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ビジネスの答えは必ず「データ」にある。謎の総合データカンパニー「マイクロアド」が見据える未来とは?

企業インタビュー 企業理解 インタビュー IT 日系
2022年9月29日(木) | 8,804 views
sponsored by マイクロアド

「データって未来予測なんです」。アドテクノロジーの先端を走り、データマーケティングの雄と呼ぶべき「マイクロアド」の代表取締役社長、渡辺健太郎さんはこう言います。


ビッグデータを扱う巨人「GAFA」を例に出すまでもなく、データがビジネスや生活を加速度的に変えています。ただ、一口に「データビジネス」といっても、いまいちイメージを持ちにくいもの。何となくドライな響きを感じる学生もいるかもしれません。

2022年6月にIPO(新規公開株式)を果たし、成長の階段をまた一歩上がったマイクロアド。2007年に「サイバーエージェント」社内で創業して以降、広告事業を中心に成長してきましたが、その枠を飛び出し、今射程に入れるのは「総合データカンパニー」です。

マイクロアドはこの先、どのようなビジネスを展開しようとしているのか。渡辺社長が見据える未来を聞きました。

<目次>
●「この立地で飲食事業をするなら、タコス屋が良い?」データを分析すれば、答えは必ずある
●「データは小麦粉でしかない」。マイクロアドにしかできない「レシピ」とは?
●犯罪が起きる場所と時間を予測する!? GAFAにはない優位性とは
●ファーストキャリアで「夜明け前」の業界に飛び込むメリット
●定義が変わる。テスラに乗って「これは来る!」と直感できたワケ
●成長の中核は新卒社員。未来にワクワクし、遊び心を忘れない

「この立地で飲食事業をするなら、タコス屋が良い?」データを分析すれば、答えは必ずある

──マイクロアドはデータを軸にしたビジネスを展開しています。学生からすると「これからのビジネスでは、データが重要だ」と聞いたら、頭では理解はできると思うのですが、なかなかイメージしにくい面があります。どんなことができるのでしょうか?


渡辺:データって「未来予測」なんです。例えば、コロナ禍以降、コンビニエンスストアで売上が減った商品があります。

代表的なのが野菜ジュース。会社近くで朝ごはんを買うときに「何となく健康そう」と思って、サンドイッチと一緒に買っていたのでしょうが、そもそもコロナ禍で出社しなくなりました。ガムもそうです。これまではレジに並んでいるときに、レジ横の棚でついで買いをすることが多かったわけですが、ソーシャルディスタンスを確保するために、レジの近くで立ち止まることがなくなりました。

ただ、この結果だけだとメーカーは「売れなくなった」という事実は分かるけれど、もともと買っていた人が、代わりにどの店で何を買っているかまでは追えません。この先、何をすると売れるのかという未来が分からない状態です。


──そこでデータの出番だと。


渡辺:マイクロアドはレシートなどで購買データを大量に分析しています。販売店のデータと統合することで、ユーザーの動きを分析してアドバイスできます。販売店のデータだけだと特定の店舗に限られますが、ユーザーはいろんなお店で買うわけです。いろいろな業種の多様なデータがあるので、購買行動の変化、広告の効果、競合商品の動きなどが幅広く分かって、未来を予測できます。

渡辺 健太郎(わたなべ けんたろう):マイクロアド 代表取締役社長
1999年、創業間もないサイバーエージェントに中途入社。同社にて大阪支社を立ち上げるとともに支社長に就任、その後「Ameba」のサービス開始に伴い事業責任者を務め、取締役として活躍。その後、2007年にマイクロアドを設立し、同社代表取締役に就任。アドテクノロジー事業からデータプラットフォーム事業へと舵(かじ)を切り、2022年6月に同社の東証グロース市場への上場を実現させる。


──他のビジネスにも応用できそうです。


渡辺:データを基に徹底的に分析すれば、飲食店を開業するときに「ここはタコス屋さんがいい。内装はこうすれば売上も伸びる」なんてことも分かるはずです。まだまだ研究は必要ですが、答えは絶対に見えてきます。

「データは小麦粉でしかない」。マイクロアドにしかできない「レシピ」とは?

──データをどう使うかで、可能性は広がりますね。


渡辺:先ほどはビジネスの話でしたが、他の分野でも活用できます。実際に、米大リーグで、それまで重視されていなかった「出塁率」などのデータ分析をして選手をスカウトし、飛躍したチームがありました。少ない投資で大きな補強効果を得られるので、スポーツの世界でデータサイエンスは使えます。

やりませんけど、高校野球の弱いチームを勝てるようにすることもできる。これもやりませんけど、選挙の結果予想もできちゃいます。テロリストやスパイを特定するようなことだって……。


──まるでSFのような世界ですが、お話を聞いていると現実的にありそうですね。「Redesigning the Future Life(未来の暮らしを再デザインする)」というビジョンにもつながりそうです。


渡辺:データは目に見えないけれど、人の暮らしを変えていくことはできる。データやテクノロジーの力で、世の中がちょっと便利になったり、良くなったりしてほしいという思いを込めました。


──なるほど。一方で、近年は自社が持っているデータを活用しようとする企業もたくさんありますよね。そのような企業とマイクロアドとの違いは何なのでしょうか?


渡辺:よく勘違いされているんですけど、データは素材なんです。それ単体ではたいした価値にはなりません。例えるなら、飲食店が「この小麦粉どうしよう……」と悩んでいるような状態です。

もちろん小麦粉に価値はありますが、単価は安い。小麦粉を使って、しっかりしたレシピでパスタやピザを作り、きちんとマーケティングして店を出すことで、高い単価の料理になり、行列ができるわけです。データだけたくさんあっても、「レシピ」がないと商売になりません。


──その「レシピ」をたくさん作って、新しいサービスを生んでいくと。


渡辺:そのマネタイズ力こそがマイクロアドの強みです。私たちは2016年に「UNIVERSE(ユニバース)」という、企業のマーケティング基盤構築サービスを開発しました。その後さまざまな業界業種に特化したプロダクトを開発し、幅広いニーズに応えてきました。プロダクト数は17に上り、契約数、売上ともに拡大傾向にあります。

※引用:マイクロアド「事業計画及び成長可能性に関する説明資料 P.25」


──それだけ多くの企業・業界に価値を提供しているわけですね。


渡辺:しっかりと利益につながるからこそ、データを保有する企業も「マイクロアドになら預けてもいいかな」となるわけです。

また、創業して15年たってデータは集積されてきました。人や仕組みがそろってきているので、アイデアというレシピがあれば形になります。上場したので資金も調達できるようになりました。創業当初は広告事業が中心でしたが、これからはマーケティング支援や金融事業にもデータを活用する「総合データカンパニー」にしていきます。

犯罪が起きる場所と時間を予測する!? GAFAにはない優位性とは

──「総合データカンパニー」ですか? 壮大な構想にも聞こえるのですが、どのような事業展望があるのでしょうか?


渡辺:これまでは法人向けにデータを分析するサービスを展開してきましたが、これからは消費者向けも作っていきたいですね。暮らしの身近なところで「データってこんな使い方もあるんだ」と実感してもらえるサービスを作っていきたいです。

データの可能性を幅広く知ってもらいたい、データビジネスをもっと社会的に認知してもらえるようにしたい。上場を認知してもらうきっかけにしたいとも考えています。


──暮らしのどのようなシーンで役立つサービスを考えているのですか?


渡辺:今、研究しているテーマの1つは、犯罪ハザードマップみたいなもの。もし「この時間帯、この場所は犯罪が起こるかもしれない」と分かれば、安心できますよね。

人間は危険なことや不快なことを避けたいという欲求が強い生き物です。天気予報も「雨にぬれたくない」「災害に巻き込まれたくない」というニーズがあるから生まれたのでしょう。同じような未来予測を、マイクロアドのデータを使えばできると思います。


──「これをやれば面白い!」というアイデアがある人がマイクロアドに入れば、実現に向けて楽しめそうな環境ですね。


渡辺:そうですね。マイクロアドの場合、データの基盤が整っていればアイデアを形にする際のコストはあまりかかりません。工場を建てるのに時間とお金がかかる製造業との違いですね。


──なるほど。一方で「データ活用ならGAFAのような巨大IT企業の方が強いのでは?」と思う学生もいそうですが、実際にGAFAは競合になり得るのでしょうか?


渡辺:GAFAはグローバルで大きなデータを持っていますが、日本のドメスティックな細かいデータはありません。ローカライズしていないし、あまり興味ないと思いますよ。グローバルなプロダクトを作っている会社なので、日本に特化して分析する体制はないのではないでしょうか。


──国内のデータビジネス市場はどうでしょう?


渡辺:マイクロアドのようにさまざまな企業と連携してデータを保有する企業は存在しません。そういう意味ではマイクロアドはオンリーワンな感じで進んでいくと思います。

なぜなら、データビジネスは後から模倣するのが難しいからです。データを集めるには膨大な時間がかかりますし、それを商品化して売らないといけません。システム開発も含めて全部整えて何年も続けるハードルはめちゃくちゃ高いと思います。

ファーストキャリアで「夜明け前」の業界に飛び込むメリット

──身近なサービスが誕生したら、マイクロアドに興味を持つ学生も増えそうですね。


渡辺:そうですね。弊社に応募してくれた学生も、インターンに来て「あ、こんな面白いものがあるんだ」と気付いてくれるパターンが99%です。身近に感じるサービスがあれば、イメージを喚起しやすくなります。その結果「面白いな」と思ってくれる若い人が入ってくれれば、また新しいサービスが生まれてきます。


──データビジネスの可能性に気が付きにくいのは、なぜでしょうか?


渡辺:データビジネスにピンと来ないのは、今、サービスがないからです。ないというのは、これから生まれるから。だからチャンスです。インターネットの世界を見ても、あの界隈(かいわい)でビジネスパーソンとして成功しているのは、インターネット黎明期(れいめいき)の20年前に入った人です。

今でこそ信じられませんが、昔は「インターネットでモノなんて買わないでしょ」という認識がありました。それが、Amazonが成長して、世の中でも「ECが来る!」と言われるようになりました。多くの人がピンと来るときにその世界に入っても、遅いんです。

その意味ではデータはこれからで、しかもどんな仕事か認知されていないので、今がチャンスなんです。


──早めに入れれば、アドバンテージになりますね。


渡辺:この2022年にもなって「DXだ!」と叫ばれているのもそうです。フロッピーディスクを使ってバンバン情報漏洩をして振込みを間違えるなど、デジタル化していない世代がいっぱいいる国だから、そうなっているだけです。デジタル化は確実に進むのだから、若い人は古い商慣習が残っている「石器時代」のような世界から遠い場所にいないとダメだと思います。


──業界的には「夜明け前」という段階でしょうか。


渡辺:黎明期に入ると、同じ世代が業界の成長とともに成長していきます。今データビジネスに若い世代が入ってくると、同期や同業の知り合いはどんどん出世していく。そんなタイミングだと思います。業界が大きくなっていくというだけで有利です。よく分かんないパーティーに行って人脈を作る必要なんてありませんから(笑)。

定義が変わる。テスラに乗って「これは来る!」と直感できたワケ

──「確実に伸びる!」と思えるものかどうか、どんな観点で見るべきですか?


渡辺:定義を変えていく、バイアスを外せるか、です。8年前にテスラの車を買ったんですけど、乗ったら「あ、これはテスラの時代が来るな」とすぐに思いました。


──何があったのでしょうか?


渡辺:ちょっとしたトラブルでサービスセンターに電話したんですけど、どこにいるかがすぐ分かったんです。スマホと一緒で車にSIMが刺さっているんで、当たり前なんですけど。走行データも全部、中央集権的に企業側に吸い上げられて自動運転に生かしています。

その点でテスラは車ではなく、インターネットです。走行データがサーバーに送り込まれて最適化されて、ソフトウエアがアップデートされていきます。


──消費者に提供している価値が、他の車とは違うのですね。


渡辺:「あ、車じゃないんだ」と思いましたね。今までの自動車メーカーみたいに、工場で造って終了みたいな話ではなくなってきます。テスラは自動車メーカーというより、インターネットビジネスをするソフトウエアメーカーであり、電気のインフラメーカー。だから先行者優位が圧倒的だよね、と分かりました。


──どうしても現時点での定義で見てしまいがちですが、想像力が肝ですね。


渡辺:その通りです。例えば自動車の価値が変わることに、好奇心を持てるかが大事だと思います。「フェイスブックが20年後も今のままだと思う?」と学生に聞いたら、9割は「NO」と答えるのではないでしょうか。「確実に変わる」と思えるのなら、その変化をイメージして楽しめるかどうかです。

成長の中核は新卒社員。未来にワクワクし、遊び心を忘れない

──マイクロアドの社員も、変化を楽しんでいる人が多いのですか?


渡辺:未来にワクワクして好奇心を高めて、新しいものに価値を見いだすというのは共通している気がします。


──「データビジネス」という言葉からは、ずっとパソコンに向き合うようなドライな印象を持つ学生もいるかもしれませんが、想像力や好奇心を使う仕事なのですね。


渡辺:コロナ禍でリモートワークになる前から、社内のコミュニケーションを活発にしようと社内ラジオを流しています。そこでは単に会議の内容をレポートするのではなくて「取材してきました!」という遊び心のあるコンテンツにしています。

月一の全社朝会もZoomでやりますが、ニコニコ動画みたいに、合いの手が入ってポップに楽しくやっています。データはあくまでデータなので、その先にいる「人」が、みんな好きなんだと思います。経営陣も「つまらんことはするなよ」とよく言っています。


──若手からでも活躍できるのでしょうか?


渡辺:新卒の社員たちは、かなり短期間でめちゃくちゃ成長していますよ。稼ぎ頭は2年目で、営業部のMVPにノミネートされている3人は全員が2年目です。営業だけではなく、エンジニアやデータサイエンティストも2年目が中核です。変化についていきやすいし、早いうちからキャリアを積んでいけるので、昇格のチャンスも早いです。


──そこまで活躍できる理由は何でしょうか?


渡辺:既存事業は伸びているし、それだけでも手一杯ですが、もっと伸ばしたい。やりたい新規領域もいっぱいあるので、若手の成長がないとイメージ通りの成長ができないと思っています。だから若手にもチャンスを提供しますし、新卒採用にも力を入れています。

入社後は、新卒から注力している領域にアサインされることがあります。それは超新規だったり、海外事業だったりと、さまざまです。いろんなテーマが1年のうちにどんどん出てくるので、ダイナミックに変わっていく感じがします。同じことをしていると飽きちゃうと思うんで(笑)。


──最後に、学生へメッセージをお願いします。


渡辺:今の大学3年生は、超コロナ世代ですよね。普通に経験できることを阻害されて、行動範囲がすごく狭くなっているかもしれません。学生時代はさまざまなコミュニティに属することで新しい出会いがあり成長していくものだと思います。そのような機会を失ってしまった人が多いのではないでしょうか? 

今からでも遅くないのでいくつかのコミュニティに入ることをおすすめします。それが自分自身を知ることにつながります。就職活動もいろんな会社と出会い、見方を増やしていく中で自分の判断基準を持たないと、何となく周りに流され、「有名だから」という理由で意思決定し、入社後に後悔することになります。コミュニティを広げて、新しい経験を積むことで後悔のない選択をしてください。

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【ライター:松本浩司/撮影:百瀬浩三郎】

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