「ヘルスケアの産業化」をビジョンに掲げ、病院の経営改善サービスや、介護施設の運営、医療・介護DXプロダクトの開発および提供など幅広い事業を展開するユカリア。2024年12月に東京証券取引所グロース市場に上場を果たし、「医療・介護の現場を知り尽くしたプロフェッショナルチーム」として今後一層の事業拡大を目指しています。
2019年に新卒でユカリアに入社し、現在ヘルスケア事業本部の副本部長として活躍している荒木大矢さんは、同社で働くことの魅力を「社会課題を解決している実感が得られること」だと語ります。「本当に自分がやりたいことを考え抜いたからこそ、ユカリアに入社した」という荒木さんに、ユカリアの事業のユニークさと、これまでのキャリアについて伺いました。
<目次>
●2024年12月に株式上場、社会の公器として「ヘルスケアの産業化」を志す
●病院から既存の構造を再編し、サステナブルな産業を目指す
●「自らが社会課題を解決している」実感が得られる働き方
●就職活動で大いに悩み、コンフォート・ゾーンの外へ踏み出してほしい
2024年12月に株式上場、社会の公器として「ヘルスケアの産業化」を志す
──初めに、ユカリアが掲げる「ヘルスケアの産業化」とはどのような取り組みなのか、教えていただけますか。
荒木:私たちの目指す「ヘルスケアの産業化」とは、産業構造の転換を実現し、ヘルスケアを持続可能な成長産業へと変革していくことです。
現在の日本では、全国にある約8,000病院の約7割が慢性的な赤字にあります。加えて、社会保障費の増大などの課題が山積しており、ヘルスケア産業は「持続可能な体制が構築されている」とは言いがたい状況です。これは、国や厚労省も以前から対応すべきと提唱していたものの、なかなか解決の糸口がつかめていない問題です。
そこでユカリアが行っているのは、ヘルスケア産業に「経済性」の視点を持ち込むこと。最適化がなされておらず、属人的な経営がなされていたヘルスケア産業の「当たり前」を見直して、産業全体を持続可能な在り方へ変革させることを目指しています。

荒木 大矢(あらき だいや):ヘルスケア事業本部 副本部長
2019年に新卒1期生として入社。病院経営コンサルティング業務を経て、経営企画本部長として経営企画・IR・人事・広報・パブリックアフェアーズ・法務・総務・情報システムを管掌し、ユカリアの株式上場をリード。2025年からはヘルスケア事業本部の副本部長として、全社の事業成長の責任を負う。
──ユカリアは現在、「未病・予防」から「医療」「介護」、「終末期」まで幅広い領域で事業を展開されています。それぞれの領域での現在の取り組みを教えてください。
荒木:「医療」領域は、祖業である病院経営のサポートが中心となる事業です。赤字に陥ったり、資金繰りに苦労したりしている病院に対して、経営コンサルティング、財務支援、病院施設の建て替え支援など、さまざまな方法で経営再生のサポートを行います。
病院のコンサルティング事業を手掛ける同業他社と比較すると、ユカリアの経営サポートは「伴走型」であることが大きな特徴だと思っています。ユカリアは単発案件として特定の課題解決に取り組むのではなく、提携医療法人に対してあらゆるソリューションをもって、病院の人的リソースの最適化から、資金調達の代行、経営改善までを一気通貫で支援しています。強いて挙げると、病院再生を行うプライベート・エクイティファンドのビジネスモデルに近いといえますが、彼らとは違い、われわれは長期間にわたり病院の経営を支援させていただいています。
「介護」「終末期」の領域では、グループ会社を通して介護施設紹介事業(株式会社あいらいふ)と、高齢者向け施設運営事業(株式会社クラーチ)を展開しており、シニア世代のあらゆる方々へ向け、施設の紹介や運営、施設入居後の支援を行っています。それだけでなく、相続、見守り、家事代行などへ事業展開も進めており、安心で豊かなシニアライフのトータルサポートを目指しています。
「未病・予防」の領域については、2023年にMRI・CT検査のシェアリングプラットフォームを展開するスマートスキャン株式会社をグループ会社とし、「病気にならない世界を作る。」ための取り組みを進めています。
──現在の事業に加えて、今後ユカリアとして取り組む予定の事業を教えてください。
荒木:事業戦略として、「病院経営サポート事業の拡大」「DXソリューションをはじめとした新規事業開発」「M&Aによる新領域への進出」の3つを考えています。まず「病院経営サポート事業の拡大」に向けては、ユカリアがコンサルティングを手掛ける提携医療法人の数を、現在の28病院から、今後、加速度的に増やしていきたいと思っています(2025年3月末現在)。
次の「新規事業開発」に取り組むにあたり、ユカリアには「現場のリアルなニーズを得られ、かつ、現場の協力を得ながら仮説検証サイクルを回せる」という強みがあります。これは他のヘルスケアスタートアップでは持つことのできないユカリア独自の強みであり、病院・介護施設との強固なリレーションがある当社しか持ち得ない競争優位性です。実際に、現場へのヒアリングに基づいて開発したDXソリューション「EUCALIA TOUCH with(ユカリアタッチ ウィズ)」は、地域を問わず導入され、累計導入台数は20,000台を突破しています。ユカリアが開発したDXソリューションは、提携医療法人数の増加に伴って導入先が増え、最終的に業界全体へと広がっていくという増え方も想定しています。病院経営サポート事業とDXソリューション事業がお互いに好循環を生みながら、事業を拡大させていくことを目指しています。
それらと並行して行っていくのが、「M&Aによる新領域への進出」です。ユカリアでは、M&Aを成長戦略の1つとして位置付けています。あいらいふやスマートスキャンの事例のように、今後も既存事業の規模のさらなる拡大や、持続的な成長の柱となり得る新規事業領域への参入、人材の確保などを目的として、M&Aや資本業務提携を推進していく予定です。実際にIPO後に5件のM&Aを開示しており、今後も一層のスピード感を持ってM&Aを実行していきます。経営者としてのキャリアを構築したい新卒社員や若手社員にはどんな会社より成長できる環境が用意されていると断言できます。
──事業展開のなかで、ユカリアは2024年12月に株式上場しています。
荒木:ユカリアはヘルスケアの産業化を実現するため、「社会の公器」として社会的信用を高めるだけでなく、会社の規模を拡大し、事業展開に向けた仲間を増やすことを目的に株式上場を行いました。
当社の目標を達成するためには、他業界や政府、官僚、自治体、メディアを含めたいろいろな人の共感が必要です。自社だけでなく、さまざまな場所に仲間を増やしていくためには、上場を実現し、社会の公器となることが必要だと考えました。
創業以来、ユカリアグループは成長を続けており、2010年には100名程度だった社員数も、2020年には800名を超える規模となりました。しかし、将来的な目標を考えると、まだまだそれを達成できる規模に達していないと言わざるを得ません。ビジネスの拡大と並行して、ともに事業に取り組む仲間を増やしていくことが、現在のユカリアにとっては非常に大切なのです。
また、私たちが向き合っている課題は社会保障費の問題そのものです。日本最大の社会課題を解決するためには、日本で最も仲間を集める会社になり、日本で最も時価総額を高めねばなりません。そのような観点からも上場いたしました。
病院から既存の構造を再編し、サステナブルな産業を目指す
──「持続可能なヘルスケア産業」の実現は、なぜ難しいのでしょうか。
荒木:現在のヘルスケア産業の大部分において最適な経営がなされていないことが大きな理由です。加えて、そういったヘルスケア産業の在り方が「当たり前のもの」として受け入れられていることも要因の1つだと思っています。
日本の医療・介護業界で働く皆さんは、「奉仕の精神」を持ち、目の前の患者さんに向き合っています。医療や介護が、人の生活や命に関わる、意義のある仕事であることは言うまでもなく、そこに通底する「奉仕の精神」は尊いものです。
しかし、病院や介護施設の経営方針として「患者さんのために働くべきで、利益は二の次」という姿勢が当たり前となっていると、持続可能な経営は実現しません。安定的な利益が上がらない状況では、しかるべき投資ができず、医療従事者や介護従事者の皆さんにとっての働きやすい環境も実現が難しくなり、結果として、患者さんへの質の高いケアの提供が困難になります。
これでは、ヘルスケア産業において「持続可能な体制が構築されている」とは言いがたい状況でしょう。大切なのは、ユカリアが「三方良し」と表現している、「病院や介護施設の経営を安定させる」「医療従事者や介護従事者の働きがいを向上させる」「患者さんのウェルビーイングを達成する」という好循環を生み出すことです。
こういったヘルスケア産業の現状に対して、ユカリアは業界全体の「構造」にアプローチすることで課題解決を実現していきたいと思っています。
──「ヘルスケア産業の構造」とは、どのようなものでしょうか。
荒木:現在のヘルスケア産業は、医師を頂点とする経済システムが形成されています。これは病院においても当てはまり、「医師が、医療行為や研究をしながら経営も行っている」という状態です。実際に、多くの事業会社によるサービスも、病院の「医師」をターゲットとした、既存の構造を前提としたものがほとんどです。
しかし、当然ですが医師は経営の専門人材ではありません。医師を頂点とする現在の構造を維持していては、病院の経営はますます属人的になり、その最適化は実現しないでしょう。
こういった構造を打破するためにユカリアが行っているのが、「医師」ではなく「病院」へのアプローチです。体制整備や業務効率化を通して、属人的な病院運営を変えることができれば、経営は健全化し、より開かれた場所になっていきます。
──ユカリアの経営支援では、具体的にどのようなことを行うのでしょうか。
荒木:ユカリアが取り組んでいることの1つが、病院の「経営体制の強化」です。
地域医療を支える役割を担っている病院は、公的な存在であるべきです。そこでユカリアはコンサルティングを手掛ける病院について、医療法人の理事や役員として病院経営に精通した人材を外部から招へいするなどし、経営ガバナンスを強化しながら、より開かれた形で運営が行われる体制を整えようとしています。
加えて、赤字かつ債務超過の病院に対しては、不動産流動化などの金融支援を行います。赤字経営であっても、病院は、土地や建物といった不動産資産を持っていることがほとんど。そういった不動産資産をユカリアが買い取ることで、病院に一時的な資金を提供します。これをもって、病院は経営再建へ向けた準備を進めることができます。
いわゆる病院経営コンサルティングのみであれば、外資系戦略ファームでも行っておりますし、金融支援だけであればプライベート・エクイティファンドが行っていますが、その双方を提供できるのはユカリアだけです。私自身の経験ともつながりますが、この2業界と迷っている新卒・若手社員の方々にはぜひユカリアへの入社を考えていただきたいですね。
──病院の経営が改善すれば、ゆくゆくはヘルスケア産業の全体の構造が改善していく、と。
荒木:ヘルスケア産業において持続可能な経営が困難なもう1つの理由は、医療・介護・その他ヘルスケア業界すべてが「個人経営の集合体」で成り立っている、という点です。
もちろん、ヘルスケア産業には上場企業や複数の医療法人が集まった大手の民間医療グループも存在します。しかし、こうした大手企業、大手グループの市場シェアは 10%にも満たず、業界全体の大部分は小規模な法人なんです。
「個人経営」であることのデメリットは、第一に、経営資源や資金が分散してしまうこと。第二に、個人の意思決定に基づいて経営されるため、そのノウハウの「横展開」が行われないことです。モデルとすべき経営体制が病院同士でシェアされないのは、業界としてとても非効率的ですよね。
そこでユカリアがやろうとしているのが、法人の垣根を越えて、病院を1つの輪のようにつなげていくことです。そうすれば、病院ごとの経営ノウハウを集約できるし、スケールメリットを生かして仕入れや業務を効率化できるでしょう。その結果、財務が安定すれば、医療の質向上に寄与していくはずです。
医療業界においてこの取り組みが成功したら、次はそのノウハウをもって介護業界の経営効率化に取り組む予定です。ゆくゆくは医療と介護の連携を強化し、ヘルスケア業界全体の効率化と経営の高度化を達成し、三方良しの世界観を実現していきたいと思っています。

「自らが社会課題を解決している」実感が得られる働き方
──荒木さんは、ユカリア入社以降、どのような経歴を歩んでこられたのでしょうか?
荒木:新卒でユカリアに入社し、最初の1年間は病院経営の支援を行う部署で経営コンサルティング業務を担当していました。この時期は、病院の収益改善やDX支援に係るプロジェクトを通して、経営のイロハをキャッチアップしつつ、現場である「病院」への理解を深める期間だったと思っています。
2年目は経営企画部門へ異動となりました。現在はグループ会社となったあいらいふのM&Aプロジェクトにアサインされ、デューデリジェンスから、買収交渉、統合プロセスの設計、経営改善の施策実行までを担当しました。それ以降の約3年間は、M&Aの推進や中期経営計画の策定、経営ガバナンスの強化など、会社全体の戦略策定に携わりました。
経営企画本部の本部長に就任したのは入社6年目の2024年です。経営企画から人事、情報システムなど、ユカリアのバックオフィス全般を統括していました。その頃に責任者として取り組んでいたのが、ユカリアの株式上場です。重責でしたが、2024年12月には東京証券取引所グロース市場への上場を実現することができました。
2025年からは、「今後は、フロント部門で事業成長を支えることが不可欠になる」という認識のもと、ヘルスケア事業本部の副本部長に就きました。既存事業のオーガニックグロース支援、M&Aや新規事業開発といった事業成長に関わる全領域を統括しています。

──新卒でユカリアに入社した動機は何だったのでしょうか?
荒木:ユカリアの、「医療×経営」というビジネスモデルのユニークさに惹(ひ)かれたからです。
ヘルスケア産業が抱える課題に対して「経営」という視点でアプローチし、病院の収益改善と持続可能な経営を実現するユカリアのビジネスモデルは、業界を探しても他にはほぼありません。その独自性が魅力に感じました。
──「医療」と「経営」に興味を持ったのは、どういう理由からなのでしょう?
荒木:「医療」を考えるようになったのは、私の母がリウマチを患っていたことがきっかけです。本人はもちろん、家族として病気と向き合うなかで、医療やヘルスケアが人々の生活に与える影響の大きさを実感し、この分野に関わる仕事をしたいと考えるようになりました。
もう1つの「経営」は、高校生の時に、大先輩である佐山展生さん(インテグラル株式会社・創業者)の講演を聞いたことがきっかけです。佐山さんが数々の企業に対する経営支援、企業買収やM&Aに取り組んできた事例を聞き、経営の難しさややりがいを深く知りました。この2つの軸から考えて、自分の関心と合致した唯一の企業がユカリアでした。
──荒木さんが感じている、ユカリアで働くことの魅力を教えてください。
荒木:「自分事化して仕事ができる環境があること」だと思っています。私は入社2年目にM&A案件を担当し、その後も20代から大きな挑戦の機会がありました。
特に記憶に残っているのが、入社4年目に担当したIPOプロジェクト。実はこのプロジェクトは、私が経営陣に株式公開を進言したことがきっかけでスタートしたものです。上場実現に至るまで、そのすべての準備において自ら手を挙げ、実行しました。
「ユカリアでの仕事を通して、社会課題を解決したい」というと、よく聞くような言葉になってしまうのですが……。私としては、「社会課題を解決している実感が得られるから、ユカリアで働いている」という感覚が近いかもしれません。
自分の仕事を通して、会社とその先にある医療・介護業界の課題に取り組んでいる。そして、それを解決できている実感を、「自らが本気で信じ切れている」。そんな感覚を持ちながら日々仕事に取り組める会社はなかなかないと思います。
就職活動で大いに悩み、コンフォート・ゾーンの外へ踏み出してほしい
──荒木さんは、お仕事のなかで、「実感を得る」ことを大事にされているのですね。
荒木:そうですね。「実感」を大事にするようになったのは、就活生の時、ユカリア入社を決めたくらいのころからかもしれません。
実は、大学卒業までは自ら大きな決断をした経験もなく、他の人と同じようなキャリアを何も迷いなく歩いていました。でも就職活動が始まり、自分の人生を考えるなかで、ふと「本当にこのままでいいのか?」と考えるようになって。
荒木:当時の友人は皆、大手コンサルティングファームやメガベンチャーなどを就職先として選んでいたと思います。彼らを横目に「皆と同じような道を選ぶことが、果たして自分の人生にとって最良の選択になるのか?」「本当に自分がやりたいことはなんだろう?」と考え、頭に浮かんだのが「医療」と、高校生の頃に興味を持った「経営」でした。
改めて「自分がやりたいこと」を考える機会がなければ、ユカリアは選ばなかったし、友人と同じような道を選んで就職していたと思います。
でも、そんな時に「新卒でユカリアに入社する」という道を選びました。大きな決断でしたが、それまでとは「正反対の道」を選んだことで、入社してから今に至るまで「自分の人生を生きている」という強い実感を得られているのだと思います。
──就活でのキャリア選択で、荒木さんのように悩んでいる人も少なくないかと思います。最後に、この記事を読んでいる方にメッセージをいただけますか。
荒木:就職活動は、自分と向き合って、人生をどう歩むのかを改めて考える、絶好の機会だと思います。
私もそうだったように、小学校から大学まで、自分の意志とは離れたところで、進路を「なんとなく」選んできた方も少なくないと思うんです。確かに、不安になると「皆が選んでいるから」「安定しているから」といった理由で、業界や会社を選んでしまいがち。しかし、そこで踏みとどまって「自分が本当にやりたいことってなんだろう?」と悩んでほしいのです。
考えるのが難しかったり、自分がやりたいことが分からなかったりする場合は、年齢も立場も異なる人に話を聞くのがおすすめです。話し相手は親戚や大学の先輩でもいいのですが、普段は交流する機会がない、身近にいない人に話を聞けるのがなお良いと思います。自分のコンフォート・ゾーン(居心地の良い、快適な空間)の外側に出られれば、新しい発見が得られるはずです。
悩んだ結果、自分の人生に「本当にそれでいいんだっけ?」と思った方には、ぜひユカリアのことも知っていただきたいです。「自分の仕事で、社会に良い影響を与えている」「自分が、この会社を動かしている」という実感を得たい方と、ぜひ一緒に働きたいと思っています。
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ユカリア
【ライター:西谷忠和/撮影:是枝右恭/編集:伊藤駿(ノオト)、鈴木崚太】