企業選びで多くの人が重視している、会社の「自分のやりたいことが実現できる」環境。「若いうちから、裁量を持って働ける」「大きな仕事を経験できる」といった条件から会社選びをした結果、国内の大手企業を選択肢から外してしまう人も少なくないのではないでしょうか。
生活の中でいつも手にしているお酒や清涼飲料水を扱うキリンホールディングスは、100年以上の歴史を持つ、業界トップクラスの日本企業です。しかし、「年功序列」や「大手企業の若手はチャンスがない」といった国内大手企業のイメージに対して、入社1年目から大手顧客の担当となり、自分の裁量でその課題に取り組むこともあるといいます。
キリンホールディングスの若手社員は、実際にどのような規模・内容のお仕事に取り組んでいるのでしょうか? 同社およびそのグループ会社でキャリアをスタートし、現在はキリンホールディングスで営業職として活躍する三須さん、森本さんに、普段のお仕事や働き方について伺いました。
<目次>
●生活に溶け込む飲料の量販営業として業務にあたる
●若手から大手企業の営業担当となる、挑戦できる環境
●先輩のフォローを受けながら、大型案件に取り組む
●事業は飲料以外も。チャレンジ志向の人とともに働きたい
生活に溶け込む飲料の量販営業として業務にあたる
──はじめに、お2人がキリンホールディングスに入社したきっかけを教えてください。どのようなポイントが決め手になったのでしょうか?
三須:私は「社会に対して大きな影響力がある会社で仕事がしたい」と思い、国内の大手企業を中心に就職活動をしていました。業界は特にこだわっておらず、銀行や金融、メディア関連など、幅広い企業を見ていましたね。
キリンホールディングスに入社を決めたのは、自分の家族や友人など、生活者にとって身近で、手に取れるモノである飲料や食品の世界に強く惹かれたからです。
三須 元希(みす げんき):キリンビールマーケティング本部流通営業本部広域流通第1支社流通2部 担当部長
2015年入社。キリンビバレッジ九州エリアにて量販営業担当として2年間経験した後、2017年よりキリンビールに異動し大手ドラッグストアを担当。2019年より全国チェーン量販企業を担当する現部署において営業担当として従事し、2025年4月より担当部長を務めている。
森本:私も三須さんと同じで、生活者の「身近な幸せ」に関われる仕事をしたいと思い、お酒やお菓子、タバコなどの嗜好品を扱う企業を中心に就職活動をしていました。
その中でもキリンホールディングスに入社を決めたのは、面接で会う方が笑顔で接してくれるだけでなく、短い時間でも打ち解けられる方ばかりだったからです。働きやすい環境だろうなと思えましたし、自分もそんな風になれたらと思いました。
──実際に入社してみて感じた、会社の印象はいかがですか?
三須:森本さんが話してくれたように、いい人が多いのは本当ですよね。私も複数社から内定をいただいて迷っていたときに、面接とは別に、たくさんの先輩社員とお会いする機会をいただき、それが入社意思を固める後押しにもなりました。
キリンホールディングスに対して、どちらかといえば「真面目で堅実」という印象を持っている方も多いと思います。私も入社前はそう思っていたのですが、実際は想像より「若手にも裁量があるんだな」と感じたのを覚えています。
1支社の中でも少なくない売上ウエイトの企業を、年次の浅いうちから担当させてもらえるケースも少なくないですし、思っていた以上に早いうちから影響力のある案件が回ってくるんだな、と。
森本:そうですね。他にはお酒を扱う企業なので、飲み会がたくさんあって、営業としてもかなり頑張らないといけないのかな……と思っていたのですが、ふたを開けてみると、営業のスタイルは本当にさまざまでした。
私はワークライフバランスも大事に働きたいなと考えていましたが「これなら大丈夫かな」と思えました。でも、お酒が好きな人や、お酒を飲まなくても、人と会って楽しく過ごすのが好きな人はやっぱり多いですよね。
森本 昴(もりもと こう):キリンビールマーケティング本部流通営業本部広域流通第1支社流通2部
2019年入社。キリンビール関東甲信越エリアにて量販営業を5年間経験し、2024年10月よりキリンビールの全国チェーン量販企業を担当する現部署で営業を担当。
──現在は、どのような仕事を担当しているのでしょうか。
三須:入社当時はグループ会社のキリンビバレッジでドラッグストアチェーンなどへの営業を経験し、現在はキリンビールの量販営業本部担当として、全国にチェーン展開するスーパーマーケットさんの本部を担当しています。
キリンの営業のお仕事は、お客様の課題やお困りごとに対して、キリンの商品や企業活動を通してお手伝いできることを考え、提案するのが主な流れです。
お客様からいただくご要望は、「客数を増やしたい」「単価を上げたい」といったものから、ときには「地域に根ざした活動をしたい」といった単純な販売目標ではないものまでさまざま。お店によっても全体の売上のうち飲料による割合、さらにお酒の割合、その中のキリンの商品の割合は異なるので、それによって提案の角度も変わってくるんです。
森本:私は入社してからずっとキリンビールの量販営業をしています。1年目はホームセンターの本部担当で、翌年にはスーパーマーケットさんを2社担当しました。現在は三須さんと同じスーパーマーケットさんの本部担当をしています。
対話する相手は本部のバイヤーさんや上層部にあたる方で、そこでの決定を各エリアの個店担当者にお伝えして実際の店頭づくりをしてもらう、というのが業務の流れです。実際に店舗へ足を運ぶことも多いですよ。
若手から大手企業の営業担当となる、挑戦できる環境
──これまでのお仕事で印象に残っている、成長につながったと感じている出来事はありますか?
森本:特に印象に残っているのは、1年目に担当したホームセンターさんとのお仕事でしょうか。年間売上が数億円ほどで、当社としても売上のうち決して少なくない割合を占めているお客様です。
ただ前任の担当から引き継いだばかりの時期は、なかなか先方にお会いできない状況が続いていました。私たちメーカーとホームセンターさんの間に入ってくださっている特約店様の方が調整役を担ってくださっていたのですが、「商談はこちらでまとめておくので」と、当社からの新たな提案などの時間をいただけない状況だったんです。
森本:そうした状況を打開しようと、アポイントがなくても店頭を回って売り場の状況を見たり、他店のデータと比較しお店としての傾向を把握し、新しい売り方の戦略を立てたり。それらをまとめた月ごとの資料を作成してお送りするなど、先輩や上長の助けも借りながら、あらゆる方法でアプローチをしていました。
時間をいただけなくても先方のもとへ行って、営業車でしばらく待機していたこともあります。こうした泥臭い活動を続けた成果なのか、そのうち時々ご連絡がいただけるようになり、「次は、商談に来ていただけませんか」と正式なご提案をする機会をいただきました。
営業とお客様の関係も、ビジネスではありますが人間関係の1つ。だからこそ、すぐにクリティカルな提案ができるわけではありません。まずは信頼関係の構築が必要だし、こちらから働きかけを通して、少しずつ心を開いていただけたケースだったかなと思います。
──三須さんはいかがですか。
三須:私が入社して4年目、キリンビバレッジからキリンビールに異動してきて半年ほどの頃、全国で展開している大手ドラッグストアさんの担当になりました。
日々たくさんの刺激を受けながら業務にあたっていたのですが……。一方で、担当先の規模が大きいため、これまで目を向けていなかったところへ、たくさんの方から指摘をいただくようになりました。求められる提案のレベルも必然的に上がってきて、その水準に達するまでは苦労した思い出があります。
──お客様から、具体的にはどのような指摘をいただいたのでしょうか?
三須:私がそのドラッグストアさんの担当になった時期に、キリンビールによる『本麒麟』が新しく発売されました。キリンとしては新商品を手に取ってもらいたい時期でしたので、私も営業先のドラッグストアさんへ、『本麒麟』を熱心に提案していました。ですが、お客様からなかなか快い返事がいただけなかったんです。
その後もあれこれ角度を変えながら提案していたのですが、ある時に先方から、「うちは『のどごし』の売上が業界トップなのに、なぜ別の商品を売ろうとするんですか?」と尋ねられてしまって。
三須:キリンの『のどごし』は、2005年の発売から堅調に成長し、今や広く認知していただけるようになった商品ブランドです。そのドラッグストアさんは他社さんと比較しても『のどごし』をたくさん売っていただいていたので、「うちに寄り添った提案をするなら、売上の中心になっている商品を重視すべきでは?」と言われてしまったんですよね。
もちろんキリンにも戦略や方針があるので、ご要望の全てに対して「はい」と言えない場合もあります。でも、顧客の思いや背景を思いながら提案を作り、寄り添うことが大切なんです。自分たちの売りたいものとお客様の気持ち、どちらも無視せずにどう売り場を実現していくかが、営業に求められる資質の1つであることに気付かされました。
──お2人とも売上金額や業界シェアなどが高いお客様を担当されていますが、プレッシャーも大きかったのではないでしょうか?
三須:そうですね。そのドラッグストアさんの担当も、異動後の仕事がうまくいき始めたタイミングで「やりたい」と手を挙げたら本当に担当することになり、最初は苦労しました。
そんな時に、先輩から「失敗したからといって、会社がつぶれるわけでもないし」と声をかけていただいて。前向きなチャレンジや、その結果としての多少の失敗は受け止めてもらえる、認められるものなのかも、と思えたのは自分の挑戦にとって大きな追い風になったと思います。
森本:私も、資料作成など提案の準備では、先輩からたくさんフォローしていただきました。お客様への提案のときは、「どのような売り場を作るか」や「目指すゴールをどこに設定するか」、そして「予算をどのように配分するか」などのプランニングまで自分で手掛けることになります。
提案のブラッシュアップで周囲の先輩方からのアドバイスを得られるなど、自分が「こうしたい」と思ったら、会社がその取り組みを応援してくれる環境です。裁量が大きいのでプレッシャーを感じましたが、その分、サポートのもとで思い切りチャレンジできる環境ですよね。
森本:実際に私の同期には「2年以内に、社内のマーケティング職になる」と宣言した人がいるんですよ。最初は「そんなことを言って大丈夫?」と驚いたのですが、その人は営業でしっかりと成果を残し、実際にマーケティング職へ異動になりました。その人の頑張りを周囲の人も見ていて、自分でチャンスをつかめる機会があるんだな、と感じた出来事でもあります。
先輩のフォローを受けながら、大型案件に取り組む
──入社してから、ご自身の成長を感じるのはどのようなときですか。
三須:以前に経験したことが、次の機会にはもっと上手にできるようになっていたときでしょうか。
例えば近年では、酒税の改訂が3年おきに行われています。次回の改訂に向けた準備の中で前回の売上データから見通しを立てられたり、「前にも似たようなケースがあったな」と思い出して、提案内容に反映できたりしたときは、うまくできてよかったと思いますし、それでお客様が喜んでくださるとなお嬉しいですね。
森本:これまでに4社を担当してきたのですが、自分が担当を離れる際、お客様が「さびしい」「残念」と言ってくださるときには、自分なりにこの方と信頼関係を築けていたのかな、と感じて嬉しい気持ちになります。
また現在の部署に異動してから、担当するお客様の規模も徐々に大きくなってきています。規模が大きな仕事であれば、各エリアの個店担当者、マーケティング部署の方、物流部署の方など、社内で関わる人も増えていくんです。
私の場合は「これができたから成長した!」と感じることはあまりありません。今は多くの方と業務を進める過程で「少しずつ成長しているところ」なのだと思っています。
──お2人は同じ部署で、普段から一緒にお仕事をされていると伺っています。業務ではどのように関わることが多いのでしょう?
三須:森本さんの直属の上司というわけではありませんが、日常業務はほとんど一緒です。全国で展開しているスーパーマーケットさんがお客様で、本部担当として、お客様が手掛けるすべての業態を私たちで担当しています。それぞれで作った資料を突き合わせながら商談でどのようにストーリーを組み立てていくかを考えたり、森本さんが何か困っていそうなときには相談に乗ったりしていますね。
規模が大きいお客様ですので、本部で決まった施策を実施する際は、その目的や手続きを全国の事業所へしっかりと伝えていかなければいけません。内容が誤って伝わらないよう「どうすれば伝わりやすいか」「それぞれの関係者が動きやすい発信方法は」を考える必要があります。
三須:森本さんは、この役割に慣れるまでは苦労していた印象ですが、最近は相対する人の役割に応じてコミュニケーションを取っていて、すごく成長しましたよね。優秀な後輩だと感じています。
森本:ありがとうございます(笑)。三須さんはいつ声をかけても優しく応えてくださるので、本当に助かっているんです。他の先輩方を頼ることも多いですが、私の相談に対して、どなたもすごく真剣に考えてくださるんですよね。働きやすいし、プレッシャーがあっても頑張れる環境だと思います。
三須:やっぱりフレンドリーというか、人と話すのが好きな人が多いんですよね。社員が多いこともあって、趣味が合ったり住んでいるところが近かったりと共通点のある人も多くて、いつしか仕事以外でも親しい交流がはじまることもあります。他には、社内の交流も兼ねた食事会もあります。
──お仕事を進めるにあたって、先輩や会社からの手厚いフォローがあるんですね。
三須:フォローとしては、リーダーによる1on1が四半期に一回のペースで設けられていますし、それ以外のタイミングでも希望すれば話を聞いてくれる人がほとんどです。
森本:日々業務をともにする先輩や上長だけでなく、メンター制度もあるので何か困ったことがあればすぐに相談できるようになっています。それから、いろいろな分野についての研修制度もあるので、自分の興味やキャリアイメージに沿って学んでいくこともできますよ。
事業は飲料以外も。チャレンジ志向の人とともに働きたい
──「キリンで働くことの楽しさ」は、どのようなところだと思いますか?
三須:「自分が扱っている商品を、日常的に目にする機会があること」だと思います。
例えば、帰り道でたまたま見かけた方が手に缶ビールを持っていたら「何を飲んでいるのかな?」と気になってしまうんです。それが『一番搾り』だと「やった!」と嬉しくなりますし、他社さんの商品だったら、「どうしてこれを選んだのかな」と考えてしまいます。
森本:量販営業としては、担当しているお店で自社の商品を手にしている方を見かけるのも、楽しみややりがいのひとつですよね。
「対お客様」の点だと、自分なりに考えた提案を実行させてもらって、それがしっかりと結果となって返ってきたときはすごく嬉しいです。お客様に響く提案ができたこと、そしてそれを実行していただけたこと、それが消費者にもしっかりと届いたこと。この3つが自分のやりがいで、仕事の面白さでもあると思います。
──今後のキャリアについて、チャレンジしてみたいことがあれば教えてください。
森本:私は、ITに興味があるんです。私たちがお客様に商品や価値を届け続けるためにデジタルへの対応は必須だと思いますし、デジタルを通して、より商品を買いやすくするような施策も必要になってくるはず。
他にも社員の業務効率化に向けて、ルーティン化している業務を自動化すれば、よりクリエイティブな業務に取り組める時間を生み出せます。いずれは、ITやDXに関わる部署も経験してみたいなと思っています。
とはいえ今はまだ営業職として学ぶことも多く、ここで得たいノウハウもたくさんあるので、お客様への価値提供を通してしっかりと学んでいく時期だと考えています。
三須:私はCSV(企業による、活動を通じて社会課題を解決する取り組み)経営に興味があります。
過去に熊本県に駐在していたのですが、駐在中の2016年4月に熊本地震を経験しました。多くの取引先の方々が被災され、通常通りの企業活動ができない中で「キリンとして、何ができるのか」を考えなければいけない状況になりました。キリンは当時すでにCSV経営に力を入れていて、社員の安全確保をしながら、すぐに復興支援をめざす企業活動に取りかかれたのが自分の中でとても印象に残っているんです。
CSV経営に直接関わる部署に行ってみたい気持ちもありますが、お客様からふとこぼれる「地域に根ざした企業活動をしたい」といった思いをくみ取って提案に落とし込むなど、今の営業職でもやり方はいろいろあると思っていて。今はここで営業の経験を積み重ねながら、いずれCSV経営を体現できるようなところで業務にあたれたら、とイメージしています。
──ありがとうございます。最後に、就活生へのメッセージをお願いします。
森本:キリンは、自分が「やりたい」と思ったことをしっかりと表現できればチャンスを与えてくれる会社だと思います。やってみたいことがある方、実現したい目標がある方はぜひ、当社のことも調べてみてほしいですね。
三須:飲料メーカーとして知られているキリンですが、ヘルス・サイエンス分野にも事業領域を広げています。チャレンジの機会はそこにも広がっているので、活躍のチャンスもそれだけ増えると思います。
同期の中には退職した人もいるのですが、その理由として「裁量がなかった」「仕事が面白くなかった」という人は見たことがありません。チーム内でも、チャレンジを応援してくれる空気感は強いと思うので、「新卒からでもどんどんやってみたい!」志向の方には向いていると思います。
森本:就職活動ではミスマッチを防ぎ、自分に合う会社との出会いを探してほしいです。そのためにも、説明会への参加はもちろん、企業の人とどんどん会う機会を作ってみるのがいいと思います。人事の方以外にも、志望職種の人と話せる機会があれば、ぜひ「仕事の実際のところ」も聞いてみて、自分が働くイメージをしてみてください。
三須:確かに、「実際の様子を知る」ことは大切にしてほしいですね。オンラインでの面談が増え、人に会う機会が得にくい場合もあると思いますが……。だからこそ実際に見たり聞いたりして、自分の「納得度」を高めてほしい。新卒での就職活動は一度だけなので、ぜひいろいろな業界や企業を見て、納得のいく就職先を見つけてほしいです。
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【ライター:藤堂 真衣/撮影:遠藤 素子/編集:伊藤 駿(ノオト)、鈴木 崚太】