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市場価値急騰の希少人材。なぜ優れたデザイナーが経営に求められるのか

企業インタビュー 企業理解 インタビュー IT 日系
2022年5月31日(火) | 11,000 views
sponsored by グッドパッチ(Goodpatch)

「高年収を得たいなら、外資系か大企業」。近年、そのイメージは変わりつつある。

その最たる例が、スタートアップの待遇向上だ。「大企業とスタートアップの年収差が縮まった」という新聞報道があったように、スタートアップで年収や市場価値を高めることが現実的な選択肢となっている。

では、新卒の学生が今から市場価値を高めるなら、どのような職種がいいのか。今回はこのテーマを深掘りすべく、3人の経営者をお招きした。法人向けバックオフィスSaaSを提供するマネーフォワード取締役執行役員の竹田正信氏、社内ナレッジの共有・活用を支援する企業向けサービスを開発するナレッジワークを創業した麻野耕司氏、デザイン会社として初の上場を果たしたグッドパッチ代表取締役社長CEO(最高経営責任者)の土屋尚史氏だ。 


3人の共通見解は「経営陣と話せるデザイナーが不足している」ということ。デザイナーと聞くと「絵を描く仕事」とイメージしがちだが、スタートアップを取り巻く環境と同様に、デザイナーを取り巻く環境も激変しているという。

これから市場価値が高まるデザイナーとは、どのような仕事をしている人なのか。ビジネスの最前線を走る3人に語ってもらった。

(左から)竹田氏、土屋氏、麻野氏

<目次>
●デザイナーに年収2000万円を払う時代がやって来た
●戦略はデザインから変わる。経営会議にデザイナーを入れる理由
●マネーフォワードでは、カルチャー浸透もデザイナーの役割
●今のデザイナーは「黎明期のコンサルタント」と同じ状態だ
●強さ・賢さではなく、優しさ・美しさで動かす経営に
●本質を掘り下げ「一瞬の負」に気が付けるロジカルな人材を、マーケットは求めている

デザイナーに年収2000万円を払う時代がやって来た

──竹田さんのマネーフォワードも、麻野さんのナレッジワークもデザイナーを積極的に採用しています。採用に力を入れる理由は何でしょうか?


麻野:僕はデザインは、経営にとって非常に重要な位置を占めていると考えています。CDO(最高デザイン責任者)をやれるような人やトッププレーヤーが入れば、年収2000万円を払っていいと思っています。


──年収2000万円ですか!? かなり思い切った額の気がします。


土屋:起業した僕の友人も、最初にパートナーとして探したのがデザイナーで年収1500万円を提示したと言っていました。僕が若いときには、そんなことは想像もしませんでした。ビジネスを始めるにあたってデザインが重要だという経営者は増えていると感じます。


竹田:そうですね。CDOクラスはそういう水準であることに違和感はないですね。企業価値向上への貢献が実現できれば、戦略の責任者やエンジニアよりも高い水準になるデザイナーが普通に存在しておかしくないと思います。


──戦略の責任者よりも高い水準になるのは意外でした……。どんなに良いデザインでも、戦略が正しくないと意味がないと思っていたので。


麻野:僕にとっては、戦略とデザインは対等な関係なんです。デザインから戦略が変わることを経験してから、認識が変わりました。

麻野 耕司(あさの こうじ): 株式会社ナレッジワーク CEO
2003年、新卒でリンクアンドモチベーションに入社。中小ベンチャー企業向け組織人事コンサルティング部門の執行役員や、国内初の組織改善クラウド「モチベーションクラウド」立ち上げを経験し、2019年に同社取締役を退任。2020年、「できる喜びが巡る日々を届ける」をミッションに、ナレッジワークを創業。

戦略はデザインから変わる。経営会議にデザイナーを入れる理由

──「デザインから戦略が変わる」ですか?


麻野:きっかけは、前職のリンクアンドモチベーションで「モチベーションクラウド」という組織改善のクラウドサービスを立ち上げたことです。僕が組織人事のコンサルティング事業の責任者をやってきた経験やノウハウを詰め込み、エンジニアと一緒に作り上げました。「これでいけるやろ!」と思ったら、最初はとにかく評判が悪かった(笑)。

麻野:使いにくくて、お客さんからだけでなく、社内でも評判は最悪。僕の部下のコンサルタントが質問してくるから「このボタンを押して」と言っても、そのボタンがどこにあるか分からない。クラウドサービスだから、誰でも説明なしで操作できないといけないのに、全然分からない。これはあかんと思って、グッドパッチにデザインをお願いしに行きました。

グッドパッチのデザイナーに入ってもらってから、本当にガラッと変わりました。「このページとこのページを分けて、1ページに1コンセプトでやらないと」と、説明しながら改善してくれて。「どういう順番で何を見て何を読んだら良い体験になるか」を考え抜いたデザインになりました。顧客からも社内からも評判が良く、グッドデザイン賞ももらいました。当時の国産のSaaSとしては恐らく最速で売上20億円に達しました。

それだけでなく「デザインは、こういうところまで影響するんだ」と実感した体験がありました。


──何があったのですか?


麻野:リンクアンドモチベーションの組織コンサルは「まずはお客さまの組織状態を診断し、変革する」という手法で10年以上やってきました。そしたらグッドパッチのメンバーに「オブジェクト指向じゃないから、イケてない」と何だか難しいことを言われました(笑)。

どういうことかというと、お客さまのニーズは「組織を良くする方法を知りたい」ということであり、「診断してほしい」ではないですよね。だとしたら、モチベーションクラウドの画面も「まずは組織診断の結果を見ましょう」という見せ方ではなく、「理念戦略」「組織風土」といったお客さまが知りたいもの(=オブジェクト)がアイコンとして表示され、クリックしたら良くする方法が書いてある方が使い勝手がいい、ということです。

それを言われてハッとしたんです。サービスの画面だけでなく、マーケティングからサポート業務に至るまで、全て「診断→変革」という順番でない方がいいな、と。「組織変革セミナーを開催します」ではなく「理念浸透に困っている人、ぜひ参加してください」の方がお客さまにとっては分かりやすいし、興味が持てますよね。


──なるほど、それが「デザインから戦略が変わる」という体験だったんですね。


土屋:確かグッドパッチのデザイナーも、リンクアンドモチベーションの経営会議に参加していましたよね?


麻野:支援をしてもらううちに、もっと早い段階からデザイナーを入れるべきということになって、最終的にはモチベーションクラウド事業の経営会議にも参加してもらいました。他の社員からすれば最初は「誰?」という感じでしたが、僕が振った話に対する答えを聞いて、経営会議にデザイナーを入れることの重要性にも気付いてもらえたと思います。

結果的にナレッジワークは社員17名のうち、3人はグッドパッチ出身です。


土屋:そうなんですよね(笑)。


麻野:言っておきますが、一人も直接引き抜いてはいませんよ(笑)。でも、もしグッドパッチを誰かが辞めた瞬間に口説きに行きたい気持ちはあります。デザインの定義が僕とそろっているので、やりやすいんですよね。

マネーフォワードでは、カルチャー浸透もデザイナーの役割

──マネーフォワードもグッドパッチと一緒に仕事をされていますよね。


竹田:お金の見える化アプリ「マネーフォワードME」のデザインをお願いしたのが、グッドパッチとの最初の接点です。今もデザイナーの人材紹介でお世話になっています。

マネーフォワードは積極的に採用を進めていて、従業員数は全社で1,300人くらいいます。僕は、そのうち850人超が所属していて、主にバックオフィスSaaS「マネーフォワード クラウド」を展開するビジネスドメインのCOO(最高執行責任者)をやっています。社会人になったのは2000年で、マクロミルで人事や採用に携わるなど、IT業界やスタートアップとともにキャリアを歩んできました。

竹田 正信(たけだ まさのぶ):株式会社マネーフォワード 取締役執行役員 マネーフォワードビジネスカンパニーCOO
2001年インターネット広告代理店にて企画営業職に従事。2003年株式会社マクロミルに入社し、2008年取締役就任。同社の事業部門を主に管掌し、事業戦略、人事戦略、企業統合、新規事業開発を主導。2012年株式会社イオレに転じ、取締役経営企画室長に従事。2016年株式会社クラビス取締役・CFO
(最高財務責任者)を経て、2017年よりマネーフォワードグループに参画。


──これまでの経歴でデザイナーとの関わりはありましたか?


竹田:以前は、デザイナーの仕事といえば、カッコいいパンフレットを作るなど、グラフィックデザインのイメージでした。振り返ってみると、デザインをちゃんと理解して経営していなかった過去の自分のもったいなさを感じます。


土屋:竹田さん自身の意識はいつ切り替わったんですか?


竹田:正直に言いますと、マネーフォワードに入ってからです。社長室にカルチャー浸透を推進する役割を担っているデザイナーの人がいたんです。グループジョインした際などに社内広報用のインタビューをしてもらったのですが、「竹田さんのこういうスタンスはマネーフォワードのカルチャーやバリューととてもマッチしていると思います!」といったような話をする人です。

最初は「デザイナーなのに、なぜデザインではないことをやっているんだろう?」と思っていました。


土屋:確かにカルチャー浸透がデザイナーの役割だとは思わないですよね。


竹田:後で分かったのですが、社員や役員の人柄や内面などをオープンにして、社内で発信することで、相互理解を深め、エンゲージメントを強化していこうという取り組みの一環だったのです。

マネーフォワードは、カルチャーを社員一人一人が体現したり、さらには発信や推進をしたりするレベルで浸透していると感じています。たくさんの方が入社して組織が大きくなっても崩れてしまうことがないのは、カルチャーの浸透が大きな要因になっていると思います。経営をデザインする、という視点で最初から組織が作られているのです。

他にも新しいオフィスデザインやオフィスコンセプトの策定もやっていましたが、それもカルチャーを浸透させる1つの手段でした。マネーフォワードらしさを表す独自の価値観をあらゆる接点で感じたり、意識できたりするようにデザインされている。カルチャーや経営にデザインがしっかりつながっていると、しっくりくるようになりました。


土屋:デザイナーの役割が拡張されている状態なんですね。

今のデザイナーは「黎明(れいめい)期のコンサルタント」と同じ状態だ

──皆さんのお話を聞くと、デザイナーは経営において重要な役割を担っていることが伝わってきました。一方で、そういった認識が世の中に浸透していない気もするのですが、どうしてでしょうか?


麻野:昔のコンサルタントと同じ状況かもしれません。1980年代の戦略コンサルは日本に進出したばかりで「そんなところに誰が就職するん?」と胡散(うさん)臭く感じて、商社や銀行の方がはるかに人気があったと思います。それが気付けば花形の職業です。この30〜40年で、企業には戦略が必要だということが認識されたからだと思います。


竹田:「君のその感じ、デザイナーに向いているよ」みたいな会話が、まずないじゃないですか。「エンジニアっぽいね」「営業っぽいね」はあるけれど。つまり、デザイナーが「最終的な見た目を良くするための作業をする人」みたいなイメージのままで、他の職種と比較されることもないのだと思います。


麻野:でもキャリアは、競争が少なくて、需要が多いところを目指すのが一番ですよね。戦略までを考える本当の意味でのデザイナーを新卒で志してチャレンジすると、今は周囲から昔のコンサルみたいに「なんなん?」と思われるかもしれないけれど、後から考えれば良い選択だったと思えるんじゃないかなぁ。


土屋:今、明らかにデザイン市場は需要(企業の採用人数)が供給(人材の数)を上回っている状況です。デザイナー不足は、マーケットの共通見解です。

土屋 尚史(つちや なおふみ):株式会社グッドパッチ 代表取締役社長 CEO
2011年9月に株式会社グッドパッチを設立。「デザインの力を証明する」というミッションを掲げ、さまざまな企業の事業戦略からUI・UXまでを支援し、企業価値の向上に貢献。ベルリン、ミュンヘンにもオフィスを構え、デザイナー向けキャリア支援サービス「ReDesigner」やオンラインホワイトボード「Strap(ストラップ)」など数多くのサービスを自社で立ち上げる。2020年6月、デザイン会社として初の東証マザーズ上場。


──実際に、ナレッジワークやマネーフォワードにはどれくらいのデザイナーがいるのですか?


麻野:ナレッジワークは社員17人中3人がデザイナーです。こだわってやるなら、これくらいでも足りません。


土屋:でも、スタートアップで約5分の1がデザイナーは考えられない多さですよ。


麻野:理由は2つあります。1つ目はプロダクトの顧客価値をユーザビリティー(使いやすさ)に置いているからです。BtoBのソフトウエアを作っていると、決裁者が機能数にこだわるので「顧客価値=機能数」と考えがちですが、現場の利用者が良いと言ってくれるもので勝負したい思いがありました。そうするとデザイナーの質と数に投資すれば細かい部分までこだわることができ、結果、お客さまに選んでもらえるようになります。

2つ目は、プロダクトだけでなく、営業の資料やマーケティングのサービスサイト、社内で作る人事資料など、あらゆるステークホルダーと関わるタッチポイントにデザインが必要だからです。そこに横串を通してやろうとすると人数が必要です。


竹田:マネーフォワードがCDOを設置したのも、横串を通す目的があったと思います。2020年にCDOが任命されたのですが、それまではプロダクトごとに個別最適になっていて統一感がない状況でした。例えば、同じ機能をつかさどるボタンが、あるアプリでは右端にあるが、別のアプリでは左端にある、など。ロゴのサイズ感や、カラーの使い分けなども個別最適だったので、横串を通すということはなかなか大変な状況でした。このような課題を本質的な視点で解決していくために、CDOの設置は必須でした。


──マネーフォワードでは、デザイナーの採用はどうなっているのですか?


竹田:マネーフォワードでもデザイナーの数は増やしていて、給与テーブルはビジネス職よりも高い水準にしています。デザイナーの市場価値が高まっていることは社内でも認識されているので、不満や疑問は出ていません。


土屋:それも、昔では考えられないですね。


竹田:確かに10年以上前は、デザイナーはどうしても途中でスキルやセンスみたいなものが頭打ちになるので、雇わずに適宜委託するほうが良いという意見もありました。


土屋:ありましたよね。マネジメント層には入れないという共通認識ですよね。


麻野:そういう時代があったんだ。僕は、デザイナーは要件定義など上流から入るものだと思っていた。


土屋:それもこの10年で明らかに変わったことです。要件定義にデザイナーが入ることなんてありませんでしたから。要件定義だけでなく、その前に何をすべきかという戦略からデザイナーが議論に入るようになったというのは、まさに大きな変化です。


竹田:でもデザイナーが経営者の右腕になるのは、正しいことですよ。デザイナーは経営者と壁打ちし、ユーザー起点の発想を持ち込んだ上で、意志を形にできるんですから。


土屋:デザイナーの1つの役割って、「お絵描き」をすることではなく、顧客やユーザーの解像度を高めることなんです。顧客が誰で、何に困っているのか。人への共感力や深い理解から類推して先を読めるのが、デザイナーです。これからの時代はAI(人工知能)がロジックで解決できる課題は解決し尽くすことになるので、感情を読み取る技術はますます高く評価されると思います。

強さ・賢さではなく、優しさ・美しさで動かす経営に

──なぜ、感情を読み取る技術が大事になってくるのでしょうか?


土屋:「決まったから、やりなさい」では動かない時代だからです。

例えば、今までの経営層の動かし方って、トップダウンで落とすと動くだろうという考え方がベースだったと思います。でも、今の時代、働き方やキャリアへの考え方も変わってきて、それでは動かない人たちがいる。その先にいる人たちを想像して、どうしたら動くか、どうやったら心地よく動いてくれるかの翻訳を、デザイナーがデザインを通じて行っていく必要があるんです。


麻野:今の話を聞いて思い出したんですが、昔シリコンバレーのGoogle本社に視察に行ったことがあります。そこの食堂のお皿が、めちゃくちゃ重くて。理由を聞いたら、肥満になる人が多くて、お皿を重くすると食事を取る量が少なくなると。


土屋:それはデザインですね!

麻野:そうなんですよ。「食い過ぎ! 食べるな!」と注意して強さで人を動かす時代ではなくなってきたのだなと思います。僕は前職では強さ=モチベーションと、賢さ=ロジックで経営をしていました。でもデザイナーと関わっていて思うのは、優しさ=UX(どうユーザーが感じるか)や、美しさ=UI(どうユーザーに見えるか)で動かす経営もあるということです。


土屋:でも、経営が語れるデザイナーはまだ少ないですよね。


麻野:本当にいない! UI・UXが分かって、経営陣とディスカッションができるデザイナーがとても少ないと感じます。


竹田:現段階では青い鳥を探す状態ですよね。


土屋:その人材を増やすには、中途で今までデザイナーではなかった人をデザイナーにするか、新卒のデザイナー総数を増やすしかありません。


麻野:本来、UI・UXデザインは日本人が得意な領域だと思います。おもてなしとか、料理とかもめちゃくちゃきめ細かいから相性のいい領域だと思いませんか?

本質を掘り下げ「一瞬の負」に気が付けるロジカルな人材を、マーケットは求めている

竹田:でも、デザイナーになろうと思ったときに、「絵心ないし」「センスがないし」と早々にあきらめるケースがありますよね。優秀な学生は「戦略なら頑張ればできそう」と思えるのに、デザインって聞くと入口にすごくハードルを感じる。その認識を変えたほうがいいのかな。


土屋:そのハードルは本質的ではないんですけどね。顧客の声を理解し、経営において何が重要かを考え、接続することがデザイナーの本質です。最近いいツイートを見たのですが、デザインは説明が5割だと。デザインの本質はコミュニケーションです。今までデザインと思われていたものは、最後の1割でしかありません。 

ロジックがめちゃくちゃ必要で、例えば「デザイナーにはセンスが必要」と言われたときに「このセンスってなんだろう?」と分解していける人がデザイナーだと思います。


──今、これを読んでいる学生が自分もデザイナーになりたいと思ったときに、どういうことをすればいいのでしょうか?


土屋:僕がいつも言っているのは「とにかくプロダクトに触れ」ということです。本を読んで学ぶことも大事ですが、今世の中で一番使われているアプリやサービスがどういう設計になっているのか、Webサイトがどういう設計になっているのかを定点観測することです。定点観測するとデザイン変更が行われたときに、その差分の意図、どのような戦略に基づいて変更が行われたのだろうと類推することが重要です。使いまくるということに勝るものはないと思います。


麻野:確かに、僕もロジカルなデザイナーと一緒に働きたいですね。プロダクトを作るときに、感覚的に「これです」と言われると、そこで話が終わってしまいます。それよりもA、B、Cのパターンがあって、それぞれ「理由はこれです」というのがある方がみんなの意見が反映しやすいです。もちろんビジュアルだけで引っ張るパワフルな人もいますが、僕はロジカルな人の方が合うなと思っています。


──竹田さんはデザイナーに必要な素質は何だと思いますか?


竹田:傾聴力と想像力です。このデザイナーさんいいなぁ、と思う人に共通しているのは傾聴力です。


麻野:確かに!


竹田:思わず、そのデザイナーにしゃべってしまうという感じ。その上で「要はこういうことですよね」とまとめてくれたものが刺さるんですよ。

代表の辻も「これをやりたい」とリクエストすることがあるのですが、その内容どおりやると「何か違うんだよな」となることがあります。一方、デザイナーが話を聞いて「こういうことなんじゃないか」とつくられたものは、辻が話した内容と違う形になっているように見えても、「そうこれ!」となることがあります。

本質が引き出せているのだと思います。「どうして辻はこの会社をつくったんだっけ? だってこうありたい、世の中はこうならないと絶対おかしいって思いがあったからじゃないか」みたいなことを考えられているかが大事ですね。

 

土屋:本質にひも付いていないものを気持ち悪いと感じる人がデザイナーには多いですね。

一貫性のないものは、一見すると特に問題がないように見えても、使ったときに感じる「一瞬の負」があるわけです。ユーザーは言語化できなくてもその負にどこかで気付いているはずです。

だから、本質を考えることがデザインの一貫性につながります。好奇心を原動力に物事を掘り下げ、本質にたどり着いた後には、ズレに気が付ける。このタイプの人はマーケットに求められ、高い年収を得られるデザイナーになるポテンシャルがあると思うし、そんなデザイナーにグッドパッチが育て上げたいですね。


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