空調分野の売上高で世界ナンバーワン(※)を誇るダイキン。売上高は約5兆円、海外売上高比率は約84%、170以上の国・地域でビジネスを展開する真のグローバルカンパニーです。
同社を牽引するのは、圧倒的な「技術力」と、それをビジネスへと昇華させる「経営力」の融合です。今回は、住宅用・商業用・産業用の各空調商品の開発を経験し、現在はグローバルの技術開発のコア拠点、「テクノロジー・イノベーションセンター(TIC)」のセンター長を務める常務執行役員の米田裕二さんにインタビューしました。日本の製造業の課題から、2050年に向けた空調の可能性、そしてこれからの技術者に求められる資質まで、熱く語っていただきました。
(※)出典:富士経済「グローバル家電市場調査 2026」調べ (グローバル空調メーカーの空調機器事業売り上げランキング2024年実績)
技術をビジネスの勝利に変える、ダイキンのグローバル競争力
──まず、ダイキンの現在地について教えてください。世界ナンバーワンの規模感は、学生の想像をはるかに超えているように感じます。
米田:一言で申しますと、ダイキンは「グローバルの空調総合メーカー」です。売上高は約5兆円ですが、そのうち海外売上高比率が84%以上、ビジネス展開する国・地域は170を超えます。社員数約10万4,000人のうち、日本人の比率はわずか14%。つまり、残りの86%は外国籍の社員であり、実態は極めてグローバルな組織です。
──もはや「日本の会社」という枠を超えていますね。具体的に世界でどのようなインパクトを残しているのでしょうか?

米田 裕二(ヨネダ ユウジ):常務執行役員
1987年にダイキン工業に入社後、家庭用・業務用エアコンや住宅設備など、幅広い商品開発に携わる。その後、2014年に執行役員に就任。2015年11月にはテクノロジー・イノベーションセンター(TIC)設立と同時にセンター長に就任し、全社のR&Dを牽引している。
米田:象徴的なのが2022年のカタールワールドカップです。外気温が50度に達することもある酷暑の地で、6つのスタジアムのうち4つの空調をダイキンが担当しました。観客席だけでなくピッチ上までも23度前後に保つことに成功し、「寒すぎるスタジアム」と噂(うわさ)されたほどです。
また、技術を単なる「発明」で終わらせず「知的財産(IP)」として経営に繋げてきました。世界的な知財関連の賞である「Top 100 Global Innovators」「Asia IP Elite」などを2年連続ですべて受賞している日本企業は、実はダイキンだけです。技術力をビジネスの勝利に繋げられているかどうかが、私たちのこだわりです。
日本の「ものづくり」は強いが「価値づくり」は不得意。ダイキンの伸びしろは
──現在の日本の製造業が直面している課題をどう捉えていますか?
米田:かつての日本のものづくりは「高品質・低コスト」で勝てていました。しかし今はグローバル競争が激化し、苦戦しています。最大の課題は、日本の企業は「ものづくり」は強いが、一方で「価値づくり」が不得意だということです。
──「ものづくり」と「価値づくり」。その違いはどこにあるのでしょうか。
米田:iPhoneやテスラのEVを思い浮かべてください。彼らは優れたハードウエアを作るだけでなく、「どう価値を提供し、どう利益を生むか」というビジネスモデルのデザイン──つまり「価値づくり」にたけています。日本のメーカーは機能に没頭するあまり、その先の商用化や勝ち切る仕組み作りが不足していました。
──その中で、なぜダイキンは世界で「勝ち」続けられているのですか。
米田:私たちの強みは「技術力」に「販売力」と「サービス力」を掛け合わせている点です。空調機は売って終わりのビジネスではありません。設置後のメンテナンスといったバリューチェーンの中に、人手を介した重要な価値が存在します。私たちはこのサービス網をグローバルに構築してきました。それがダイキンの強み・独自性です。
さらに、欧州、北米、中国、アジア、インドと、どの地域でも強い。日本の製造業の中でも、ダイキンは伸びしろが大きいのではないかと思っています。現状に甘んじることなく、現在はソフトウエアやAIをテコにして、「空気を価値に変えて商用化する」という新たなステージの「価値づくり」に挑んでいます。
2050年、空調需要は3倍に。地球を守る「最先端」の技術力
──「価値づくり」を支える拠点「テクノロジー・イノベーションセンター(TIC)」では、どのようなテーマに取り組んでいるのですか?
米田:TICは事業部門と一体となり、技術開発・商品開発、研究開発を同時に行う「ハイブリッド型」の組織です。大きなテーマは、コア技術である「圧縮機」「モータ」「インバータ」の開発です。例えばインバータ技術。これを搭載するだけで、非搭載機に比べて約58%もの省エネ効果が得られます。他にもソフトウエア開発や空気の価値化なども取り組んでいます。
──約58%もの削減は、環境負荷も劇的に変わりますね。
米田:そうなんです。実は2050年には、世界の空調需要は現在の約3倍に膨らむと言われています。特にグローバルサウスと呼ばれる地域での普及が加速します。効率の悪いエアコンが広がればCO2排出量が増え、世界の電力需要がひっ迫し、地球温暖化を加速させますが、高効率なインバータ機を広めればCO2排出を劇的に抑えられます。これは私たちの責務です。

──ヒートポンプ技術も、カーボンニュートラルの鍵として注目されています。
米田:ヒートポンプは空気中の熱を効率よく集めて移動させる技術です。かつては「ローテク」と思われていたかもしれませんが、今は違います。自動車のEV化と同じレベルのインパクトを持つ、最先端の環境テクノロジーとして再定義されています。地球の未来を救える技術のトップにいられるのは、まさに「最高の時代」に生きていると感じます。
AIと空調の意外な関係。データセンター冷却という新たな戦場
──最近、ダイキンによるAIデータセンターの冷却技術を持つ企業の買収が話題になりました。
米田:AIを直接ビジネスにするのではなく、AIを動かす「データセンターの冷却」が狙いです。NVIDIAに代表される高性能チップは凄(すさ)まじい熱を発します。この熱をどう効率よく冷やすかが、AI社会の持続可能性を左右する大きな課題になっています。
──具体的にはどのような冷却を行うのでしょうか?
米田:サーバー単位、あるいはチップそのものをダイレクトに冷却する技術が必要です。買収したテクノロジーとダイキンのエネルギーマネジメント技術を組み合わせ、データセンターの消費電力を劇的に抑える計画を進めています。AIの進化の裏側に、私たちの冷却技術があるわけです。
これもヒートポンプ技術の応用です。住宅用から産業用の最先端冷却まで、私たちのフィールドは際限なく広がっています。また、商業用や産業用などは一瞬でも止まれば死活問題ですから、AIを活用した「故障予知」「寿命予測」などのメンテナンスサービスにも注力しています。
技術者は「3つの専門性」を持て。米田常務が説く、キャリアの極意
──ここからは、キャリアについて伺います。米田さんは全商品の開発を経験されていますが、ご自身の成長に重要だったことは何でしょうか。
米田:正直に言うと、私のキャリアは決して思い描いていた通りではありませんでした(笑)。大変な部署に次々と放り込まれましたが、その「どん底」の経験こそが私を成長させてくれました。会社のこと・経営のことに興味関心を持ちながら取り組んできたこと、いろいろな困難にも真正面から取り組み、課題解決を重ねてきた経験があります。粘り強く取り組み、困難に対しても楽観的に取り組んできました。
入社4〜5年目の異動先で出会った先輩に、空調の基本を徹底的に叩(たた)き込まれたことが運命的な巡り合わせでした。当時は嫌で仕方なかったこともありますが、振り返ればあの巡り合いがあったからこそ、今の私があります。
──就活生や若手技術者に対して、どのようなスタンスを求めますか。
米田:私はよく「専門性を3つ持て」と言っています。機械の専門家であっても、電気やソフトウエアのことも分かる。このように3つの柱を持つことで視野は劇的に広がります。今の時代、1つの専門性だけで戦うのは不十分です。
──ハードルが高そうですが、好奇心が重要になりそうですね。
米田:その通りです。専門外のことにも好奇心を持ち、リスクを取ってチャレンジする。課題解決力だけでなく、「解くべき問いは何なのか」を考える「課題設定能力」を磨いてほしい。若いうちから問いを立てる力を磨けば、技術者としての価値は飛躍的に高まります。
企業文化は戦略に勝る。ダイキンが「フラット」である理由
──ダイキンの急成長を支える文化とはどのようなものでしょうか。
米田:名誉会長の井上がよく言いますが、「企業文化は戦略に勝る」のです。ダイキンの文化を一言で言えば、「経営力」と「技術力」が融合していることです。そして、経営陣と現場の距離が非常に近いフラットな組織であることです。
──役員の方と現場の距離が近いというのは、具体的にどういうことでしょうか。
米田:キャリア採用の方が「役員とこんなに話せるのか」と驚くほど、雑談を含めたコミュニケーションを大事にしています。デジタル分野については私も若い人から学びますし、彼らのアイデアを素早く事業化するのが私の使命だと思っています。
──技術者であっても、コミュニケーション力や「人間力」が重視されるのですね。
米田:技術者はともすれば機械に向かいがちですが、ダイキンは人と人とのつながりを大切にします。物事の本質を見極める目、問いを立てる力、そして人間力を磨くこと。これがダイキンの技術者としての誇りです。
──最後に、就活生へのメッセージをお願いします。
米田:ダイキンは、働きやすく、かつ「働きがい」のある会社です。世界を相手に戦い、地球規模の課題を技術で解決する。この最高のフィールドで、私たちと一緒に新しい価値を作っていきませんか。皆さんの挑戦を、心からお待ちしています。

▼企業ページはこちら
ダイキン
▼イベントページはこちら
DAIKIN Monthly Online Seminar
申し込み締切:7月31日(金)