返ったときに「あぁ、つながっていたな」と思えたらいいのではないでしょうか。

そのためにも、ある程度量をこなし、経験しないといけないのも事実。Thinkも必要だけど、ある程度Tankもあるから強みが磨かれる面もありますしね。Think Tank(シンクタンク)とは言い得て妙です。


──ありがとうございます。最後にこの記事を読む就活生に向けて、メッセージをお願いします。


岸:博士課程も含め9年も大学に通うと得意と苦手がある程度分かる一方、それを見つけるのは時間がかかるなとも感じました。就活生は「何でも経験してみたい」という意気込みで面接を受けるでしょうし、会社は「いろんな経験ができます」と説明するでしょう。しかし入社した途端、「あなたは何ができるの?」と問われます。こうした採用におけるパラドックスを抱えながらも、入社前から「自分のスキルを生かしてバリューを出せるか?」を見極めていくことは、働き始めるうえで重要なことだと思います。


駒村:時代が変われば組織でやれることも自分がやりたいことも変化するでしょうから、就職活動の時に「この会社ならこれがやれそうだな」という部分だけを見て判断すると後悔することもあるかもしれません。そのため、自分が興味を持ってやりたいことを主張でき、自らアクションもできる自由度がある環境かどうかが重要だと思います。

NRIは自由度と言う観点では大変魅力的な組織だと思います。官民横断的な独特なポジショニングが取れることや、戦略を描くだけでなく、中長期で腰を据えて実行支援まで行えるところに関心があるのならば、ぜひ飛び込んできてください。


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