京都市では「中小企業ひと・しごと環境魅力向上支援事業」を通じ、職場環境の改善や人材育成など、企業の魅力向上に資する取組を支援しています。
▼制度詳細
・京都市情報館「中小企業ひと・しごと環境魅力向上支援事業補助金の事業参加者募集」
この補助金を利用して従業員の能力開発に挑んだのが、京都・東本願寺前にたたずむ「京の宿 北海館 お花坊」です。創業以来100年以上の歴史を紡ぐこの旅館は、もともとは宿坊として使われていた建物を改装しており、伝統的な意匠を残す趣ある造りが魅力。京都駅から徒歩7分と立地が良く、檜(ひのき)香る大浴場や旬の食材をふんだんに使った京料理など、細やかなおもてなしとぬくもりが息づく老舗宿です。
今回お話を伺ったのは、若おかみの小西 茉友(こにし まゆ)さん、フロント・接客を担う中村 聡子(なかむら さとこ)さん、丸井 啓嗣(まるい けいじ)さんの3名。補助金を活用して従業員が茶道・華道を学ぶ機会を設けた背景とその成果、そして今後の展望まで、じっくり語っていただきました。
京都市の補助金を活用することになったきっかけや経緯を教えてください。
小西さん:この補助金のことを知ったのは、顧問税理士から届いた案内メールがきっかけでした。普段からさまざまな制度の情報を送ってくれるのですが、その中に「職場の魅力向上を目的とした補助金」という言葉があり、ふと心に留まりました。いつもは読み流してしまうところを、なぜか気になって詳しく内容を見たところ、「これはまさに私たちに必要な支援かもしれない」と感じ、すぐに応募を決意しました。

私自身、もともとは半導体メーカーの総合職で、福利厚生や評価制度が整った環境に身を置いていました。しかし、家業の旅館に戻って感じたのは、接客業は「正解がない仕事」ということです。お客様の満足度は数字では測れず「どこまでできれば一人前」という明確な基準もありません。努力を重ねても、自分の成長を実感しにくいのではないか……。接客業の難しさを痛感していたところでした。
だからこそ、働く人が「学びを通じて自信を持てる場」をつくりたいと思ったのです。私自身、旅館で働き始めたのを機に茶道や華道を学び直しており、その思いと結びつきました。茶道や華道の所作には、おもてなしの心の根幹がありますし、段階ごとに免状をいただくことで、自身の成長を目に見える形で実感することができます。
「この学びを従業員にも経験してもらえたら」と考えていたため、補助金が後押しとなりました。おかみである母からも「とても良い取組ね」と賛同を得て、申請を進めることにしました。
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