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「銀行は女性にとって働きづらい」は本当?メガバンクvs外資系対談(前編)

外資系 女性 日系
2018年6月30日(土) | 62,898 views

こんにちは、ワンキャリ編集部です。

女性のキャリアWEEK特集第2弾は、女性が働きやすいといわれる外資系勤務の女性と、対して保守的だと考えられているメガバンクの女性、それぞれにキャリアについて語っていただきました。そのお話を2本立て、インタビュー形式でお送りします。


前編は、外資系メーカー勤務のBさんがメガバンク勤務Aさんのキャリアについて聞き出します。

話し手:メガバンク勤務Aさん
東京都内の私立大学を2010年に卒業しメガバンクへ入行。現在も総合職として活躍している。女性のキャリアに課題を感じるものの、現在の労働環境にはおおむね満足しているという。

聞き手:外資系メーカー勤務Bさん
東京都内の私立大学を2011年に卒業し外資系企業へ入社。現在もハードワークをこなしながら活躍している。勤続年数的に、マネージャーを目指すか専門職となるか決断すべき時期だと語る。

「出世したければ独身でいろ」というメッセージを感じる

──こんにちは、本日はありがとうございます。まずは行員のキャリアについてお伺いしたいのですが、「女性だからこそキャリアに違いが生まれるな」と感じることはありますか?


Aさん:根本的なところからお話すると、銀行に限らず20年・30年働くキャリア自体が女性には向いていないですよね。行員は30歳まで下積みなんですが、そうすると実のある仕事が降ってくるのは、女性が産休・育休で最も職場を離れやすい30~35歳にようやく。そこで育休を取ってしまうとバックオフィスに回されるので、一生活躍はできない。出世する人間に未婚でいてほしいというメッセージを感じます。

さらに女性の行員はフロントオフィスの管理職に就きづらいです。これは取引先が原因です。メガバンクはどこも全国に支店があり、融資先は地方のワンマン社長だったりします。そうすると女性が電話しただけで「女を担当にするとはウチをなめてんだろ! 責任者を出せ!」とガチャ切りされることもあります。


──「責任者を出せ」って外資で言われたら、たとえばアジア地域のヘッドまで女性だったりするんですけどね……(笑)。責任者は男性で女性は下っ端というイメージが、地方担当だと根強いんですね。

産休・育休については外資系企業でも長期間取ると出世に差し障るので、2カ月で復帰なんて話になるわけですが、その点は違いますか?


Aさん:外資系企業でその場合は、社内結婚していたとして男性がキャリアを女性へ譲り、男性が育児に専念するって選択肢もありますよね。そういう整備が日本の銀行には整っていない。極端な話、一般職の半分が男性なら総合職女性が一般職男性と結婚して養うことが一般的になるはず。

上昇婚志向は「男性が嫌な顔をするから」

──確かにともに外資系に務める夫婦で女性をリードキャリアにして、旦那さんが出世しない道を選ぶことがあります。ただ、日本で女性に上昇婚志向があることは否定できないですよね。たとえばこの調査では女性の70%が「自分の年収が彼より高いと気になる」と発言しています。


Aさん:それは否定できないですね。私も元カレと付き合っていたときに気になっていたのがそこでした。

学歴や地頭は申し分なかったんですけれども、いかんせん私より年収が低かった。私が行員だからというのは分かりつつ、50歳になるまで私の方が上。銀行は50代で年収が下がり始めるから生涯年収は変わらないんで私はいいかなって思ってたんですけど、向こうが気にしていて。どっかで嫌なんだろうなって気づいた。

それに対して女が遠慮して「そんなことで嫌われるならキャリアダウンするか、給与を明かさないようにしよう」と思っちゃう。

女性が上昇婚志向というというよりも、最初は「気にしない」と言っていたはずの男性が次第に嫌な顔をするようになる。そこが嫌になり、結果として自分より年収が上の人なら気を遣わなくてラクだからと、上昇婚志向になるのではないでしょうか。


──確かに、私も人生で一番後悔しているのは東大を受験しなかったことです。どうせ受けたら落ちたと思うんですけど(笑)、高校時代の元彼が大学院生だったんですけど、学部は一橋で院から東大なんですね。それで東大の学部生にコンプレックスを抱いていて。これで私が学部から東大になってしまったら……と思って、こんなことで別れたくないと思ってしまった。チャレンジすらしなかったと後悔しています。

男女ともに「自分の役割」へしがみついている

Aさん:女性が稼いでいたりより高学歴だったりすると、なんで嫌になるんでしょうね。すごく興味があります。予想ですけど、女の人にしか子供が産めなくてお乳をあげられるのも女性しかいないとなったときに、男性は外でお金を稼ぐことで役割を持ちやすくなるのかもしれないですよね。


子供たちはお腹が空いて泣いたら「ママ」と泣いて「パパ」とは呼ばない。なら僕は外で課長と呼ばれて稼いでくるよと。母乳神話から崩さない限り男性も外で仕事をする役割意識から逃れられない。


──でも、その母乳神話にしがみついているのは女性でもありますよね。


Aさん:そうなんですよ、だから女性も自分の既得権益である「お乳を与えられるのは私だけである」という神話を崩して「ミルクなんてお湯で作れるよね」と認めなくては両方がつらいですよね。

銀行で女性が働くのは「全般的に有利」のマジック

──銀行に話を狭めると、女性が働きやすいと感じるのはどういったところですか。


Aさん:全般的に女性は有利だと思います。最近は明らかに採用人数を増やしていますし、出世させています。一方で頭数だけなんとかそろえなくちゃという意識だから、純粋な能力による査定ではない。アファーマティブ・アクション(積極的な優遇措置)が行われているから、男性行員からは不満もあがっています。

ただ、冒頭に述べた通り長期キャリアを考えると結婚しながら働き続ける道は閉ざされています。いわゆる「先輩女性から話を聞こう」といったフォーラムがあっても、行員で出世されてる女性ってみんな独身なわけですよ。彼女たちは男女不平等な世界でのし上がったスーパーウーマンだから、寝る間を惜しんで働くのが当たり前。結婚なんて甘えたことをぬかすなという雰囲気です。

けれどもメガバンクはどこも大量採用を行いますし、そこにはワーク・ライフ・バランス重視の方も多いわけです。彼女たちのようになれといわれても、憧れる女性行員は少ないと思いますね。


──確かに、それはしんどいですね。

社内結婚で辞めると配偶者の出世が不利になる

Aさん:あと、女性の行員で課題となるのは社内結婚ですね。部門によっては23時過ぎまで勤務になるわけで、必然的に出会いが社内へ限定されます。そうして社内結婚した後にどうせキャリアチャンスをもらえないならと女性が退職しようとすると、他行さんでは配偶者の出世に響くと聞きました。


──それはムチャクチャですね! 配偶者の退職で出世に響くんですか。


Aさん:それまでにたくさんコストをかけて育ててきた優秀な行員を失うのが厳しいのは分かります。

しかし、そうしたら女性の選択は、夫の出世を諦めてでも退職するか、諦めてバックオフィスで働き続けるしかない。行員で転職はまず選択肢に入らないので「夫婦で転職」コースはまずないです。


──なぜ、行員は転職を選ばないんですか?


もともと一生同じ場所で働きたい保守的な人が多いのもありますが、何より「どんな人間でも年収1,000万もらえる」のが大きいでしょうね。優秀な社員が1,000万円もらえる会社は多いですけど、誰でもといえばメガバンクしかない。

ですから、優秀でない人ほどメガバンクに留まりたがります。男性は先ほど述べた通り仕事で役割を感じますから、閑職に回されてもここしかないとしがみつくんですね。

保守的な価値観の中でレールだけ敷いても意味がない

Aさん:私の祖父も銀行で役員まで行った人なんです。まさにモーレツ社員で家庭を顧みることなんてできなくて。部下の家庭をなんとかしてやりたいと思ってやったことが、部下の子供を引き連れてのボウリング(笑)そういう人なんです。

そして、その家で育った商社の父も働くことがミッションだと思っていたみたいです。ところが海外転勤でアメリカへ行ったとき「妻が妊娠してて、子供が産まれるからママ教室行ってるんだよね」って言ったとたん同僚から「なんであなたは一緒に休んで行かないんだ」と責められたそうで。同僚に怒られてママ教室へ「通わされた」ってボヤいてました。

父が「信じられない!」と衝撃を受けたのがアメリカではもう35年前。ですが、多くの行員は今でも「ママ教室は女性が行くもの」と考えていると思います。行員になる方は、男女ともに保守的な価値観を当たり前にしている方が多い。だから女性が出世するレールだけを用意しても、価値観をひっくり返さないとどうしようもないですよね。


──制度だけ用意してもしょうがない。価値観の根底から改革が必要だというのは、その通りですね。

女性がメガバンク総合職で勤務するメリットとデメリット

最後に、メガバンク勤務Aさんが考える「女性がメガバンク総合職で勤務するメリットとデメリット」をまとめてもらいました。


<メリット>

・採用や昇進において男性より有利。男性行員が「もし生まれ変われるなら女性になりたい」とうらやましがるほど
・「行内初の女性○○」と呼ばれるキャリアを切り開く余地がある
・非婚主義の女性にとっては給与・待遇面ともに申し分ない

<デメリット>

・女性を育成するキャリアプランは整っていない。下積みが終わる時期と産休・育休期がバッティングするなど改善の余地あり
・勤務時間が長く社内結婚が主流になるものの、男性行員の男女共働きの意識は低め
・融資先が女性担当者を拒否するなど、社会全体の価値観がまだ追いついていない

※個人情報保護のため、内容を一部改変しております。あらかじめご了承ください。


後編では逆に、銀行員の立場から外資系キャリアの現実を追いかけます。

【後編はこちら】→「女性が輝く?外資は男女ともに働きづらいですよ」メガバンクvs外資系対談(後編)


【全4回:女性のキャリアWeek】
第1弾:女性のキャリアを考える上で欠かせない「就職・結婚・出産」。女性のキャリア記事まとめ6選!
第2弾:「銀行は女性にとって働きづらい」は本当?メガバンクvs外資系対談(前編)
第3弾:「女性が輝く?外資は男女ともに働きづらいですよ」メガバンクvs外資系対談(後編)
第4弾:「女の子なのに」と止める周囲を説得しうるキャリア選択とは?SIer女性へのインタビュー
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